【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「迫害対象種族か……」
気分の良い話ではないな。
クララたちはもちろんのこと、目下最大の対象であるのが俺たちなわけだし。
そんな相手と争ったとしたら、女神も人類もむしろ喜ぶんじゃないだろうか?
「かわいそうというよりは、人類が喜びそうなのが問題か……」
「たしかに……自分たちで対処できないオーガ族が、魔族と潰しあうとなれば、人類も喜びそうですね。すみません、変な提案をして」
「あれ?」
対処できないってどういうことだ?
クララたちのように、まるで奴隷の一歩手前みたいな扱いを受けている種族だと思ったのだが。
その言い方だと、迫害というのとは何か違うような気がする……。
「オーガって、虐げられているんだよな?」
「迫害対象ではありましたが、虐げられたかというと……」
クララが言い辛そうにする。
別に隠しているとかではなく、クララ自身もなんと言ったらいいか、困っているかのようだった。
「オーガは粗暴と判断され、私たちのように女神に劣った種族とされました。人類は、当然のようにオーガたちを見下したのですが、私たちのように黙っているような種族ではなかったのです」
つまり、抗ったと。
それを聞くと、ますますオーガを相手にしたくなくなるな。
要するに今の魔族たちと同じじゃないか。
「逆らうオーガたち相手に、人類は力で従えさせようとしました。ですが、オーガたち相手となると、被害も非常に大きく、ついには相互不干渉のような関係になっています」
なるほど、それだけ強い種族ということか。戦闘も負けん気も。
そうなると、不思議なのは魔王軍だ。
うちだって、フィオナ様や四天王がいる以上、戦ってただで済む相手ではない。
だというのに、なぜここまで魔族は敵視され、殺すべき種族という姿勢を保ち続けようとするのか。
「うちも人類殺し続けたら、相互不干渉になりませんかね?」
「無理でしょうねえ……。女神に目をつけられているうえ、他の迫害対象と違って、放置したら世界を滅ぼすと言われていますので」
つまり、人類にとっては世界の敵という認識なわけだ。
生存競争なのだから、向こうも引く気もないし容赦もしないと。
まあ、その気持ちは俺にもわかるし、何も言えない。
俺だって、生き延びるために人類を殺したし、今後のための備えに殺している。
その点に関しては恨みっこなしだ。
だが女神は許さない。
聞けば聞くほど、この世界の問題はこいつのせいじゃないか。
神なんだから、もっとしっかり世界を管理しろよ。
「やっぱり、オーガ族相手のダンジョンはやめておこう」
「すみません。余計な口を挟んでしまいまして」
クララが申し訳なさそうに頭を下げるが、その必要はない。
こうして俺が知らない種族の情報を得られたし、女神は敵だと改めて理解できたから。
「いや、オーガの情報は助かった。……いっそのこと、クララたちみたいに、うちの従業員になってくれないかな?」
なんとなく言ってみたが、悪くない話じゃないか?
人類と敵対しているのなら、うちへの加入もすんなりいきそうだ。
それに、迫害対象だからといって舐められているわけではない。
従業員として働かせても、見下されてトラブルに発展ということもなさそうだな。
……まあ、最悪トラブルに発展しても、自力でねじ伏せてくれることを期待しているわけだが。
「どうでしょう……。オーガは他種族と交流することもありませんから」
フィオナ様が顎に指を当てながら考えると、結論づけた。
「排他的な種族ってことですか……」
だとしたら、仲間に引き入れることも難しいか。
それに仲間になったとしても、従業員なんてもってのほかになりそうだな。
「良くも悪くも力に従う種族です」
「それだけ聞いたら、獣人みたいな種族ですね」
あいつらも、力を重視する傾向にあるからな。
ヨハンがはぐれ獣人をまとめていたのも、力ずくでねじ伏せたからだろうし。
「それよりもさらに、力は絶対という種族ですね」
「獣人以上ですか」
「ええ。獣人は本当に力が全てという者もいれば、トキトウのような争いを望まない者もいます。なにより、都合良く力を利用するならず者も多いですからね」
たしかにそうだ。
はぐれ獣人とか、特にその傾向にあったからな。
うちの施設でたびたび揉め事を起こす姿は、力にストイックとかではなくただのチンピラの姿だった。
「それじゃあオーガは、全員が力至上主義って感じですか」
「さすがに少しは異なるでしょうが、ほぼ全員とみて良いと思います」
オーガのことを聞くたびに、とある考えがうまくいくように思えてきた。
「……フィオナ様の強さを知れば、案外簡単に服従させられそうですね」
強者に従うんだよな?
