【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「久しぶりね~。二人とも」
「テンユウ……」
「ちっ……」
アルマセグシアに呼び出されたイドは、不機嫌そうに舌打ちをするだけだった。
無理もない。どうやらオレと同じ理由で死んだらしく、であれば蘇生したばかりということになるだろうからな。
それでもこうして足を運んでいるあたり、彼は彼で事の経緯をオレに共有する意思はあるようだ。
「なんで、てめえまでいるんだよ」
「やあねえ。オルナスに話を聞きに来ただけじゃない」
その言葉を聞いて、イドがオレをねめつけるが、別にオレが呼んだわけではないので勘弁してほしい……。
オレだって、蘇生したばかりなのだから、状況をよく理解できていないのだ。
「テンユウが、わざわざオレに……。なんの話だ?」
「欲望のダンジョン」
「っ……」
きっとオレは、苦虫を噛み潰したような顔をしてしまっただろう。
そんな様子を見て、テンユウは苦笑いをした。
「その様子だと、あんたたち二人、本当にあそこで散々な目にあったらしいわね」
「うるせえ」
苦手意識が若干芽生えてしまったのか、心なしかイドの悪態も、いつもより弱いものに感じた。
ならばオレは、もっとあの場所に苦手意識を持っている……。
一度目はスライムに襲われ仲間を失い、二度目は大規模な毒攻撃によって、オレ以外は全滅した。
……やはり、毒を扱うスライムが急激に増えているということか?
だが、あの蒸気を噴出する相手は誰だ? 俺の攻撃すら弾く硬度を持ちながらも、大量の蒸気を出すスライムなど心当たりがない。
「それで? どうやって死んだの? あんたたち」
「……」
「まあ、イドは答えないでしょうね。いいわよ。あんたのことだから、自分を殺した相手は自分で」
「転生者だ」
「あら?」
意外だ。イドという男は、とかく強さに固執する。
であれば、自分を倒した相手のことなど話さず、必ず自身が強くなって報復するはずなのに。
あっさりと教えてくれたということもあって、テンユウも目を見開いていた。
「どうせ、オルナスに情報を共有する気できたんだ。終わったら帰る」
「そ、そう? 立派になったわね。勇者としての自覚でも出てきたのかしら?」
「気持ちわりいこと言ってんじゃねえ。ただ、あの寄生虫野郎がてめえらに憑りついても面倒だ。だから教える」
寄生虫……? 虫系統のモンスターでも見つけたということか?
「ダンジョンの奥まで行ったら、オルナスに背中から刺された」
「待ってくれ!? オレは、そんなことした覚えないぞ!」
「だから寄生虫って言ってんだろ。黙って聞け」
「あ、ああ……」
イドが不機嫌そうに答えるが、それはあくまでもオレが話を遮ったことによるものらしい。
オレに刺されたということ自体への怒りはないみたいだな……。
「あのときのオルナスは、中身が別だった」
「中身だけ? 見た目もオルナスに化けていたとかじゃなくて?」
「転生者がオルナス並に強いならわからねえが、少なくともオルナスと同等だ」
「なるほどねえ……。可能性としては五分ってところかしら。オルナス、あんたも欲望のダンジョンの奥まで行ったのよね?」
「あ、ああ……。そこで広間を満たすほどの蒸気が発生して、その大本に攻撃したはいいが攻撃を弾かれて……そのまま、気付いたら」
「死んでいたってわけね……」
何がいるんだ……?
オレの姿をして、オレと同等の力でイドを襲った何か?
「じゃあ、オルナスが寄生されたんだろ。あの蛇野郎に」
悩むオレたちを気にするそぶりもなく、イドは淡々と確定した事実のようにそう言った。
蛇……? 寄生虫といっていたから、虫の話かと思っていたが、何か心当たりでもあるのか?
「オレに、力を取り戻すための雑魚が集まる場所を教え、姿を隠す指輪を渡した蛇野郎だ」
……もしかして、オレたちがあのダンジョンに行く原因となったあの蛇獣人か?
「そいつに、欲望のダンジョンには力試しに最適な相手がいると言われた。行ってみたら、そのままオルナスに刺されて死んだ」
あいつは転生者だった。であれば、女神の加護を与えられているはずだ。
その力をもって勇者であるオレの肉体を奪って、そのままイドも殺そうとした?
これまでも、オレたちに協力せずに、むしろ疎ましく思っていそうな転生者はいたが、ここまで明確に敵対するとは……。
待てよ!? 蛇……?
