【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「興奮すると……周りが見えなくなるの、わかる……!」
「あ、あの……」
「プネヴマに仲間認定されたみたいですね」
「そ、それは嬉しいのですが、私は別にそこまで……」
「
「私そんなんだった!?」
そんなんだったぞ。四天王に人類のすごさを思い知らせていた。
まあ、あの光景はなかなか面白かったからな。
いや、ピルカヤと
前世のテレビとかでも、ああいう海中の景色を流す番組とかあったし。
「ルトラが水の中の景色を見せてあげればいいじゃない!」
「え、えっと……が、がんばります!」
「四天王が後輩にパワハラしてる」
「視界共有なんて、お前くらいしかできないだろ」
だが、そんな無茶ぶりにも応えようとするのが後輩精霊たちだ。
なんか、そのうち本当に同じような能力を身につけていそうだな。
「まあ、今回はこの設備がどのようなものか確かめられたし、それでよしとしようか」
「相変わらず、君はとんでもない施設を簡単に作りだすな」
「わりと苦労はしているんだけどね」
毎回がんばって、それっぽいものを作っているだけだ。
俺ではなく、ダンジョンマスターさんが。
しかも、まだまだ上映用の施設だけときている。
ここから、上映するための映像結晶とやらを手に入れないと、せいぜいピルカヤの視界共有結果しか映せない。
「……ピルカヤに共有してもらった視界を映せば、監視カメラみたいにできるな」
「やだ~! 監視はボクだけで十分じゃない!」
「まあ、わざわざここに映さなくても、直接共有してもらえばいいだけだしな」
今も入り口だけは、四天王の誰かが交代で視界を共有してもらって、しっかりと見張るようになっているし。
そう考えると、やはりピルカヤの能力ってとんでもないよな。
「となると、やはり映像結晶ですか。テイランに行くならば、かなり慎重にいきたいところですね」
「テイラン……。テイランか」
フィオナ様の結論を聞いて、ロペスに何か思い当たることがあったらしい。
さすがはロペスだ。困ったときには、何か良い案を出してくれる頼れるやつだからな。
「最近、カジノに珍しい服装の女が来ているが、リズワン王がテイランのやつって言っていたな」
「なるほど……。じゃあ、その人たちに頼めば、映像結晶が手に入る可能性も」
「そういうことだ。適当に宝箱何回か無料で挑戦させてやれば、交渉できるんじゃねえか?」
「そんな適当な……」
いくらなんでも、そんな軽い対価で動いてくれるはずないだろう。
思わず疑るような目でロペスを見てしまうと、彼は慌てた様子で弁解した。
「いやいや! 本当に、それだけ宝箱にハマってるみたいなんだって!」
「まあ、ロペスがそう言うのなら……。ただ、無理せずに、資金も好きに使っていいんだからな?」
「ああ、交渉なら任せてくれ。今回はボスが思っているよりも、かなり簡単な仕事だと思うぜ」
そんなチョロいのか? 宝箱ごときで簡単に懐柔できるよう相手なんて、存在するわけが……。
いるな。
「ん、どうしました? レイ?」
「フィオナ様ってチョロいですよね」
「……あなたは、最近魔王の恐ろしさを忘れてきているようですね。いいでしょう! チョロくない私の勇姿を見せてあげましょうとも!」
「具体的にはどうやって?」
「……え~と。とりあえず、一緒にお昼寝しながら考えます?」
さようなら。魔王の恐ろしさ。
ほら見ろ。周囲も、解散かという雰囲気になってきているじゃないか。
絶対ただ寝るだけだよこの魔族。ノープランで寝て起きて終わりだよ。
「レイさ~ん!」
「ちょっ!
