【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第331話 じかくが1ポイントあがった!

「……なるほど、それは大変でしたねえ」

 

「なんか、ディキティス自身も、ダスカロスにお説教されに行きましたからね」

 

 本当に、困ったものだ。

 せっかくのホワイトな魔王軍。パワハラなんて目も当てられない。

 

「そろそろ……本気を出すときがきたようです」

 

「組織の改革ですか」

 

 普段はぐーたらな魔王様だが、さすがに魔王軍全体の規律の問題となると、そうも言っていられないらしい。

 フィオナ様は、心なしか普段より一割ほどキリッとした顔で、ピルカヤに指示を出し始めた。

 

「ピルカヤ。本日の業務後に、全員を集めてください。……いえ、いっそのこと今日はもうお休みにして、恩賞の儀でも」

 

 なんだか話が大きなことになりそうだな。

 単にパワハラを禁止する通達をするだけかと思ったが、これを機に魔王軍の者たちを労うことにしたのか。

 フィオナ様が、珍しく魔王として働こうとしていることだし、俺は可能な限り補佐するように徹しよう。

 

「むむむ……。さすがに、急なお休みは大変ですね。では、明日にします。明日全員お休みなので、通達してください。……嫌がるんじゃありません! 魔王ですよ?」

 

 ……まあ、ピルカヤは嫌がるだろうけど、それを魔王という立場で封殺するあたり、これも一種のパワハラかもしれないが。

 とりあえず、今日は普通に仕事することにしたらしいし、俺もダンジョンの様子を見に……。

 なんですか? 俺の腕をつかんでいますけど、何か用ですか?

 

「レイは、今日は一日私と一緒です」

 

「……寝るんですか?」

 

「それも良いのですが、明日はみんなの働きを褒めて、褒美にアイテムを配ろうと思っています。なので、一緒に魔王ボックスの整理をお願いします」

 

「ああ、そういうことですか。それなら喜んで手伝います」

 

 本気だ。今回のフィオナ様は、本気で明日の場を成功させようとしている。

 なんか、いつもと違ってだらだらした感じが一切ないし、本気で挑んでいるのがわかる。

 なら、俺はそれを邪魔することなく、成功できるように手伝わせてもらうとしよう。

 

    ◇

 

 全員というわけではないが、ガシャ祭りにいたメンバーは少なくとも揃っている。

 そして、それに加えて蘇生したばかりの二十人のディキティスの部下たち。

 要するに、フィオナ様が信頼できている者たちが、ここに集結しているということだろう。

 

 俺は、フィオナ様の隣でその様子を見ているわけだが……。

 フィオナ様が玉座に立ち、みんなよりも高い位置にいるのはわかる。

 だけど、さすがに今回は、俺も下にいたほうが良くない?

 四天王のみんなも、最前列とはいえ玉座には立っていないのだから。

 

「それでは、恩賞の儀を始めます」

 

 よそ行きのフィオナ様だ。

 この場にいるのは、気心知れた相手ではあるものの、こういう場ではちゃんとするんだな。

 それに、思っていたよりも本気だ。これまでも、働きに応じて報酬を与えることはあったが、ここまで大々的でもなければ、ここまで重々しくもなかった。

 ロペスとか、わりと気軽に報酬を与えられることが多かったからな。

 

「褒美は都度与えていますが、今回はわけあって改めてその功績を称える必要があるようです」

 

 それはやはり、大きくなってきた魔王軍で、誰がどういう功績を上げているか、改めて周知するためにということか。

 ピルカヤとか、すごく喜びそうだな。

 

「まずは四天王。プリミラ、ピルカヤ、リグマ、リピアネム。前へ」

 

 フィオナ様の言葉を聞いて、四天王が真面目な表情で玉座へと登壇する。

 そして、片膝をついてひざまずくと、一言も言葉を発することなく、各々の功績を聞いていた。

 

 金品を与えたり、俺と一緒に選んだアイテムを与えたりと、実に魔王様らしい姿だ。

 ピルカヤだけでなく、心なしかプリミラも嬉しそうにしている。

 

 そうして、十魔将(とうましょう)へと続き、それどころか転生者や現地で捕獲した従業員まで、順々に呼び出されては称えられていく。

 いずれは、ディキティスの部下たちも、こうして褒められるんだろうな。

 

    ◇

 

「最後に、レイ」

 

 ……そろそろ終わりかと思ったが、俺の名前まで呼ばれた。

 もしかして、締めの言葉でも言わされるのか?

