【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「いいか? 他の種族は知らないが、お前は魔族だ。だからこそ、四天王様や
「はい」
魔王軍に新たな魔族が加入するなんて、いつ以来だ。
愚かにも魔王様のもとから逃げ出す者こそいたが、その逆なんてまるでいなかったからな。
人類と敵対し、その戦いが激しくなったとあれば、仕方がないことなのかもしれねえ。
だから、こいつはそんな状態で魔王軍に入った見込みがあるやつだ。
俺が、しっかりと魔王軍について教えて面倒を見てやらねえとな。
「魔王軍に入ったってことは、すでに魔王様にはお会いしたんだろ?」
「はい。勇者に殺されかけたところを、助けてもらいました」
「お、おう……。苦労したんだな。お前も」
なんだか、いきなりとんでもない話を聞かされてしまった。
そうか、勇者に殺されかけたのか。そんな状況で救われたのなら、魔王軍に入ってもおかしくないな。
俺なんて、勇者でもないやつらに殺されたからなぁ……。
「じゃあ、先に四天王様を紹介してやる。そうだな……。まずは、ピルカヤ様を」
『呼んだ~?』
「ピルカヤ様! すみません。お仕事中邪魔してしまいまして!」
『別に平気~。ボク、優秀だからね』
さすがは四天王様だ。能力が高く、心も広い。
俺たちみたいな下っ端相手でも、気兼ねなく接してくれるとは。
『それで、なんか用?』
「はい! こいつは、レイといって魔王軍の新入りです!」
『うん。知ってる』
「そうでしたか! これからピルカヤ様の力を、お借りすることもあるかと思いますので、よろしくお願いします」
『え? なになに? 新しい仕事?』
「いや、ようやく仕事減ったばかりなんだから、そんなわけないだろ」
……ため口!?
なんてやつだ……。これが、最近の若い魔族ってことか。
いや、こういうときこそ、俺が指導してやらないと。
『ボク、まだまだ働けるんだけど~』
「テラペイアとダスカロスが怒るから、やめておこうな」
『ちぇ~。期待したのにな~』
……さすがはピルカヤ様だ。こんな下っ端である俺たちにも、ここまで気さくに話しかけてくれる。
しかも、レイのやつの口調を指摘するでもなく、受け入れてくださるなんて……。
いや、こいつテラペイア様とダスカロス様も、呼び捨てにしてるな。
なんてやつだ……。やはり、礼儀を知らない若い魔族というわけか。
「ピ、ピルカヤ様。失礼しました。それでは、俺たちは他の四天王様のところに挨拶に行きますので」
『オッケ~。じゃあ、またね~』
「……レイ」
「はい?」
「お前。ちゃんと敬語使わないと駄目だぞ?」
「え、使っていますよ?」
……どういう意味だ?
思わず動きを止めて考えることにしたが、こいつの言いたいことを理解した。
もしかして、俺に敬語を使っていると言いたかったのか?
「ピルカヤ様には!?」
「なんか、敬称も敬語もいらないと言われたので」
「……っっ!? ほ、本人がそう言ったのなら、俺に口出しはできないか。悪かった」
「いえ、俺もなんかおかしいなとは思っているので」
良かった……。こいつ、そのへんの感覚はちゃんとしているらしい。
それにしても、敬語も敬称も不要とは、下っ端の魔族相手にとんでもないこと言われる方だな。
もしかして、無理難題をふっかけて魔王軍から追い出そうというつもりだったのでは……いや、四天王様がそんなことするわけないか。
◇
「プリミラ。また畑仕事?」
「はい。万能薬とまではいきませんが、いくつかの病に効く薬草も育てています」
「そういえば、ガシャ祭りで引いた種の使いどころは決めた?」
「いえ……。難しいものですね」
……なにこいつ。
「顔合わせ? 何? おじさんの顔、そんな見たいの?」
「いや、なんか挨拶回りしたほうが良いのかなって」
「律義だねえ。まあ、働きすぎて怒られないようにな~」
なんで、こんなにも……。
「む、レイ殿とドリュか。食事には、まだ早いと思うぞ」
「男の子だからね~。お腹空いたなら、いつでも作ってあげるよ?」
「いや、そういうわけじゃなくて」
馴染みすぎてない?
「レイ様。快復の湯の運用について、後ほどテラペイアと一緒に相談させてもらえますか?」
「わかった。それじゃあ、挨拶回りが終わってから」
「ところで……なぜ、今さら挨拶回りを?」
「なんか、そのほうが良いかなって」
四天王様に十魔将様と、なんかやたらと親しく……いや、十魔将様にいたっては、むしろレイを上だと思っている方まで……。
魔王軍を紹介しようと思ったのだが、すでに顔見知りというか全員と親しいらしい。
では施設をと思ったが、憎き勇者どもの所業により、俺の知っている地底魔界はなくなっていた。
代わりに新たな施設が作られたようで、むしろ俺がそれらを紹介される始末……。
え、もしかしてディキティス様が言っていた蘇生薬の件って、そういうことなのか?
