【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第320話 強制休養収容施設

「また増えたか」

 

「ああ、感染はどんどん広まっている。そして、やはりというべきか、単なる風邪ではないらしい」

 

 テラペイアの医務室と隣接した部屋のベットは、すでに埋まっている。

 そのため、新たな患者のための病室を作成がてら話を聞いてみるも、どうも雲行きは悪いようだ。

 

「となると、治療も難しいと」

 

「探っている最中だな」

 

「無理してテラペイアまで罹患しないよう、気を付けてくれよ?」

 

「無論だ。さて、部屋の広さは十分だな。君もなるべく近づかないようにしてくれ。君が倒れるのは、非常にまずいからな」

 

 たしかに、今後のことを考えると俺が倒れるのもまずいか。

 この先も部屋の拡張が必要となるのであれば、それは俺にしかできないからな。

 ……だが、メニューを選択するだけだし、一瞬で終わるよな。

 

「倒れたとしても、部屋は作れそうだから大丈夫」

 

「それは大丈夫ではないな」

 

 最悪の場合でも平気というつもりで言ったのだが、なんだかかえって心配されてしまった。

 この目は、ピルカヤやマギレマさんを見る目と同じだ。

 

「とにかく、君は細心の注意を頼むぞ」

 

「はい」

 

 そう言われると、テラペイアに追い返されてしまった。

 しかし、お医者さんが彼しかいないせいで大変だな。

 今までそれでもまったく問題なかったのだが、こういう緊急時には彼の負担が大きい。

 

「なにか力になれないかなあ」

 

 俺たちにできることといえばなんだろう。

 医療関係の知識などないので、彼の仕事を手伝うことは難しい。

 となると、せめて負担のほうを減らしていくべきか。

 

    ◇

 

「ということで、しばらくはフィオナ様を真似るようにしてくれ」

 

「あの、前後のつながりがよくわからなかったんですけど……」

 

「ビッグボスを真似るって、俺たちに強くなれってことかい?」

 

「ボク、けっこう強いよ?」

 

「レイくんは知らないかもしれないけど、あたしもこう見えてそれなりに戦えるよ?」

 

 集めたのは転生者や魔王軍の幹部以上の者たちと、一部の現地従業員たち。

 要するに、フィオナ様の正体を知っているくらいには、信用できる者たちだ。

 しかし、思ったとおりみんな自覚はないな。

 

「テラペイアが忙しいから、その間働きすぎないよう気を付けてくれ。周りの者たちは、気付いたら止めてやってほしい」

 

 何人かに視線が集まる。今度は誰もが自覚できたようで何よりだ。

 クララはロペスを見ているし、世良(せら)(はら)風間(かざま)を見ているからな。

 きっと、うまいことコントロールしてくれると信じている。

 

「なるほど、そういうことでしたか。……あれ? 私を真似るようにっていうのは?」

 

「フィオナ様みたいに、ちゃんと休んでくれって意味です」

 

「そのとおりですね! みんな、ちゃんと休まないと駄目ですよ~?」

 

 フィオナ様レベルで休まれたら、地底魔界が回らなくなるけれど、そのくらい言っておいたほうがいいだろう。

 

「ま、まあ、あたしはお客さんのために、料理しないといけないからね」

 

「マギレマさんは、部下が増えたので負荷を分散できるはずです」

 

「……いや、そこはまあ」

 

「お前たち、頼んだぞ。マギレマさんが無茶しないように見張ってくれ」

 

 そう言いながら、マギレマさんの犬たちの頭をなでていくと、彼女たちが俺の意図を汲んでくれたのがわかった。

 頼もしい返事をしつつも、もっとなでろと催促してくるので、一匹ずつ頭をなでていく。

 ……なんか、犬じゃない頭がまざっているので、一緒になでておくけど、あなた魔王なのにそれでいいんですか。フィオナ様。

 

「あ、あんたたち、あたしよりレイくんの言うこと聞くってどういうこと!?」

 

 これで、マギレマさんが調理を続けようとしても、この子たちが自発的に動いて調理場から立ち去ってくれるはずだ。

 みんな良い子なので、さすがに邪魔をすることはないけれど、不要な労働のときは容赦なく行動してくれることだろう。

 

「エピクレシのほうは、ドラゴンゾンビとノーライフキング……」

 

