【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
新規店舗は順調だし、従来の店舗も順調だ。
それすなわち、俺の仕事の負担が少ないということもであり、ダンジョン魔力も存分に稼げているということもである。
頼れる人材により、任せられる仕事が増え、手持ちの資産も増えている。
「ということで、ダンジョンについて考えようと思う」
「お前、いっつも考えてるだろ。何を久しぶりにみたいなふうに言ってんだよぉ」
たしかに、いつもダンジョンのことは考えている。
だけど、それはあくまでも稼働中のダンジョンの、ちょっとした追加だったりバランス調整だ。いわば小型アップデートみたいなものだな。
今回は、もう少し規模が大きな大型アップデートを目指していきたい。
「いや、魔力もだいぶ溜まってきたから、新しいダンジョンでも作ろうと思ってな」
「さらっと言うようなことじゃねえけど、ちゃんと目的に合った難易度にしろよ……?」
「そこでディキティスの部下のみんなが、人類にどれだけ認識されているか確認したいんだけど、そこらへんどうですか? フィオナ様」
「そうですねえ……。
ということなら、ダンジョンで働いてもらっても大丈夫かもしれないな。
無論、施設の従業員とかではなく、モンスターたちを率いる戦闘職として。
「ちなみに、みんな誰に殺されたか覚えてる?」
「すごいこと聞くよね。レイくんって」
いや、大事なことだからしょうがないんだ。
これから作るダンジョンの近くに、彼らを殺した者が住んでいた場合鉢合わせる可能性があるから。
「私は、イドにゴミのように殺されました……」
「俺は、オルナスに一撃で……」
そうして各自の死因を聞いていくと、勇者に殺されたうえ顔すら覚えられていないであろう者の多いこと。
ゲーム中の雑魚敵か、あるいは強モブ程度のような扱いに、なんとも言えない力の差を感じてしまった。
「モンスターたちと違って、この者たちは死んだら再生できないが、ダンジョンで働かせる必要はあるか?」
「今後、ヨハンみたいなのが出てきたときに、自分たちで考えてモンスターを率いて行動できる人材は育てておきたい」
「ヨハン本人はともかく、あのときこいつらがいたら、他の冒険者たちはもっと早めに撃退できていただろうからなあ」
俺の言葉を聞いて、リグマだけでなくダスカロスも納得してくれたようだ。
極論を言うと、別に今のままでダンジョンを増やさなくても良い。
だけど、今後もあの手の厄介な転生者や勇者が攻めてきたときのために、今回は魔王軍を鍛えるためのダンジョンを作りたいのだ。
向こうが経験値を稼ぐというのなら、こっちだって稼いでも良いだろう。
魔王軍同士の実戦訓練では、どうしても経験値を稼ぎにくいということが判明したため、経験値稼ぎにもダンジョンを利用することになる。
「だから、人類が魔族やモンスターを狩るのとは逆に、こっちが人類を狩るためのダンジョンを作ろうと思う」
「獣人ダンジョンみたいなもんだな」
「それに近いけど、あそこよりも加減を無くしつつ、それでいて女神は当然、勇者にも目を付けられたくないかな」
「バランスがこれまで以上に難しくなりそうですね」
アナンタやプリミラに任せきりにしていたバランスを、俺自身も考える必要が出てくるというわけだ。
「侵入者を積極的に撃退しつつ、やりすぎないようにしないとな」
「ようやくわかってくれたのかぁ……」
アナンタがしみじみと言うが、あくまでも今回だけの話だ。
普段は、俺が自由にダンジョンを作成して、そこをアナンタとプリミラとダスカロスで、調整するくらいがちょうど良い。
「今回だけだからな?」
「なんでお前が折れたみたいになってんだよぉ!!」
「レイは自由に動いたほうが、想像もつかないような結果になるからな」
「調整は私たちでがんばります」
「甘やかすんじゃねえよぉ……」
