【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第341話 親睦よりも畏怖の気持ちばかりが深まっていく

「な、なんでこんなことに……」

 

 初手から、俺たちを殺す気かというほどのモンスターが襲いかかってきた。

 ガーゴイルにヒポグリフにバジリスクやアイアンシザーズ。そしてソウルイーター。

 他にも色々といたけれど、とにかく数も多ければ純粋に強い。

 特にソウルイーター……。あの巨体で飛び跳ねてくるってまじかよ……。

 

 俺たちが知っているようなモンスターではない。

 そんなこと、ここで暮らしているのだからとっくに知っている。

 もしも通常のモンスターと一緒だと思っていたのなら、最初の襲撃で慢心から敗北していただろうな。

 

 うちのモンスターたちは、言葉が通じないだけ。

 戦う力も知恵もある特別な存在だ。それはとっくに理解しているのだけど……。

 なんで今さら、その力を理解させるかのような戦闘訓練を……。

 

「ドリュ、あんたまた宰相様に失礼な態度をとったんじゃないでしょうね!?」

 

「それを言うなら俺よりも、お前たちのほうだろ!?」

 

 俺もたしかに失礼だったかもしれないが、表向き友好に接して、裏でディキティス様に進言のほうがやばいからな?

 下手しなくてもあんなもの反乱じゃねえか。

 それに対して俺は、後輩と思っていた相手の世話を焼こうとしただけだ。

 

「それは……ど、どうしよう。やっぱり片足くらいは斬り落として捧げるべきかしら?」

 

「お前の片足ってなんだよ……。蛇なんだから下半身斬ることになるじゃねえか」

 

 アスピダのやつ、自業自得とはいえかなり引きずってるな。

 ディキティス様にこってり絞られたようだし、その後のレイ様のやばさを見るにつれて青ざめていたし、とんでもないことをしたものだ。

 

「も、もしかして……私がここで始末されたら、モンスターたちが止まったりは」

 

「しないだろうから現実逃避しないでくれる?」

 

「宰相様だもんなあ……。他意なく俺たちとモンスターを戦わせているはずだぞ」

 

 俺もそう思う。レイ様は、すでに俺たちのことを許している。

 それはそれとして、今回のモンスターとの戦闘を望まれているだけだ。

 

 ……そっちのほうがやばくない? ナチュラルに厳しい訓練を課してくるってことか。

 なんとも魔族らしい魔族だ……。

 そりゃあ、イピレティス様があれだけべったりくっついてるはずだよ。

 

「俺、今までは魔王軍で一番怖いのイピレティス様だったけど、レイ様のほうが上になりそう」

 

「だって、あのイピレティス様が、従者として仕えているんだぞ。魔王様以外にそんなことするとは思わなかった」

 

 その時点でやばい魔族だと気付くべきだったか……。

 いや、わかんねえよそんなの。見た目は普通だけど、やばい相手と察せなかった俺たちが悪いのか。

 そのあたりの観察眼がやはり不足しているから、今回の戦闘訓練で養えということか。

 

「よし。先に進むぞ」

 

「半数が脱落してるけど、さっきみたいな大量の襲撃はないわよね……」

 

「地底魔界にいるモンスターの数覚えているか?」

 

「……正確な数はわからないけど、あれで一部だったわねえ」

 

 アスピダが諦めてしまった。

 だ、大丈夫……。脱落した半数だって死んでいない。

 魔族である俺たちなら、半日もすれば治る程度の怪我しかしていない。

 だから、訓練はあくまでも訓練であり、俺たちへの罰とかではないし、始末しようとかじゃないはずだから。

 ……確実に違うと思えないのが怖いところだ。

 

「そんでお前らは容赦ないなあ!」

 

 会話しながら進んでいる道中でさえ油断できない。

 天井に張り付いていたゴブリンが、俺たちの通過を待ってから背後にそっと降りて奇襲する。

 人数は減っているが、ちゃんと後方の警戒は怠っていないので、対応できているが、気が休まらない……。

 

 壁に張り付くようにして隠れているゴブリンも、通過した時点で確認するようにはしている。

 今のところ、ちゃんと漏らさずに確認できているものの、これが延々と続くのだから体だけでなく心も疲弊してくる。

 

「侵入者って、いつもこんなことしているんだろ。人類すごいな」

 

「いえ、侵入者にはある程度加減しているので、これよりは楽みたいですよ?」

 

「なんで、俺たちのほうが辛い目にあってんの!?」

 

「実力を買ってもらえているということでしょうね……」

 

「それに、私たちのほうが辛いとも言い切れないわよ」

 

 そうか? だって、モンスターたちが本気なんだぞ?