 だけでは不安だな。

 彼らは、優秀だし良識のあるアンデッドなのだが、創造主であるエピクレシの意向に逆らいきれないことが多いし。

 となると、もう一人頼んでおくとするか。

 

「あと、プネヴマが止めてやってくれ。魂とか取り出してもいいから」

 

「わ、わかりました……!」

 

「わからないでくださいよ!」

 

「で、でも……魂を取り出せば……動けなくなるから……」

 

 同じ十魔将(とうましょう)同士だし、たぶんそう簡単に魂はとれないだろうけど、仕事に夢中の無防備なエピクレシ相手なら、プネヴマに分があるんだろうな。

 ドラゴンゾンビもノーライフキングも、二人のやり取りに見てみぬふりをしていた。

 

「世良は……」

 

「はい! 武巳(たけみ)くんを、しっかりと物理的につなぎとめておきます!」

 

 そのあたりは、原と二人に任せるとして。

 俺が聞いておきたいのは別のことだ。

 

「よろしく頼む。それはそうと、世良の聖女の力って、やっぱり病には使えないか?」

 

「一時的に症状を緩和することはできるみたいですけど、根本を治療しないとすぐにぶり返しちゃうみたいでして……」

 

「なるほど。となると、症状が悪化したときに、もしかしたらその力が必要になるかもしれないな」

 

「わかりました! では、魔力はいつでも残しておきます!」

 

「ああ、頼む。クララはロペスのこと頼んだぞ」

 

「はい」

 

「ボス!?」

 

 転生者の男性陣は働きすぎる傾向にあるからな。

 そのへんは、女性陣がうまく手綱を握るのが一番いい。

 ただ、そこは多少なりとも不服だったらしく、風間とロペスも意見がありそうな表情を……。

 

「では、みんなでしっかり休んで、テラペイアに迷惑かけないようにしましょう。というわけで、レイはこっちです」

 

「え、もうですか」

 

 なんか今日の寝室行きは早かったな。

 だが、タイミングとしてはちょうど良かったのかもしれない。

 さすがに風間もロペスも、魔王様の行動を邪魔することはできないらしく、俺への意見は内へ押しとどめたようだ。

 ……ただ、これはこれで意見を封殺しているみたいで、あまり良くないよな。

 フィオナ様と一緒に寝た後で、二人の意見をちゃんと聞いてから説得することにしよう。

 

    ◇

 

「……あんな風に、自分も身をもって実践しているところ見せられたら、俺たち何も意見できねえよなあ」

 

「魔王様、いつもレイさんが働きすぎないように、強制的に同衾させてるからね」

 

 ボスもちょっと前までは、俺たち寄りというべきか、仕事ばかりしていたからなあ。

 だが、ダスカロスの旦那が蘇生したあたりから、そのへんは改善されていった。

 てっきり、ダスカロスの旦那が説得したのかと思ったが、思えばビッグボスが強制的に休ませる頻度が増えただけだな。こりゃ。

 

「魔王様を見習って……よし、行くわよ武巳! (あらた)!」

 

「え、あの……どこへ」

 

「寝室だね。じゃあ、武巳くんを休ませるから私たちはこれで」

 

 ……兄弟。がんばれよ。

 まあ、あの三人もいつものことだし、俺は俺で適当に休むしかねえか。

 テラペイアの旦那に倒れられでもしたら、このダンジョンの危機になりかねないからな。

 

 それにしても、集団が一気に病か……。

 なんか、ヨハンのやつの毒による攻撃を思い出して嫌になるな。

 あのときと違って、薬一つで治せないから、俺が備えてどうにかするわけにもいかないし……。

 

 ん? 考え事をしていたら、誰かに肘をつかまれて……。

 

「何してんだい? 女王様」

 

「君も、そうやって考え事ばかりで、全然休もうとしないみたいだからね」

 

「いや、今から休もうと」

 

「君のそれは、体は休んでいても頭が休んでいないと思うよ?」

 

「……」

 

「仕方ない。宿に縛り付けておくとするか」

 

 いや、なんか怖いこと言い出してるけど、働きすぎなのはあんたたちだって……。

 

「安心したまえ、君くらいの魔力なら、すぐに枯渇させて眠らせてあげられるから」

 

 なんか怖いことしようとしてねえか!?

 結局、宿に連れて行かれた後の記憶はなくなっていた。

 悔しいことに、体も思考もすっきりしていたため、手段はともかく女王様に文句すら言えなくなってしまった……。

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