【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
あいつが悪い。あいつらが悪い。
俺の言うことを理解できないやつが悪い。
俺のすごさを理解できないやつが悪い。
だから、全員せいぜい苦しむといいさ。
俺に泣きついて、土下座して命乞いでもすれば助けてやらないこともないけどね。
残念。俺は証拠なんて残さないし、急に発生した未知の病に、何もわからずに苦しめられるのが、お前たちへの罰だよ。
そう、俺がどれだけすごいかを理解できなかったんだから、それだけでお前たちは罪人なんだ。
「
「ああ、できているよ。あとは、俺の一存でいつでも病を悪化させることはできる」
「さすが、堀井さん」
「まあ、このくらいは簡単だね。君たちにもいつかはできるようになるよ」
だから、こうして俺のすごさを理解できる仲間たちがいれば、それでいい。
なにがヨハンだ。たまたま俺より先に、獣人たちを懐柔しただけのやつにすぎない。
なにがロペスだ。こちらもたまたま俺より先に、ハーフリングと接触して、せこい金稼ぎをしただけのやつだ。
そもそも、俺のすごさを認めないエーニルキアとかいう国も、そこにいた
前から大嫌いだった
そもそも、国松以外は行方不明ときたのだから、やっぱり悪人はそうなるものだね。
どうせ、汚い手段でこの世界の住人を騙し、懐柔して仲間にしただけのケチなやつらだよ。
俺が同じことをすれば、成功するに決まっていた。
あいつらが、先回りして邪魔しなければ、今ごろ人間もハーフリングも獣人も、俺の仲間になっていた。
「残念だね。俺たちの優秀さを理解できないことを、後悔すればいいよ」
「そうですよね。ほんと、見る目がないというか馬鹿なやつらばかりで困りますよ」
「その点、君たちは見込みがあるよ。俺に追いつけるよう頑張ってね」
「はい!」
やはり、まともな相手と話すのは気分がいい。
これが、俺のことを理解できない知能が低い奴らだと、そうはいかないから困る。
でも、逆にだからこそ容赦なく切り捨てられるわけだし、悪いことばかりじゃないのかもしれないね。
「それじゃあ、重病人を増やして人質にしよう。チャンスは散々与えたんだから、ここからどんなひどい目に遭ったとしても、あいつらの自業自得。同情する気にもなれないかな」
俺が実力行使することなどないと、高をくくっていたんだろうさ。
だから、俺の力を思い知るといい。
俺の部下にしてやろうというのに断った無能なやつらめ。
まさか、女神の加護で集団を病で攻撃し、人質に取るなんて俺以外誰も思いつけないだろう。
「最高の加護だよ。この病というものは」
◇
「リズワン様! 病人の容体が悪化しました!」
「詳しく話せ」
「高熱と嘔吐。それに意識も朦朧として、常にせき込んでいます!」
「魔法による治療と医師による治療、双方から試せ」
「それが……どちらの方面でも、未知の病原体に蝕まれていると診断されています」
やはりというべきか……。
事態は深刻になってしまった。
症状が軽い段階に、治療方法を見つけることができなかった。
であれば、あとは悪化せずに自然治癒に頼る他なかったのだが……そう都合のいい話もないか。
病の存在が発覚してから、国の出入りは制限している。
観光客が多い俺の国では、入国制限は痛手ではあるが、それでも被害を拡大するよりはましだった。
だが、国内での感染者は、徐々に増え続けてしまっているか……。
「王様。どうする?」
以前提案していた手段を実行するか、その最終判断を俺に委ねているのだろう。
……それしかないか? 本人が提案していることといえ、それを実行するのは許されるのか?
「リズワン様! トルベリオやエーニルキアでも、似たような症状が発生しているようです!」
「なに? まさか、国外に病も運んでしまったか?」
それはまずい。
ただでさえ、国同士の関係は良好と言い難いというのに、虎視眈々と足を引っ張り合うような連中に、付け入る隙など与えたくはないぞ。
「いえ。発症は、少なくとも私たちの国よりも、先のようです」
「となると……向こうのほうがより、深刻な症状へと変異しているか……」
「それが、悪化したのはサンセライオと同じタイミングのようでして……」
うちよりも先に罹患していた者たちが、同じタイミングで悪化した?
だとしたら、発病してからの期間ではなく、外的要因によって悪化しているというのか?
「各国と連絡を取り合い、まずは容体を改善する方法を探るべきか……」
それと、いつでも愛美の案を行えるよう、こちらも準備しておかねばな……。
◇
「レイ~。調べてきたよ~」
「ありがとう、ピルカヤ。どうだった?」
みんなの仕事を減らす中、ピルカヤだけ追加で働かせてしまったが、ようやくその結果が返ってきた。
「え~とね。サンセライオとエーニルキアとトルベリオ、あとは他の国にも伸びるかも?」
「なるほど……」
プリズイコスやドルーレ、テイランなんかは無関係。
まあ、十中八九人為的なものだな。これは。
なんせ、アルマセグシアに感染者が出現していない。
この病は、飛沫感染するものというのが、テラペイアの診断結果だ。
うちの従業員たちも客たちも、症状が軽いうちに予防が後手に回って感染を拡大させてしまった。
だから、最も人の出入りが盛んなあの国に、同じ症状を患っている者がいないことはあり得ない。
もしも、うちのダンジョンに、アルマセグシアの者が出入りしていないのならわかる。
だが、あそこはでかいだけあって、一番の太客ともいえる国だからな。
欲望のダンジョンの客も多いし、何よりもマギレマさんのレストランや、ロマーナの魔導映写館まで最近作った。
それらの従業員たちも、感染者であったと後にわかったので、アルマセグシアの客たちにも一人くらい感染者がいてもいいはずだろう。
「うちとサンセライオとエーニルキアとトルベリオを狙った攻撃……?」
共通点はなんだ?
うちのダンジョン関連かとも思ったが、それならプリズイコスとドルーレが入っていないのが気になる。
種族も国の特色もバラバラだし、もしかして転生者の力が暴発でもした……?
「解決策を早急に考える必要がありそうだな。転生者の力が原因なのであれば、今後病状がさらに悪化しかねない」
俺と同じく転生者の力が原因という結論に至ったのだろう。
ダスカロスも、この問題は時間が解決してくれるわけではないと、考えているようだ。
「病状が進行したのが、意図的なのか偶然なのか、いや、まずは治すことが先決か……」
となると、テラペイアにみんなで協力した方が良さそうか?
いや、素人の力ではかえって邪魔になる可能性もあるか……。
となると、向こうとは別に色々と動いてみるとするか。
「ピルカヤ。他の国では、病気の予防や治療はどうなっている?」
「う~ん。みんな手探りって感じかな? まだまだ、苦しんでいる人たちが多いみたいだったし」
うちと変わらないってことか。
特定の国を狙ってこそいるが、病気は無差別に感染させていく。
狙いは……まさか、ヨハンの毒による一斉攻撃と同じく、そこから交渉でもしようとしているとか?
だとしたら猶予はあるが、相手の出方次第だし過信もできないか。
……そもそも、転生者のしわざというのも勘違いの可能性もあるし、まずは様子見ってことになるな。
考えても仕方がない。今はとりあえず動くとしよう。
「フィオナ様」
「なんですか?」
「フィオナ様の魔王ボックスのアイテム、譲ってもらってもいいですか?」
「ええ、好きなだけ持っていきなさい」
気前のいい魔王様の言葉に、俺はいくつかの案を試すべく行動するのだった。