【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ロペスのほうは、特に問題なさそうだな」
「おう。相変わらずサンセライオとテイランから、宝箱に熱中している客が来ているが、力が入りすぎているのか、あまり芳しい結果じゃないみたいだぜ」
「らしいですよ。フィオナ様」
「力を抜くのは難しいものなのです」
「わかります! 魔王様!」
フィオナ様のほうに話を振るも、全然効いていない。さすがは魔王だ。
というか、あなた力の制御は得意でしょうが。
そうでなければ、俺は二日に一度のペースで、あなたに抱きつかれて骨を折られているはずです。
あと、リピアネムが仲間を見つけたように嬉しそうにしているので、その手の冗談はやめてあげてください。
「
「カーマルさんが、ガシャ祭りで手に入れたアイテムのおかげで、効率もぐんと上がりました!」
「楽でいいよ。あれ」
あの時点で使いこなせていたもんな。
時任もカーマルも、組ませてみたら案外良いコンビとして働いてくれている。
「
「王様、こっちにも来ていましたけど、サンセライオ大丈夫なんでしょうか……」
「魔王軍が心配するほどか……」
まあ、リズワンのことだから、きっちり仕事こなしつつ遊んでいるんだろうな。
直接話したことはないけれど、あの王様たぶん優秀なタイプだ。
そうして、一人一人の状況を確認していく。
ピルカヤが監視してくれてはいるものの、現場に立った者たちでなければ気付けないこともあるだろうからな。
そんないつものやり取りだが、今回は新しいやり取りが増えることとなった。
「次は
「大丈夫そうです。服屋ということで、似合う服を聞かれますけど、楽しいです。それに、どの服もかわいいので、どれをすすめても間違いないですから」
「そういうの得意みたいだからなあ。まあ、人手が足りなかったら言ってくれ」
初日だというのにテキパキと働いている様子を見るに、奥居のようにこの仕事に適していたのかもしれない。
「じゃあ、次は世良。こっちはぽつぽつと客が来ていたみたいだな」
「はい。やっぱり、どんな病気にも効くっていうのは、まだ半信半疑って感じでした。ただ、何人かのお客さんは、軽い病気を患っている仲間や知り合いを連れてくるみたいなので、ルトラさんとテラペイア先生には、お世話になると思います」
「ああ、任せたまえ」
「どんな病気も治します」
こちらが真価を発揮するのは、もう少し後の話になりそうだな。
なので、温泉の効果を知って、世良を自分たちの集団に招こうとする者が出るとしたら、それからになる。
「無理な勧誘とかには気を付けてくれ」
「はい! 私聖女なので、バリアみたいなのはってがんばります!」
頼もしい限りだ。
だが、それだけでは不安もあるので、シャドウスネークたちをこっそりと配置しておこう。
結界で防ぎつつ、麻痺もさせてしまえば、世良が安全に地底魔界に逃げられるだろうし。
「どんな病気も治るなら、うちのカジノ以上に盛況になるかもな」
「人類は身体が弱いですからねえ」
そういえば、四天王とかフィオナ様は状態異常への耐性があるもんな。
もしかして、俺も魔族ではあるからそのあたり頑丈になっているんだろうか。
……そもそも、フィオナ様のステータスで、病にかかった経験とかあるのか?
「フィオナ様って、病気になったことあります? 風邪とか軽いものでも良いですけど」
「う~ん……」
あ、これなったことないやつだな。
さすがは魔王だ。普段からよく寝るし、きっと健康体そのものなのだろう。
「大昔は、病に伏せていました」
「あれ、意外ですね」
「……もしかして、私が馬鹿だと」
「いえ、頑丈な体なのでと思っただけですよ……」
別に馬鹿は風邪引かないなんて言ってないぞ。
そもそもフィオナ様は馬鹿ではないからな。ポンコツなだけであって、頭は悪くないから。
「ああ、それで本を?」
「そのとおりです。さすがはレイ。私のことならなんでもわかりますね」
やけに読書に慣れているというか、姿が様になっていると思っていたんだ。
だが、病気で体を壊していたからとは、魔王になってから……ではないだろうな。
そんな状態だったら、人類たちにとって絶好の好機だし、攻め込んでくるはずだ。
そして、さすがのフィオナ様も敗北するだろう。
……まさか、病を患いながらも戦闘して勝ったとかじゃないよな?
