【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ということで正座させている」
「……それは、ダスカロスの判断が正しい」
「なんで~!」
さすがに今回はピルカヤの味方はできないぞ。
おのれ四天王。さすがの能力だな。敵に回るとこんなに恐ろしい存在だったとは。
まさか、俺とフィオナ様が一緒に寝ているところを、大画面で映し出すなんて。
「まあ、見られて困るものではありませんけど、一応プライバシーって大事ですよ?」
対するフィオナ様は、あまり気にしていない様子だ。
まあ、やましいこともないし、単に俺という寝具で寝ていただけなのだから、それもそうではあるな。
大らかというか、この魔王様が怒ることってあるんだろうか……?
「個人の領域を侵してはいけない。学びなさいピルカヤ」
「う~……わかったよ~」
「プネヴマも、興奮したときのその爆発力は良い方向に使うように」
「す……すみません、でした……」
俺たちの先生は、今日も魔王軍を正しい方向へと導いてくれるようで、実に頼りになる。
そんなダスカロスから、本題とばかりに今後について切り出された。
「それで、テイランへの接触だったが、ロペスに一任するということで良かったか?」
「そうだな。それで問題ないと思う。ロペスだし」
「ええ、それで大丈夫でしょう。ロペスですし」
「……お、おう! 任せてくれ。お二人とも」
さすがのロペスも、これまで接していなかった国の者を相手取るためか、若干の緊張が声色に含まれている。
まあ、問題ないよな。ロペスだから。
「……魔王様もレイも、あまり期待しすぎてプレッシャーをかけるのはやめてあげなさい」
「いや、期待に応えてみせるぜ。ダスカロスの旦那!」
「君も大概、自分を追い込んで働くタイプだな……」
そこだけは、ちょっと心配だよなあ。
クララをお目付け役として……いや、あっちはあっちで社畜根性のステータス高そうだった。
互いに反面教師みたいになって、うまいこと気楽に働いてくれないだろうか。
「それじゃあ、今日もカジノで客たちの絶望する顔を楽しんでくるぜ!」
「クララも、ロペスが無理しないよう見てやってくれ」
「ええ。お任せください」
まあ、客から金を巻き上げるのを楽しんでいそうだし、俺と同じく、趣味と仕事が両立しているのかもしれないな。
うちの従業員たちもそうだが、ハーフリングという種族はどうやら金勘定がとても好きらしい。
獣人は戦い、ドワーフは鍛冶と酒とわかりやすいが、海人族とか人間ってわかりにくいなあ。
人間ももっとわかりやすければ、テイランとの交渉もすんなりいきそうなんだけど……。
「……」
「どうしました? フィオナ様」
「いえ、賭け事に身を投じて破滅して絶望する顔と聞いて、なんだか他人事ではないと思いまして……」
「自覚あったんですね。であれば、今後は改善できるんじゃないですか?」
「そうですね! 今後は、より強い心で臨むとしましょう!」
あ、駄目だこれ。改善どころか改悪になる可能性すら出てきている。
まあ、フィオナ様の場合は、賭けているものが日々回復する自らの魔力だから、そこまで無理に止める必要もないけどな。
泣きつくんだろうなあ……。そのときは、また俺がなぐさめればそれでいいか。
「先になぐさめておきます?」
「な、なにをぅ!? ……ですが、慰めることを許可します! さあ、どうぞ!」
冗談で言ったら、本当に慰めることになった。
ひとまず、頭でもなでておこう……。
「ぐふっ……!」
「こら、プネヴマ! 反省中に気絶するやつがあるか!」
「た、耐えろ……と!?」
「当たり前だ。まったく……」
なんか、向こうが愉快なことになっているが、ダスカロスがなんとかしてくれるだろう。
◇
「それじゃあ、今日もカジノを楽しんでもらいつつ、苦しんでもらうとするか」
「君ねえ。それ、客前で言うんじゃないよ?」
「当たり前だろ。俺だって、そのくらいの分別はついているさ」
「実際そのとおりだから、まあいいが……」
転生者といえど、彼もまたハーフリングなんだと改めて実感する。
君たちの種族は、本当に儲けること自体が目的になっているね。
私たちでいう、魔力への探求みたいなものだと思えば、それも納得はできるが。
それにしても、相変わらず転生者というものは、性質にあった種族に転生するものだ。
あの女神、楽するために仕組みを自動化したことだけは、大したものだと感心してしまう。
オクイちゃんも、ピルカヤ様を圧倒するほどの海への執着があるが、それらや魚好きが高じて猫獣人へと転生したんだろうね。
だからこそ、人間の転生者が多いのも頷けるというもの。
転生者は弱小種族への救済だなんて言われているが、実際はあの女神が楽しているだけなんじゃないかと私は疑っている。
