【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第340話 その乙女心はわからない

 ディキティスの部下たちが蘇生されてから、それなりの時間が経過している。

 当初は、どこかぎこちなかった彼らは、今では魔王軍の魔族以外の者とも馴染んでくれているらしい。

 時間が経つにつれて、今の魔王軍に対応してくれているはずだ。

 ただし、俺への態度はその逆であり、どんどんかしこまったものになっていく。

 

「それはそうだろう。私の部下は、真面目と言うか頭の固い者が多い」

 

「人類と仲良く共存という状況には、慣れてくれているのになあ」

 

「上の者に気軽に接しろと言うのであれば無理だな。私自身がそうなのだから、あいつらも同じだろう」

 

「俺って、どの程度の偉さだと思われているんだろうか……」

 

 宰相とは言われても、四天王やら十魔将(とうましょう)やらと比較してどうなっているんだろう。

 ディキティスは、敬語とか使ってこないから、戦闘ができない十魔将くらいの立ち位置か?

 

「それは当然、魔王様の次くらいだろうな。四天王と同格かそれより上か」

 

「思っていたよりも、すごいことになっている……」

 

「魔王軍の実務担当で、魔王様の補佐官だ。そのくらいで当然だろう?」

 

 言われてみれば、そうなのかもしれない……。

 下手したら、ディキティスも俺に敬語で接していた可能性があるのか。

 十魔将たちと対面したのが、宰相に任命される前で良かった。

 まあ、テクニティスとかイピレティスみたいに、俺を上の立場としてくる魔族もいるけど。

 

「ディキティスの部下って、あれで全員?」

 

「直属はそうなるが、あいつらはあいつらでさらに部下がいた。総司令となる私にとっては、末端の者も部下ということになる」

 

「ということは、ディキティスの部隊ってかなり大所帯なんだな」

 

「戦闘専門の魔族は、全て私の部下ということだからな。数はまだまだいる」

 

 魔王軍の場合、戦闘以外の職でも強い魔族は多い。

 十魔将なんて、ディキティスやイピレティス以外は戦闘以外の専門があるのに、ステータスはどう見てもボスだもんな。

 つまり、魔王軍は全員が戦闘員になれるってことだ。

 ……宰相が一番雑魚だな。

 

「部隊が揃っていないとなると、戦闘訓練も大変だろ」

 

「いや、私のこれまでの仕事を思い出すといい」

 

 ……ダスカロスとは別の意味で先生だったな。

 ディキティスは、率いる部下がいないので、代わりにモンスターたちを鍛え上げてくれていた。

 複数の侵入者が来たときも、ピルカヤと連携して各戦場へ指示を出してくれていたな。

 

「モンスターたちも、ある意味ではディキティスの部隊か」

 

「宰相殿がそれで良いのであれば、今後もそうさせてもらいたいと思っている」

 

「となると、今後はディキティスの部下のみんなが、モンスターを率いることもあるのか」

 

 ディキティスの下に魔族たちが、その下にモンスターたちがつくわけだ。

 小さな戦闘部隊が複数できて、それら全てを大きな部隊としてディキティスが率いる。

 なんだか、軍団っぽくなってきたな。

 

「そこで問題なのが、あいつらとモンスターたちとの連携だな」

 

「率いる以上は、モンスターたちのことを、よく知ってもらわないといけないからな」

 

 言わば同僚か。あの子たち、ちゃんと仲良くできているだろうか。

 何やらモンスター同士では仲良くしているようだけど、魔族や他の従業員との関わりはそこまでだからな。

 

「うちのモンスターたちって、ディキティスの部下たちとどんな関係?」

 

「最初は所詮モンスターと舐めていたな」

 

「ああ、やっぱりそうなっちゃうか」

 

 俺とモンスターたちは、新参者だったからな。

 俺のことを認めてくれたというのなら、あの子たちもぜひ認めてもらわないといけない。

 

「だが」

 

「だったら、親睦会というか、モンスターたちの実力の理解を深めてもらおう」

 

「ふむ……それも良いかもしれないな」

 

 ディキティスが何か言いかけていたが、こちらの案に賛同してくれているし、案外同じようなことを提案しようとしていたのかもしれないな。

 

「じゃあ、ディキティスは部下のみんなに伝えておいてくれ。俺は、モンスターたちを集めるから」

 

「せっかくなので、魔導映写館で状況を映せると良いかもしれない」

 

 それもそうだな。ピルカヤの視界共有でも良いけれど、大きな画面で映すのもわかりやすいからな。

 じゃあ、ピルカヤにも協力を仰ぐとしようか。

 

    ◇

 

「実戦訓練ですか。みんな真面目ですからねえ」

 

「それは、魔族とモンスターどっちがですか?」

 

「どっちもです。私以外全員真面目すぎるので、もう少しお気楽に暮らせば良いと思います」

 

 まあ、お菓子片手に部下の訓練を鑑賞しているくらいだもんな。

 この魔族ほど気楽だったら、ゆる~い魔王軍になりそうだ。

 

「それで、今回はレイくんとディキティスの対決ってことになるのか?」

 

「いや、そうでもないかな」

 

 リグマの質問だが答えは否だ。

 たしかに、ディキティスの部下と俺のモンスターとの戦いになるけれど、どっちもディキティスの部下みたいなもんだからな。

 今回は俺がモンスターの配置や指示をしたが、部下のほうたちは全て自身の判断で行動しているようだし、俺対部下みたいなもんか?

