【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「な、なんでこんなことに……」
初手から、俺たちを殺す気かというほどのモンスターが襲いかかってきた。
ガーゴイルにヒポグリフにバジリスクやアイアンシザーズ。そしてソウルイーター。
他にも色々といたけれど、とにかく数も多ければ純粋に強い。
特にソウルイーター……。あの巨体で飛び跳ねてくるってまじかよ……。
俺たちが知っているようなモンスターではない。
そんなこと、ここで暮らしているのだからとっくに知っている。
もしも通常のモンスターと一緒だと思っていたのなら、最初の襲撃で慢心から敗北していただろうな。
うちのモンスターたちは、言葉が通じないだけ。
戦う力も知恵もある特別な存在だ。それはとっくに理解しているのだけど……。
なんで今さら、その力を理解させるかのような戦闘訓練を……。
「ドリュ、あんたまた宰相様に失礼な態度をとったんじゃないでしょうね!?」
「それを言うなら俺よりも、お前たちのほうだろ!?」
俺もたしかに失礼だったかもしれないが、表向き友好に接して、裏でディキティス様に進言のほうがやばいからな?
下手しなくてもあんなもの反乱じゃねえか。
それに対して俺は、後輩と思っていた相手の世話を焼こうとしただけだ。
「それは……ど、どうしよう。やっぱり片足くらいは斬り落として捧げるべきかしら?」
「お前の片足ってなんだよ……。蛇なんだから下半身斬ることになるじゃねえか」
アスピダのやつ、自業自得とはいえかなり引きずってるな。
ディキティス様にこってり絞られたようだし、その後のレイ様のやばさを見るにつれて青ざめていたし、とんでもないことをしたものだ。
「も、もしかして……私がここで始末されたら、モンスターたちが止まったりは」
「しないだろうから現実逃避しないでくれる?」
「宰相様だもんなあ……。他意なく俺たちとモンスターを戦わせているはずだぞ」
俺もそう思う。レイ様は、すでに俺たちのことを許している。
それはそれとして、今回のモンスターとの戦闘を望まれているだけだ。
……そっちのほうがやばくない? ナチュラルに厳しい訓練を課してくるってことか。
なんとも魔族らしい魔族だ……。
そりゃあ、イピレティス様があれだけべったりくっついてるはずだよ。
「俺、今までは魔王軍で一番怖いのイピレティス様だったけど、レイ様のほうが上になりそう」
「だって、あのイピレティス様が、従者として仕えているんだぞ。魔王様以外にそんなことするとは思わなかった」
その時点でやばい魔族だと気付くべきだったか……。
いや、わかんねえよそんなの。見た目は普通だけど、やばい相手と察せなかった俺たちが悪いのか。
そのあたりの観察眼がやはり不足しているから、今回の戦闘訓練で養えということか。
「よし。先に進むぞ」
「半数が脱落してるけど、さっきみたいな大量の襲撃はないわよね……」
「地底魔界にいるモンスターの数覚えているか?」
「……正確な数はわからないけど、あれで一部だったわねえ」
アスピダが諦めてしまった。
だ、大丈夫……。脱落した半数だって死んでいない。
魔族である俺たちなら、半日もすれば治る程度の怪我しかしていない。
だから、訓練はあくまでも訓練であり、俺たちへの罰とかではないし、始末しようとかじゃないはずだから。
……確実に違うと思えないのが怖いところだ。
「そんでお前らは容赦ないなあ!」
会話しながら進んでいる道中でさえ油断できない。
天井に張り付いていたゴブリンが、俺たちの通過を待ってから背後にそっと降りて奇襲する。
人数は減っているが、ちゃんと後方の警戒は怠っていないので、対応できているが、気が休まらない……。
壁に張り付くようにして隠れているゴブリンも、通過した時点で確認するようにはしている。
今のところ、ちゃんと漏らさずに確認できているものの、これが延々と続くのだから体だけでなく心も疲弊してくる。
「侵入者って、いつもこんなことしているんだろ。人類すごいな」
「いえ、侵入者にはある程度加減しているので、これよりは楽みたいですよ?」
「なんで、俺たちのほうが辛い目にあってんの!?」
「実力を買ってもらえているということでしょうね……」
「それに、私たちのほうが辛いとも言い切れないわよ」
そうか? だって、モンスターたちが本気なんだぞ?
侵入者のほうが楽だろ。と思ったが、アスピダの言いたいことがわかった。
「罠がないからか……」
「ええ。モンスターだけでなく、罠まで警戒するとなったら、余計に疲れるもの」
侵入者じゃなくて良かった……。戦闘訓練で良かった。
罠がないというだけでも、こちらの負担はかなり減るからな。
「……本当にないんだよな?」
「……やめてよ。罠まであって連携されたら、私たちを全滅させるつもりしかないじゃない」
レイ様だもんなあ……。
本当に、とんでもない方が宰相になったもんだ。
俺たちが死んでいる間、魔王様とたった二人で魔王軍を再興していたようだし、魔王様もすごい魔族を勧誘したもんだな。
「ソウルイーターさっき倒さなかったっけ!?」
『その子はやる気があるようなので、宰相殿に頼んで復活してもらっている』
ディキティス様。やっぱり、俺たちのレイ様への態度怒ってませんか?
いや、違うな。この魔族はこの魔族で、やる気がある者をとことん鍛える方だからなあ……。
ああもう。わかったよ。そんなにやる気があるなら、俺も何度でも相手してやろうじゃねえか!
◇
「すごいな。結局、無事に戻ってきている」
「無事に戻す気なかったってことですか!?」
いや、そこはこっちもモンスターをけしかけている側なので、モンスターたちを勝利させたいと思っていたよ?
さすがに、一度倒されたモンスターの復活は反則かと思っていたけれど、ソウルイーターだけはディキティスが許可してくれたし。
だけど、最初以外は攻撃パターンに慣れてしまったのか、結局敗北続きだったな。
「あの、宰相様がソウルイーターに巻き付かれていますが、良いのでしょうか」
「負け続けて落ち込んでいるだけだから、気にしないでくれ」
俺に巻き付くからだをなでてやると、若干気を落としながらも喜んでくれている。
まあ、ディキティスも認めるほどやる気はあるから、今後もがんばって強くなってくれ。
「まあ、みんな負けちゃったけど、モンスターの強さはわかってくれただろ?」
「あの。言われるまでもなく、私たちは彼らの強さを理解していたのですが……」
「あれ? そのあたりのわだかまりを無くそうと思って、親睦会をしたつもりだったんだけど」
「親睦会……?」
なんだ。もうモンスターたちと打ち解けてくれていたんじゃないか。
ディキティスも、それならそうと言ってくれれば良かったのに。
そんなことを考えながら、彼のほうを見ると目が合った。
「せっかくの機会なので、戦闘訓練は悪くないと思ってな」
「なるほど。そういうことなら、今後も」
「やめてやれよぉ」
駄目か。
アナンタに止められ、今回戦闘訓練を行った者たちを改めて見る。
どうも、疲れ果てているようだし、魔族としてもきつめの訓練となってしまっていたようだ。
「今後は、みんながモンスターを率いることになりそうだし、何ができるか知ってもらうにはちょうど良いと思ったんだけど」
「十分知ることができたので、これ以上は大丈夫です……」
ドリュの言葉に他の魔族たちも頷いている。
案外、モンスターたちとの交流は進んでいたのか。
それなら今後も安心だな。
「……いっそのこと、今回みたいな感じでダンジョンのテストプレイヤー」
「すみません。勘弁してください」
反応早いな……。
そんなに嫌だというのか。ちゃんと加減するのに……。