【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「フィオナ様って、ステータスがとんでもないことになっているじゃないですか?」
「たしか四天王よりけっこう強いんでしたっけ?」
けっこうどころではない。
四天王最強のリピアネムですら、桁が違いすぎて歯が立たないほどだ。
「50リピアネムくらい強いです」
「なるほど。では、リピアネムの50倍、私のことをかっこいいと思って、もっと懐くべきでは?」
「動物扱いですね」
フィオナ様にペット扱いされるのも今さらだし、そもそも俺はフィオナ様に懐くというか、ちゃんと慕っているぞ。
50倍かどうかはわからないが、一番大切にしているという自覚はある。
「はい、どうぞ」
なんですか。その両手を広げた姿は。
俺からその抱擁を受けに行けと? 俺、リピアネム相手にそんなことした覚えありませんが?
とりあえず、手を握るだけにしておこう。……なんか、プロレスとかで見る、手四つの力比べみたいになってしまった。
「力比べじゃないんですけど!? まったくもう。レイの力で私に敵うはずないでしょう」
「そう言いつつ、手を離してくれませんけどね」
「せっかくなので」
そのまま壁まで追い込まれて、フィオナ様の顔がすぐ近くまでやってきた。
壁ドンの亜種みたいだなあ。これ以上力を入れられたら、俺はその場に崩れ落ちそうだし、まったくもって甘いシチュエーションでもないが。
「ま、魔王様と……レイ様が……!」
プネヴマだけが死んでいく。それが、今回の結果となった。
「プネヴマはさておき」
回収するテラペイア以外には、そんなふうにさておかれるプネヴマ。
これも魔王軍の日常の光景の一つだし、みんなすっかり慣れているな。
「どうして、魔王様のステータスの話を?」
「はっ! わ、わかりました! レイ! ついに、私の不足した魔力を増やす方法を!?」
「あ、違います」
「……」
「痛い痛い」
脇腹を突いてこないでください。
フィオナ様が、勝手に期待してきたんじゃないですか。
俺は、ガシャ爆死を救済できるなんて、一言も言っていませんから。
「フィオナ様だけじゃなくて、四天王もステータスはある程度固まってると思っている」
「まあ、ボクたち強いからね~」
「たしかに、フィオナ様のガシャの爆死で……痛いです」
「今日のレイはいじわるです!」
「すみません。とりあえず頭をなでるので、勘弁してください」
「許します!」
よし、これで話ができる。
片手はふさがるが、別に話すだけなら問題ないからな。
「ええと、フィオナ様からのアイテムで、四天王も強化できてはいるけど、戦いや鍛錬での成長はすでに限界っぽい」
「リピアネムみたいに、魂喰らいの腕輪つければ、案外まだ成長するかもしれないが、おじさんたちわりと天井でつっかえてるっぽいな」
「
こちらはこちらで、おそらくはゲーム中でのボスだから、ステータスは蘇生以降特に成長している様子はない。
ゲームによっては、再戦できて強化されるボスとかもいるけれど、みんなはその限りではないということだろう。
「マギレマのように、昔と違う道を模索しても、戦闘での強さにつながるとは限らんからな」
「ネムちゃ~ん。黙ろうね~」
「うむ」
だから、十魔将以上を真っ当なレベル上げするのは、効率的ではないといえる。
経験値を稼いでもらいレベルを上げるとなると、きっととんでもない量が必要なのだろう。
リピアネムは……なんかもうバグってるんだろうな。
ありあまるパワーを魂喰らいの腕輪が吸収することで、システムがおかしくなったのかもしれない。
なので、他の四天王に同じアイテムを装備させても、きっと彼女のような上昇は見込みづらいと思ったほうが良い。
「だけど、十魔将ではない魔族たちは、どうかと思ったんだ」
「ということは、あたしの部下たちと」
「私の部下たちか」
そう。ファギトやドリュたちのような、一般魔族というような者たちは、実はまだまだ伸びしろがあるんじゃないかと思っている。
今後は彼らと同じような魔族をどんどん蘇生させていく予定だ。
だからこそ、彼らを鍛え上げる方法を確立できれば、魔王軍全体の質が向上して、より強い集団にできるんじゃないかと思ったわけだ。
「兵の練度が上がれば、有事の際にも任せられることが多くなるな」
ディキティスは納得したように、こちらに肯定的な発言をしてくれた。
すでに強力な上を鍛えるのは難しいが、下を鍛える分には色々な可能性がありそうだからな。
……まあ、魔力しか上昇しなくなっている俺に言われたくはないだろうけど!
