【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「へえ、健康診断」
「ああ。魔王軍に務める者も増えた。そして、何度も注意しているはずなのに、働き続ける者も少なくはない。健康を害しているのであれば、強制的に睡眠させようと思ってね」
「俺は……大丈夫だよ?」
「さてね。それは、私が決めることだ」
大丈夫だよな……? フィオナ様と一緒に寝ていることも多いし。
ダスカロスが来てからは、注意されなくなったはずだから。
「ちなみに、もしも駄目だと判定されたら?」
……無言で、睡眠薬見せられた。
畜生、良い顔しやがって。さっそくガシャ祭りのアイテムを使いこなしているようで何よりだ!
◇
「横暴です!」
「お~ぼ~だよ~」
「黙れ馬鹿ども。お前たちは、これを服用して眠っておけ」
「まだ診察すらしていないじゃないですか!?」
覚えがある組が食って掛かっているが、テラペイアも慣れたもんだ。
さすがに分が悪いと感じたのか、二人はしぶしぶと列に並ぶことにしたらしい。
マギレマさんは……。あ、すでに知らん顔して大人しく並んでいる。
逆らっても無駄と最初から理解しているのか、なんとかごまかそうと考えているみたいだな。
「怪我だな。軽傷だろうとすぐに来なさい。私はそのためにいるのでね」
「しかし、この傷はソウルイーターがついに私につけた初めての傷だ。なるべく残しておくべきかと思うのだが……」
「ディキティス。お前さんのそういうところは、真面目と言っていいのかいまいち私にはわからん……」
とりあえず、テラペイアが独自に処方している回復薬を渡されるも、使用の判断はディキティスに委ねることにしたらしい。
そうか、ソウルイーターのやつ、ついにディキティスに一矢報いたのか。
がんばって戦闘訓練していたもんなあ……。
「カザマたちは……傷はないようだな」
「はい。
「もう練習の必要もないですけどね。新、聖女の力かなり上手になっていますし」
「ああ、それは私もそう思う。怪我人が続出したときは、ぜひとも助力を乞いたいところだ」
「が、がんばります!」
……勇者と聖女と賢者か。もしかして、対イドやオルナスの予行演習に最適?
ダンジョンのテストプレイとして、案外良い人材なのでは?
「……」
「どうした? 気分でも悪いか?」
「な、なんか嫌な予感ですかね? なんか、変な直感みたいなものが」
「……レイ。どうせ君だろう。やめてあげなさい」
「なんで俺が!?」
俺は、
「あ、収まりました」
「ほら見ろ」
そこで収まったら、本当に俺のせいみたいじゃないか!
おのれ風間の直感め……。俺が魔王軍だから、勇者として苦しめようとしているに違いない。
「さて、問題児」
「不服です!」
「黙れ。診察だ」
「吸血鬼の私が、そうやすやすと体調を崩すはずないでしょう!」
「その目の下のクマはなんだ?」
「……イメージチェンジです」
それは無理がある。
まあ、エピクレシの雰囲気や服装からすると、案外似合っているとは思うけどな。
プネヴマもそうだけど、なんかゴシックファッションが似合うというか……。
「む、レイ? エピクレシのこと考えていました?」
「そりゃあ、まあ……はい。エピクレシの診察中なので」
「むむむ……」
フィオナ様が眉間に指を当てて、唸り始めた。
なんかあったのかな?
「ひえっ!」
「……魔王様。いや、原因はレイか。レイ。君、もう変なことを考えないでくれ」
「俺のせいじゃないだろ!?」
なんだこれ。俺が何かを考えるたびに、何が起こるっていうんだ……。
「君の影響力の高さを、理解してもらいたいものだな」
納得いかないぞ……。
だが、そんな俺の抗議の視線にどこ吹く風、テラペイアはエピクレシの診察を続ける。
「やはり、不健康極まりないな」
「そ、そんな触診程度では誤診の可能性も……」
「わかっていて言っているのだろう。私は魔力を体内に通して診察している。魔法器具での診察より正確だ」
へえ。そういうふうに診察していたんだ。
機械も使わずに、その身一つで正確な診察ができるというのはすごいな。
「なので、無理をするようなら体内から魔力を破裂させる」
「何言ってんですか!? このやぶ医者!」
「無理をすればの話だ。そうすれば、貴様も休まざるを得ないだろう」
「おのれ~……。休みますよ。休めばいいんでしょう……」
さすがのエピクレシも、体内からの爆発は嫌なんだろうな。
大人しく引き下がることになったようだ。
……まあ、さすがにテラペイアも、本当に魔力を破裂なんてさせないだろうけど。
「では、魔王様」
「健康体です!」
「……たしかに、以前と違って寝不足が解消されていますね」
寝不足!?
