【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「でも、実際のところかなり稼いでいるのでしょう?」
「まあ……わりと儲かっていますけど」
「ですよね? であれば、溜めるだけでなく使う必要があるのでは?」
「……俺、
「おねだりです!」
……かわいく言い出すのだからたちが悪いよなぁ。
さて、現実的なことから考えよう。
マギレマさんをはじめとしたレストランは順調。
ロペスや
トルベリオからの客も増えたし、そこから快復の湯の宣伝もしてもらって、さらなる集客も見込める。
「……じゃあ、回しますか」
「さすがは私のレイです!」
これはあれだ。ほら、人手が今後も必要となるわけだし。
決してフィオナ様を甘やかしているわけでは……。
「レイくんって、なんだかんだで魔王様の押しに弱いよなあ」
「最近自覚は出てきた」
こんなに嬉しそうに抱き着いてくるのだから、俺には断ることなどできない……。
これを恐らく、計算せずにやってのけるのだから恐ろしい。さすがは魔王だ。
「まあ、ガシャ祭りのときに一回回しただけだし……。魔力はあれ以来溜めていたし……」
「おじさんたちに言い訳しなくて良いぞ~」
「ちなみに、レイ様のことですから、一度に十人以上は蘇生するはずですが、誰を蘇生させますか?」
「人手が欲しいんだし、ディキティスのところの魔族兵たちじゃない?」
「彼らはよく働くからな。きっと、すぐに戦力になってくれるだろう」
「う~ん……。ひとまずは、ピルカヤの案が良さそうですね」
プリミラの中では、すでに俺が蘇生薬を十本以上引いたことになっているらしい。
そして、誰もそれを否定せずに、その仮定で話が進んでいくのが地味にプレッシャーだ。
◇
「ということで、新たな魔王軍として、まずは生活に慣れてください」
引いちゃったなあ……。それも、十どころか二十の蘇生薬を。
フィオナ様の前に跪く様々な魔族の男女たちは、マギレマさんの部下のときと同じく、見るからに規律を重んじているようだった。
そして、こちらもマギレマさんの部下と同じく、名前覚えられる気がしない……。
「では、行きますよ。レイ」
「はい」
それで、一旦は部下だけに任せるんだな。
前回はきっとマギレマさんが、部下を指導してくれたので、今回はディキティスが指導してくれるのだろう。
そうして、新たな魔王軍として、もうちょっと軽い気持ちで行動するように、心がけてもらうわけか。
となると、俺とフィオナ様は、しばらく暇を持て余すことになりそうだな。
……本の続きでも読ませてもらうか。
「プラネタリウムでも作ります?」
「なんか、とんでもない提案がさらっと出てきましたね」
だが、魔王様のお考えは、俺程度には理解できないぶっ飛んだものらしい。
なんで急にプラネタリウムの話に……。
「いえ、ちょっと暇になりそうでしたし。以前魔導映写館を作った際に、話だけ上がっていましたので」
「今回蘇生した魔王軍と、今いるメンバーが交流しているうちにということですか」
「魔王の魔力さえあれば、えいっという間に終わりそうですからね」
「あっという間にじゃないんですね」
だけど、たしかにフィオナ様なら一瞬だろうな。
なんせ、太陽すら一瞬で作るのだから、星に見立てた明かりを配置するのも、きっとすぐだろう。
「じゃあ、フィオナ様の部屋じゃなくて、魔導映写館に行きましょうか」
そう言うと、フィオナ様はなんかにやにやしながら俺の顔を見てきた。
なんだその顔は……。うざかわいいな。
「へえ~。レイは私の部屋で、私と一緒にくつろぎたかったんですか~」
「……別に、本を借りて自分の部屋で読んでも良かったですけど」
「私は本のおまけですか!?」
「いえ、そういうわけでは……」
「私がレイと一緒にくつろぎたいのに、私を避けるとはなんと意地が悪い!」
「いえ、俺もフィオナ様と一緒のほうが良いです……」
じゃあ、なんで最初に俺をからかおうとしたんだよ。この魔王様……。
まあ、一人で読むのも良いけれど、フィオナ様の近くで読んでいるほうが落ち着くし、俺だってそのほうが良いけどさ。
「ようやく素直になったレイには、ご褒美として頭をなでてあげましょう」
俺か? 素直じゃないのは俺なのか?