よし、プリミラとダスカロスは俺の味方だ。
ということで、今回だけは後続に任せることなく、俺もバランス調整を考えよう。
「ターゲットは獣人かな? あいつらなら、強い敵がいるというだけで突っ込んできてくれそうだし」
「とはいえ、プリズイコス付近は良くないな。イドに襲撃される可能性がある」
「今の獣人ダンジョンもプリズイコスから離れているのに、一度襲撃されたからなあ……」
となると、獣人たちに噂されたら、あいつはどこにでもやってきそうだ。
獣人くらい戦闘に積極的な種族が、他にいればいいんだけど……。
「リピアネムみたいな、竜族の国とかないの?」
「ルダルか。だが、そちらはそちらで勇者ヘーロスがいる。下手すればイドより厄介だぞ」
「そっちも駄目か~」
あるにはあったが、残念ながら勇者持ちの国か。
というか、そうじゃなくても、たぶんやめたほうが良かったみたいだな。
ドリュとか、ルダルとやらの相手をさせられると聞いた瞬間、目に見えて狼狽していた。
きっと、住人全員がリピアネムみたいに強い国なんだろう。
「やめておこう……。リピアネムの国とか、下手に手出しできない」
リピアネムの集団が、ダンジョンに挑んでくるとか、そんなのもはや四天王案件だ。
気軽に経験値稼ぎとか言っている場合ではなく、本腰入れて対応すべき問題でしかない。
「私に気を遣うことはないぞ? 私はすでにあの国とは
いや、悪いがそこを気にしていたわけじゃない……。
というか、リピアネムってルダル出身だったのか。
ますます相手したくないぞ。ルダルの国民たち。
「やっぱりルダルはやめておこう」
「私はすでに魔王軍の一員なので、気にしていないのだが……」
「リピアネムは強いからな」
「うむ。魔王様には及ばぬが、私は強いぞ!」
きっと、よくわかっていないだろうが、なんか満足して尻尾を振っているから、よしとしよう。
……全員が、こんな感じだとしたら、やっぱり獣人に似ているかもしれないな。
戦闘能力はあるけれど、若干……素直な種族の可能性が高い。
「勇者が無関係となると、ハーフリングやドワーフやエルフになりますね」
「だが、どの種族も戦闘に前向きではないぞ」
人間を狙うか?
勇者が二人も在籍する種族ではあるが、国の数も多いため、勇者と無関係の国を慎重に選べば、問題ないだろうし。
無難な考えに落ち着きそうだったが、ちょうどカジノの営業を終えたロペスとクララがいつの間にか合流していたらしい。
俺たちの話を聞いていたクララが遠慮がちに手を上げながら発言をした。
「ええと、好戦的で勇者が存在しない種族に心当たりがあります」
「本当か? それなら助かるけど、なんていう種族?」
「……オーガです」
「オーガ……。魔族じゃないのか?」
「いえ、レイ様。オーガはオーガで、集団で生活しています」
相変わらず、そのあたりの境界は俺にはよくわからないな。
今のところ魔王軍には存在しない種族だし、どんな者たちなのかもわからない。
だけど、獣人たちのように好戦的なのであれば、人間を相手にするよりは今回のダンジョンに向いている。
「一番の違いは、何と言ってもモンスターにも同じ種族がいるところかねえ?」
「モンスターにも? じゃあ、オーガって言う種族が二種類いるってこと?」
「まあ、そうなるのかな? 喋れて理性があるが、戦闘好きなオーガ。喋れなくて本能で行動して、戦闘好きなオーガ。どっちもいる」
というか、どっちも最終的には戦闘好きなんじゃないか……。
要するに、喋れるオーガと喋れないオーガがいるってことだな。
となると、モンスター側のオーガは意思の疎通は難しそうか?
「ちなみに、どんな特徴なんだ?」
「オーガは、獣人たち同様に好戦的で、戦闘能力は高く」
やっぱりそうか。
なかなか良さそうな種族じゃないか。
「そして、私たちと同じような種族です……」
クララたちと同じということは、つまり……。
「オーガは元迫害対象の種族です」