【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「な、なんということだ……。これは、私がついに最強の四天王になってしまうのでは?」
「心配しなくとも、お前さんはとっくの昔に最強の四天王だよ」
喜びに打ち震えながら、リピアネムが発した言葉をリグマが肯定する。
まあ、ステータスの高さと、第二形態の更なる戦闘能力の向上は、他の四天王たちには真似できないからな。
「よし! アナンタ出番だぞ!」
「やだよ馬鹿!」
試し切りを頼むほうも断るほうも、恐ろしい速度だったな。
「
「ワ、ワタリを……? あ、あのレイさん……」
「うん、なんかごめん。他のエビかカニ……も駄目そうだし、食人花でも斬るか?」
奥居の無言の抗議を受けて、俺は代案を出すことにした。
というか、ワタリって名付けたんだ。ずいぶんと可愛がられているなあ。
「食人花たちか……。硬さよりは生命力が問題だな。レイ殿、フロア丸ごとを破壊するほど切り刻んでも問題ないだろうか?」
「いいわけないだろ。何言ってんだお前」
「あ、あのときは良いって言ったのに!」
「緊急事態と一緒にしないでくれ……」
多分、ヨハンとの戦いのときのことだな。
有事の際と武器を試すときを一緒にしてはいけない。
というか、試すだけにしてくれ。何を本気で食人花たちを皆殺しにしようとしているんだ。
……あいつら、わりと乗り気で受け入れてくれそうだな。
「あ、それなら僕で試し切りを!」
「いや、イピレティスは、モンスターたちのように容易に蘇生できないからな……。本気で試すわけにもいくまい」
「不死鳥の羽を一つお譲りいただければ!」
こいつはこいつで、なんで食い下がろうとしているんだ。
魔王軍、やばいやつばっかだな……。
◇
結局、その後うちのモンスターたちが立候補したため、強くて硬いガーゴイルたちに任せることにした。
だが、その石の体は豆腐のように切り裂かれ、全員の再作成をもって、リピアネムの試し切りは終了する。
石でできた表情に変化はないが、どこか一仕事終えたような充足感をかもし出すガーゴイルたちにお礼を言って、撫でておいた。
「さすがに、四天王を相手できるモンスターなんていないからなあ」
上位モンスターたちを作成できるようになったものの、
そろそろ、上位のさらにその先を目指すときがきたのかもしれないが、それもまた今後の課題かな。
「さて、次は映像結晶だな」
「待ってました!」
この子、なんか日々言動が幼くなってないか? ウサギ獣人として、精神が引っ張られたりしていないだろうな……。
いや、獣人ではないけど、うちの他のウサギは幼くないし、きっとこれが彼女の本質なんだろうな。
「待った待った~! レイくん。頼まれてたもの作ってきたよ~」
「うわあ!!」
タイミングよくマギレマさんが、事前に頼んでいた軽食を持ってきてくれた。
それを見て、時任はやはりぴょんぴょんと跳ねている。
うん。やっぱり、単に時任がそういう性格というだけだな。
「ポップコーン! フライドポテト! ホットドッグ! マギレマさん。大好き!」
「あはは~。今日はいつも以上に元気だねえ」
すっごい喜んでいるな。どうしよう、大丈夫かな。
もしもこれで、時任が望んでいるような、映画ではない何かだったら……。
まあ、時任だし大丈夫か。彼女は感情の起伏も激しいが、切り替えも早いから。
「では、座席に移りましょうか。レイ」
ちゃっかりと、ポップコーンと飲み物を受け取って、フィオナ様が俺を呼びかけた。
トレーの上には飲み物が二つあるし、俺の分までマギレマさんから受け取ってくれたらしいな。
「……え~と。う~ん……」
……? なんか、ちょっとだけ困っているな。
ああ、両手がふさがっているから、いつもみたいに腕に抱きつけないのか。
