【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

307 / 397
第307話 ダイビングの試写会

「映像結晶ならば、テイランだろうな」

 

「テイランって、前に言っていた変わった国の?」

 

「ああ。あの国は魔法体系からして異なる。他の国の映像結晶も、元はテイランが作成したものだ」

 

 となると、アルマセグシアでの買い出しのようにはいかないよなあ。

 あの国は様々な種族が多いから、うちの従業員が買い出しをしても目立つことはなかった。

 だけど、テイランを訪れるのは、その国の技術や文化を学ぼうとしている者ばかりみたいだし。

 

「私たち、たまに買い物に行きますけど、音楽はともかく映像の結晶って、見たことありませんでした」

 

「そうね。ちょっと気になるかも」

 

「流通が少ないからな。本と違って馴染みもなく、テイラン自身も積極的に売り込むつもりはない。魔法器具の収集家がたまに購入するくらいなのだろう」

 

「ほしいな~」

 

 時任(ときとう)だけでなく、転生者組はわりとみんな興味がありそうだな。

 うちも少しずつ娯楽は増やしていっているけれど、映像作品という前の世界で当たり前のようにあった娯楽は、また話が別なのだろう。

 

「話が逸れているけど、まずはレイくんが上映するための場所を作るところからじゃないのか?」

 

「ああ、そうだった」

 

 場所だけ作ってしまえば、その後何かに使えるだろうからな。

 たとえ映像結晶とやらが入手できなくても、フィオナ様に頼んで星を作ってもらえばいいし。

 ……最悪、座席についてから毒ガスでもまけばいいや。

 

「ええと……暗くて椅子がいっぱいあって」

 

 部屋を作るときに、椅子以外の付属品をなくしてしまい、代わりに椅子を増やすイメージだな。

 それで大広間。天井もそこそこに広くて星空として見上げられるくらい……。

 まあ、そのあたりは、他の機能を減らすことで拡張可能な領域だろう。

 灯りも減らすということになるし、その分で賄える気がする。

 

「あとは、大きなスクリーンみたいなもの……?」

 

 これ、どうしよう。

 そもそもこっちの世界にきてから、そんなもの見たことないし本当に作れるんだろうか。

 いや、温泉とかだって無から出てきたわけだし、がんばればいけるはず。

 

「映像……。映像……?」

 

 まてよ。俺が今こうしていじっているメニュー画面だって、立体映像なのでは?

 ということで、ダンジョンマスターさん。なんかこんな感じで映像映し出せる大きな設備作れないでしょうか?

 

「広間作成」

 

 駄目か。だが、一度目にしては悪くはないと思う。

 しっかりと広くて椅子も並んでいて、灯りはないけれどそこは問題ないし。

 

「広間作成」

 

 さっきよりも椅子がきっちり整列されているな。

 だけど、肝心の映像を映し出す設備がない。

 

「広間作成」

 

 う~ん……。何回かやればできると思ったんだけどな。

 

「レイと魔王様って、設備作るときと宝箱引くときがなんか似てるよね」

 

 ……俺もガシャ廃人だったというのか。

 ピルカヤの言葉に、周囲は納得したように頷いている。

 フィオナ様に至っては、仲間を発見したように目をキラキラさせながら喜んでいる。

 

「なるほど、これがフィオナ様が普段味わっている気持ち……」

 

「地の底へようこそ。レイと二人なら、きっとどこでも快適です」

 

「なんか、駄目なほうに沈んでいきそうなので、なんとかして抜け出しましょうよ」

 

「え~? 抜け出すよりは、住みよい場所にしたほうがいいですよ~」

 

 なんか、地底魔界の話みたいになってきたな。

 それなら俺も、居心地の良い場所を作ることは、やぶさかではないが……。

 

「広間作成……。お?」

 

「うまくいきましたか?」

 

 フィオナ様に尋ねられたとおり、まさしくうまくいったというやつだ。

 メニューには、しっかりと新たな施設名が表示されている。

 

 魔導映写館作成:消費魔力 50

 

「プラネタリウムでも、映画館でもありませんけど、なんかそれらしいことができそうな名前が」

 

「やった~! 映画が見られる~!」

 

 時任が後ろで喜んでいるが、あくまでも上映ができるというだけなので、喜ぶのはまだ早いと思う。

 

「魔導映写館作成」

 

 まあ、まずは作ってみてからだよな。

 広間を消して、新たに魔導映写館とやらを作成する。

 その瞬間、概ね予想通りの空間が作成されて、地底魔界の本拠地に新たな設備が設置された。

 

 広間の中に規則正しく並んだ座席。

 周囲には、ぐるりと映像を投影するスクリーン代わりの魔法器具。

 それらが天井まで完備されているので、プラネタリウム代わりにも映画館代わりにも使えそうだ。

 

「悪くないんじゃないか?」

 

「なかなか面白い試みですねえ。みんなで大きな画面で映像を見るわけですか」

 