神は救いのためになど動かない。どこまでも、この世界を安定して自動化して運営しているというだけだ。
それを妨げるものには実力を示すというだけで、基本的には干渉する気もないのだろう。
だとすれば、迫害対象とされた私たちは、まだ世界の運営が安定する以前の実験的な措置で迫害されたというだけなのだろうね。
……もはや、怒る気にもなれない。神は神であり、どこまでも私たちとは違う視点なのだろうさ。
「大丈夫かい? 女王様。体調が悪かったら、ちゃんと休まないとテラペイア先生に叱られるぜ?」
「いや、少し思考に没頭していただけさ。ご心配感謝するよ」
神を刺激しない。それでいいじゃないか。
それだけで、この平和な生活が担保されていると思えば、あのいい加減な神の思考もむしろありがたい。
「久しぶりだな! 俺が来たぞ!」
「久しぶりってほどじゃねえだろ。王様……。また、うちに金を寄付してくれるのかい?」
「ほう、言うではないか。だが見ていろ。今日の俺は、アタリを引ける俺だ!」
「そんじゃあ、まあ。応援くらいはしておくぜ」
開店と同時に来たね。この王様。
他の賭け事には興味も見せず、一直線に宝箱を開けにきた。
いつも自信だけはあるのだが、今日は果たして……。
「ふむ。気合は十分だったのだが、だとすればあとは欲する心が不足していたか?」
「前向きだよなあ。まあ、いつか当たることを祈っておくぜ」
「王だからな! 下を向くつもりはない! 後ろを向くのも、同じ失敗を繰り返さないためだけで十分だ!」
「俺はあんたのそういう前向きなところ、けっこう好きだぜ」
「ほう、ならばうちに勧誘される気になったか?」
「それとこれとは話が別」
「であろうな!」
同じ王として、私もこの王様には見習うべきところがある。
それにしても、行動やら考えが我らが魔王様とやや似ているな。
……う~む。やはり、正しい王とはこうあるべきか。
「終わったなら、順番をゆずってもらえるかしら?」
「おっとすまん。……む、お前たち、テイランの者か」
王様に物怖じすることもなく、特徴的な衣装の女性がやはり宝箱に挑戦する。
リズワン王の言うとおり、彼女はここ最近カジノに通っているテイランの住人に違いない。
ロペスのほうを見ると、彼はすでに宝箱の準備をしていた。
「あんたも、最近うちをよく利用してくれているな」
「ええ。この催しものは面白いわ」
「そう言ってもらえるとありがたい。ただ、俺としてはカジノだけで満足する気はねえんだ」
「……どういうことかしら?」
「うちは商店や宿だけでなく、カジノに温泉、最近では海まで作ってみせた」
「ええ、これだけの様々な施設を準備できるのは、大したものね」
「その次を考えていてな。そのために、あんたに協力してもらいたいんだ」
すらすらと、流れるように目的を伝えていく。
そうやって、警戒もさせずに懐に潜り込んでいくのは、大したものだね。
「……うちの技術は、安くないわよ?」
「技術の流入というよりは、あんたたちが取り扱ってる品が欲しい」
「……たしかに、服や簡単な魔法器具や薬程度なら、国外と取引しているわね。何を求めているの?」
「映像結晶だ。俺たちは、それを使って新たな娯楽施設を作る!」
大げさな身振り手振りで、うさんくさいほどに芝居がかっているねえ。
だけど、その姿は新たな金儲けを企んでいるハーフリングらしくて、相手の警戒を解く一助となっている。
「映像結晶? また、変わったものを欲しがるのね。別に、それなら国外に出しても問題ないけど……。ああ、つまり私に商人の真似事をしてほしいってことね」
「頼めないかい? うちの施設の何日かの無料利用とかを報酬としてもいいんだが」
「……」
「宿や食事や温泉が、数日無料で利用できるぜ?」
「いらない」
自信があった様子のロペスだったが、きっぱりと断られたのが予想外だったらしい。
こちらが求めるものは、別に国の機密でもなんでもないし、与えるものはそれなりに満足いくものだとふんでいたのだが……。
もしかして、疑われている?
「代わりに、宝箱を何回か優先的に無料で利用できないかしら?」
……あ、この子も王様たちと同じだ。
宝箱に魅入られてしまい、脳を焼かれた者だ。
ロペスは、何かを言おうとして必死に我慢していた。
きっと、そんなものでいいのかという言葉が、のどの入り口くらいまで出かかっていたんだろうね。
「そ、それじゃあ。映像結晶の代金とすり合わせて、ちょっと交渉といこうじゃないか」
「ええ。ただその前に、一回宝箱開けてもいいかしら」
……なんだか、この交渉はすんなりと成功しそうだ。
私だけでなく、ロペスも、それに下手したらそばで話を聞いていた王様すら、そう考えているだろうねえ……。