 まいったな。何も考えていないぞ。

 

「どうしました? 他の者と同じく、私の前にひざまずきなさい」

 

 ……フィ、フィオナ様が、俺に対してまで魔王みたいだ!

 なんだか感動する。いつもの優しいフィオナ様ではない。

 まるで初めて会ったときの、魔王としてのフィオナ様のようで、とても新鮮な気持ちだ。

 

「は、はい! すみません」

 

 言われるがままに、思わずフィオナ様の前にひざまずく。

 いつもはかわいいフィオナ様も、今日は美しい魔王としてのフィオナ様になっている。

 ……まあ、どちらも好きだが。

 

「あなたは、魔王軍の復興に最も貢献しました。ダンジョンの作成、蘇生薬の生成による魔王軍の復活、物資の調達、魔王軍の運営と多岐にわたり貢献しています」

 

 まあ、だいたいはいつもやっていることの話だな。

 要するに俺の趣味のダンジョン作りと、フィオナ様の趣味のガシャの話だ。

 

「この働きは、常々称えるべきものではありますが、改めて皆の前で功績として刻むべきものでしょう」

 

 いつも褒めてもらっているので、俺はそれで十分なんだけどなあ……。

 

「よって、レイをこの場で正式に宰相に任命します。今後も魔王軍の実務を担い、私のために働きなさい」

 

「はい……?」

 

 フィオナ様のために働く。

 それは良い。それは出会ったころからずっと変わっていない思いだ。

 だけど、正式に宰相として任命……?

 いつものように、言葉だけの適当な宰相と違って、こんな場所で大々的にそんなことを言ってしまったら……。

 

 うわぁ……。なんだよこの歓声。

 フィオナ様が蘇生薬を引き当てたときじゃあるまいし、そんな盛り上がられても困る。

 逃げ道は……と考えていると、フィオナ様が小声で俺にだけ聞こえるよう、囁いてきた。

 

「私に仕えたいと言ってくれましたよね? なら、覚悟を決めてください。あなたには、ずっと私の傍で働いてもらいます」

 

 ……ずるいなあ。

 そんなことをそんな不安そうな顔で言われたら、断れるはずないだろう。

 元より決めていたことだ。俺は、この魔王様に仕えて、この魔王様のもとで貢献し続ける。

 なら、与えられた役割を受け止めて、しっかりと活躍すると腹をくくるか……。

 

「……今後も、宰相として魔王様の役に立てるよう、精進します」

 

 本当にずるい。

 そんな花が咲いたような笑顔をされては、俺も覚悟を決めるしかないじゃないか。

 

「いやあ、良かったです。レイが宰相を引き受けてくれなかったら、魔王軍全滅でしたからね。私をまた一人にする気ではなくて、本当に良かったです」

 

 いや、今の魔王軍なら、そう簡単に全滅とはならないと思いますよ?

 

「む……。わかっていなさそうな顔ですね? あなたが、今後も自由にダンジョンの指揮をするのであれば、宰相であることを自覚してください」

 

「いえ、ですが……」

 

「真面目なレイがダンジョンを指揮しないと、他に誰が私の代わりに働くというのですか」

 

「……」

 

 たしかに、この魔王様の代わりは必要だよな。

 魔王様がゆるい感じだからこそ、この魔王軍は雰囲気の良い職場になっている。

 であれば、ゆるい魔王様を補佐するために、誰かが魔王様の代わりをやらないと駄目か。

 

「……わかりました。改めて、宰相として働きます」

 

「ええ、よろしくお願いします。私のために、今後もずっと働いてもらいますね?」

 

 う~ん……。なんか、ブラックな言葉に聞こえる。

 聞こえるけど、この魔王様と一緒なら、それでも良いかなと思えてしまうんだよなあ。

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