【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「レイ様~」
なんかリピアネムとの戦いの後に、いつもより元気になったイピレティスが背中にくっついてきた。
まあ、俺くらいになるとフィオナ様との日々で、精神が鍛えられているので動じたりはしないが。
というか、イピレティスには悪いけど、この子小さいな……。どこがとは言わないが小さい。
「僕良いことを思い付きましたよ」
「良いこと?」
「そろそろレイ様が宝箱を引けばいいと思います」
「よくぞ言いました。イピレティス!」
お茶を飲みながら俺とイピレティスのやり取りを眺めていたフィオナ様が、突然立ち上がって大声を出す。
拳を握ったその姿は、とてもやる気に満ち溢れていて何よりなのだが、そのやる気は別の場所で使ってください。
「ガシャ祭りといきますか!」
「いきません」
「え~……」
抱き着いて上目遣いをしたって無駄だからな。
後ろにイピレティス、前にフィオナ様が抱き着いてきて、なんか逃げ場なく挟まれているが、俺には効かないからな。
「で、なんでイピレティスはそんな提案したんだよ……」
「リピアネム様と戦って思いましたけど、まず今のリピアネム様って武器がないじゃないですか」
「まあ、そうだな……」
一応、魔王ボックスに適当な剣はあるけれど、彼女の力量についていけるだけの武器はない。
さすがに四天王最強が満足できるほどの、全力で振るえるほどの、そんな武器は簡単には手に入らないみたいだ。
「それに、リピアネム様は、他の四天王様と違ってパワーアップアイテムもらってないじゃないですか」
「まあ、そうかな……?」
フィオナ様からアイテムを授かったリピアネムだけど、どちらかというとパワーダウンアイテムだもんな。
効果によって、外した後はステータスが上がったけれど、直接パワーアップするようなアイテムではない。
「だから、リピアネム様の武器を、レイ様が引き当てればいいと思いま~す」
「なるほど!」
「なるほどって……また、無茶な期待を」
「魔力を一万注がなければ、可能性は高まるのではないでしょうか?」
可能性といわれてもなあ……。
フィオナ様のくせに、可能性を考えるとはやるじゃないか。
「イピレティス。ちょっと離れてくれます?」
「は~い」
そう言われたイピレティスが俺から離れると、前方からの締め付けが強くなった。
……なんで、抱きしめる力が強くなっているんだよ。この魔族。
「なんか、魔王を馬鹿にした考えが伝わりました」
「いえ、まさかそんな。ちょっとしか馬鹿にしていません」
「生意気な~!」
やめてください。ちょっと苦しいです。
鯖折りになりかけています。あなたが本気でやったら、文字通りポキっと折れます。
だが、さすがにそのように力加減を失敗することもなく、俺はなんとか魔王の抱擁から解放される。
勝ち誇った顔で、ドヤ顔でこちらを見てくるフィオナ様は、思わずいつもやられているように頬をつねりたくなる顔だった。
「まあ、ちょっと試してみますか」
「それでこそ私のレイです」
なんともまあ、楽しそうにしちゃって。
それでこそ魔王様ですよ……。
◇
「それじゃあ、みんなを呼んで」
「いえ、フィオナ様の公開ガシャじゃないので、細々とやればいいじゃないですか」
「つまり、ハズレを引くつもりがない強い意志の表れということですね。頼もしい限りです」
なんでプレッシャーかけてくんの? この魔王様。
そう言われたら、失敗したときの免罪符として、みんなを呼びたくなってくるじゃないか。
「じゃあ、僕はリピアネム様呼んできますね~」
発案者のイピレティスは、そう言い残すとリピアネムを呼びに行ってしまった。
律義というか、ピルカヤに頼めば一瞬なのになあ。
四天王に、おいそれとお願いはできないってことか?
……俺、便利だからいつもピルカヤにお願いしてしまっているんだけど、自重すべきか?
