【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
ディキティスの部下たちが蘇生されてから、それなりの時間が経過している。
当初は、どこかぎこちなかった彼らは、今では魔王軍の魔族以外の者とも馴染んでくれているらしい。
時間が経つにつれて、今の魔王軍に対応してくれているはずだ。
ただし、俺への態度はその逆であり、どんどんかしこまったものになっていく。
「それはそうだろう。私の部下は、真面目と言うか頭の固い者が多い」
「人類と仲良く共存という状況には、慣れてくれているのになあ」
「上の者に気軽に接しろと言うのであれば無理だな。私自身がそうなのだから、あいつらも同じだろう」
「俺って、どの程度の偉さだと思われているんだろうか……」
宰相とは言われても、四天王やら
ディキティスは、敬語とか使ってこないから、戦闘ができない十魔将くらいの立ち位置か?
「それは当然、魔王様の次くらいだろうな。四天王と同格かそれより上か」
「思っていたよりも、すごいことになっている……」
「魔王軍の実務担当で、魔王様の補佐官だ。そのくらいで当然だろう?」
言われてみれば、そうなのかもしれない……。
下手したら、ディキティスも俺に敬語で接していた可能性があるのか。
十魔将たちと対面したのが、宰相に任命される前で良かった。
まあ、テクニティスとかイピレティスみたいに、俺を上の立場としてくる魔族もいるけど。
「ディキティスの部下って、あれで全員?」
「直属はそうなるが、あいつらはあいつらでさらに部下がいた。総司令となる私にとっては、末端の者も部下ということになる」
「ということは、ディキティスの部隊ってかなり大所帯なんだな」
「戦闘専門の魔族は、全て私の部下ということだからな。数はまだまだいる」
魔王軍の場合、戦闘以外の職でも強い魔族は多い。
十魔将なんて、ディキティスやイピレティス以外は戦闘以外の専門があるのに、ステータスはどう見てもボスだもんな。
つまり、魔王軍は全員が戦闘員になれるってことだ。
……宰相が一番雑魚だな。
「部隊が揃っていないとなると、戦闘訓練も大変だろ」
「いや、私のこれまでの仕事を思い出すといい」
……ダスカロスとは別の意味で先生だったな。
ディキティスは、率いる部下がいないので、代わりにモンスターたちを鍛え上げてくれていた。
複数の侵入者が来たときも、ピルカヤと連携して各戦場へ指示を出してくれていたな。
「モンスターたちも、ある意味ではディキティスの部隊か」
「宰相殿がそれで良いのであれば、今後もそうさせてもらいたいと思っている」
「となると、今後はディキティスの部下のみんなが、モンスターを率いることもあるのか」
ディキティスの下に魔族たちが、その下にモンスターたちがつくわけだ。
小さな戦闘部隊が複数できて、それら全てを大きな部隊としてディキティスが率いる。
なんだか、軍団っぽくなってきたな。
「そこで問題なのが、あいつらとモンスターたちとの連携だな」
「率いる以上は、モンスターたちのことを、よく知ってもらわないといけないからな」
言わば同僚か。あの子たち、ちゃんと仲良くできているだろうか。
何やらモンスター同士では仲良くしているようだけど、魔族や他の従業員との関わりはそこまでだからな。
「うちのモンスターたちって、ディキティスの部下たちとどんな関係?」
「最初は所詮モンスターと舐めていたな」
「ああ、やっぱりそうなっちゃうか」
俺とモンスターたちは、新参者だったからな。
俺のことを認めてくれたというのなら、あの子たちもぜひ認めてもらわないといけない。
「だが」
「だったら、親睦会というか、モンスターたちの実力の理解を深めてもらおう」
「ふむ……それも良いかもしれないな」
ディキティスが何か言いかけていたが、こちらの案に賛同してくれているし、案外同じようなことを提案しようとしていたのかもしれないな。
「じゃあ、ディキティスは部下のみんなに伝えておいてくれ。俺は、モンスターたちを集めるから」
「せっかくなので、魔導映写館で状況を映せると良いかもしれない」
それもそうだな。ピルカヤの視界共有でも良いけれど、大きな画面で映すのもわかりやすいからな。
じゃあ、ピルカヤにも協力を仰ぐとしようか。
◇
「実戦訓練ですか。みんな真面目ですからねえ」
「それは、魔族とモンスターどっちがですか?」
「どっちもです。私以外全員真面目すぎるので、もう少しお気楽に暮らせば良いと思います」
まあ、お菓子片手に部下の訓練を鑑賞しているくらいだもんな。
この魔族ほど気楽だったら、ゆる~い魔王軍になりそうだ。
「それで、今回はレイくんとディキティスの対決ってことになるのか?」
「いや、そうでもないかな」
リグマの質問だが答えは否だ。
たしかに、ディキティスの部下と俺のモンスターとの戦いになるけれど、どっちもディキティスの部下みたいなもんだからな。
今回は俺がモンスターの配置や指示をしたが、部下のほうたちは全て自身の判断で行動しているようだし、俺対部下みたいなもんか?