 侵入者のほうが楽だろ。と思ったが、アスピダの言いたいことがわかった。

 

「罠がないからか……」

 

「ええ。モンスターだけでなく、罠まで警戒するとなったら、余計に疲れるもの」

 

 侵入者じゃなくて良かった……。戦闘訓練で良かった。

 罠がないというだけでも、こちらの負担はかなり減るからな。

 

「……本当にないんだよな?」

 

「……やめてよ。罠まであって連携されたら、私たちを全滅させるつもりしかないじゃない」

 

 レイ様だもんなあ……。

 本当に、とんでもない方が宰相になったもんだ。

 俺たちが死んでいる間、魔王様とたった二人で魔王軍を再興していたようだし、魔王様もすごい魔族を勧誘したもんだな。

 

「ソウルイーターさっき倒さなかったっけ!?」

 

『その子はやる気があるようなので、宰相殿に頼んで復活してもらっている』

 

 ディキティス様。やっぱり、俺たちのレイ様への態度怒ってませんか?

 いや、違うな。この魔族はこの魔族で、やる気がある者をとことん鍛える方だからなあ……。

 ああもう。わかったよ。そんなにやる気があるなら、俺も何度でも相手してやろうじゃねえか!

 

    ◇

 

「すごいな。結局、無事に戻ってきている」

 

「無事に戻す気なかったってことですか!?」

 

 いや、そこはこっちもモンスターをけしかけている側なので、モンスターたちを勝利させたいと思っていたよ?

 さすがに、一度倒されたモンスターの復活は反則かと思っていたけれど、ソウルイーターだけはディキティスが許可してくれたし。

 だけど、最初以外は攻撃パターンに慣れてしまったのか、結局敗北続きだったな。

 

「あの、宰相様がソウルイーターに巻き付かれていますが、良いのでしょうか」

 

「負け続けて落ち込んでいるだけだから、気にしないでくれ」

 

 俺に巻き付くからだをなでてやると、若干気を落としながらも喜んでくれている。

 まあ、ディキティスも認めるほどやる気はあるから、今後もがんばって強くなってくれ。

 

「まあ、みんな負けちゃったけど、モンスターの強さはわかってくれただろ?」

 

「あの。言われるまでもなく、私たちは彼らの強さを理解していたのですが……」

 

「あれ? そのあたりのわだかまりを無くそうと思って、親睦会をしたつもりだったんだけど」

 

「親睦会……?」

 

 なんだ。もうモンスターたちと打ち解けてくれていたんじゃないか。

 ディキティスも、それならそうと言ってくれれば良かったのに。

 そんなことを考えながら、彼のほうを見ると目が合った。

 

「せっかくの機会なので、戦闘訓練は悪くないと思ってな」

 

「なるほど。そういうことなら、今後も」

 

「やめてやれよぉ」

 

 駄目か。

 アナンタに止められ、今回戦闘訓練を行った者たちを改めて見る。

 どうも、疲れ果てているようだし、魔族としてもきつめの訓練となってしまっていたようだ。

 

「今後は、みんながモンスターを率いることになりそうだし、何ができるか知ってもらうにはちょうど良いと思ったんだけど」

 

「十分知ることができたので、これ以上は大丈夫です……」

 

 ドリュの言葉に他の魔族たちも頷いている。

 案外、モンスターたちとの交流は進んでいたのか。

 それなら今後も安心だな。

 

「……いっそのこと、今回みたいな感じでダンジョンのテストプレイヤー」

 

「すみません。勘弁してください」

 

 反応早いな……。

 そんなに嫌だというのか。ちゃんと加減するのに……。

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