【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

316 / 316
第316話 倒れた少女に誰も手を差し伸べない

「な、なんということだ……。これは、私がついに最強の四天王になってしまうのでは?」

 

「心配しなくとも、お前さんはとっくの昔に最強の四天王だよ」

 

 喜びに打ち震えながら、リピアネムが発した言葉をリグマが肯定する。

 まあ、ステータスの高さと、第二形態の更なる戦闘能力の向上は、他の四天王たちには真似できないからな。

 

「よし! アナンタ出番だぞ!」

 

「やだよ馬鹿!」

 

 試し切りを頼むほうも断るほうも、恐ろしい速度だったな。

 

奥居(おくい)に預けてあるカニでも斬っておくか? 頑丈だし」

 

「ワ、ワタリを……? あ、あのレイさん……」

 

「うん、なんかごめん。他のエビかカニ……も駄目そうだし、食人花でも斬るか?」

 

 奥居の無言の抗議を受けて、俺は代案を出すことにした。

 というか、ワタリって名付けたんだ。ずいぶんと可愛がられているなあ。

 

「食人花たちか……。硬さよりは生命力が問題だな。レイ殿、フロア丸ごとを破壊するほど切り刻んでも問題ないだろうか?」

 

「いいわけないだろ。何言ってんだお前」

 

「あ、あのときは良いって言ったのに!」

 

「緊急事態と一緒にしないでくれ……」

 

 多分、ヨハンとの戦いのときのことだな。

 有事の際と武器を試すときを一緒にしてはいけない。

 というか、試すだけにしてくれ。何を本気で食人花たちを皆殺しにしようとしているんだ。

 ……あいつら、わりと乗り気で受け入れてくれそうだな。

 

「あ、それなら僕で試し切りを!」

 

「いや、イピレティスは、モンスターたちのように容易に蘇生できないからな……。本気で試すわけにもいくまい」

 

「不死鳥の羽を一つお譲りいただければ!」

 

 こいつはこいつで、なんで食い下がろうとしているんだ。

 魔王軍、やばいやつばっかだな……。

 

    ◇

 

 結局、その後うちのモンスターたちが立候補したため、強くて硬いガーゴイルたちに任せることにした。

 だが、その石の体は豆腐のように切り裂かれ、全員の再作成をもって、リピアネムの試し切りは終了する。

 石でできた表情に変化はないが、どこか一仕事終えたような充足感をかもし出すガーゴイルたちにお礼を言って、撫でておいた。

 

「さすがに、四天王を相手できるモンスターなんていないからなあ」

 

 上位モンスターたちを作成できるようになったものの、十魔将(とうましょう)より上の相手はできないからなあ。

 そろそろ、上位のさらにその先を目指すときがきたのかもしれないが、それもまた今後の課題かな。

 

「さて、次は映像結晶だな」

 

「待ってました!」

 

 時任(ときとう)が全身を使って喜びを表現する。

 この子、なんか日々言動が幼くなってないか? ウサギ獣人として、精神が引っ張られたりしていないだろうな……。

 いや、獣人ではないけど、うちの他のウサギは幼くないし、きっとこれが彼女の本質なんだろうな。

 

「待った待った~! レイくん。頼まれてたもの作ってきたよ~」

 

「うわあ!!」

 

 タイミングよくマギレマさんが、事前に頼んでいた軽食を持ってきてくれた。

 それを見て、時任はやはりぴょんぴょんと跳ねている。

 うん。やっぱり、単に時任がそういう性格というだけだな。

 

「ポップコーン! フライドポテト! ホットドッグ! マギレマさん。大好き!」

 

「あはは~。今日はいつも以上に元気だねえ」

 

 すっごい喜んでいるな。どうしよう、大丈夫かな。

 もしもこれで、時任が望んでいるような、映画ではない何かだったら……。

 まあ、時任だし大丈夫か。彼女は感情の起伏も激しいが、切り替えも早いから。

 

「では、座席に移りましょうか。レイ」

 

 ちゃっかりと、ポップコーンと飲み物を受け取って、フィオナ様が俺を呼びかけた。

 トレーの上には飲み物が二つあるし、俺の分までマギレマさんから受け取ってくれたらしいな。

 

「……え~と。う~ん……」

 

 ……? なんか、ちょっとだけ困っているな。

 ああ、両手がふさがっているから、いつもみたいに腕に抱きつけないのか。

 

「俺が持ちますよ」

 

「ありがとうございます。では、いきましょう!」

 

 こうすれば、フィオナ様の両手が空くし問題ないな。

 さて、人だかりができて邪魔になっているし、さっさと座席に移動してしまおう。

 トレーを持つ俺の邪魔にならない程度に、しっかりと腕に抱き着きながら、フィオナ様は満足そうに微笑んだ。

 

    ◇

 

「やはり、良い物語ですね。映像がつくと、また違った見え方がして面白いです」

 

「あのお姫様、フィオナ様みたいでしたね」

 

「ほほう? つまり、レイは私をかわいくきれいな存在だと思っていると?」

 

「ええ。フィオナ様は、かわいくてきれいだと思いますよ」

 

「……そ、そうですか! まあ、私は王であって姫ではありませんけどね!」

 

 自分で言って照れるくらいなら、やめておけばいいのに。

 手をパタパタと仰ぎ、火照った顔に風を送っているが、なかなか面白いな。

 魔法で冷やすとかじゃなくて、とっさにそんな行動をとってしまうのは、こちらの世界でも同じなのか。

 

「でも、本当にアニメーション映画だったみたいで良かったです。これなら、新しい集客用の設備が作れそうですし」

 

