【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「人類側の従業員が、増えている」
「ああ。この前のトルベリオの伝手が、案外良かったのかもしれねえな」
病を治した際に、ロペスが交渉してくれたからな。
治療する代わりに働けとか、選択肢がない状態で向こうに選ばせたようなものだし、反感を買うかと思っていたんだが、案外そうでもないらしい。
なんでも、儲け話として鼻が利く奴らは、こちらに乗ってくれたとか。
「あとは、まあこっちはレアケースだが、家族を連れてくるやつがいたりな」
「ああ。ずいぶんと思い切った人類もいるものだ」
「そもそも、冒険者なのに、家庭を持っているやつがいることに、おじさん驚いてるよ」
ならず者集団みたいなものらしいからなあ……。
うちの侵入者はそんな感じであり、うちの利用客はルールを守ってくれている。
だが、そんな利用客ですら、定職についているわけではなく、世間からは爪弾きにされているらしいからな。
その日暮らしというのは、世間体があまり良くないのかもしれない。
「魔族以外の人手が増えるなら、前々から言っていた新しい店という手もあるな」
「店員はそれでも良いんだけど、管理者が問題だよねえ」
「俺、もう嫌だからな? レストランだけでがんばってるし」
カーマルの言葉を聞いて、ガナが心底嫌そうな顔をこちらへ向けてきた。
まあ、仕方がないことだろう。ガナはすでに一つの店を切り盛りしてくれている。
これ以上増やすのは、さすがに問題だ。
……ガナなら、できそうではあるけれど。
「おい、嫌だからな? なんか、俺ならまだいけるとか思ってるだろ」
「思いはしたけど、思いとどまったから大丈夫」
「ほんとかよ……。そんで、ヘタレ。お前、何をわかったような顔してんだ」
「ヘタレ言うな。ようやく、お前もレイの恐ろしさの一端が理解できたんだと思ってなぁ……」
「……なんか、お前が言うと、もう何も言い返せない」
「言い返してくれよぉ! 俺ばっかり、能力を信頼されて無茶に付き合わされてんだぞぉ!」
信頼しているのは良いことじゃないか……。
実際に、信頼に応えて良いストッパーになってくれているし。
というわけで、リグマやその分体にこれ以上の負担はかけられない。
ウルラガも意外と真面目にカジノの用心棒をこなしており、たまに荒事を鎮める生活に満足しているようだしな。
「タイラーや風間たちに頼みたいところか……」
「僕たちですか? ちなみに、どんなお店を考えているんでしょうか?」
そういえば、それを言っていなかったな。
まあ、まだあくまで構想であり、すぐに店を作ってというわけではないが、話しておくか。
「ラプティキさんの服を売ろうと」
「やります!」
「思う……」
食い気味というか、発言の途中で世良と原が承諾してくれた。
……この二人、ラプティキさんに色々と提案しては、作ってもらっているみたいだからなあ。
彼女も転生者としての知識を喜んで聞いているみたいだし、やはり相性が良いらしい。
もっとも、これは時任や奥居にも言えることなので、転生者女子組は全員同じようなものだが。
……転生者男組の俺たちとしては、割り込む余地のない領域の話だ。
「なんかすみません。二人が……」
「やる気があるのは良いことだ」
「でも、大丈夫でしょうか? レストランの給仕なら、他の従業員がいますけど、買い出しとかは……」
「タイラーたちがいるから、そのへんもどうにかなると思う」
風間たちが引き入れてくれた現地の従業員ではあるが、自然とその後釜として育っていったからな。
そのおかげで、こうして新たな店を風間たちに任せることができるようになったわけだし、良い連中を紹介してくれたものだ。
「まあ、すぐにってわけじゃないから。そのへんは追々話していこうと思う」
「あれ? レイさんって、その気になればお店くらいすぐ作れるんじゃないんですか?」
世良の言うとおりではあるが、店はどうせ一瞬で作れるからな。
必要になったときに作るくらいで問題ない。
「……」
見られている。
なんか、世良と原がすごい見てくる。
風間はその後ろで申し訳なさそうに見てくる。
……これは、店だけでも先に作ってほしいという嘆願か?
「……場所を決めたら、店だけでも作るか?」
「ありがとうございます!」
「すみません……」
やる気があるのは良いことだよ。本当に。
じゃあ、まずは、ラプティキさんとピルカヤとダスカロスに相談かな。
「ダスカロスとピルカヤ……あと、ロペスで立地について相談してくれ。風間たちが店長になるのであれば、エーニルキア時代の顔見知りとかは避けつつという感じが良いだろうな」
「心得た」
ピルカヤが見て、ロペスが儲け話としての観点で発案し、ダスカロスが取りまとめれば問題ないだろう。
場所さえ決まれば、どうせ一瞬だ。
「あとは、転生者女子組。ラプティキさんに、売り物となる服の提案をしてもらえるか?」
「売り物……。責任重大ですね!」
時任が気合を入れつつ応えようとするが、そこまで責任を負う必要もない。
というか、普段の彼女たちの要望と同じような感じで問題ないだろう。
「自分が欲しい服のアイディアを伝えるだけで良いぞ。そうしたら、ラプティキさんがうまく作ってくれるだろうし」
「ええ。最近では、地底魔界の仲間たちの服もひと段落ついたし、そっちの作業に集中できるわ」
蘇生してから毎日服を作っていたからなあ。
だが、彼女は彼女でマギレマさんの同類らしく、止めなければずっと服を作っていた。
そして、食事と違って服はある程度作った時点で、それ以上作ってもかさばってしまう。
その結果、ラプティキさんは、そろそろフィオナ様の服を無限に作る段階に入ろうとしていたからな……。
「別にどっちも急ぐ必要はないから、がんばりすぎないように働いてくれ」
なんとなく、そのまま解散の指示を出してしまったが、特に誰も気にする様子もない。
……宰相とか偉そうな役職をもらったときは、どうなるものかと思っていた。
だが、案外やることが変わらないというか、俺ってずいぶんと前から、その手の仕事をしていたみたいだな。
「……」
「なんですか。にやにやして」
「がんばっているな~って思っただけですよ? 私の部屋で、膝枕でもしてあげましょうか?」
「……お願いします」
「正直なのは良いことです」
俺の言葉に、フィオナ様はさらに上機嫌になりながら、俺を部屋へ連れ去った。
正直というか……そう答えないと機嫌悪くなるじゃん。
まあ、してほしいのも本当だから、こっちも強く言えないけどさあ。
◇
「とりあえず、私たちはレストランに戻るか」
「そうね。そろそろお昼の準備しないといけないし」
そう言いながら、今の光景を当然のことのように受け入れているかつての同僚たち。
私たちはディキティス様の部下であり、彼らはマギレマ様の部下なので、まったく同じ境遇というわけではない。
さらに言うと、彼らのほうが私たちよりも早くに蘇生されているため、すでに現状に慣れつつあるようだ。
「ね、ねえ……。いつもあんな感じなの?」
なので、つい彼らを呼び止めて聞いてしまった。
すでに、何度もディキティス様から言われている。
レイ様のおかげで蘇生ができた。レイ様は魔王様のお気に入り。
だけど、つい先日の恩賞の儀で、初めて宰相ということを自覚されたと聞いている。
だというのに、なんなのだろう。あの慣れたやり取りは。
四天王様も
本当に、宰相になったばかりなのか……?
私たちが蘇生する前までは、いったいどのような存在だったというんだ……。
それらを全て含めた答えを、ファギトとプシシモから教えてもらうことになった。
「いずれ慣れる」
「ええ、どうせ慣れるから。大丈夫よ」
慣れるかなあ……?