【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「そういえば、
「おっ! レイさん、気になります!? そうしたら、私と
なんか、やけに乗り気で時任が俺を自室へと招こうとする。
と思ったら、ふと右腕に覚えのあるやわらかい感触が……。
「では、行きましょうか」
「あれ? フィオナ様も興味あるんですか?」
「……あります」
その間は、何だったんだろうか。
ともあれ、俺の右腕に抱きつきながら、フィオナ様も時任のコレクションとやらを見に行くことにしたようだ。
「あ、あの、魔王様……。
「……何がですか?」
何がだろう。
◇
「へえ、きれいに並んでいるな。さすが商店の店長」
「片付けるだけでなく、見栄えも気にするようになりました!」
胸を張る彼女が言う通り、非常におしゃれな部屋という印象を受ける。
当然、ごちゃごちゃしていることもなく、かといって物があるでないわけでもなく、ちょっと高級感のあるお店にいるようだな。
「これが、音楽結晶ってやつか」
並べられているのは、文字通り魔法の結晶だった。
映像結晶よりも小ぶりで、見た目だけでは宝石のようにも見える。
「でも、魔法の結晶なんて使えるのか? ダークエルフたちや
「それが、案外便利にできていまして、わずかな魔力で誰でも簡単に再生できるみたいなんですよ」
そう言いながら、時任が結晶に触れると、結晶に込められていた音楽が流れ始めた。
本当に簡単だな。前世の音楽プレイヤーを扱うように、指先一つの操作でこうも容易く行えるとは。
ということは、テクニティスが映像結晶を操作してくれていたのは、スクリーンに映すのが素人には難しかったからだろうな。
「ふむ……良いですね。お茶を飲むときや、読書をするときに流したいです」
「ですよね~! さすが魔王様! なんか、高貴な雰囲気になりそうです!」
「ふふん!」
時任の言葉に気を良くしたのか、フィオナ様はドヤ顔で胸を張った。
まあ、読書の方はそうだけど、お茶の時間は時任が想像しているような優雅なものじゃないぞ。
なんかドタバタしつつも、最終的には楽しいから良かったと思うようなお茶会だ。
「あの、ピルカヤさんを通じて知らせてくれれば、いつでもお貸しいたしますが」
「ええ、ありがとうございます。そのときは、よろしくお願いしますね」
奥居の提案を、フィオナ様は前向きに検討していそうだ。
これだけの数があれば、きっとそれぞれの場面にあった音楽も見つけられそうだし、今後が少し楽しみだな……。
◇
「二人とも、中々のコレクションでしたねえ」
フィオナ様は、満足そうに頷きながらそう言った。
「二人がよく外出しているのは知っていましたけど、あんなに買い物するほどだったんですね」
古参ともいえる二人だからな。
気付けば、それだけの付き合いにもなっていたわけだ。
「しかし、そうなってくると他の者たちのコレクションも気になるところです」
「
「あるいは、魔王軍の古参の者たちですね。ちょっと、抜き打ちで訪問してみますか」
「迷惑じゃないですかねえ?」
「大丈夫です! オタクはコレクションを自慢したがるものなので!」
また変な知識を仕入れたな?
だけど、わりと納得できてしまう言葉でもある。
オタク云々は置いといて、そこまでの熱意がなくてもコレクションって人に見せたいだろうし。
◇
「特にないな……」
「だからいつも言っているだろう。君、物欲持ったほうがいいよ?」
「そういう女王様はどうなんだよ?」
「……前は、魔石を集めていた」
なるほど、魔石。
魔力の研究とかしていたらしいクララだし、わりとイメージに合っていると言えるだろう。
だけど、うかない表情なのが少し気になるな。
「前? 今はどうなんだい?」
「集めても、他の種族に、主にあのエルフどもに奪われるからねえ! あいつらのために集めるくらいなら、要らないさ!」
「……なんかすまねえ」
……エルフ。もはや強盗なのでは?
いや、きっと例の最高評議会とやらだな。
ロマーナは、そういうことしないだろうし。
……しないよな?