そんな疑問と共に向かった魔導映写館だったが、当然ながら今は誰もいない。
今はロマーナもみんなのところにいるから、客が入っていないからな。
「では、星を配置しましょう」
「お願いします」
「……」
どうしたんだ? なんか、天井に向かって指を向けたまま固まってしまったぞ。
まさか、何かトラブルか? そう思い、俺も急いで天井を見上げるが、これといった異変はない。
「どうかしましたか?」
「いえ……。夜空の星の配置って、どうなっているものなんでしょうか?」
「あ~……」
そうか。フィオナ様は、今までずっと地底で生活していたから、星がどんな並びなのかわからないのか。
いや、そういえば俺もそこまで詳しくないな……。星座とか有名な星は知っているけど、どんな間隔で配置されているかすらわからない。
なら、星を見る機会がなかったフィオナ様に再現するなんて、余計に難しいことなんだろう。
「参考になるような、星の本とかありますかね?」
「いえ、残念ながらその手の本はなかったです」
そもそも、プラネタリウムを作るのであれば、解説もしなければいけないわけだし、そのあたりの知識も必要なんだよな。
「いっそのこと、フィオナ様が適当に星座を作るというのはどうですか?」
「星座を……。なるほど、ではあれがピルカヤ座です」
「ああ、なんかそれっぽいですね」
夜空を見立てたスクリーンに描かれたのは、燃え盛る炎のような星々だった。
大きな炎から飛散するように、散り散りに小さな光が配置されているのは、分体を操るピルカヤっぽい。
「これがプリミラで、これがリグマ。この大きいのはリピアネムですね」
「お、レイもなかなかわかってきましたね。でも、こんな適当で大丈夫でしょうか?」
「まあ、身内で楽しむ分にはこれもありなんじゃないですか?」
さすがに、客には説明できないよなあ……。
四天王や
「あれ? あの二つだけ、光が強いですね。調整失敗しました?」
「……そ、そうでしたか? いやあ、なかなか難しいものですねえ」
やっぱり繊細な魔力操作のほうが大変なんだろうな。
特にフィオナ様って、魔力量がずば抜けているわけだし。
まるで寄り添い合うような二つの光は、ピルカヤやリピアネムの星座以上の光を放っていた。
『レイ~。一通り説明終わったよ~。とりあえず、レイに顔合わせしたいってさ~』
「あれ、わざわざ俺なんかに? 律義だなあ」
ピルカヤから呼び出されたので、フィオナ様のほうを見ると、彼女は黙ってうなずいた。
許しも得たことだし、それじゃあ急いでみんなのところに戻るとするか。
「行ってしまいましたか。相変わらず働き者ですねえ。……こっちの一番大きな光はレイ。その隣が私です。……ふふっ、まあこのくらいの遊び心も良いですよね?」
◇
呼ばれた場所に向かうと、すでに魔王軍のメンバーは解散していたらしく、ディキティスと今回蘇生した者たちだけが残っている。
俺が到着したことに気が付いたディキティスは、こちらに近づくと端的に状況を教えてくれた。
「レイ、一通りの説明はすませた。少なくとも、魔王様の前で動かないなんてことにはならないだろう」
「ああ、そういえばマギレマさんの部下も、みんな最初はそうだったもんな」
そこからか。相変わらず、幹部より下の魔王軍は律義なようだ。
ディキティスと話している俺を、彼の部下であろう魔族たちが見つめている。
……なんか、少しだけ居心地が悪いというか、視線が気になる。
「初めまして、ディキティス様から話は伺っています。これからよろしくお願いします」
「ああ。よろしく」
そんな中、ディキティスと同じような鱗を持つ女性が話しかけてきた。
ただし、全身が鱗のディキティスと違い、彼女は下半身のみが蛇のようになっている。
いわゆるラミアという種族だろう。
……名前が覚えてきれなかったため、互いに名乗らずの挨拶になってしまったな。
だけど、一応向こうもこちらに歩み寄ってくれているみたいだし、今回も特にトラブルは
「俺はドリュだ。お前、新入りなんだって? ちょっとこっちにこい」
そう言いながら、俺の腕を引っ張ったのは、ラプティキさんに似た種族の男性。
ただし、ラプティキさんが下半身が大蜘蛛なのに対して、彼は大百足の下半身だ。
それにしても、新入り……。ようやく、俺を正しく理解してくれる魔族が……。
「ボケっとすんな。さっさとついてこい」
その言葉を聞いて、俺は急いでドリュさんについて行くことにした。