【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「それじゃあ、そろそろ一気に悪化させよう」
「
「は? 俺がひどい? 俺のやり方が理解できないってこと?」
「い、いえ! そういうつもりじゃ」
「俺のやり方を理解できないなら、別に無理についてこなくていいよ。わかるやつだけしかいらないから」
「す、すみません……」
興を削ぐような言動で台無しだよ。
まさか、これだけ丁寧に教えてあげているのに、理解できないような程度が低いやつが混ざっていたなんて。
だいたいさあ……。俺がエーニルキアから抜け出したとき、ついてきたってことは、俺のやり方に賛同したってことだろ?
途中でやり方についていけないと離れたやつらもいたけど、この期に及んでまだそんな低次元のやつがいると思うとうんざりする。
なにがやりすぎだ。病に苦しんでいる人間を見て、ころっと意見を変えるとか、主体性がないんだよね。
俺のすごさがわからないやつらが、いくら苦しんでも自業自得だし何の同情もできない。
だから、同情した相手と同じ目にあって、あいつらもせいぜい本望だったろうね。
「それじゃあ、病を進行させるから、手筈通りにしっかりと働いてもらうよ」
「はい!」
国ですら匙を投げる病が流行する。
しばらくは、それに苦しむ姿を見て楽しませてもらう。
俺を認めなかった愚図どもが反省する時間は、長ければ長いほどいいからね。
そして、しっかりと反省させた後は、こいつらを使って病を治療する。
適当な瓶に入れた水を特効薬と称して配布する。
そうすれば、馬鹿な国のやつらもそいつらに感謝するだろうね。
そいつらのまとめ役である俺は、さらに感謝される。
そうしたら、きっと俺のことをようやく認められるステージへと上がるはずだ。
いくら低能なやつらでも、ここまでされたら理解するだろう。
どうしようかな。どの国の勧誘を受けようか。
きっと俺のことを取り合うだろう。他の国にとられないよう、条件はどんどん引きあがるだろう。
「あの堀井さん」
「何? なんか問題でもあった?」
先のことを考えていると、仲間の一人が遠慮がちに尋ねてきた。
まあ、俺と違ってまだまだ未熟だから、わからないことがあるのはしょうがない。
「堀井さんを認めなかった三つの国のことはわかるんですけど、欲望のダンジョンはなんで感染させるんですか?」
「ああ、それね。欲望のダンジョンには、はぐれ獣人が多いんだよ。それに、ロペスが経営している場所みたいだね」
ロペスを俺と比較したトルベリオ。せっかくゲーム知識で有用だと見込んでやったのに、俺を国の権力者に据えなかったリズワン。
俺をその他大勢の転生者と同じように扱い、あまつさえ
そいつらは、国ごとわからせてやればいい。
だけど、はぐれ獣人たちは文字通り国からこぼれ落ちたような無能たちだ。
だから、プリズイコスを攻撃したところで、何の留飲も下がらない。
その点、あいつらが集まる場所の一つである、欲望のダンジョンは最適な場所だ。
はぐれ獣人どもが集まるのもだけど、あのロペスのやつが卑怯な手で繁盛させている場所らしいからね。
そんな場所で、客も従業員も感染させてやれば、どっちが上か世間はすぐに理解することになるさ。
「なるほど! じゃあ、ロペスのやつが苦しむってことですね!」
「そういうこと。うん、ちゃんと俺の考えが理解できるのはさすがだね」
さあ、正義の鉄槌を下そう。
悪人たちには裁きが必要だ。
ここまで順調にいったのなら、あとはすんなりと事が進むだろう。
「感染元の冒険者を送り込んだのは私だから、儲かったり地位を得た後は、見返り頼むわよ?」
「ああ。絶対成功するし、いくらでも見返りは渡せるさ」
◇
「あ、症状が悪化してる」
まいったなあ。ちょっと人数が多すぎる。
残念ながら間に合わなかったか。
