【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第329話 明日叱られる部下

「でも、実際のところかなり稼いでいるのでしょう?」

 

「まあ……わりと儲かっていますけど」

 

「ですよね? であれば、溜めるだけでなく使う必要があるのでは?」

 

「……俺、強請(たか)られていますか?」

 

「おねだりです!」

 

 ……かわいく言い出すのだからたちが悪いよなぁ。

 さて、現実的なことから考えよう。

 マギレマさんをはじめとしたレストランは順調。

 ロペスや奥居(おくい)やロマーナのレジャー施設も順調。

 トルベリオからの客も増えたし、そこから快復の湯の宣伝もしてもらって、さらなる集客も見込める。

 

「……じゃあ、回しますか」

 

「さすがは私のレイです!」

 

 これはあれだ。ほら、人手が今後も必要となるわけだし。

 決してフィオナ様を甘やかしているわけでは……。

 

「レイくんって、なんだかんだで魔王様の押しに弱いよなあ」

 

「最近自覚は出てきた」

 

 こんなに嬉しそうに抱き着いてくるのだから、俺には断ることなどできない……。

 これを恐らく、計算せずにやってのけるのだから恐ろしい。さすがは魔王だ。

 

「まあ、ガシャ祭りのときに一回回しただけだし……。魔力はあれ以来溜めていたし……」

 

「おじさんたちに言い訳しなくて良いぞ~」

 

「ちなみに、レイ様のことですから、一度に十人以上は蘇生するはずですが、誰を蘇生させますか?」

 

「人手が欲しいんだし、ディキティスのところの魔族兵たちじゃない?」

 

「彼らはよく働くからな。きっと、すぐに戦力になってくれるだろう」

 

「う~ん……。ひとまずは、ピルカヤの案が良さそうですね」

 

 プリミラの中では、すでに俺が蘇生薬を十本以上引いたことになっているらしい。

 そして、誰もそれを否定せずに、その仮定で話が進んでいくのが地味にプレッシャーだ。

 

    ◇

 

「ということで、新たな魔王軍として、まずは生活に慣れてください」

 

 引いちゃったなあ……。それも、十どころか二十の蘇生薬を。

 フィオナ様の前に跪く様々な魔族の男女たちは、マギレマさんの部下のときと同じく、見るからに規律を重んじているようだった。

 そして、こちらもマギレマさんの部下と同じく、名前覚えられる気がしない……。

 

「では、行きますよ。レイ」

 

「はい」

 

 それで、一旦は部下だけに任せるんだな。

 前回はきっとマギレマさんが、部下を指導してくれたので、今回はディキティスが指導してくれるのだろう。

 そうして、新たな魔王軍として、もうちょっと軽い気持ちで行動するように、心がけてもらうわけか。

 

 となると、俺とフィオナ様は、しばらく暇を持て余すことになりそうだな。

 ……本の続きでも読ませてもらうか。

 

「プラネタリウムでも作ります?」

 

「なんか、とんでもない提案がさらっと出てきましたね」

 

 だが、魔王様のお考えは、俺程度には理解できないぶっ飛んだものらしい。

 なんで急にプラネタリウムの話に……。

 

「いえ、ちょっと暇になりそうでしたし。以前魔導映写館を作った際に、話だけ上がっていましたので」

 

「今回蘇生した魔王軍と、今いるメンバーが交流しているうちにということですか」

 

「魔王の魔力さえあれば、えいっという間に終わりそうですからね」

 

「あっという間にじゃないんですね」

 

 だけど、たしかにフィオナ様なら一瞬だろうな。

 なんせ、太陽すら一瞬で作るのだから、星に見立てた明かりを配置するのも、きっとすぐだろう。

 

「じゃあ、フィオナ様の部屋じゃなくて、魔導映写館に行きましょうか」

 

 そう言うと、フィオナ様はなんかにやにやしながら俺の顔を見てきた。

 なんだその顔は……。うざかわいいな。

 

「へえ~。レイは私の部屋で、私と一緒にくつろぎたかったんですか~」

 

「……別に、本を借りて自分の部屋で読んでも良かったですけど」

 

「私は本のおまけですか!?」

 

「いえ、そういうわけでは……」

 

「私がレイと一緒にくつろぎたいのに、私を避けるとはなんと意地が悪い!」

 

「いえ、俺もフィオナ様と一緒のほうが良いです……」

 

 じゃあ、なんで最初に俺をからかおうとしたんだよ。この魔王様……。

 まあ、一人で読むのも良いけれど、フィオナ様の近くで読んでいるほうが落ち着くし、俺だってそのほうが良いけどさ。

 

「ようやく素直になったレイには、ご褒美として頭をなでてあげましょう」

 

 俺か? 素直じゃないのは俺なのか?

