【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第328話 自覚症状のない恋の病

「良いことを思い付きました」

 

「たぶん失敗しますよ」

 

「なにをぅ!? まだ話してもいないのに、以心伝心ですねぇ!!」

 

 だって、絶対ろくな思い付きじゃないときのフィオナ様だもん。

 もうわかるよ、そのくらい。出会ってから、どれだけ一緒にいたと思っているんですか。

 

「……」

 

「なんですか、なんかニヤニヤし始めていますけど」

 

「せめて、はにかんでるとか、そういう表現はできませんか!?」

 

「良い意味で言いました」

 

「ごまかされてあげるのは、今回だけですからね!」

 

 いや、きっと次回もごまかされてくれる。

 この魔王様は優しいって、俺は知っているんだ。

 またニヤニヤ……いや、はにかんでいる。

 

「俺の考え読んだりしています?」

 

「さすがの魔王にもそれは無理です。ただ、素直にかわいいことをかんがえていそうなときは、なんとなくわかります」

 

 読めてるじゃん。こわっ……。

 

「今、かわいくなくなりました」

 

「そもそも、男相手にかわいいっていうのもどうなんですかね?」

 

「む……嫌でしたか?」

 

「別に良いですけど、かわいいっていうなら、俺じゃなくてフィオナ様のほうがかわいいです」

 

「……」

 

 はにかんでる。ところで、良いことってなんだったんだろう?

 脱線させたのは俺だけど、日頃のフィオナ様ってちょろいから、もう忘れていそうだな。

 

「……魔王様をそこまで翻弄できるの、レイくんくらいだよなぁ」

 

「ほ、翻弄されてませんけど!? 魔王ですから!」

 

「いえ、俺には取り繕わなくていいので……」

 

「翻弄されていました! まったく、とんだやんちゃ者ですね!」

 

 俺程度に翻弄されていては、勇者との戦いとかやばそうなので、心を強く持ってください。

 ……いや、そんな遊び心が無いフィオナ様は、なんか嫌だな。

 適度に翻弄されるあなたであってください。

 

「ところで、イチャつくのなら、魔王様の部屋でやったほうが良いんじゃないですかねえ」

 

「いや、イチャついてるつもりはないが……」

 

「ええ。レイが生意気なのは、今に始まったことではありませんし」

 

「……おじさん、よくわからなくなりそうです。それじゃあ、二人は何の話をしていたんですか?」

 

 リグマの言葉のおかげで、フィオナ様は元々の発言をようやく思い出したようだ。

 はっとした顔がかわいらしく、魔王じゃないときはとことんポンコツだなと思う。

 

「そうでした。まったく、この口は本当に生意気ですね」

 

「今は、何も言わなかったじゃないですか」

 

「言わなかっただけで、また変なことを考えていたでしょう」

 

 それを言われると、こっちも弱い。

 たしかに、魔王相手にポンコツなんて考えてしまったが、ちゃんとかわいいってフォローしたじゃないか。

 差し引きで無罪だな。よし、やっぱり俺は悪くない。

 

「レイくん、あんまり魔王様をからかっていると話が進まないぞ」

 

「仕方ない……リグマに免じて許してあげます」

 

「私は魔王で、リグマは四天王ですよね!? 私のほうが偉いんですけど!?」

 

 そうですね。そもそも俺よりも偉いです。

 まあ、そんなフィオナ様の発言は一旦置いて、良いこととは何か聞いておこう。

 

「良いことってなんですか?」

 

「う~……腑に落ちませんが、良いでしょう。快復の湯のことです」

 

「快復の湯? 今回新たに作った温泉ですけど、稼働はまだ準備中ですね」

 

 温泉ということもあり、ロペスに管理を任せようとも考えたが、効果がわりと良いものなんだよな。

 だったら、これ以上欲望のダンジョンの目玉を作るよりも、それ単独で別の場所の集客を狙うのも良さそうだ。

 

 だが、依然として問題なのは、魔王軍の人手の少なさだ。

 少ないと言うと若干の語弊があるな。内部での人手は潤沢なのだが、表立って働ける者、特に施設の管理者が少ない。

 テラペイアやルトラの協力も不可欠ではあるし、快復の湯の地上進出はまだ先の話になると思う。

 

「それは外に向けての稼働の話で、地底魔界の者たちなら使用可能ですよね?」

 

「ええ、身内で使う分にはテラペイアとルトラにちょっとお願いすれば、いつでも使えますけど」

 

「……では、私が利用するというのはどうでしょうか?」

 

 フィオナ様が快復の湯を?

 ……つまり、俺にはわからないだけで、何か病を患っている?