「映像結晶、いっぱい出していましたからねえ。残りの内容も確認が必要ですが、物珍しい施設として人類は来てくれるかもしれません」

 

 となると、俺が読みかけのあの物語も確認が必要か……。

 

「フィオナ様。この後、フィオナ様の部屋に行ってもいいですか?」

 

「かまいませんよ? レイならわざわざ断る必要もありませんし」

 

 いや、自分で言っておいてなんだが、そこはあまり無防備にしないほうがいいです。

 魔王としても、個人としても、なんでもかんでも開けっぴろげにするのはどうかと。

 

「読みかけの本を読み終えておきたいので、お願いします」

 

「レイもすっかり読書にハマってくれましたか。いいことです」

 

 さっきフィオナ様も言っていたが、映画は映画でいいものだ。

 だけど、本には本の良さがあるからな。

 

「ついでに、その勢いで宝箱ガシャにもハマってくれれば……」

 

「定期的に俺を悪の道に引き込もうとするのやめてくれます?」

 

「魔王ですから」

 

 そうだった。人畜無害なかわいいだけの生き物のふりして、とんでもない存在だな。

 そんな馬鹿な話をしつつ、俺たちはフィオナ様の部屋へと向かうことにした。

 

    ◇

 

「理解が追いつかない……」

 

「リピアネム様を冷たくあしらったり、魔王様と仲睦まじかったりと、すごいお方だな……」

 

「そのうち慣れると思うぜ。プシシモの姐御にファギトの旦那」

 

 そう言いながら、気安くも何かを悟ったハーフリングの目に、私たちは得体のしれない説得力を感じてしまった。

 種族は違えど理解できる。このハーフリング、私たちと同じくこの新たな地底魔界の常識に振り回されていた者だな?

 そんな彼が達観できるようになるほど、あのような場面が日常的に繰り広げられていたのだろう。

 

「ファギトでいい」

 

「私も、プシシモでいいわ。なんか、あんたから教わること多そうだし……」

 

 私よりも先に、新生魔王軍の非常識に触れてきたためか、プシシモもこのロペスという男を早々に受け入れることにしたようだ。

 魔族と人類が共に働く新たな職場。どうやら、私たちもそれに一歩近づけたのではないだろうか。

 

 ところで……お二人が去るのを見届けてから、プネヴマ様が倒れたのになぜ誰も慌てていないのだろうか。

 たしかに、あの方は言っては悪いが、虚弱体質という認識は少なからず私たちにもあった。

 だが、慣れた様子で雑に運ぶテラペイア様や、呆れた様子のエピクレシ様、大変だねと言うが実際そこまで興味なさそうな周囲の人類たち。

 一体、私たちがいない間に、魔王軍に何が起こっているというんだ……。

 

「あ~……ファギトの旦那。じゃなかった。ファギト」

 

「どうした? ロペス」

 

「あの光景にも、いずれ慣れると思うぜ」

 

「あれにもか!?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ヤバマーズ ~毒喰らい男爵の人生逆転劇~(作者:裃 左右)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼ 飢え死に寸前、貧乏男爵。毒物を食ってるうちに、新エネルギー発見!?▼ 壊れた『病み堕ちループ令嬢』のため、世界を敵に回す。ヤバい仲間と、最底辺からの人生大逆転っ!▼ 超絶シビア、実力派内政サバイバル!▼~あらすじ~▼ エルフもドワーフも真似できない。人間の武器は――救いようのない『執着』だ。▼ 我がヤバマーズ男爵家は、一言で言って「マジでヤバい」▼ 初代…


総合評価:1788/評価:8.96/連載:179話/更新日時:2026年08月07日(金) 08:12 小説情報

(ガワだけ)胡乱なカードゲームおじさん(作者:十田心也)(オリジナル現代/冒険・バトル)

【バトルワールド】▼それはただのカードゲームに非ず▼それは世界中の人々を熱狂に導き、いまだ醒まさせない▼ある国では1枚のカードを手に入れるため、世界有数の富豪が一文無しになり都市が壊滅した▼またある国では、そのカードゲームが最も強い者が皆を率いるリーダーとなった▼長年争っていた両国が、1回のカードゲームの勝負で終戦に合意したこともある▼カードゲームの枠を超え…


総合評価:3739/評価:8.24/連載:26話/更新日時:2026年08月05日(水) 18:30 小説情報

ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

全51話・約32万字/完結済み▼毎日20:18更新▼『ソル&ヴァルキリー 』。神の代弁者・魂導者(ソル)となり、戦乙女(ヴァルキリー)を空へ育て導くヒロイン育成系学園RPG。▼これは、そんなゲームの世界で、▼「戦乙女という空を飛べて広範囲殲滅魔法を使える存在がいるのに、騎士になる意味はあるのか……?」▼と考えてしまい、魂導者となったやられ役のかませ騎士、ルシ…


総合評価:6268/評価:8.45/完結:52話/更新日時:2026年05月09日(土) 10:18 小説情報

エロゲ転生〜やり込んだ知識でハーレム無双〜(なお特殊性癖)(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

やり込んだエロゲに転生してしまった主人公。▼抜きゲー世界であるが、バトルもあるので、死なない、詰まない様にしながらエロく生きたいと思います。▼なお初っ端から周回用アイテムを回収する模様。▼カクヨムとマルチ投稿▼諸事情により未完▼本当に申し訳ない。▼理由は活動報告にて


総合評価:5114/評価:8.25/未完:130話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:00 小説情報

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4874/評価:8.73/連載:89話/更新日時:2026年07月03日(金) 12:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>