「もしかして、ロマーナにも奪われたりした?」
「いえ……もっと下っ端のエルフでした。私は、あの子と面識はそこまでなかったので」
良かった。今は双方魔王軍なのだから、過去のいざこざのせいでいがみ合ってしまうのはよくないからな。
そもそも、関わりがなかったというのは、不幸中の幸いかもしれない。
「まあ、とにかく。今は奪うやつなんていないから、好きに集めても良いと思うぞ?」
「ええ。コレクション泥棒など、リピアネムに利き手を斬り落とさせましょう」
「ありがとうございます。魔王様、レイ様」
「そんじゃあ、今度の休みにアルマセグシアの市場でも漁ってみるか」
「私は、なかなか厳しい目を持っているよ? 覚悟することだ」
「ついでに、ロペスにも物欲を生やしてやってくれ」
「ええ、任されました」
ハーフリングって金儲けが好きなわりに、稼いだ後のことに興味ないよなあ。
ロペスに限らず、うちで働くハーフリングは、多くがその傾向にあるし。
まあ、クララがなんとかしてくれるだろうし、今後は二人にもコレクションができることだろう。
◇
「おじさん、刹那的に楽しみたいからそういうのないかなあ」
「ボク、世界中を移動できるし、あんまり溜め込む趣味ないよ?」
「私も、必要なもの以外は特に保管するつもりはない」
四天王が思っていた以上にミニマリストだった。
そういえば、三人とも自分の物って全然持ってないっけ。
だが、唯一違うのは我らがプリミラ。
さすがは仕事と趣味の切り分けが、魔王軍一得意な魔族だ。
そんな彼女は、俺たちを自室へと招いてくれた。
「寒っ……」
「水魔法とルトラの協力で、温度は低めにしています」
入った瞬間、思わず寒さで自分の身を抱きしめそうになる。
しかし、その前にフィオナ様が抱きついてきた。
彼女もまた寒かったのかもしれないが、今はその温かさが助かる。
「さ、寒い……。プリミラさ~ん。なんで、こんな寒いの~?」
「野菜に果物に花。様々な種を保管していますので」
「じゃあ、温度上げたら駄目だねえ……」
「配慮いただき、ありがとうございます」
それがわかっていたからこそ、ピルカヤは自らの炎すら弱々しくしているんだろうな。
彼がその気になれば、周囲ごと自身の温度なんて簡単に上げられるだろうし。
それにしても、種か……。
なんともプリミラらしいコレクションだな。いずれ全て育てるつもりだろうし、実用的でもある。
「私も、何か集めるべきか……」
「ドラゴンって、宝とか溜め込んでそうなイメージあるな」
「なるほど! では、ちょっとカジノに……」
「リピアネム。それは破滅の道だからやめておこうね」
「む……。よくわからぬが、レイ殿が言うのであれば、そうなのだろう」
よし、俺は滅びゆくリピアネムの運命を変えたぞ。
もしも彼女が沼にハマったら、下手したらフィオナ様やリズワンのように、賭け事で破滅していただろうからな。
◇
その後も、意外と楽しそうにコレクションを披露してくれる人たちが多かった。
フィオナ様が言ったように、誰かに見せたいという気持ちが大きいのかもしれないな。
特にエピクレシは、アンデッドの触媒やら強化素材やら、ドラゴンゾンビとロマーナが止めるまでは、一日中語っていたかもしれない。
「なかなか見ごたえがありましたねえ」
「そうですね。ところで、フィオナ様は……ああ、魔王ボックスがコレクションみたいなものですよね」
尋ねる前に、自分からその答えにたどり着いた。
しかし、フィオナ様は首を横に降って否定する。
「あれはあれで役立つ便利なものですが、コレクションというのならやはり私はもう一つのほうですね」
「もう一つ……」
「では、最後は魔王のコレクションを見せてあげましょう。特別ですよ? レイだけですよ?」
「まあ、わりとフィオナ様の部屋には、入っていますからね」
「読書とかお茶をしますからねえ。まあ、今日もその流れでレイのお仕事は終了です」
「そんな無理やり止めるほど働いていませんよ。最近は……」
まあ、今日はもう良い時間だし、このままフィオナ様の部屋でまったりしておくとするか。
それでなんとなくわかった。もう一つのコレクションって、きっとあれだな。
「はい。これがいずれ私のコレクションとなる第一歩たちです」
「俺とテクニティスが宝箱から出した本ですね」
「いずれは魔王図書館。期待してますよ?」
「作るだけなら、粘ればダンジョンマスターがなんとかしてくれそうですけど、蔵書は買いあさるか宝箱次第ですかね?」
「ここにきてまた立ちはだかりますか……。宝箱」
あれだけハマっているけれど、まるで宿敵のようでもある。
フィオナ様と宝箱って、なんだか複雑な関係だよなあ……。
「そういえば、本やアイテムだけでなく、ある意味では魔王軍もフィオナ様のコレクションみたいなものですよね」
リズワンとか、エーニルキアの王とか、人材を集めるのが好きな王ってわりといるからな。
そう考えると、魔王軍も俺しかいなかった昔と違って、今はずいぶんと立派なコレクションが増えたものだ。
「四天王とか、転生者とか、なかなか見ごたえがあるコレクションだと思います」
「ええ、そうですね。みんなよく働いてくれますからね」
「一番のお気に入りは、やっぱりプリミラですかね? 最初に蘇生していましたし」
「一番……。ふむ。レイはそう思いますか」
実際、とても有能だからなあ。
わりとなんでもできて頼りになるし、戦闘でも上から数えたほうが早いほど強いし、何よりフィオナ様をちゃんと叱れるし。
「……ちなみに、レイは自分のことを何番目くらいだと思っていますか?」
「俺ですか? え~と……」
四天王がいて、
俺もダンジョン作成でわりと貢献しているし、順位としては転生者組あたりには入ると思いたい。
「十五番目?」
「低いですねえ~」
「低いですよ?」
「なるほど……。それじゃあ、そんなに低い順位のレイは危なっかしいので、これからも私の傍においておきましょう!」
そう言いながら、フィオナ様は俺を背後から抱きしめながら、自室でのんびりとまったりとするのだった。
……こんな時間が過ごせるのなら、順位が低いのもあながち悪くないのかもしれないな。