「俺が持ちますよ」
「ありがとうございます。では、いきましょう!」
こうすれば、フィオナ様の両手が空くし問題ないな。
さて、人だかりができて邪魔になっているし、さっさと座席に移動してしまおう。
トレーを持つ俺の邪魔にならない程度に、しっかりと腕に抱き着きながら、フィオナ様は満足そうに微笑んだ。
◇
「やはり、良い物語ですね。映像がつくと、また違った見え方がして面白いです」
「あのお姫様、フィオナ様みたいでしたね」
「ほほう? つまり、レイは私をかわいくきれいな存在だと思っていると?」
「ええ。フィオナ様は、かわいくてきれいだと思いますよ」
「……そ、そうですか! まあ、私は王であって姫ではありませんけどね!」
自分で言って照れるくらいなら、やめておけばいいのに。
手をパタパタと仰ぎ、火照った顔に風を送っているが、なかなか面白いな。
魔法で冷やすとかじゃなくて、とっさにそんな行動をとってしまうのは、こちらの世界でも同じなのか。
「でも、本当にアニメーション映画だったみたいで良かったです。これなら、新しい集客用の設備が作れそうですし」
「映像結晶、いっぱい出していましたからねえ。残りの内容も確認が必要ですが、物珍しい施設として人類は来てくれるかもしれません」
となると、俺が読みかけのあの物語も確認が必要か……。
「フィオナ様。この後、フィオナ様の部屋に行ってもいいですか?」
「かまいませんよ? レイならわざわざ断る必要もありませんし」
いや、自分で言っておいてなんだが、そこはあまり無防備にしないほうがいいです。
魔王としても、個人としても、なんでもかんでも開けっぴろげにするのはどうかと。
「読みかけの本を読み終えておきたいので、お願いします」
「レイもすっかり読書にハマってくれましたか。いいことです」
さっきフィオナ様も言っていたが、映画は映画でいいものだ。
だけど、本には本の良さがあるからな。
「ついでに、その勢いで宝箱ガシャにもハマってくれれば……」
「定期的に俺を悪の道に引き込もうとするのやめてくれます?」
「魔王ですから」
そうだった。人畜無害なかわいいだけの生き物のふりして、とんでもない存在だな。
そんな馬鹿な話をしつつ、俺たちはフィオナ様の部屋へと向かうことにした。
◇
「理解が追いつかない……」
「リピアネム様を冷たくあしらったり、魔王様と仲睦まじかったりと、すごいお方だな……」
「そのうち慣れると思うぜ。プシシモの姐御にファギトの旦那」
そう言いながら、気安くも何かを悟ったハーフリングの目に、私たちは得体のしれない説得力を感じてしまった。
種族は違えど理解できる。このハーフリング、私たちと同じくこの新たな地底魔界の常識に振り回されていた者だな?
そんな彼が達観できるようになるほど、あのような場面が日常的に繰り広げられていたのだろう。
「ファギトでいい」
「私も、プシシモでいいわ。なんか、あんたから教わること多そうだし……」
私よりも先に、新生魔王軍の非常識に触れてきたためか、プシシモもこのロペスという男を早々に受け入れることにしたようだ。
魔族と人類が共に働く新たな職場。どうやら、私たちもそれに一歩近づけたのではないだろうか。
ところで……お二人が去るのを見届けてから、プネヴマ様が倒れたのになぜ誰も慌てていないのだろうか。
たしかに、あの方は言っては悪いが、虚弱体質という認識は少なからず私たちにもあった。
だが、慣れた様子で雑に運ぶテラペイア様や、呆れた様子のエピクレシ様、大変だねと言うが実際そこまで興味なさそうな周囲の人類たち。
一体、私たちがいない間に、魔王軍に何が起こっているというんだ……。
「あ~……ファギトの旦那。じゃなかった。ファギト」
「どうした? ロペス」
「あの光景にも、いずれ慣れると思うぜ」
「あれにもか!?」