【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「では、私は魔鋼の訓練剣を溶解させます」
「自分は、溶解した際の魔力を制御して、効果を逃さないようにするっすけど……」
「何か、懸念がありますか?」
「いやあ、カールってその喋り方無理してるっすよね?」
「いえ、そのような」
テクニティスの言葉に、カールは困ったような顔を見せる。
だが、それは俺も気になっていた。
「どうせこれからも、一緒に作業することになるっす。息苦しい喋り方する必要はないっすよ」
「う、む……では、そうさせてもらうが、不敬ではないのか?」
「まあ、自分も
「そうか。それじゃあよろしく頼む。テクニティス」
たしかに、今後もカールとテクニティスは、共に作業することが多いだろうからな。
ぎこちないやり取りをするよりは、素の状態でやり取りできるに越したことはないだろう。
「じゃあ、俺も敬語はいらないんだけど」
「それは無理です」
「それは無理っすよ……」
なぜだ。十魔将でもない俺の、何が駄目だというんだ……。
そんな俺の心境を知る由もなく、二人はさっそく協力して作業を開始した。
「レイ殿は、敬われるべき存在なので仕方ないのでは?」
「フィオナ様だけで良いと思うんだけどなあ」
そんな二人の代わりに、リピアネムが言葉をかけてくれるが、やはり釈然としない。
フィオナ様が敬われる分には問題ない。ついでに俺が……。
ああ、そうか。俺はフィオナ様の持ち物だし、要するにオプションパーツみたいなものだから、ついでにというわけか。
それなら納得した。
「納得した」
「そうか。納得できたのであれば、良かった」
「おじさん何も言わないでおくね」
たしかに、あまりこちらで喋っていると作業中の二人の邪魔になるか。
集中を阻害してしまい、魂喰らいの腕輪の製作が失敗するのは良くない。
俺とリピアネムは、揃って口を閉ざすことにした。
「……なんか勘違いしてるままだけど、まあいいか」
そうして外野の俺たちが黙って工程を見守るが、元からその程度のことは気にも留めていないのか、カールもテクニティスも真剣な表情で作業を続けていた。
一見すると溶解させているだけに見えるが、テクニティスが都度火を操って何かをしているため、魔鋼の訓練剣の効果だけを留めているんだろうな。
そうして元の姿を完全に失った魔力の鋼だったものを、今度はカールが無垢の腕輪へ吸収させていく。
二人は淡々と作業をこなしていくので、特段トラブルも発生していないのだろう。
徐々に腕輪は溶解した剣を吸収していき、その見た目も変化していく。
完成が近づいているのがわかるためか、リピアネムもパタパタと尻尾を振っているようだ。
「まあ、こんなところっすかね?」
「ああ、大したもんだな。吸収させる装備品の効果を、ここまで残すことができるとは」
「自分、魔力細工に関しては、ピルカヤ様より得意っすから」
作業が完了し、二人は感想を言い合う。
どうやら、無事合成が完了したようだ。
「見た目が、魂喰らいの腕輪と同じだな」
「効果も完璧に同じっすよ。無垢の腕輪は吸収した効果によって、見た目も変化するっすから」
似たようなものを作るのかと思っていたが、まさか同じものを作るとは……。
なるほど、ゲームでは素材を選んで合成したら、別の装備に変化するとかだったんだろうな。
それならば、この現象も特別おかしいことではないか。
「どうぞ。リピアネム様」
「うむ! よくやってくれた。二人とも」
リピアネムは、嬉しそうな様子でできたばかりの腕輪を装着する。
そうして、体の調子を確かめるようなそぶりを見せると、満足そうにうなずいた。
「完璧に封印できているな。これで、再び厨房に立つこともできよう」
「リピアネム。ステータス見てもいいか?」
「む? 断りを入れずとも、レイ殿なら、いつでも好きなだけ見てくれてかまわんぞ?」
まあ、そこはダスカロスにも指摘されていたし、一応な。
さて、封印されたことでどのように変化しているか……。
リピアネム 魔力:90 筋力:105 技術:100 頑強:85 敏捷:105
高いな……。封印後だというのに、ステータスが100を超えている。
これはやはり、今までつけていた魂喰らいの腕輪の効果だろう。
溜め込んでいた力が還元されて、なんかとんでもないステータスになっていたしな。
それを再封印したところで、やはり以前よりもステータスは高くなってしまっているわけだ。
「大丈夫か? 筋力とか、前の封印のときよりは高いみたいだけど」
「ふ……。私とて日々成長しているのだ。以前であれば持て余していた力も、この程度であれば使いこなしてみせるとも」
「自信満々だな」
「うむ、自信はある。……だが、そう言われると日常生活はともかく、戦闘時がいささか不安ではあるな」
「ゴブリンたちにでも、模擬戦を頼むか?」
加減が不安だというのであれば、うちの子たちに任せればいいと思う。
あの子たち、死すら気軽に受け入れているところがあるからな……。
まあ、かわいそうだから、すぐに再作成しているんだけど。
「ゴブリンか……。すまないが、私の力を試すのであれば、ある程度の力が必要でな」
「となると、カニとかにするか? 頑丈だし。ああ、食人花なら、耐久力高めだったか」
適切なモンスターを考え提案しているが、どうもリピアネムにはしっくりとこないようだ。
そんな俺たちを見かねたのか、リグマが口を開き提案してくれた。
「さて、それじゃあおじさんも協力しようかね」
「協力? 珍しいな」
「リピアネムがちゃんと封印できているか確認しておかないと、各所で被害出そうだしなあ」
「なるほど、より大変なことになるくらいならってわけか」
「そういうこと」
「日常生活は大丈夫だと自負しているのだが……」
しかし、協力って何をするんだろう。
もしかして、リグマも力を封印する方法を持っているとか?