「な、なあイド! そいつ、毒とか使うのか!?」
「あ? 知らねえよ」
「毒ねえ……。もしかして、オルナスは何か心当たりがあるのかしら?」
「……オレたちがダンジョンの途中まで進んだとき、広範囲に猛毒が発生して、オレ以外が死んだ」
「……そう。ごめんなさい。嫌なことを思い出させてしまって」
嫌なことというよりは、反省すべきことだな。
忘れるわけにはいかないことであり、その毒の発生源を放っておくわけにもいかない。
……だが、オレはてっきりダンジョンに巣食うモンスターどものしわざかと思っていたのだが、もしかしてそうとは限らないんじゃないだろうか。
「……そういえば、俺がお前に刺される前に」
「オレじゃないって言ってるだろ……」
こいつ、本当に根に持っているわけじゃないだろうな?
もしそうであるならば、オレを殺すなら、せめてこのタイミングにしてくれよ?
「ダンジョンの入り口のやつら、毒を治療したとか言ってたかもな。それに、ダンジョンを進んでいる途中、毒で死んでるやつらが大量にいた。モンスターも含めてな」
「どうやら、毒の発生源はダンジョンより転生者の可能性が高そうね。ほんと、嫌になるわ」
「それがあの寄生虫野郎のやり方なんだろ。毒で弱らせた相手に憑りついて、そのまま体を乗っ取る。てめえらにまた背中から刺されたら、たまったもんじゃねえ。せいぜい気を付けることだな」
言いたいことは言い終えたのか、イドはその言葉を最後にさっさと帰ってしまった。
本当なら、わざわざこんなこと言いに来るようなやつではない。
だけど、さすがに一応勇者仲間であるオレたちには教えてくれたのだろう。
というより、言葉通りだろうな。敵に利用されて背中から刺すような真似をするなという警告だ。
あいつ、次に同じことがあったとしたら、容赦なくオレの体殺すんだろうな……。
いや、下手したらオレが今回死んだのも、案外あいつが返り討ちにしたからかもしれない。
「とにかく……転生者って厄介だな」
思えば、アルマセグシアに勝手にダンジョンを作って、現地の住人を殺すやつらもいたくらいだしな。
魔王軍だけでも頭が痛いというのに、なんとも面倒なことをしてくれる……。
「まあ、女神の力を授かっているのは、アタシたち勇者の他には、転生者だけだからね」
「勘弁してくれよ……。イドですら手綱を握れないのに、さらに多数の転生者まで好き勝手するなら、魔王退治どころじゃないぞ」
「でも、力は本物よ。まあ、その力も使いこなせているかはまちまちだけど、今回の毒と肉体奪取の転生者は、その点は相当上澄みだったのかもしれないわね」
「そういうやつらと協力をして、魔王を倒せる可能性を高めるべきなんだろうなあ……」
「そういうこと。あんたも、転生者探して育てるくらいしてみたら? うちは、そうしているわよ」
状況は理解できたのか、テンユウもそう言い残すと去っていった。
転生者ねえ……。育成云々は置いといて、あれだけの力を発揮できるのなら、協力を取り付けるのはありかもしれないな。
とにかく、今後人類に敵対するような転生者は少しでも減ってもらいたいものだ。
◇
「はい。ということで、ダンジョンの侵入者をほどよく撃退できる案を聞こうと思う」
「意外だな……。ボスって、そういうの自分だけで考えたいものかと」
「他のみんなの意見、特に魔王軍以外の意見も聞けって、アナンタに怒られた」
「あ~……納得した。ええと、今のままでいいんじゃねえか?」
「ロペス失格」
「失格!?」
「はいは~い! 私、ホラー映画を見ていたら、本物の幽霊が出るダンジョンが良いと思いま~す」
「う~ん……。良い案なんだけど、肝心のホラー映画が入手できないんだよなあ」
「というか、トキトウまだ映画のこと諦めてなかったのか……」
「私は……カニとエビがかわいいから、もっと活躍させてあげたいです」
「海を増やすか? ……いや、でも、海人族も有利になるのが難しいところか」
「オクイ。お前、海関連になると歯止めがきかなくなるよな」
「そ、そうかしら……」
「あの、タイラーさんたちや僕らでテストプレイをするのはどうでしょう?」
「やめとけ! 死ぬぞ!?」
「死なないように加減するのに……」