【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
病の能力者ということで、一つ俺にもアイディアが浮かんだ。
それは、俺たちでも扱える病があるんじゃないかということだ。
思い立ったら即試せるのが、俺のダンジョンマスターさんのすごいところだと思っている。
なので、食人花のステータスを下げる代わりに、花粉とかつけられませんかとねだってみたところ、うまくいった。
これ、硬いけど火力が低いカニとか、レーザーに特化しているけど脆いエビとかも作れそうだな。
ともあれ、うまくいった花粉をばらまく食人花のおかげで、空の宝箱に花粉をつめこむことに成功した。
以前、宝箱の空き箱を利用して、毒を詰め込んだ経験が活かせたな。今度は花粉で同じことをすれば良い。
これで、病の能力者を花粉症で苦しめることができそうだ。
ただ、もしもあらゆる病を治せるというのであれば、すぐに治療されてしまうので、ついでにバジリスクや食人花を隣室に配置しておく。
完璧だ……。我ながら満足のいく部屋作りができたと自負している。
「……今回は、倒すための部屋だから良いけど、あいつら以外にその仕掛け使おうとするなよ?」
「え、花粉症良くない?」
「病は慎重に取り扱えよぉ……。あのダンジョンのせいで、病に罹患したなんて噂されたら、客足減るだろぉ」
……たしかに、変な噂でお客さんが減るのは良くないな。
だけど、俺はこの仕掛けと部屋自体は悪くないと思うのだが。
「フィオナ様。この部屋良いですよね?」
「ええ。レイの作る仕掛けは、いつも容赦がなく全力ですね」
ほら、魔王が褒めてくれた。つまり、コンセプト自体はそう悪いものではないということだ。
他の侵入者に使うかはさておき、まずはその成果をしっかりと見届けよう。
ちょうど、ロペスから話を聞いた転生者たちが、宝箱トラップの部屋にたどり着いたようだしな。
……まずは、ちゃんと花粉症になってくれたようだ。
個人差があると思っていたが、食人花たちの花粉が特別なのか、全員しっかりと苦しんでくれている。
だが、さすがにこれだけで倒せるものでもないし、あとは隣室に控えていたモンスターたちで……。
あれ? なんか、バジリスクたちも花粉症で苦しんでない?
あいつら、くしゃみと一緒に毒を何度もまき散らしている気がする。
あ。その毒が侵入者たちに降りかかっているな。
……まあ、結果的に毒と花粉で苦しんでいるみたいだし、バジリスクが苦しんでいること以外は計算通りだ。
「なんか、すごいことになってしまった」
もはや、あの部屋で無事なのは食人花たちだけだ。
バジリスクは、あとで快復の湯に入れて治してやらないとな。
「侵入者もこれで処理できた。今後は病が発生しても対処できる。それに、良い仕掛けも作れた。わりと悪くない結果だったな」
「花粉とバジリスクは、岩とかソウルイーター以上に、使い所厳しいからなぁ。覚悟しておけよ……」
「やはり、病の取り扱いは問題だからな。下手したら、大元のモンスターを倒すため、国や勇者が動きかねない」
「駄目かあ……」
さすがに、勇者が来たら困るからな。
アナンタとダスカロスが言うとおり、自重するとしよう。
「快復の湯は、私とルトラが協力すれば、今後も有効活用できるはずだ」
「はい。病に効く温泉として、触れ込みしても良さそうです」
それはそれで、集客を見込めそうだよな。
そして、病が治った後は、是非ともうちのカジノや海で散財してほしい。
……散財か。レジャー施設も良いけど、もっと手軽な散財として、買い物があるよな。
かねてから考案していた、ラプティキさんの服屋とか作ったら、そこで買い物してくれるんじゃないか?