「具体的には、リピアネムが本当に力を制御できているか、サンドバッグになって確かめようと思いま~す」
そっちかあ……。まさか、モンスターではなく四天王で力試しとは。
いや、実力から考えるとそのほうが良いのかもしれないけれど……。
それ、万が一力が制御できていなかった場合、リグマが消し飛ばない? 大丈夫?
「む……。私なら問題ないとは思うが、それでも万一失敗した場合のため、不死鳥の羽を魔王様からいただくべきではないか?」
「平気平気。アナンタに任せるから」
「ちょっと待てぇ!!」
あ、アナンタが駆けつけてきた。
カーマルやウルラガも一緒だ。
良かった。こうして自主的に集まってくれているみたいだし、本人もなんだかんだで協力的みたいだ。
「聞いてないぞぉ! なんだその俺虐めはぁ!!」
「大丈夫。おじさんには作戦があるから」
「そ、そうか……? まあ、さすがに生身でリピアネムの攻撃を受けろとは言わねえか……」
「群生の魂晶で、アナンタを主人格にしてパワーアップするから、無限に再生できるだろ」
「死ぬこと前提になってんじゃねえかぁ!!」
なるほど……。
たしかに、それなら失敗してもアイテムなしで復活できるか。
前に言っていたもんな。アナンタをベースにリグマたちが融合すれば、すさまじい再生能力を発揮できるって。
「いや、さすがにお前さん以外だとまずいでしょうが。ウルラガを強化というのも考えたが、万が一が起きたらおじさんたち一気に死ぬぞ」
「そこまで判断できて、どうして俺なら平気ってなるんだよぉ……」
「実際、魔王様に殺されても再生できるでしょ。お前なら」
「……い、痛いだろうが」
「平気平気。どうせ一瞬だから」
「う~ん……まあ、そうなんだろうけどよぉ」
すげえ……。アナンタが言いくるめられそうになっている。
さすがはリグマだ。自分の副人格たちのことを良くわかっているし、思うように操れるようだ。
「そんじゃあ、がんばって再生してくれよ~」
「ええ……。もう失敗前提になってるじゃねえかよぉ……」
まだ嫌そうではあるが、アナンタはリグマたちが自身の中に吸収されるのを、拒否する様子はなかった。
むしろ面倒ごとを早く終わらせたいのか、アナンタはリピアネムにさっさと斬れと促している。
「では、いくぞ!」
「――」
真っ二つだな。
あれ? リグマと同じように、体を硬化してふせぐとかじゃないの?
「……まあ、そりゃあこうなるだろうけどよぉ。そんでどうなんだよリグマ。今のリピアネムの力って、ちゃんと制御できてんのかぁ?」
アナンタは、即座に再生すると何事もなかったかのように、自身の内にいるリグマに確認を取っていた。
そうか。リピアネムの実力を知っているのはあくまでもリグマであり、副人格たちはそこまで正確には測れないのか。
「え……まじかよぉ。リピアネム、もう一回やれってさ。なんか、切れ味よりも破壊力が勝ってるみたいだぞ」
「なるほど……。どうやら、まだ力の余波が制御できていなかったか。では……」
「――」
真っ二つだ。
だが、今度は先ほどよりも体の断面が散らばっていない。
これは、先ほどよりも力が制御できている証なんじゃないか?
「痛くねえけど、怖いんだが……はあ? 誰がビビりだよ? じゃあ、お前らが受けてみろってぇ!」
まあ、怖いだろうな。
フィオナ様に次ぐ強者が、自分の体をスパスパと斬っているんだから。
「よし、次だ!」
そして、そんな強者がだんだんと乗り気になって、自分に剣を振るおうとしている。
……大変だなあ。まあ、細かな制御は徐々にできるようになっているみたいだし、アナンタには悪いがしばらく付き合ってもらうか。
「これ、どうせ一瞬でやられるならゴブリンで良かったのでは?」
「俺のほうが、再生速度早いし、ゴブリンの場合レイの魔力消耗すんだろぉ。もういいよ。このまま、しばらく斬られ続けるからよぉ……」
諦めた様子でそう呟くアナンタは、頼りない声なのに頼りになるという、なんともよくわからない存在になっていた……。
「げぇっ! もっと綺麗に斬れよぉ! 今の、痛かったからなぁ!!」
「す、すまん」
う~ん……。アナンタって、わりと面倒見いいよなあ。