「いや、かまわないぞ。どうした?」
フィオナ様に連れ去られる前に、時任がのほほんとした様子で呼びかけてきたので応じると、フィオナ様も歩みは止めてくれた。
ただし、俺の手はしっかりと握っていて、話が終わったら引きずる気満々だがな。
「この映画館で、色々と試してみていいですか?」
「かまわないが……。何かいい案があったら、後で教えてくれるか?」
「は~い」
時任が手を振ると、それを合図にフィオナ様は俺を引きずって寝室へと向かった。
それにしても、色々と試すといっても、せいぜいピルカヤに上映を頼むくらいしかできないと思うんだけどなあ。
◇
「というわけで、ピルカヤさん協力してください!」
「え~……。まあ、あまり圧かけてこないなら……」
時任さんが、ピルカヤさんに協力を仰ぐと、ピルカヤさんは警戒しながらも承諾してくれた。
なんか、最近時任さんが馴染んでいるというか、なんというか、図々しい……。いや、これは悪口だし違うか。
とにかく、同じ転生者でありながら、すっかりと魔王軍の一員になっているところは見習うべきだろう。
さすがは、僕たちよりも先に魔王軍についた転生者だなあ。
「魔王軍の様子をこれに映せばいいと思います!」
そんな彼女の案を聞いてみると、よくわからないことを言い出した。
それって、ピルカヤさんが普段やっている監視を、ここで行うっていうことかな?
「え~……。だからさあ、ボク一人で監視は足りるってば。そりゃあ、入り口だけは四天王のみんなに見てもらって、あの指輪対策はしているけど」
「いえ! 監視じゃなくて、なんでしょうか。テレビ番組的なものを」
「テレビ? 何それ?」
……なんとなく、わかってきたかもしれない。
つまり、どこかの部屋をスタジオみたいにして、テレビ番組みたいなことをやる。
その部屋の様子をピルカヤさんが監視しつつ、この映画館に投影してしまえば、大画面のテレビ番組になるってことかな。
そんなことを考えていると、時任さんは僕の予想と同じことを説明しだした。
「というわけで、例えばマギレマさんが料理をするところを流して、みんなが自炊できるようにするとか」
「え~……でも、何か食べたいなら、あたしがいつでも作るよ?」
「テクニティスさんとカールさんで、なにか工作するところを流して、みんなも自分で物づくりをするとか」
「自分も、頼まれたら作るっすよ?」
「……俺は、そんな変に目立つことはしたくないな」
「ラプティキさんのお裁縫教室みたいなのを流して、服作りとか!」
「優先度はこちらで決めるけれど、頼んでくれたら何でも作るわよ?」
「ううっ! リグマさんのお風呂シーンを流すとか!」
「だから、それどこに需要あんのさ……」
そうだよねえ。魔王軍ってそれぞれのスペシャリストがいて、頼めばだいたいやってくれるんだよねえ。
それに薄々気付いたからか、もう案がなかったからか、時任さんは最後はもう本当に謎の提案をしてきた。
リグマさんの温泉番組……。まあ、温泉のすばらしさなら、入浴して確かめたほうが早いよね。
「江梨子ちゃ~ん……。お笑い番組とかできない?」
「無茶言わないでよ……」
時任さんは、ついにそんな無茶ぶりまでするようになった。
う~ん……。まあ、素人にそんな企画は無理だよねえ。
着眼点は面白そうだったけど、やっぱり映像結晶というものを手に入れるのが良いんだろうね。
みんなそう思っているのか、なんとなくこの場も解散になりかけたときに、プネヴマさんがおずおずと手を上げた。
珍しい。この人、かなり引っ込み思案で、こんな場で意見を出すことなんてほとんどないのに。
「あ、の……。ピルカヤ様……。それなら、私も……映してほしいのものが……」
◇
『……』
「ぐわぁぁああっ……!!」
「プネヴマが起きたら、ピルカヤとプネヴマは説教だ」
「なんでボクまで!?」
なんか、討伐された魔物の断末魔みたいな声が……。
仲良く二人で寝ている魔王様とレイさんを見て、プネヴマさんがやられてしまった。
それにしても、魔王軍のトップ二人を盗撮なんかしていいんだろうか……。
だめだよね。ダスカロス先生も、プネヴマさんが蘇生したらお説教って言っていたし、たぶんこれっきりだろうな。
ある意味では貴重な光景だけど、今日は本当に一緒に寝ているだけみたいでよかったのかもしれない。
……タイミング次第では、とんでもない映像がこの大画面に。いや、やめておこう。
あれ? レイさん寝てないな。何かぶつぶつと言っている……?
『落石で海の中に沈めて溺れさせる……。いや、マグマの中。いっそ、火山弾みたいなの作れないかな……』
「やめろぉ!!」
アナンタさんが叫ぶも、当然レイさんにその声は届いていなかった。
……うん。やっぱり、この人たちを怒らせたら駄目だよね。
親しき中にも礼儀あり。その言葉を深く胸に刻み込んでおかないと……。