 まさか、あの転生者の加護が、フィオナ様にまで及んでいたのか!?

 実験的に対処したが、生かして病を解除させるべきだった? いや、そもそも楽に倒すべきではなかった?

 

「い、急いで治しましょう!」

 

「ええ。可能性はありますので、試してみるべきかと」

 

「……レイくん、ちょっと落ち着こう」

 

「落ち着こうって、フィオナ様が病を患うなんて、大変なことだぞ」

 

 焦る俺をリグマが止める。

 こんなときでも冷静なのは頼りになるが、こうしている間にも病状が悪化したら問題だ。

 やはり、急いで快復の湯の準備に取り掛からないと。

 

「ピルカヤ!」

 

「はいは~い。どうしたの~?」

 

「まあ待てって、二人とも。魔王様。率直にお聞きしますが、魔王様は病気に罹っているのでしょうか?」

 

 何を今さら。だからこそ、快復の湯を利用しようとしているんじゃないか。

 リグマの当然の質問を受けて、フィオナ様も呆れ……あれ? なんか困ったような表情だな。

 

「ええと……病だったら良いなあって思います」

 

「良いわけありません。病なんですよね? なら、すぐに治しましょう」

 

 まさか、病気だから仕事をさぼれる口実になる。なんて考えていないだろうな。

 だとしたら安心してもらいたい。今さらフィオナ様が仕事をさぼっていても、そこまで文句は言われないから。

 

「魔王様を心配して、レイがわりと判断力を失いかけています。魔王様が心配されている病って、なんですか?」

 

「……ええと、私の魔力が一万に届かないのは、病のせいじゃないかな~なんて」

 

 ……良かった。フィオナ様は病に罹っていたわけではないらしい。

 安心したせいか、なんか急に疲れてしまった。

 

「ご、ごめんなさい。そこまで心配してもらえるとは……いえ、でもずっと9999だというのなら、そこから成長できないのは、やはり病やら状態異常なのでは?」

 

「たぶん、成長が上限に達しているだけなので、心配いりません……」

 

「まあ、お元気そうですからねえ。病を患っているとは思えませんよ」

 

「え、魔王様病気だと思ってたんですか? 見るからに元気そうじゃないですか」

 

 そうだね。リグマとピルカヤの言うとおりだ。

 どうにも、俺が一人で勝手に焦ってしまったようだ。なんとも恥ずかしい姿を見せてしまった……。

 

「まあ、快復の湯を使いたいなら止めませんが、テラペイアたちも治すべき病気がないって判断するはずですよ」

 

 そうだ。テラペイアが定期的に健康診断をしているのだから、そんな病があったら隠し通せるはずがなかった。

 う~ん……。どうにも、冷静さを欠いてしまっていたようだ。醜態だな。

 

「むぅ……。では、仕方がありません。念のため温泉に浸かるだけ浸かっておきましょう」

 

「はいはい。ごゆっくり……」

 

 快復の湯の効果はともかくとして、普通の温泉としては利用できるはずだからな。

 フィオナ様も、どんな温泉なのか興味があるのかもしれない。

 

「レイも一緒に来てくれますよね? 今日は温泉宿お泊りにしましょう。なんだか疲れているみたいですし」

 

「誰のせいで疲れたと思っているんですか……」

 

「……私を心配してくれたためですか?」

 

「当然でしょう……」

 

「ふふ、当然。当然ですか。まあ、レイは私のこと大好きですからねぇ。心配させてしまってすみません」

 

「まったくです」

 

 本当なら叱りたいところではある。

 だけど、そんな嬉しそうな笑顔を見せられたら……まあ、無理だよな。

 まったく、この笑顔の前では逆らえる気がしない。

 

「んじゃあ、おじさんたちは先に宿の確保してますね」

 

「え、ボクも?」

 

「邪魔しちゃいけないからなあ。ついでに撤収するぞぉ」

 

「う~ん。まあ、仕事がないのならそれでもいいや。魔王様とレイは、二人で温泉に入っちゃうみたいだしね」

 

 ……いや、ピルカヤはきっと勘違いしている。

 たしかに、二人で温泉に行くとは言ったが、一緒に入浴するわけじゃないからな?

 フィオナ様も、そんなピルカヤの発言を聞いたため、顔が真っ赤になってしまっている。

 

「い、一緒にはまだ無理です!」

 

「予定があるような言い方しないでください……。ピルカヤが勘違いしますので」

 

「可能性はゼロではないのでは!?」

 

「どこにムキになっているんですか……」

 

 なお、フィオナ様の魔力は、快復の湯に入っても一万にならなかった。

 当然といえば当然の結果だな。

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