【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「はめられた気はする」
「まあまあ、魔王様の発言ももっともだと思うよ?」
「そうかなあ?」
「そりゃそうだ。そろそろレイくんも、偉いと自覚してもらわないと、これから復活する魔族が勘違いして苦労するぞ?」
勘違い……。
だけど、宰相と言われても、何をすれば良いのか。
「俺は、今後どうすれば良いんだ……」
「何も変える必要はないだろう。ダンジョンを作る。侵入者を集客か撃退する。魔王軍のための設備を作る。全体的な指揮をする。そして、魔王軍を蘇生する。どれも君が今までやってきたことだ」
ダスカロスに言われるが、そんな普段通りのことで良いのか?
せっかく宰相に任命してもらえたのであれば、もっとすごい成果が必要になるんじゃないか?
「蘇生薬を百個くらい献上するとか、それくらい要求されているのかと思った」
「そこまで無茶な要求したことありませんけど!?」
がんばればいけるか……?
そのためには、もっと集客が必要になりそうだな。
「つまり俺は、今まで通りダンジョンを作れば良いと」
「その通りです! そして、できる限りその成果を誇りなさい!」
「誇るって……あまり、自慢するのも波風立てそうで嫌なんですけど」
「成果の正当な評価は大事だよ? じゃあレイは、ボクの仕事否定するの?」
「いや、ピルカヤの力は魔王軍に必要不可欠だろ」
「ふふん! でも、それってレイだって同じでしょ? ダンジョン作りも宝箱も、レイがいなくなったらできなくなるよ?」
まあ、それはそう……なのか?
たしかに、ダンジョンの作成は俺のほうが効率は良いし、宝箱は他に作れる魔族はいないが。
「そうだな……。君が私たちのために頑張っていることは知っている。ダンジョン作成に、アイテムや物資の獲得。それは魔王様が言ったように、非常に大きな功績だろう」
「俺は好きにやっているだけなんだけどなぁ」
「だが、成果は大きい。そして、君が想像している以上に、魔王軍への影響も大きい。つまり、厳しい言い方をすると、責任を持ってこなすべき仕事といえる」
「責任……」
「もちろん、これまで君が、無責任に行動したわけではないだろう。だが、ピルカヤもそうだが、自分の仕事を誇ることも大切だ」
たしかに、無責任にダンジョンを改築したら、魔王軍にとっては、たまったものじゃないよなあ。
思いつきで行動していたが、俺は魔王軍のために行動してきたつもりだ。
なら、それを誇るべきであって、今後も無責任に行動しないよう、宰相という役職を受け止めるべきなのだろうな。
「まあ、君がやることを変える必要はない。これまでどおり働きつつも、宰相であると自覚すれば良いだけだ」
そこが難しいんだけどな……。
「魔王様が宰相と命じたレイくんが、下の立場の魔族に舐められる。それって、命じた魔王様も舐めてるってことになるんじゃないのかねえ?」
「……なるほど!」
それは良くない。それは良くないぞ!