わりとあり得そうだけど、さすがにそんなことはないだろうと思いなおす。
案外、ゲーム中の魔王の倒し方って、その病によって弱体化している間に倒せ、とかだったのかもしれない。
となると、快復の湯はますます良い設備と言えるだろうな。
魔王の弱点を潰しつつ、集客もできるのだから言うことなしだ。
まあ、だからといってフィオナ様が病に罹患して良いわけではないし、今後も元気でいてほしいが。
「フィオナ様は、いつまでも元気でいてくださいね?」
「ええ、なんせ魔王ですからね。最終兵器として、常に万全でいますとも」
「魔王や最終兵器じゃなくても、フィオナ様に辛い思いはしてほしくないんですけど」
「……そ、そうですか。心配性ですねえ」
魔王だから、これまでフィオナ様自身の身を、誰かに案じられる経験が少なかったのかもしれない。
なんだか、目に見えてうろたえているし、それをごまかすために俺の頭をなで始めている。
「魔王じゃなくても、フィオナ様のことは大切なので」
「そ、そうですか~。ま、まあ、私のことが好きなレイなら、そうでしょうとも!」
「そうですよ。だから、無理しないようにしてくださいよ? 魔力を消耗しすぎるとか」
「それ……あなたが言いますか」
「……俺はほら、軽い病気くらいなら慣れているので」
そう反論したとたんに、フィオナ様は照れ隠ししているような表情から、ジト目になって俺の目を見ていた。
う~ん……。時折みせる美人や、普段見せるポンコツかわいい目とも違う。
これはこれでかわいくて好きだけど、私怒ってますよというアピールがなんとも気まずい。
「私だって、あなたのことが大事ですし、心配しています。無理をしてはいけません」
「お互い様ですねえ……」
「そういうことです。お互い無理せず、ずっと一緒に元気にやっていきましょう」
それが一番良いな。
特に、ルトラとテラペイアは、病気にならないように気を付けてもらおう。
万一のときの快復の湯も、二人がダウンしていたら使えないし。
「ということで、みんなも無理せず、たまにぐーたらしながら働いてください」
「今日はこんなところかな? じゃあ、各自解散を……テラペイア。プネヴマが、いつものやつになってるから、運んでやってくれ」
「承知した。そのへんに寝かせておけば、自力で魂を体に戻すはずだ」
それで良いのか、プネヴマよ……。
もしかして、普段のこれって魂操作の技術を鍛えるために、あえてやっていたりする?
フィオナ様と手をつなぎ、彼女の私室に向かいながら、俺はプネヴマの持病の理由に気付いたような気がしていた。
「抱きつかれると歩きにくいです」
「私のことだけを考えなさい」
「なんでわかるんですか……」
「女の勘です」
「しゃらくさいですね」
「ま、魔王相手にとんだ口の利き方ですねぇ!」
抱きつきながらなので、ほおをつねるのもやりやすそうですね。
知らない魔族が見たら、この光景はこれから魔王直々に折檻する恐ろしい光景に見えるんだろうなあ……。
◇
「……」
「何しているんだ? エピクレシ」
「いえ、魔王様とレイ様のお姿を、魔術で収めているだけですよ?」
「ああ、プネヴマのためか」
「ええ。もうちょっと耐えないと、その先のもっと仲睦まじい光景を見逃すって、いつも忠告しているんですけどねえ」
「ありゃあ、誰がどう見ても魔王様とその部下以上に親密だもんなあ」