【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第327話 現地民を搾取する悪人たち

 病の能力者ということで、一つ俺にもアイディアが浮かんだ。

 それは、俺たちでも扱える病があるんじゃないかということだ。

 

 思い立ったら即試せるのが、俺のダンジョンマスターさんのすごいところだと思っている。

 なので、食人花のステータスを下げる代わりに、花粉とかつけられませんかとねだってみたところ、うまくいった。

 これ、硬いけど火力が低いカニとか、レーザーに特化しているけど脆いエビとかも作れそうだな。

 

 ともあれ、うまくいった花粉をばらまく食人花のおかげで、空の宝箱に花粉をつめこむことに成功した。

 以前、宝箱の空き箱を利用して、毒を詰め込んだ経験が活かせたな。今度は花粉で同じことをすれば良い。

 これで、病の能力者を花粉症で苦しめることができそうだ。

 

 ただ、もしもあらゆる病を治せるというのであれば、すぐに治療されてしまうので、ついでにバジリスクや食人花を隣室に配置しておく。

 完璧だ……。我ながら満足のいく部屋作りができたと自負している。

 

「……今回は、倒すための部屋だから良いけど、あいつら以外にその仕掛け使おうとするなよ?」

 

「え、花粉症良くない?」

 

「病は慎重に取り扱えよぉ……。あのダンジョンのせいで、病に罹患したなんて噂されたら、客足減るだろぉ」

 

 ……たしかに、変な噂でお客さんが減るのは良くないな。

 だけど、俺はこの仕掛けと部屋自体は悪くないと思うのだが。

 

「フィオナ様。この部屋良いですよね?」

 

「ええ。レイの作る仕掛けは、いつも容赦がなく全力ですね」

 

 ほら、魔王が褒めてくれた。つまり、コンセプト自体はそう悪いものではないということだ。

 他の侵入者に使うかはさておき、まずはその成果をしっかりと見届けよう。

 ちょうど、ロペスから話を聞いた転生者たちが、宝箱トラップの部屋にたどり着いたようだしな。

 

 ……まずは、ちゃんと花粉症になってくれたようだ。

 個人差があると思っていたが、食人花たちの花粉が特別なのか、全員しっかりと苦しんでくれている。

 だが、さすがにこれだけで倒せるものでもないし、あとは隣室に控えていたモンスターたちで……。

 

 あれ? なんか、バジリスクたちも花粉症で苦しんでない?

 あいつら、くしゃみと一緒に毒を何度もまき散らしている気がする。

 あ。その毒が侵入者たちに降りかかっているな。

 ……まあ、結果的に毒と花粉で苦しんでいるみたいだし、バジリスクが苦しんでいること以外は計算通りだ。

 

「なんか、すごいことになってしまった」

 

 もはや、あの部屋で無事なのは食人花たちだけだ。

 バジリスクは、あとで快復の湯に入れて治してやらないとな。

 

「侵入者もこれで処理できた。今後は病が発生しても対処できる。それに、良い仕掛けも作れた。わりと悪くない結果だったな」

 

「花粉とバジリスクは、岩とかソウルイーター以上に、使い所厳しいからなぁ。覚悟しておけよ……」

 

「やはり、病の取り扱いは問題だからな。下手したら、大元のモンスターを倒すため、国や勇者が動きかねない」

 

「駄目かあ……」

 

 さすがに、勇者が来たら困るからな。

 アナンタとダスカロスが言うとおり、自重するとしよう。

 

「快復の湯は、私とルトラが協力すれば、今後も有効活用できるはずだ」

 

「はい。病に効く温泉として、触れ込みしても良さそうです」

 

 それはそれで、集客を見込めそうだよな。

 そして、病が治った後は、是非ともうちのカジノや海で散財してほしい。

 ……散財か。レジャー施設も良いけど、もっと手軽な散財として、買い物があるよな。

 かねてから考案していた、ラプティキさんの服屋とか作ったら、そこで買い物してくれるんじゃないか?

