【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第342話 前話のアナンタくんのアドバイスは却下されました

「フィオナ様って、ステータスがとんでもないことになっているじゃないですか?」

 

「たしか四天王よりけっこう強いんでしたっけ?」

 

 けっこうどころではない。

 四天王最強のリピアネムですら、桁が違いすぎて歯が立たないほどだ。

 

「50リピアネムくらい強いです」

 

「なるほど。では、リピアネムの50倍、私のことをかっこいいと思って、もっと懐くべきでは?」

 

「動物扱いですね」

 

 フィオナ様にペット扱いされるのも今さらだし、そもそも俺はフィオナ様に懐くというか、ちゃんと慕っているぞ。

 50倍かどうかはわからないが、一番大切にしているという自覚はある。

 

「はい、どうぞ」

 

 なんですか。その両手を広げた姿は。

 俺からその抱擁を受けに行けと? 俺、リピアネム相手にそんなことした覚えありませんが?

 とりあえず、手を握るだけにしておこう。……なんか、プロレスとかで見る、手四つの力比べみたいになってしまった。

 

「力比べじゃないんですけど!? まったくもう。レイの力で私に敵うはずないでしょう」

 

「そう言いつつ、手を離してくれませんけどね」

 

「せっかくなので」

 

 そのまま壁まで追い込まれて、フィオナ様の顔がすぐ近くまでやってきた。

 壁ドンの亜種みたいだなあ。これ以上力を入れられたら、俺はその場に崩れ落ちそうだし、まったくもって甘いシチュエーションでもないが。

 

「ま、魔王様と……レイ様が……!」

 

 プネヴマだけが死んでいく。それが、今回の結果となった。

 

「プネヴマはさておき」

 

 回収するテラペイア以外には、そんなふうにさておかれるプネヴマ。

 これも魔王軍の日常の光景の一つだし、みんなすっかり慣れているな。

 

「どうして、魔王様のステータスの話を?」

 

「はっ! わ、わかりました! レイ! ついに、私の不足した魔力を増やす方法を!?」

 

「あ、違います」

 

「……」

 

「痛い痛い」

 

 脇腹を突いてこないでください。

 フィオナ様が、勝手に期待してきたんじゃないですか。

 俺は、ガシャ爆死を救済できるなんて、一言も言っていませんから。

 

「フィオナ様だけじゃなくて、四天王もステータスはある程度固まってると思っている」

 

「まあ、ボクたち強いからね~」

 

「たしかに、フィオナ様のガシャの爆死で……痛いです」

 

「今日のレイはいじわるです!」

 

「すみません。とりあえず頭をなでるので、勘弁してください」

 

「許します!」

 

 よし、これで話ができる。

 片手はふさがるが、別に話すだけなら問題ないからな。

 

「ええと、フィオナ様からのアイテムで、四天王も強化できてはいるけど、戦いや鍛錬での成長はすでに限界っぽい」

 

「リピアネムみたいに、魂喰らいの腕輪つければ、案外まだ成長するかもしれないが、おじさんたちわりと天井でつっかえてるっぽいな」

 

十魔将(とうましょう)も、たぶん鍛えぬいているから、四天王ほどではないとはいえ、成長するのは難しいと思う」

 

 こちらはこちらで、おそらくはゲーム中でのボスだから、ステータスは蘇生以降特に成長している様子はない。

 ゲームによっては、再戦できて強化されるボスとかもいるけれど、みんなはその限りではないということだろう。

 

「マギレマのように、昔と違う道を模索しても、戦闘での強さにつながるとは限らんからな」

 

「ネムちゃ~ん。黙ろうね~」

 

「うむ」

 

 だから、十魔将以上を真っ当なレベル上げするのは、効率的ではないといえる。

 経験値を稼いでもらいレベルを上げるとなると、きっととんでもない量が必要なのだろう。

 リピアネムは……なんかもうバグってるんだろうな。

 ありあまるパワーを魂喰らいの腕輪が吸収することで、システムがおかしくなったのかもしれない。

 なので、他の四天王に同じアイテムを装備させても、きっと彼女のような上昇は見込みづらいと思ったほうが良い。

 

「だけど、十魔将ではない魔族たちは、どうかと思ったんだ」

 

「ということは、あたしの部下たちと」

 

「私の部下たちか」

 

 そう。ファギトやドリュたちのような、一般魔族というような者たちは、実はまだまだ伸びしろがあるんじゃないかと思っている。

 今後は彼らと同じような魔族をどんどん蘇生させていく予定だ。

 だからこそ、彼らを鍛え上げる方法を確立できれば、魔王軍全体の質が向上して、より強い集団にできるんじゃないかと思ったわけだ。

 

「兵の練度が上がれば、有事の際にも任せられることが多くなるな」

 

 ディキティスは納得したように、こちらに肯定的な発言をしてくれた。

 すでに強力な上を鍛えるのは難しいが、下を鍛える分には色々な可能性がありそうだからな。

 ……まあ、魔力しか上昇しなくなっている俺に言われたくはないだろうけど!