四度寝という暴挙にすら出るフィオナ様だぞ?
テラペイア……。誰かの診察結果と間違えていないか?
「自慢のレイがいますからね! レイを抱いて寝れば、ぐっすり楽しい夢の中です!」
「……なるほど」
まあ、寝顔はいつもふにゃふにゃしていて、しまりがないというか幸せそうだけど。
前に一度だけうなされている姿を見たことはあるが、基本的には良い夢ばかり見ているんだろうな。
「では、次はレイだな」
「俺も健康だと思う」
「ああ、君は最近は無理もしていないし、心配はいらんだろうさ」
そう言いながらも、魔力を体に通して診察してくれる。
……なるほど、これが体内に魔力が入っている感覚か。
「これ、敵に使って内部から爆発できたりしない?」
「……君も大概ワーカーホリックだな。たまには違うことを考えなさい。あと、敵はこうも無防備に私の魔力を通さないだろう。集中している私は無防備だしな」
ということは、動きさえ止めてしまえば……。
いや、それならそもそも武器で攻撃とかしたほうが、手っ取り早いか。
「うん? 君、睡眠は足りているか?」
「それなら、昨日はフィオナ様と一緒に寝て……」
いや、そうだ。あんまり眠れなかったんだ。
いつもより楽しい夢だったのか知らないけれど、いつもより密着されて強く抱きしめられて、不覚にも緊張してしまったんだった。
おのれ、フィオナ様のくせに味な真似を……。俺も俺で、寝具としての自覚が足りないぞ。
「ふむ……。魔王様と就寝するのは、さすがの君も睡眠に影響するのか」
「さすがのっていうのはよくわからないけれど、たまに寝不足にはなる」
もしかして、フィオナ様と別々に眠るように注意してくれるんだろうか?
たしかに、一緒に寝ていることが多いからな。もう少し頻度を減らしても……。
「まあ、君には悪いがそれは継続してもらう」
「なんで!?」
あんた医者だろ!
患者に影響がある行為を、なぜ見過ごそうとしているんだ。
「睡眠薬なら処方するぞ?」
「え~……。いや、まあ。俺も別に嫌いじゃないし。いいよ、今のままで」
「嫌いじゃないというか、大好きですからね! レイは私のことが!」
大声で喧伝しないでください。
ほら、周りが頷いてしまっている。
なんだこの羞恥プレイは。だいたい俺だけじゃなく、みんなだってフィオナ様のこと好きじゃないか。
「まあ、必要ということだ。今後も魔王様を頼むぞ」
「は~い……」
もうガシャで抱き枕でも入手したらいいんじゃないかなあ……。
◇
「ということで、今日も仲良く一緒に寝ましょう!」
「寝るテンションじゃないんですよ。それは」
「枕投げでもします?」
「ステータスの暴力のせいで、俺が確実に負けますが?」
「じゃあ、諦めて大人しく眠ることですね」
仕方ない。今日も寝具に徹するとするか。
「……もしも嫌ならいつでも言ってくださいね? あなたに無理はさせません」
「嫌じゃないです」
そんなしおらしい態度を取られても……嫌じゃないので気にしないでください。
本当に、自分に自信がないんだよな。この魔族は……。
俺の返事に気を良くしたのか、後ろから俺を抱きしめる力は、心なしか強くなるのだった。
本日から新作を投稿し始めました。
よかったら、こちらも読んでいただけたら嬉しいです。
『世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする』
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