ディキティス様は、魔王様とレイの協力によって、蘇生薬が作成されたと言っていた。
俺は、それはあくまでもほとんどが魔王様のお力だと思っていたが、まさか……レイの力も欠かせないものだったのか?
「……なあ、レイ」
「どうかしましたか?」
「俺たちに使ってもらった蘇生薬なんだけどよお。誰が作ったんだ?」
「ええと……今回は、俺ですね」
決まりだ。今回はと言ったので、おそらく魔王様とレイどちらも蘇生薬を作れるのだろう。
つまりだ! 魔王様と同等のお力ということになるんじゃないか!?
「……あの~。四天王様や十魔将様と、仲良さそうですよね? そちらの役職って、四天王様や十魔将様と同等だったりしますか?」
「なんで敬語に……。いえ、四天王でも十魔将でもありませんけど」
よ、良かった……。さすがに、そうだよな。
いくらなんでも、そんなに偉い相手ではなかったようだ……。
「フィオナ様からは、側近とか言われてしまっていましたし、最近では宰相なんて言われましたけど、俺みたいな下っ端にそんな役職は」
「すみませんでした」
宰相じゃねえか!
ディキティス様!? なんで、この方の役職教えてくれなかったんですか!?
「……なんか、テクニティスのときも似たようなことがあったような」
ほら! テクニティス様を呼び捨てにしてるし!
というか、魔王様のことも名前で呼んでなかった!?
……はっ! そういうことか!
宰相。つまり、魔王様の補佐であり、魔王軍運営の実務担当みたいなもんだろ?
きっと、魔王軍の諸々の取り仕切りにも関わっているはずだ。
その中には、魔王軍の者たちの意識や素行の調査もあるはず……。
だから、こうして無害な下っ端魔族を演じて、俺たちの本音を引き出そうとしているんだな!
なんて恐ろしい方だ……。
とりあえず、さりげなく言葉遣いから直していくとしよう。
「レイ様……。ちなみに、地底魔界の運営はどなたが取り仕切っているのでしょうか?」
「それなら、俺がフィオナ様に丸投げされていますが」
「レイ様……。俺に敬語は使わないでください。名前に敬称もつけないでください……」
やべえ。この方やべえ。
実質、ほぼ魔王様の代行みたいなもんじゃねえか。
なんで、こんな偉い方が、俺に敬語使っていたんだよ……。
「えぇ……。また、テクニティスみたいなことに……」
「俺、テクニティス様よりも下っ端ですからね!?」
俺なんか余計に呼び捨てにされてしかるべきだろう。
レイ様、怖え……。知らず知らずのうちに、色々と見られてしまっていたということか……。
◇
「ディキティス様」
「なんだ?」
レイとの挨拶を終えた後、アスピダが私を呼び止める。
話は終えたので解散するつもりだったが、どうやら他の者たちも、まだ何か言いたいことがあるらしい。
「単刀直入にお伺いします。レイという魔族について、その立場について、どう思っていますか?」
「……自分の立場を、そろそろ理解してもらいたいものだな」
「そうですよね!」
側近ではない。そして、最近では魔王様から宰相と言われているが、そちらを認めようともしない。
一つ言わせてもらえるのであれば、宰相も違うとは思うが、側近と違って宰相ならば、まあ問題もないと思っている。
だが、本人がそう呼ばれるのを嫌っているようなので、私からもそれを押しつけるのは良くないのだが……。
「まったくもって、なかなかに頑固で困る」
「ディキティス様が、そのように思っているのであれば、我々はディキティス様に従います」
「そうか。ではお前たちからも言ってくれ」
「はい! 四天王様や十魔将様を差し置いて、新参者が私たちの上に立つなど認められません!」
……反乱か?
どうやら、私の説明が不足していたか、あるいは部下の考えを理解できていなかったらしいな。
仕方がない。どうやら、しっかりと話し合う必要がありそうだな。
部下を暴走させかけた私にも責任がある。部下を説教した後は、私自身もダスカロスに叱られに行くとしよう。
◇
一通りの魔王軍の面々と話を終え、ドリュと一緒に、なんとなく集合場所まで戻ることになった。
さすがにもうディキティスや他の者たちはいないだろう。そう思っていたのだが、意外なことに全員が揃っている。
……というか、なんかお説教されてない?
ドリュも、この状況がよくわかっていないようで、なんとなく周囲の者に並んでしまった。
「ドリュ」
「は、はい!」
「なぜそこに並ぶ? まさか、お前もこの者たちと同じく、レイを認められないということか?」
「い、いえ! ……え? 何? お前らまさか、レイ様に反抗でもしようとしたのか? やめとけ! あの方、ほんとやべえからな!」
「うむ。それがわかっているのなら問題ない。お前は、一緒に説教される必要はないぞ」
問題しかない。問題しかないぞディキティス……。