「俺は雑魚だから、みんなが強くなってくれたら安心できる」
「レイなら私が守ってあげますけど?」
「毎回フィオナ様に護衛してもらうのも、さすがに問題なので」
「むむむ……。私は四六時中一緒でも、全然かまいませんが」
「後で一緒に本読みましょうね」
「ええ。楽しみにしています!」
というわけで、一般魔族も増えてきた今、彼らのレベルアップ計画を試していこう。
「魔王様の扱い上手ね。レイくん」
リグマが感心するが、さすがにもう慣れてきたからな。
フィオナ様と一緒にいた時間が、それだけ長いというだけだ。
……そう、だいぶ長い付き合いになっている。なんだかそれが誇らしくもあり、嬉しくもある。
◇
「それで、私の部下たちとモンスターとの戦闘か」
「昨日もやってたよな? お前の部下たち、顔が引きつっていたぞ?」
「ええ。後で叱っておきます」
「やめてあげて」
ディキティスの部下には悪いが、今日も昨日と同じく戦闘訓練だ。
モンスターたちには悪いと思っていない。
なぜなら、あの子たちは全員乗り気だったからだ。
たまに死ぬことすら仕事だから、そのあたりの感覚は魔族とは違うのかもしれないな。
「ただ、今回はダンジョンを進んでもらうわけではなく、開けた場所での戦闘なので、少しだけ違いますね?」
「私の戦場だな」
プリミラの言葉にリピアネムが補足した通り、今回の戦場は変身後のリピアネムが戦うための特別広い部屋だ。
不意打ちや奇襲などではなく、完全に個の力のぶつかり合いをしてもらう訓練。
なので、モンスターたちの勝ち目は、昨日よりも薄いものとなっているだろう。
「まあさすがに、まだまだモンスターたちじゃ荷が重いか」
「う~む……。いっそ、私がモンスターたちに加勢を」
「やめなさいって。お前一人であの場所のやつら全滅させられるんだから」
リピアネムも暴れたいのかな?
さすがに普通の魔族やモンスターじゃ荷が重いから、それはまた四天王相手にでもやってくれ。
「モンスターたちと違って、ディキティスの部下たちのほうは相手を殺す気で戦っているのか」
「ああ。ちょっと試しに、本気の戦闘をしたうえで、モンスターたちを倒してもらっている」
実戦想定というか、実際にモンスターと遭遇して、戦いのすえに撃破してもらっている。
それを何度も繰り返すことで、疑似冒険者として立ち回ってもらっているわけだ。
「ここまでは上手くやってくれているけれど……う~ん」
「望む結果ではなかったか?」
「そうだなあ。残念ながら、ディキティスの部下たちは誰もステータスが上昇していない」
モンスターを倒して経験値を稼いでレベル上げ。
人類がやっていることを再現してもらったのだが、そう上手くはいかないか。
彼らは彼らでレベルが上限に達している? いや、そういうわけじゃないだろうな。
これはきっと、仲間同士での戦闘なので、いくらモンスターが死んだとしても、得られる経験値が無いか、あるいは極端に低くなっているのだろう。
「レベルが上がればと思ったが、そう簡単な話じゃないな」
「……」
その発言の直後に、俺に頭をなでられていたフィオナ様がすくっと立ち上がった。
「フィオナ様のレベルはカンストしているはずなので、行っても無駄です」
「な、なにをぅ!? 私だって、まだまだ伸びしろあると思うんですけど!」
「最大まで鍛え上げられているなら、良いことじゃないですか……」
「嫌です~! あと1足りないので、伸びしろが欲しいんです!」
「あとでモンスターたちと戦わせてあげますから、今はみんなの邪魔しないで良い子にしていてくださいね」
「子ども扱いですか! ……はっ、つまりまだまだ成長の余地が残されていると!? レイは、そう言いたいんですね!?」
「違います」
良いように受け取らないでください。
なんともポジティブな魔王様だ。
まあ、上がポジティブなのは、良いことなんだろうな。きっと。