【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
アルマセグシアはとても大きな国。
色んな国から、色んな種族が訪れるから、どんな人たちが国にいるのか、住んでいる私たちでさえわからない。
そんな人たちが、色んなお店を作るから、国の中にどんなお店があるのか、これもまたわからない。
「国の中にダンジョンができたらしいよ」
「それ、もうけっこう前の話でしょ? オルナス様が解決してくれたわよ」
「モンスターたちが、ここを襲わなくて良かったよね」
仲間の人魚たちと、水路を泳ぎながら情報を交換する。
中には古い情報もあるけれど、広い国だから、自分が知っているけれど、他の仲間は知らないという情報も少なくはない。
なので、手当たり次第に新たな情報は仲間に知らせている。
「そのオルナス様だけど、死んじゃったのよね」
「なんだっけ。欲望のダンジョン? とかいう場所の調査中に、死んじゃったとか」
「プリズイコスのイド様に殺されたって聞いたよ?」
「それはさすがに、嘘だと思うわよ……」
あれ? そうなのかな。
なんか、そんな噂をどこかで聞いた気がするんだけど。
「あと、オルナス様はもう蘇生したって聞いたよ」
「あ、それ私も聞いた」
「良かったわ。やっぱり、勇者様が国にいるといないでは大きな違いだもの」
なんせ勇者だもんね。
人類の中でも特に強い上位五人だから、国を守ってくれているだけで安心する。
だけど、オルナス様は無理をすることが多いから、そこだけは心配になる。
「あまりがんばりすぎないでほしいね」
「そうねえ……。オルナス様、アルマセグシアのために働きすぎだし」
「たまには、この国のお店とかで息抜きすれば良いのにね」
それとも、案外外の国で息抜きできているのかな?
さっき話していた欲望のダンジョンって、なんだかいろんなお店ができているみたいだし。
「そういえば、欲望のダンジョンにカジノがあるらしいよ」
「うん。アルマセグシアからも何人か通っているみたいだね」
「オルナス様も、そこで遊んだりしているのかしら?」
「テイランのテンユウ様の仲間や、サンセライオのリズワン王も、そこに通ってるって聞いたよ」
「……さすがに、それも嘘だと思うんだけど」
これも駄目かぁ。
出所はわからない噂も多い。だから、真偽のほどはちょっと怪しい話も多いんだよね。
このぶんだと、エーニルキアのジェルミ王子が死んじゃったとか、プリズイコスの中でも強い獣人のルフさんが死んじゃったとかも、きっと嘘なんだろうなあ。
「ちょっとお腹空いてきたね」
誰かがそう言って、そろそろお昼も近い時間であることを確認する。
もうそんな時間かあ。一日って短いねえ。
「それじゃあ、隠れ家にでもいきましょうか」
「隠れ家?」
なにそれ。なんか面白そう。
「あれ、知らなかったっけ? ちょっと見つけにくい場所にある洞穴のレストラン」
「え、知らない。そんなのできたんだ」
「あなた、変な噂はいっぱい仕入れるのに、そういう有名な噂は知らないことが多いわね」
「あれ? もしかしてみんな知ってるの?」
「私、こないだ初めて行ったけど、美味しかったよ」
「私はもう何度も通ってるわね」
その後も、みんな少なくとも一度は通ったことがあると教えてくれた。
そっかあ。行ったことないのは私だけかあ。
だけど、そのぶんどんな場所なのかが楽しみでもある。
「じゃあ、そのレストランに行こう!」
「なんであなたが先導するのよ。道わからないでしょ……」
そうだった。でも、なんとなくあっちのほうにある気がする。
大人しくみんなの後をついていったけれど、なんとなくの方角は合っていたみたいで、私はこっそり自慢げな気持ちになった。
◇
「カジノって何があるんだろうね」
「スロットとかカードとかルーレットとかダイス?」
「それが、欲望のダンジョンのカジノは、宝箱を開ける賭け事が流行ってるらしいわよ」
「へ~。何が出てくるんだろう」
「伝説の剣とか、伝説の鎧が出るのかもね」