 

「俺は雑魚だから、みんなが強くなってくれたら安心できる」

 

「レイなら私が守ってあげますけど?」

 

「毎回フィオナ様に護衛してもらうのも、さすがに問題なので」

 

「むむむ……。私は四六時中一緒でも、全然かまいませんが」

 

「後で一緒に本読みましょうね」

 

「ええ。楽しみにしています!」

 

 というわけで、一般魔族も増えてきた今、彼らのレベルアップ計画を試していこう。

 

「魔王様の扱い上手ね。レイくん」

 

 リグマが感心するが、さすがにもう慣れてきたからな。

 フィオナ様と一緒にいた時間が、それだけ長いというだけだ。

 ……そう、だいぶ長い付き合いになっている。なんだかそれが誇らしくもあり、嬉しくもある。

 

    ◇

 

「それで、私の部下たちとモンスターとの戦闘か」

 

「昨日もやってたよな? お前の部下たち、顔が引きつっていたぞ?」

 

「ええ。後で叱っておきます」

 

「やめてあげて」

 

 ディキティスの部下には悪いが、今日も昨日と同じく戦闘訓練だ。

 モンスターたちには悪いと思っていない。

 なぜなら、あの子たちは全員乗り気だったからだ。

 たまに死ぬことすら仕事だから、そのあたりの感覚は魔族とは違うのかもしれないな。

 

「ただ、今回はダンジョンを進んでもらうわけではなく、開けた場所での戦闘なので、少しだけ違いますね?」

 

「私の戦場だな」

 

 プリミラの言葉にリピアネムが補足した通り、今回の戦場は変身後のリピアネムが戦うための特別広い部屋だ。

 不意打ちや奇襲などではなく、完全に個の力のぶつかり合いをしてもらう訓練。

 なので、モンスターたちの勝ち目は、昨日よりも薄いものとなっているだろう。

 

「まあさすがに、まだまだモンスターたちじゃ荷が重いか」

 

「う~む……。いっそ、私がモンスターたちに加勢を」

 

「やめなさいって。お前一人であの場所のやつら全滅させられるんだから」

 

 リピアネムも暴れたいのかな?

 さすがに普通の魔族やモンスターじゃ荷が重いから、それはまた四天王相手にでもやってくれ。

 

「モンスターたちと違って、ディキティスの部下たちのほうは相手を殺す気で戦っているのか」

 

「ああ。ちょっと試しに、本気の戦闘をしたうえで、モンスターたちを倒してもらっている」

 

 実戦想定というか、実際にモンスターと遭遇して、戦いのすえに撃破してもらっている。

 それを何度も繰り返すことで、疑似冒険者として立ち回ってもらっているわけだ。

 

「ここまでは上手くやってくれているけれど……う~ん」

 

「望む結果ではなかったか?」

 

「そうだなあ。残念ながら、ディキティスの部下たちは誰もステータスが上昇していない」

 

 モンスターを倒して経験値を稼いでレベル上げ。

 人類がやっていることを再現してもらったのだが、そう上手くはいかないか。

 彼らは彼らでレベルが上限に達している? いや、そういうわけじゃないだろうな。

 これはきっと、仲間同士での戦闘なので、いくらモンスターが死んだとしても、得られる経験値が無いか、あるいは極端に低くなっているのだろう。

 

「レベルが上がればと思ったが、そう簡単な話じゃないな」

 

「……」

 

 その発言の直後に、俺に頭をなでられていたフィオナ様がすくっと立ち上がった。

 

「フィオナ様のレベルはカンストしているはずなので、行っても無駄です」

 

「な、なにをぅ!? 私だって、まだまだ伸びしろあると思うんですけど!」

 

「最大まで鍛え上げられているなら、良いことじゃないですか……」

 

「嫌です~! あと1足りないので、伸びしろが欲しいんです!」

 

「あとでモンスターたちと戦わせてあげますから、今はみんなの邪魔しないで良い子にしていてくださいね」

 

「子ども扱いですか! ……はっ、つまりまだまだ成長の余地が残されていると!? レイは、そう言いたいんですね!?」

 

「違います」

 

 良いように受け取らないでください。

 なんともポジティブな魔王様だ。

 まあ、上がポジティブなのは、良いことなんだろうな。きっと。

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