そういうことか。俺だけが下に見られるなら全然構わないが、そこからフィオナ様まで軽く見られるのは良くない。
宰相と任命されたからといって、別に今度の活動を何も変えるつもりはないが、そこの意識だけは変えていかないとまずいな。
「つまり、俺が下に見られたら、フィオナ様が下に見られたと思えと」
「そうですね。そうすれば、レイ様も自覚していただけるかと」
そうとわかれば話は簡単だ。俺はいつも通りに過ごすだけで良い。
必死に役立とうとしていたが、どうやらそれが魔王軍の宰相としての仕事だったようだからな。
普段通りにしつつ、それでいて宰相という扱いを否定しないというだけならば、俺もなんとか対応できることだろう。
というわけで、さっそくダンジョンの見回りをしよう。たしか、いくつかの罠の補充が必要だったはずだ。
「レイって案外単純だよね~」
「初めから、こう言っておけば良かったんですね。これから蘇生する子たちとトラブルが起きる前に、自覚してもらえて良かったです」
「……おじさん。なんかいや~な予感がしているんですけど。いえ、気のせいかもしれませんがねえ」
◇
「ようボス。なんか吹っ切れたような雰囲気だな」
「ああ。なんかいきなり宰相に任命されたけど、やるべきことが変わらないと理解したからな」
「まあ、そうだろうなあ……。むしろ、今までのボスの働きで、下っ端を公言していたのって、冗談かと思っていたくらいだぜ」
「下っ端というか、雑用感覚だった」
「雑用は、ビッグボスの代わりはできないと思うぜ……」
だよなあ。ということは、今後も俺に求められているのは、フィオナ様の魔王部分を担当ってことになる。
ホワイトな魔王軍はそのままに、それでいて怠慢ではいけない。
まあ、うちはわりと自主的に仕事をやりすぎるやつが多いから、どちらかというとそちらの不安のほうが大きいか。
あとは、新人従業員たちの中でやる気が無い者たちは、ちゃんと働くように言い聞かせる必要があると。
「そういうわけで、ロペスたちが働きすぎるようなら、俺もがんばって罠を駆使してでも休ませるよ」
「え……」
まあ、とりあえずは檻だな。さすがに怪我はさせられないし、毒も駄目だ。
……だけど、イエローバジリスクの麻痺なら、いけるか?
「あとは、宰相として罠をもっと研鑽していかないと……」
「おい、やめろ。やめろぉ!」
「ア、アナンタの旦那……。ボスがやばいことになりかけている」
失敬な。宰相としてがんばろうとしているだけなのに。
あと、アナンタは、ついに俺の腕をつかんで止めようとしてくるようになったらしい。
だが、その程度ではダンジョンメニューの選択は止められないぞ。
「ロペス……。ダスカロスとプリミラを呼べ。こいつ、やる気が空回りしてる」
「いや、仕事だけに熱中せずに、ちゃんと休みながらやるぞ?」
「ダンジョンに何しようとしていた?」
「魔王軍にふさわしい、生存率1パーセントくらいの難易度にしようと……」
「宰相なら、ちゃんと考えろよぉ……」
考えた結果がこれなんだけど……。
なんとなく、それを言ったら余計にアナンタに怒られる気がした。
仕方ない。まずは、プリミラとダスカロスを交えて話を聞くとするか。
「あと、後ろのウサギは正座しろぉ」
「え~。せっかく面白そうだったのに~」
この後、俺とイピレティスは、アナンタとプリミラとダスカロスにお説教というか、説得に近い何かをみっちりとされることになった。
◇
「見ろ。あれがレイだ」
「……な、なんで、あんなに執拗に罠を仕掛けているのでしょうか?」
「最大限の組み合わせを今も模索しているのだろうな」
「……あの。ダンジョンもあり方が変わったため、こちらは生還者を多めにすると聞いたのですが」
「……宰相を自覚したことで、やる気に満ちているのだろうな」
「殺る気に満ちたら、問題なのではないでしょうか……」
「そのためのプリミラ様とアナンタ様とダスカロスだ」
ディキティス様の言葉に、仲間たちがおっかなびっくり質問を続ける。
うわぁ……。俺、あんな方を後輩だと思っていたのか。
いや、後輩には違いないけど、恩賞の儀で任命されたとおり、レイ様はすでに宰相として活躍されていたようだ。
ここまでスムーズに、ダンジョンを強化し、魔王軍で働く者たちとやり取りできるなんて、もはや魔王様に代わり実務を担う者だろ。
むしろ、なんで今まで宰相に任命されていなかったんだよ。この魔族……。
そもそも、モンスターや罠どころか、ダンジョンの改装や施設作成をあんな気軽にできるって……。
これで下っ端を名乗っていたのだから、意地の悪い方だな。本当に……。
しかも蘇生薬を作れるというのが、とんでもない。
今後、この方の働きによって、次々と魔王軍のメンバーも蘇生することだろう。
そして、そんな魔王軍の者たちは、俺たちのようにレイ様のことを新入りと勘違いする可能性は大いにありうる。
俺は、そんな不幸な勘違いをする者たちを、全力で止めてやらないといけないな……。