なかなか難しい問題だ。
欲望のダンジョン一つに、あまり多くの店を作ると、万が一ダンジョンを放棄することになったときに、被害が大きい。
魔導映写館みたいに、アルマセグシアに出すべきか。
ただ、色んな店を近くに配置したほうが相乗効果はありそうだし、悩ましいところだな。
「店を増やすにしても、人手が必要か……」
「私に良い考えがありますよ!」
「また、ガシャと言いたいんですかね?」
「……魔王軍の人員が復活する。それすなわち、人手不足の解消です」
言いたいことはわからんでもないけど、店の従業員となると、どちらかというと魔族以外が必要なんだよなあ。
ただ、テラペイアやルトラの負担も増えるとなると、裏方も必要だし、あながち間違いでもない。
「フィオナ様のくせに、わりと理屈は通っていますね」
「まあ、魔王ですからね。生意気な部下をお仕置きするのも役目です」
俺の頰を引っ張りながら、フィオナ様は魔王らしさをアピールすることに余念がなかった。
◇
「ロペスよ。大丈夫だったのか?」
「何がだい? 王様」
心配しながら尋ねてくれるのは、王様とテイランの女性だった。
「あなた、なんかとんでもないのに絡まれていたじゃない」
「うむ。さすがの俺でも、宝箱の入手先を聞き出そうとはしないぞ」
「ほんっと! 何考えているのかしらね! 宝箱の素晴らしさを理解できず、目先の欲だけにとらわれた愚者! それで、私たちが宝箱を利用できなくなったら、テイランと全面戦争だからね!」
「おおう……。思っていた以上に熱が入っているな。そして、テイランを巻き込むのは感心しないぞ」
「……言い過ぎたわ。テンユウ様に叱られるし、内緒ね?」
当事者である俺たちよりも、よっぽど腹に据えかねているって感じだな。
本来は、このくらい怒っても良いのかもしれない。
ただ……。怒らないほうが怖いという現場を、目のあたりにしちまったからなぁ……。
こちらももう怒るとか、そういう段階に無いというか。
「まあ、心配はありがたく受け取っておくさ。だが、もう解決したし問題ない」
「そう、それよ。ロペスくん、ああいうのに押し負けちゃ駄目よ? あなた、最後はあの話が通じないやつに、宝箱の入手先教えちゃったでしょ」
「予想通りではあったが、やはりダンジョンから回収していたようだな。いっそ俺が先回りしようとも考えたが、部下に叱られるので諦めた」
「うちも、テンユウ様に叱られそうね……」
「それに、そんなことしたらここの従業員にも、利用者にも顔向けできんからな」
「律儀だなあ」
ダンジョンにある宝箱なんて、回収される前提なんだから好きにすりゃあ良いのにと思う。
あれ、ボスが片手間で作っているものだからな。
そんなことを知ったら、この世界の連中は大いに驚くであろうことは、想像に難くない。
「まあ、場所は教えたが、そこまでの安全なルートも、罠やモンスターの対処法も教えていない」
これは嘘だ。むしろ、そこまでは罠もモンスターも無いから、誰でも辿り着けるようにしていた。
「だが、あれ以来こちらに絡んでこないってことは、今頃苦労しながら、何度もダンジョンを探索しているんだろうな」
これも嘘。何度もダンジョンに挑むようなやつらではないし、そもそももう死んでいる。
だが、カバーストーリーとしては、こんなものだろう。
「案外、ダンジョンの中で全滅していたりしてね」
「どうにも、物事を甘く見すぎなきらいにあるようだったからな。世界が自分本位であるという考えは、足元をすくわれるだけなのだが」
「まあ、うちとしては、絡んでこないのならどちらでも良いさ。宝箱を回収していようが、撤退していようがな」
この世界に転生させられ、俺たちの扱いが随分と悪いと思っていた。
一部の者たちを除けば、力だけを利用しようとしている者ばかり。
だが、その理由の一つは、あいつらなんだろうな。
この世界に来たことで、自分が全能であるかのように錯覚するやつの、なんと多いことか。
そして、その理想と現実の差を認めることもなく、ひたすらに他者を見下し、ありもしない実力を誇り続ける。
この世界に送り込まれたのが、そんなやつばかりだったら、そりゃあどの国も疎ましく思うだろうさ。
女神のやつ。せめて、転生相手の人格くらいは見ておけよ。
……その場合、俺も転生できなくなりそうだな。
いい加減な女神で助かったのか、迷惑を被っているのか、微妙なところだ。
「まあ、話していてもしょうがない。今日もがんばって、宝箱に挑戦してくれ」
「任せておきなさい!」
「無論だ!」
俺は俺で、現地民にこうして悪事を働いているもんなあ。
運次第とはいえ、この二人すでに相当の金を失っているし。
だが、本人たちは喜んで挑戦していることだし、まあ、このくらいの悪さはかわいいもんだろ。