 娯楽室のすぐ近くなので、休憩中の従業員たちにも利用できるだろうし、あとは上映するための映像結晶次第ってところだな。

 この世界がどこまで娯楽映像を作っているか。そのあたりが重要になってくる。

 

「とりあえず、どんな感じなのか試してみましょう」

 

 そう言いながら、すでに最前列の真ん中に座っていたフィオナ様が手招きする。

 甘いな。あそこはスクリーンを見上げるから首が疲れる座席だ。

 もっと、中央のほうがいい席になっているはず……。

 はずだけど、手招きされているし、まあ隣に座るか。

 

「ところで、どうする気ですか? まだあそこに映し出す映像がありませんけど」

 

「そこは、私たちには頼れる四天王がいますからね。ピルカヤ、出番ですよ」

 

「さっすが魔王様。ボクが優秀だってよくわかってくれてますよね~」

 

 フィオナ様に名前を呼ばれ、上機嫌な様子のピルカヤがスクリーン代わりの魔法器具に、何やら魔力を通しているようだ。

 なるほど、ああやって映像を投影するのか。

 興味深い光景を眺めていると、どうやらうまくいったらしく、スクリーンには迫力のあるサイズで、見慣れた光景が映し出された。

 

「……ダンジョンだな」

 

「……ダンジョンだぁ」

 

 周囲の席、特に中央あたりに座っていた転生者組から、若干の落胆に似た感情の声が聞こえてくる。

 今のは、ロペスと時任だな。

 まあ、ピルカヤには悪いが、二人の気持ちもわかる。

 

 これから映画でも始まりそうな雰囲気だったというのに、いざ映し出されたものが見慣れたダンジョンなのだから、少々の落胆は仕方ないのかもしれない。

 だが、そこは仕事に誇りを持つ我らが精霊。

 その言葉を耳ざとく聞いていたらしく、彼はたいそう不満そうだった。

 

「な、なんだよ~! ボクの力なんだから、ダンジョン内の視界共有に決まってるじゃん! なんか不満があるなら、言ってみなよ!」

 

「いや、不満というか……想像していたのと違ったというか」

 

「映画が始まると思ってしまいました……。はい」

 

 ピルカヤも、別に敵への怒りを向けているわけではないので、二人はわりとズケズケと物を言う。

 まあ、この二人もそれだけ魔王軍に慣れたってことだし、良いことだな。これは。

 

「……ピルカヤさん。私が働いている海エリアの中とか映せます?」

 

「ん? もちろんできるよ、ほら」

 

 そう言うと、画面が切り替わって人工海の様子が大画面に広がった。

 わりと見慣れた顔も多いな。常連客が定着しているのはいいことだ。

 ……あの王様。またサーフィンやってるし。

 

「もしかして、海の中の様子まで映せたり……」

 

「海の中? う~ん、炎がないからなあ」

 

「やっぱり、無理ですよね……」

 

「いや! ボク本体なら、水とか全然平気だし! ちょっと行ってくるから!」

 

 そう言い残すと、ピルカヤは急いで人工海へと向かった。

 おいおい……用心してくれよ?

 ええと、あのエリアにいる客たちのステータスは……。

 うん。転生者はいないし、魔力の探知に長けている種族もなし。

 隠れながら向かっているし、バレることもないだろう。

 

『ルトラよろしく!』

 

「はい、ピルカヤ様」

 

 そうして人工海にたどり着いたピルカヤは、ルトラに頼んで発生させた波に紛れるように、海中へと沈んでいく。

 人工海にいる者たちにバレることもなく、そのまま海の底まで潜ると視界を共有したようだ。

 

 海中の様子はまるで一つの別世界を覗き見ているようであり、そこにいる魚や海藻。水棲生物たちの様子はとても美しい風景を演出していた。

 

「すごい……」

 

 奥居(おくい)が感動したように画面に釘付けになっている。

 いや、他の者たちもこの光景に心が動かされたのか、皆一様に画面を見つめていた。

 

『どう!? ボクすごいでしょ!』

 

 まあ、この得意げな声で、感動に水を差されてしまった気もするけれど、たしかに相変わらずすごいのは間違いないな。

 

「ピルカヤさん! すごいです!」

 

『え? そ、そうだよね?』

 

「ええ! ぜひとも、このまま一日くらいこの光景を!」

 

『えっと……ボクがすごいことはわかったみたいだし、ボクそろそろ戻るね~』

 

「ああ……そんな」

 

 奥居のただならぬ迫力に押されたのか、ピルカヤは急いでこっちへ戻ってきた。

 すごいな奥居……。あの仕事中毒のピルカヤが、自ら仕事を放棄するほどの迫力とは。

 本当に、海好きだよなあ。

 

「獣人とか人間って、たまにすごい力を発揮するよねえ……」

 

「おかえり、たしかにすごかったぞ」

 

「うん。ボクすごいから……」

 

 すごいな奥居。ピルカヤが自慢をためらうって、よっぽどのことだぞ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。