「ということで、ハンデ戦みたいな感じ」
「……まあ、あいつらも魔王軍の一員だし、トラウマにはならないだろうけど」
トラウマ? もしかして、苦手なモンスターとかいたか?
だとしたら、日々のやり取りでヒントとかあったのかもしれない。
……これって、実は俺のそういう観察眼とかのテストだったりする?
しまった。もっと全力でやるべきだったかもしれない。罠とか作り替えて補助しておけば良かった。
「先頭はドリュか」
百足のような下半身は安定力がありそうだし、いわゆるタンク役として優秀そうだ。
彼の後ろに扇状に展開するように部隊が前進している。
であれば、後方のほうが人数は多いし、背後からの奇襲も看破されやすそうだな。
なので、前方のドリュから潰そう。
『お、多くないか!?』
モンスターたちは、前方と背後と横から奇襲できるように、いくつかのグループにわかれている。
直接の戦闘になるため、その中でも前方の数が一番多い。
普段は奇襲ばかりの戦闘だが、今回は真正面からのわかりやすい力比べだ。
というわけで、上位相当にあたるモンスターたちが、ドリュに一斉に襲いかかった。
『さすがに一人じゃ無理ね!』
そう言いながら、下半身が蛇の魔族が助けに向かい、他の者たちも次々とドリュをフォローしようと動く。
なので、後方への警戒が薄れたということだな。
『馬鹿! 背後を警戒しないと……あ、これ無理だ』
まだ背後を担当している者がいたが、こちらはこちらで毒や麻痺や石化の状態異常組が、しっかりと動きを止めてくれている。
ついでに、横も隙があったので、そちらは視界をさえぎる霧を発生させたり、ちまちまと蔓で攻撃して嫌がらせをした。
『いきなり数が多すぎるって! 宰相様! 宰相様!?』
しかし、そう言いながらもドリュはエビもカニもソウルイーターも蹴散らしているからなあ。
いや、ソウルイーターがジャンプしたことで、さすがに予想外すぎたらしくて攻撃が直撃している。
しかし、ステータス差から一撃では倒せなかったらしく、ソウルイーターも撃退されてしまったか。
「……改良の余地ありかな?」
「そうだな。意表は付けているが、その後が無防備すぎる」
「お~い。お前らモンスター寄りすぎるだろ。魔族の仲間たちも応援してやれよぉ?」
……俺はしょうがない。だって、俺はモンスター側として今回参加しているから。
なので、アナンタの発言は、ディキティスに向けたものだな。
「ちなみに、このモンスターの配置何点?」
「5点だなぁ」
「10点中?」
「100点」
まじかよ……。アナンタの採点厳しすぎるだろ。
「入り口に数を割きすぎだからなぁ。蛇のときみたいに、多勢に無勢のときガラガラになる。それに、入り口でこれだけの難易度だと、オルナスやイドが派遣されるぞぉ」
「……意外とちゃんとした理由じゃないか。アナンタのくせに」
「お前、俺のことなんだと思ってんだよぉ!」
「む……。レイにフィオナ様のくせにって言われて良いのは、私だけかと思っていたのですが、アナンタまで似たようなことを言われていますね……」
「……言ってほしいんですか?」
なんだろう。
フィオナ様って、ちょっと変な趣味あるよね。
まあ、これまで対等な相手がいなかったから、新鮮だという理由だろうが。
「……自ら欲したら変じゃないですか! ただ、完全に嫌じゃないので、たまに言ってほしいけど、変なので気を利かせて言いなさい!」
「……わかりました」
「嘘だろお前。よくわかったなぁ……」
大丈夫。フィオナ様のことは、なんとなくわかってきているから。
この魔族、本気で嫌がるときは、むしろ感情を押し殺すからな……。
そんな悲しい思いをさせないように、俺は今後もフィオナ様に適度に生意気な口を利くようにしよう。