 そんな疑問と共に向かった魔導映写館だったが、当然ながら今は誰もいない。

 今はロマーナもみんなのところにいるから、客が入っていないからな。

 

「では、星を配置しましょう」

 

「お願いします」

 

「……」

 

 どうしたんだ? なんか、天井に向かって指を向けたまま固まってしまったぞ。

 まさか、何かトラブルか? そう思い、俺も急いで天井を見上げるが、これといった異変はない。

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ……。夜空の星の配置って、どうなっているものなんでしょうか?」

 

「あ~……」

 

 そうか。フィオナ様は、今までずっと地底で生活していたから、星がどんな並びなのかわからないのか。

 いや、そういえば俺もそこまで詳しくないな……。星座とか有名な星は知っているけど、どんな間隔で配置されているかすらわからない。

 なら、星を見る機会がなかったフィオナ様に再現するなんて、余計に難しいことなんだろう。

 

「参考になるような、星の本とかありますかね?」

 

「いえ、残念ながらその手の本はなかったです」

 

 そもそも、プラネタリウムを作るのであれば、解説もしなければいけないわけだし、そのあたりの知識も必要なんだよな。

 

「いっそのこと、フィオナ様が適当に星座を作るというのはどうですか?」

 

「星座を……。なるほど、ではあれがピルカヤ座です」

 

「ああ、なんかそれっぽいですね」

 

 夜空を見立てたスクリーンに描かれたのは、燃え盛る炎のような星々だった。

 大きな炎から飛散するように、散り散りに小さな光が配置されているのは、分体を操るピルカヤっぽい。

 

「これがプリミラで、これがリグマ。この大きいのはリピアネムですね」

 

「お、レイもなかなかわかってきましたね。でも、こんな適当で大丈夫でしょうか?」

 

「まあ、身内で楽しむ分にはこれもありなんじゃないですか?」

 

 さすがに、客には説明できないよなあ……。

 四天王や十魔将(とうましょう)の星座なんて。

 

「あれ? あの二つだけ、光が強いですね。調整失敗しました?」

 

「……そ、そうでしたか? いやあ、なかなか難しいものですねえ」

 

 やっぱり繊細な魔力操作のほうが大変なんだろうな。

 特にフィオナ様って、魔力量がずば抜けているわけだし。

 まるで寄り添い合うような二つの光は、ピルカヤやリピアネムの星座以上の光を放っていた。

 

『レイ~。一通り説明終わったよ~。とりあえず、レイに顔合わせしたいってさ~』

 

「あれ、わざわざ俺なんかに? 律義だなあ」

 

 ピルカヤから呼び出されたので、フィオナ様のほうを見ると、彼女は黙ってうなずいた。

 許しも得たことだし、それじゃあ急いでみんなのところに戻るとするか。

 

「行ってしまいましたか。相変わらず働き者ですねえ。……こっちの一番大きな光はレイ。その隣が私です。……ふふっ、まあこのくらいの遊び心も良いですよね?」

 

    ◇

 

 呼ばれた場所に向かうと、すでに魔王軍のメンバーは解散していたらしく、ディキティスと今回蘇生した者たちだけが残っている。

 俺が到着したことに気が付いたディキティスは、こちらに近づくと端的に状況を教えてくれた。

 

「レイ、一通りの説明はすませた。少なくとも、魔王様の前で動かないなんてことにはならないだろう」

 

「ああ、そういえばマギレマさんの部下も、みんな最初はそうだったもんな」

 

 そこからか。相変わらず、幹部より下の魔王軍は律義なようだ。

 ディキティスと話している俺を、彼の部下であろう魔族たちが見つめている。

 ……なんか、少しだけ居心地が悪いというか、視線が気になる。

 

「初めまして、ディキティス様から話は伺っています。これからよろしくお願いします」

 

「ああ。よろしく」

 

 そんな中、ディキティスと同じような鱗を持つ女性が話しかけてきた。

 ただし、全身が鱗のディキティスと違い、彼女は下半身のみが蛇のようになっている。

 いわゆるラミアという種族だろう。

 ……名前が覚えてきれなかったため、互いに名乗らずの挨拶になってしまったな。

 

 だけど、一応向こうもこちらに歩み寄ってくれているみたいだし、今回も特にトラブルは

 

「俺はドリュだ。お前、新入りなんだって? ちょっとこっちにこい」

 

 そう言いながら、俺の腕を引っ張ったのは、ラプティキさんに似た種族の男性。

 ただし、ラプティキさんが下半身が大蜘蛛なのに対して、彼は大百足の下半身だ。

 それにしても、新入り……。ようやく、俺を正しく理解してくれる魔族が……。

 

「ボケっとすんな。さっさとついてこい」

 

 その言葉を聞いて、俺は急いでドリュさんについて行くことにした。

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