獣人のように一部だけでなく、そのほとんどが。
なら、魔王軍ならば、簡単に協力を取り次げられるのでは?
「え~? 私魔王ですよ? 転生者やクララたちみたいに、切羽詰まってるならともかく、協力してもらえるとは思えないんですけど」
フィオナ様って、たまに自己肯定感低いからなあ。
ただ、俺の意見も推測にすぎないので、ここで無理にお願いするわけにもいかない。
というか、フィオナ様に戦ってもらうのは最後の手段にすべきだし、こんなところで切って良い札じゃないからな。
「とりあえず、ダンジョンだけでも作ってみます? どういう種族か、実際に見ても良いと思いますし」
「レイがそうしたいのなら任せますけど、半端な対応は逆に敵対されると思いますよ?」
「つまり、本気で罠やモンスターを作れと」
「ほどほどにな。入り口から最奥までが君の本気だと、種の根絶になりかねない」
俺のことなんだと思っているんだよ。
だけど、加減は控えめで良いなら助かる。
ダンジョンを作ることで、敵対行動ととらえられないのも良いな。
「やっぱり、オーガ良さそうだな……」
「……犬やドラゴンだけでなく、ついにオーガですか。ただの魔族も私は良いと思いますけどねえ! 角なら、私にだって生えているじゃないですか!」
「落ち着いてください……。俺もフィオナ様も魔族ですが、それが悪いとは思っていませんから」
現在進行系で全ての種族と敵対しているからだろうか、フィオナ様はどうにも魔族という種にコンプレックスを持っているのかもしれない。
「あ、あの……ダークエルフも魔王軍のために働きますので、オーガに鞍替えするのは勘弁していただけますと……」
お前もかクララ。
別に、魔王軍をオーガだけにすげ変えるなんて、俺は一言も言っていないんだけどな。
フィオナ様とクララ。世界から迫害されていた種族の長という者は、どうも自分たちに自信が無い傾向にあるようだ。
それを考えると、もしかしてオーガの長もそうなんだろうか……?
「あくまでも協力者の一人というか、一種族として考えているだけです」
「そ、そうですか……。イピレティスの角でもわけてもらうところでしたよ」
「僕の角、一本しか無いので無理で~す」
額に穴あけて三本目の角を生やそうとしたってこと?
一体何がフィオナ様をそこまで駆り立てるのか……。
その隣で安堵しているクララといい、迫害対象種族ってなかなか難しい思考をしているな。
思っている以上に触れてはいけない繊細な問題なのか?
「まあ、とりあえずは、ピルカヤに探してもらうところからだな」
「任せてよ」
久しぶりのダンジョン作成のための偵察だ。
そのせいか、やけに張り切ったピルカヤは、すぐにこの場から消えてしまった。
ということで、しばらくは彼の偵察結果待ちだ。
俺は俺で、ダンジョンについて考えなければいけないが、目下最優先でやるべきこととしては……。
「額を指さすのやめてください。そこに穴あけて角生やす気じゃないでしょうね?」
「レ、レイが望むのなら、やってやりますとも!」
「望んでないのでやめてくださいね。本当に……」
「変身もできず、角が二本しか生えていない私でも、良いというのですか!」
「俺は、今のフィオナ様が一番好きです」
「……ですよね! レイは、私のことが大好きですもんね!」
「はいはい。大好きです。大好きです」
俺の好き嫌いで角を増やさないでください。
もしかして、魔王にとってはそのくらい気軽なおしゃれ感覚なんだろうか……。
魔族として慣れてきたはずなのに、こうして文化の違いを知ることになるとは。
魔族……まだまだ奥深いな。