「では、ちゃちゃっと回しちゃいますか」
「あれ? フィオナ様も挑戦するんですか?」
「あなたを一人にはさせません。私もその辛い旅路を共にしましょう」
「その旅、近所の散歩レベルの短い道のりなんですけど」
だというのに、やたらと気合を入れるのはいつものことだし、何も言うまい……。
それじゃあ、適当に魔力を九千ほど注いで、いくつかガシャを回していくとするか。
「宝箱作成」
それを繰り返すこと五回。まあ、こんなもんだろ。
一回だと魔王様がごねそうだし、これくらい回しておけば、さすがに失敗しても追加をお願いすることもないはずだ。
それじゃあ、ダンジョン魔力をそれぞれに込めていくか。
最近では、マギレマさんのレストランだけでなく、彼女の部下たちの各レストラン、そしてロペスのカジノに
そのため、このくらいなら気軽に消費しても許されるはずだ。
自制しないと、無駄に消費しそうで怖いけどな……。
「ええと、まずは……」
本。大量の本だ。
テクニティスがガシャを回した時を思い出す。
「これは、魔王図書館に使ってください」
「ええ、大切にしますね」
いつものポンコツ増し増しの笑顔ではなく、普通に美しい笑顔で反応されてしまった。
本を読んでいるときのフィオナ様って、なんだか儚げで綺麗な魔族って印象なんだよな。
……いや、中身はフィオナ様だ。見惚れている場合ではない。
「次は……あれ? これって、音楽結晶?」
「ふむ……。このサイズと魔力量は、おそらく音楽結晶ですね」
綺麗な水晶のようなアイテムは、ついこの間
そっか、こういうアイテムも宝箱から出てくることがあるのか。
使い方は覚えていたので、なんとなく手に取った結晶を再生してみる。
「あれ……声が入っている」
「へえ、歌が記録されているんですか。面白い音楽結晶ですね~」
時任たちの部屋で聞かせてもらった音楽結晶は、声が入っているものはなかったんだけどな。
まあ、歌を記録するってこともあり得るか……。
「残りは……また本と、あとは音楽結晶。いや、映像結晶かな?」
「この二つの宝箱は映像結晶ですね。なるほど、今回は娯楽メインでしたか」
たしかに、終わってみれば娯楽品だけしか出なかった。
武器を望んでいたのに、ある意味では正反対の結果となったってわけだ。
これはもう、リピアネムは剣を手放して、戦いと縁のない生活を送れというお告げなのでは……?
「まあ、そういうわけにはいかないか」
浮かんできた変な考えを自分自身で否定しつつ、試しに映像結晶を再生してみる。
スクリーンにつないでいるわけではないため、俺の魔力をわずかに消費してから結晶は空中に映像を投影した。
人がいる。獣人たちもいる。なんだか、芝居がかった口調というか……。
「あれ、これって……」
フィオナ様も心当たりがあるように、思わず声をあげた。
当然だろう。俺もこれは良く知っている。
というか、このセリフや展開は、フィオナ様の部屋で読んでいる本と寸分たがわないものだ。
「物語が実写化されている……?」
他の映像結晶も試してみる。
すると、中には実在するような人物たちではなく、かわいらしいイラストが動く物語まで混ざっていた。
もしかして、これって映画なんじゃないか?
「とりあえず……。あとでみんなに見せてみますか」
「上映会ですね。では、マギレマに大量の軽食と飲み物を準備してもらいましょう」
ポップコーンとかホットドッグが出てきそうだな。
だが、それは後回しにするとして、リピアネムの武器ガシャだ。
俺にはもう無理だったので、あとはフィオナ様のガシャに頼るしかない。
「では、フィオナ様お願いします。俺の仇をとってください」
「ふっふっふ……普段とは逆ですね。いいでしょう。魔王の力をあなたたちに見せてあげましょう」
「期待してま~す」
戦うときと違って、ぜんっぜん期待していないイピレティスの声にも気づかない。
それほどまでに、フィオナ様は真剣に宝箱ガシャに挑んでいた。
「さあ開けてください!」
「はいはい」
毎回、手ごたえがあったような顔するのは、なんなんだろう。
そして中身を見て落胆するまでがセットになっている。
だが、今回の魔王様は一味違うようだ。
「……なんか、剣が出てきましたね」
剣というか太刀だな。そういえば、リピアネムが使っているのも太刀か。
俺そのあたりの分類いい加減だからなあ。
「天嵐覇刃ですね。なるほど……これ以上にない成果といえますね」
「もしかして、リピアネムに合った武器でしたか?」
「ええ、だって元々は彼女の武器ですから。当然手に馴染むでしょう」
ん……?
元々はリピアネムの武器。だけど、今までは紛失していたってことか?
「もしかして、前の戦いで折れたんですか? この武器って」
「そうですねえ。折れて消滅して、それ以来彼女は別の剣で戦っていました」
つまり、手に馴染んでいない武器で今まで戦っていたと。
……あいつ、まだ強くなる余地があるってこと?
「すごいですね。リピアネム……」
「ええ、彼女は四天王最強ですからね」
でも、どっちにしろ第二形態になったら、剣は使わないみたいだし、あくまでも第一形態での強さが上昇しただけか。
まあ、それでも十分な戦力増強といえるだろうな。
さっそく、この剣をリピアネムに渡してあげないと。
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天嵐覇刃
嵐の力を封印した覇道の太刀。
振るう者の手に風の加護を宿し、時にその身を守る障壁に、時に天をも駆ける力を与える。
破損あるいは紛失した場合、封じられた嵐の力は持ち主へと宿り、一時的に更なる風の加護を身に纏わせる。
天をも揺るがす嵐の結晶は、精霊のごとく意思を持つ。
ふさわしい担い手へは力を貸し、力を制しきれぬ担い手には風の刃をもって答えるだろう。