「そんな簡単に出てくるのに、伝説なのかなあ」
「……たしかに、伝説っぽい剣とかかな?」
それなら、テイランやサンセライオの偉い人が通うのも、案外本当だったりして。
宝箱かあ。私たち人魚にとっての宝といったら、剣や鎧じゃないよね。
「もしかしたら、潮流の宝玉とか出てきたりして」
「……いやいや、そんなものまで手に入ったら、アルマセグシアの王様よりも偉くなっちゃうよ」
「だよねえ」
まあ、言ってみただけだよ。
……ん? なんか、店員さんが転びそうになっている。
忙しそうだからねえ。気を付けて運んだほうが良いと思うな。
「そういえば、魔導映写館のことは知ってる?」
「あ、私それ見てきたよ。すごかったねえ。あんなお店初めて」
あれ、面白かったなあ。
エルフの綺麗なお姉さんがやっている、新しいタイプの楽しいお店。
本に書かれているようなお話を、大きな魔道具で映し出すなんて、さすがはエルフ。面白いことを考えるね。
しかも、時間や日ごとに違うものを映すらしいから、これから何度も通うことになりそう。
あと、売っている食べ物もおいしかった。
……そういえば、ここで食べる料理もすごく美味しいけど、魔導映写館の食べ物もそれくらい美味しかったかもしれない。
もしかしたら、私が知らないうちに、アルマセグシアの食べ物がどんどん美味しくなっているのかな。
「私も行ってみようかなあ」
「行ったほうが良いよ! あそこ面白いから!」
「うん。明日あたりに行ってみるね」
あそこはおすすめできる。
今後もこうして、新しいお店がどんどんできると楽しいんだけどなあ。
「あ、そうだ。新しいお店といえば、あの国の隅っこで人があまり通らないから潰れちゃったお店の近くの洞窟」
たしか、前に占術とお香のお店だった場所だよね。
あそこ、けっこう良いお店だったから残念だなあ。
「あの洞窟の中に、なんか新しいお店ができてたよ?」
そうなんだ。そういえば、ここも洞窟だし、魔導映写館も暗い洞穴だったし、最近そういうのが流行っているのかな?
「どんなお店?」
「まだ、建物だけだったけど、なんか服屋さんができるとか」
「行ってみたい!」
かわいい服があったら嬉しい。
アルマセグシアには、色んな種族がいるし、色んな服屋さんもある。
だけど、私たち人魚用の服って、種類が少ないんだよね……。
かわいいと思ったら、上下セットだから下が無駄になったり、防水じゃなかったりと、服探しはけっこう大変。
だから、いっそのこと人魚用の服屋さんだったり……。
まあ、それは無理だけど、私たち用の服が多いと嬉しいな。
「店長さんは、人間みたいだよ」
「人間かあ……。じゃあ、私たちの服はあまり期待できないね」
そう言って食事を終える。
そんなふうに一日を終える。
そうして、数日の時をすごして、件のお店に行った私たちは、良い意味で裏切られることになった。
……ここ、絶対に潰れないでほしい。
◇
「な、なあ……。さっきの人魚たちが、さらっととんでもないこと言ってなかったか?」
カザマくんたちが、ラプティキ様の店で働く準備をしているため、俺たちがその分も代わりにがんばろうとしていたその時だ。
客である人魚たちの話が聞こえてしまった。
「ええ、私にも聞こえたわよ。タイラー」
どうやら、その話は俺の聞き間違いではないらしい。
「潮流の宝玉って、プリミラ様が愛用している武器に埋め込まれた、あれのことだよな?」
「みたいね……」
「持っていたら、アルマセグシアの王より偉くなるって」
「俺たちが思っている以上に、とんでもない代物だったらしいな……」
そんなものを、しれっと宝箱から入手する魔王様ってやばいよなあ……。
魔王様と宰相様。この二人って、俺たちが想像しているよりも、何段階もやばい存在なんじゃないか?
「そういえば、魔王様ってあれをハズレ扱いしていたらしいよ……」
「さ、さすがにそれは冗談なんじゃないか……?」
それとも、魔王様にとってはアルマセグシアでとんでもない扱いをされる宝など、特に価値はないのだろうか……。