 

「ということで、ハンデ戦みたいな感じ」

 

「……まあ、あいつらも魔王軍の一員だし、トラウマにはならないだろうけど」

 

 トラウマ? もしかして、苦手なモンスターとかいたか?

 だとしたら、日々のやり取りでヒントとかあったのかもしれない。

 ……これって、実は俺のそういう観察眼とかのテストだったりする?

 しまった。もっと全力でやるべきだったかもしれない。罠とか作り替えて補助しておけば良かった。

 

「先頭はドリュか」

 

 百足のような下半身は安定力がありそうだし、いわゆるタンク役として優秀そうだ。

 彼の後ろに扇状に展開するように部隊が前進している。

 であれば、後方のほうが人数は多いし、背後からの奇襲も看破されやすそうだな。

 

 なので、前方のドリュから潰そう。

 

『お、多くないか!?』

 

 モンスターたちは、前方と背後と横から奇襲できるように、いくつかのグループにわかれている。

 直接の戦闘になるため、その中でも前方の数が一番多い。

 普段は奇襲ばかりの戦闘だが、今回は真正面からのわかりやすい力比べだ。

 というわけで、上位相当にあたるモンスターたちが、ドリュに一斉に襲いかかった。

 

『さすがに一人じゃ無理ね!』

 

 そう言いながら、下半身が蛇の魔族が助けに向かい、他の者たちも次々とドリュをフォローしようと動く。

 なので、後方への警戒が薄れたということだな。

 

『馬鹿! 背後を警戒しないと……あ、これ無理だ』

 

 まだ背後を担当している者がいたが、こちらはこちらで毒や麻痺や石化の状態異常組が、しっかりと動きを止めてくれている。

 ついでに、横も隙があったので、そちらは視界をさえぎる霧を発生させたり、ちまちまと蔓で攻撃して嫌がらせをした。

 

『いきなり数が多すぎるって! 宰相様! 宰相様!?』

 

 しかし、そう言いながらもドリュはエビもカニもソウルイーターも蹴散らしているからなあ。

 いや、ソウルイーターがジャンプしたことで、さすがに予想外すぎたらしくて攻撃が直撃している。

 しかし、ステータス差から一撃では倒せなかったらしく、ソウルイーターも撃退されてしまったか。

 

「……改良の余地ありかな?」

 

「そうだな。意表は付けているが、その後が無防備すぎる」

 

「お~い。お前らモンスター寄りすぎるだろ。魔族の仲間たちも応援してやれよぉ?」

 

 ……俺はしょうがない。だって、俺はモンスター側として今回参加しているから。

 なので、アナンタの発言は、ディキティスに向けたものだな。

 

「ちなみに、このモンスターの配置何点?」

 

「5点だなぁ」

 

「10点中?」

 

「100点」

 

 まじかよ……。アナンタの採点厳しすぎるだろ。

 

「入り口に数を割きすぎだからなぁ。蛇のときみたいに、多勢に無勢のときガラガラになる。それに、入り口でこれだけの難易度だと、オルナスやイドが派遣されるぞぉ」

 

「……意外とちゃんとした理由じゃないか。アナンタのくせに」

 

「お前、俺のことなんだと思ってんだよぉ!」

 

「む……。レイにフィオナ様のくせにって言われて良いのは、私だけかと思っていたのですが、アナンタまで似たようなことを言われていますね……」

 

「……言ってほしいんですか?」

 

 なんだろう。

 フィオナ様って、ちょっと変な趣味あるよね。

 まあ、これまで対等な相手がいなかったから、新鮮だという理由だろうが。

 

「……自ら欲したら変じゃないですか! ただ、完全に嫌じゃないので、たまに言ってほしいけど、変なので気を利かせて言いなさい!」

 

「……わかりました」

 

「嘘だろお前。よくわかったなぁ……」

 

 大丈夫。フィオナ様のことは、なんとなくわかってきているから。

 この魔族、本気で嫌がるときは、むしろ感情を押し殺すからな……。

 そんな悲しい思いをさせないように、俺は今後もフィオナ様に適度に生意気な口を利くようにしよう。

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