 

 なかなか難しい問題だ。

 欲望のダンジョン一つに、あまり多くの店を作ると、万が一ダンジョンを放棄することになったときに、被害が大きい。

 魔導映写館みたいに、アルマセグシアに出すべきか。

 ただ、色んな店を近くに配置したほうが相乗効果はありそうだし、悩ましいところだな。

 

「店を増やすにしても、人手が必要か……」

 

「私に良い考えがありますよ!」

 

「また、ガシャと言いたいんですかね?」

 

「……魔王軍の人員が復活する。それすなわち、人手不足の解消です」

 

 言いたいことはわからんでもないけど、店の従業員となると、どちらかというと魔族以外が必要なんだよなあ。

 ただ、テラペイアやルトラの負担も増えるとなると、裏方も必要だし、あながち間違いでもない。

 

「フィオナ様のくせに、わりと理屈は通っていますね」

 

「まあ、魔王ですからね。生意気な部下をお仕置きするのも役目です」

 

 俺の頰を引っ張りながら、フィオナ様は魔王らしさをアピールすることに余念がなかった。

 

    ◇

 

「ロペスよ。大丈夫だったのか?」

 

「何がだい? 王様」

 

 心配しながら尋ねてくれるのは、王様とテイランの女性だった。

 

「あなた、なんかとんでもないのに絡まれていたじゃない」

 

「うむ。さすがの俺でも、宝箱の入手先を聞き出そうとはしないぞ」

 

「ほんっと! 何考えているのかしらね! 宝箱の素晴らしさを理解できず、目先の欲だけにとらわれた愚者! それで、私たちが宝箱を利用できなくなったら、テイランと全面戦争だからね!」

 

「おおう……。思っていた以上に熱が入っているな。そして、テイランを巻き込むのは感心しないぞ」

 

「……言い過ぎたわ。テンユウ様に叱られるし、内緒ね?」

 

 当事者である俺たちよりも、よっぽど腹に据えかねているって感じだな。

 本来は、このくらい怒っても良いのかもしれない。

 ただ……。怒らないほうが怖いという現場を、目のあたりにしちまったからなぁ……。

 こちらももう怒るとか、そういう段階に無いというか。

 

「まあ、心配はありがたく受け取っておくさ。だが、もう解決したし問題ない」

 

「そう、それよ。ロペスくん、ああいうのに押し負けちゃ駄目よ? あなた、最後はあの話が通じないやつに、宝箱の入手先教えちゃったでしょ」

 

「予想通りではあったが、やはりダンジョンから回収していたようだな。いっそ俺が先回りしようとも考えたが、部下に叱られるので諦めた」

 

「うちも、テンユウ様に叱られそうね……」

 

「それに、そんなことしたらここの従業員にも、利用者にも顔向けできんからな」

 

「律儀だなあ」

 

 ダンジョンにある宝箱なんて、回収される前提なんだから好きにすりゃあ良いのにと思う。

 あれ、ボスが片手間で作っているものだからな。

 そんなことを知ったら、この世界の連中は大いに驚くであろうことは、想像に難くない。

 

「まあ、場所は教えたが、そこまでの安全なルートも、罠やモンスターの対処法も教えていない」

 

 これは嘘だ。むしろ、そこまでは罠もモンスターも無いから、誰でも辿り着けるようにしていた。

 

「だが、あれ以来こちらに絡んでこないってことは、今頃苦労しながら、何度もダンジョンを探索しているんだろうな」

 

 これも嘘。何度もダンジョンに挑むようなやつらではないし、そもそももう死んでいる。

 だが、カバーストーリーとしては、こんなものだろう。

 

「案外、ダンジョンの中で全滅していたりしてね」

 

「どうにも、物事を甘く見すぎなきらいにあるようだったからな。世界が自分本位であるという考えは、足元をすくわれるだけなのだが」

 

「まあ、うちとしては、絡んでこないのならどちらでも良いさ。宝箱を回収していようが、撤退していようがな」

 

 この世界に転生させられ、俺たちの扱いが随分と悪いと思っていた。

 一部の者たちを除けば、力だけを利用しようとしている者ばかり。

 だが、その理由の一つは、あいつらなんだろうな。

 

 この世界に来たことで、自分が全能であるかのように錯覚するやつの、なんと多いことか。

 そして、その理想と現実の差を認めることもなく、ひたすらに他者を見下し、ありもしない実力を誇り続ける。

 この世界に送り込まれたのが、そんなやつばかりだったら、そりゃあどの国も疎ましく思うだろうさ。

 

 女神のやつ。せめて、転生相手の人格くらいは見ておけよ。

 ……その場合、俺も転生できなくなりそうだな。

 いい加減な女神で助かったのか、迷惑を被っているのか、微妙なところだ。

 

「まあ、話していてもしょうがない。今日もがんばって、宝箱に挑戦してくれ」

 

「任せておきなさい!」

 

「無論だ!」

 

 俺は俺で、現地民にこうして悪事を働いているもんなあ。

 運次第とはいえ、この二人すでに相当の金を失っているし。

 だが、本人たちは喜んで挑戦していることだし、まあ、このくらいの悪さはかわいいもんだろ。

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