「ということで、悪いが頼んだぞ。
「了解しました!」
片っ端から治療をすませていたが、さすがに相手が動くほうが早かったようだ。
だけど、それももう終わる。世良が疲れる前になんとかなるだろ。
「す、すまない……。俺たちを、受け入れてくれて……」
「喋っちゃ駄目ですよ~。症状をやわらげてはいますけど、治ったわけじゃありませんから」
「聖女様……」
意識が朦朧としているためか、ハーフリングの一人が世良を見てそんなうわ言を口にした。
……ばれたとかじゃないよな? まあ、世良の力が聖女だとばれても、影響があるわけでないし、かまわないけど。
「治してやったんだから、お前らうちの従業員な」
「それはかまわないんだけど……この人数が働くほどなのか?」
「うち、休みはしっかりととらないとボスに叱られるから、多少過剰なくらいでいいんだよ」
「こんな待遇で……わかった。前の商売より儲けられそうだし、住み込みで働かせてもらう」
「俺たちが国のやつらに宣伝すれば、客もさらに増えそうだしな……」
ロペスのやつなんかは、すでに治療が完了したハーフリングたちに、抜け目なく交渉している。
まあ、本来ならば治療前に交渉すべきだろうが、意識が朦朧としてまともな判断ができない相手と交渉するほど、ロペスも非道ではないということだ。
「レイ様。快復の湯の利用者が完治しました」
「じゃあ、引き続きテラペイアから、優先度が高い患者をあずかって、湯治させてくれ」
「はい」
もう少しで終わりだな。
快復の湯。それは、フィオナ様からもらった万能薬を、いくつか溶かして作成した新たな温泉だ。
何本か無駄にはなったけど、複数の万能薬を使用し、作成する温泉を万能薬と適合し、病を治すことへ特化するよう指向性を持たせることで、なんかうまくいった。
怪我や魔力回復には効かないし、毒や麻痺や石化みたいな状態異常にもまるで効果がない。
だけど、病を治すことだけならば、テラペイアも認めるほどの効果を発揮してくれる代物だ。
テラペイアは、医者いらずだななんて言っていたが、実はそう簡単なものでもなく、むしろ医者との協力は不可欠だ。
テラペイアが症状を診断し、悪性の強い箇所を特定する。
ルトラがそれを聞いて、快復の湯の効能を魔力で操作する。
それで初めて効果を発揮するものだから、気軽に入ってもただの気持ちのいい温泉にすぎない。
「次の患者が終わったら、あとは世良に症状を緩和してもらっている患者で終わりか」
「がんばれ、
「がんばる~」
なんとか、今回の病はトラブルなく解決できそうだ。
「でも、うちのお客さんとはいえ、人類の病まで治しちゃってよかったの?」
ピルカヤに尋ねられるが、これに関してはむしろ治したほうがいい。
なんせ、うちにきていた他国の罹患者の中には、勇者も転生者もいないからな。
「本当に単なる客だからなあ……。治さなかった場合、こっちに得はないしむしろ損しかない」
これが勇者や厄介な転生者まで罹患しているのなら話は別だが、うちに助けを求めにきたのは一部の国民のみ。
だったら、こちらとしても、客となる国民たちがいつまでも病に伏せるような真似は都合が悪い。
なんなら従業員としてのスカウトにも応じてくれているし、治すほうが得だ。
「結局、どの国も自力で解決したようだし、思ったほど大事にはならなかったか……」
病が流行して以来、レストランや各施設でそれらの情報交換が自然となされていた。
ピルカヤを通して各国の情報を得なくとも、ある程度の話が耳に入る程度には、どこも困っていたようだ。
だが、うちだけでなくどこの国も対処はできたようで、被害者が出るよりも先に、状況は沈静化したらしい。
……転生者のしわざかと思ったんだけど、それにしては病人を出す以外は動きがなかったし。
これを機に動くのかと思ったがそんなこともない。
単に考えすぎだったのかもしれないなあ。