【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「それじゃあ、オーガの村の近くにダンジョンを作るということで話を進める」
「しょうがねえなぁ」
ぼやくアナンタ。頷くプリミラとダスカロス。
改築する際のいつものメンバーで、対オーガ用のダンジョン作成案を形にしていこう。
今回は、それ以外にもフィオナ様や四天王、
「フィオナ様も、それで良いですか?」
「ええ。宰相として、あなたを信頼しています。自由に作ってください」
「魔王様ぁ……。自由はまずいですって」
「自由にしつつ、他の者の意見をちゃんと聞いて、良いダンジョンを作ってください」
放任主義のフィオナ様が、若干の指示を出してきた。
アナンタめ。魔王様に言いつけずとも、俺だって最初からそうするつもりだったさ。
特に、今回はオーガという、これまでのデータに無い種族だからな。
どれくらい頑丈で、どれくらい粘り強いかわからない。少しずつ調整していく必要がありそうだ。
「まず、ダンジョンの目的は前に話したとおり。一般の魔族たちのレベル上げだな。四天王や十魔将と違って、存在を知られていないため、今回のダンジョンを拠点にしているということにする」
「あたしやディーくんの部下だね~」
「実戦で得られるものは多いからな。あいつらのためにもなる」
「ピルカヤの監視がより求められるだろう。たしかに一般魔族であれば、勇者たちの虐殺から逃れていても不思議ではなく、魔王様のお力であるダンジョンに落ち延びていても不思議ではない。だが、勘の良い者にはバレないに越したことは無い」
ダスカロスの言うとおりでもある。
十魔将と違って、ダンジョンに住んでいてもそこまでの脅威として見られない者たちではあるが、それでも魔族は魔族だ。
見る者が見れば、国や勇者たちに頼んでなんとしても殺そうとするかもしれない。
「そのあたりは、ピルカヤとダスカロスにチェックしてもらいたい」
「やった~! 仕事が増える~!」
「ピルカヤが働きすぎないかの監視も含めて任せてくれ」
「やだ~!」
ピルカヤの一喜一憂はさておき、ダスカロスがしっかりと見てくれるなら安心だ。
というところまでが一つ目の問題。これは、なんとかなると考えて良いだろう。
「問題は、オーガたちと対立してしまわないか」
というか、普通なら十中八九対立しかしないだろう。
自分たちの村の近くにダンジョンが発生し、そこを拠点とした魔族が侵入したオーガを倒すんだ。
これが利敵行為でなければなんだというのか。
「いっそのこと、正々堂々と宣戦布告するくらいで良いのではないでしょうか?」
「プリミラがそんな過激な発想を……」
いつもの穏やかな彼女は、どこへいってしまったのか。
これではまるで、イピレティスやリピアネムだ。
……いや、たまに過激なプリミラになるか。
潮流の宝玉を手に入れたときとか、なんかハイになっていたような気がする。
「以前話したように、オーガは少々特殊な価値観を持ち合わせていまして、力が法みたいな種族です」
「それも、獣人と違ってほとんどのオーガが、本当に潔く力に従うんだっけ?」
「はい。なので、いっそのことこれから敵対することを宣言し、敗北したら従うように言ってしまうのがいいかと」
ある意味で、清々しい種族と考えれば良いんだろうか……?
そうなると、ダンジョンで迎え撃って大丈夫なのかが心配になってくるな。
「ダンジョンで待ち伏せや罠で撃退しても、弱者の卑劣な手段として嫌われそうな気がしてきた」
「大丈夫だと思いますよ~? 僕だって、レイ様の殺意むき出しのダンジョンなんて、生唾ものですし」
イピレティスが恍惚の表情を浮かべているが、このウサギの感覚をあてにするのも不安なんだよな……。
そりゃあ、気が合うことは多いけれど、その結果やりすぎて怒られることも少なくない。
俺とイピレティスの感性は、普通の意見として受け取ってはいけないと思うんだ。
「正々堂々とダンジョンで倒す。最初にそのように宣言すれば、オーガたちも文句は無いはずです」
「まあ、プリミラやダスカロスがそう判断しているなら……」
「え~? 僕の判断は信用してくれないんですか~?」
「お前はこっち側の魔族だから駄目だ」
「う~ん……。それはそれで嬉しいので、良いですけどね!」
俺とイピレティスとディキティスとリピアネムは、残念ながらまともじゃない側の魔族だ。
なので、こうしてみんなの意見を聞いておかないとな。
そのみんなの筆頭であるプリミラやダスカロスが、大丈夫と言っているので安心できる。
「じゃあ、ダンジョン作成自体は問題ないということで。色々と案を出していくから、みんなも気になったことは言ってくれ」
◇
「まず、対オーガ用の罠として、岩を何個落とすところから考えようと思う」
「いきなり、気になること言うんじゃねえよぉ! お前はぁ!」
「そこはほら、オーガの耐久力知らないから。岩で測るべきじゃないかと思ってな」
「その発言、あながち間違ってないのもたちわるいんだよなぁ……」
アナンタがふだんよりも指摘しないのは、オーガの耐久力が他の種族より上だからだろう。
これは、岩だけでなく海や毒や迷路も使えそうだな。
これまで培ったダンジョンの経験から、オーガを全力で撃退しても良いとみた。
「宰相様がすごいこと言ってるわね……」
「他人事みたいに言ってるけどなぁ。そのダンジョンで戦うのお前らだからなぁ?」
「アナンタの言うとおり、実際にみんなには戦ってもらうから。ダンジョンが完成したあかつきには、罠とかうまく利用できるように覚えておいてくれ」
「で、できますかね……」
「まあ、俺でも覚えられるはずだし、大丈夫だろ」
「がんばります……」
ゴブリンたちも、罠を利用した戦闘は得意だからな。
最悪の場合、ゴブリンたちに聞けば教えてくれると思う。
「あとは、吊り天井を使うか……?」
「ああ、覚えていくことがどんどん増えそう……」
そこは少しずつ覚えていってもらおう。
最初は、自分の待機場所の付近さえ覚えておけば問題ないはずだ。
みんなで楽しくダンジョンを活用していこうじゃないか。
「それにしてもオーガ相手かあ……。昔のマギレマ様くらい闘争心ぐつぐつなのよねぇ」
「昔のマギレマ様のほうが、血気盛んだからマギレマ様が上だ」
「マギレマ様なら、オーガの軍団程度お一人で相手できるからな」
え、なにそれ。マギレマさんすげえ。
「過去のマギレマさんって、案外武闘派?」
「……ええと、そうだ。レイくんは、耳塞いでおこうね~。ほら、犬だよ~」
「え、あ……」
部下の発言を聞いていたマギレマさんが、犬で俺の耳を塞いだ。
何匹もの犬が耳に顔を寄せてくれて、わりとふかふかしていて気持ちが良い。
だが、音が全然聞こえなくなってしまった。
きっと、部下たちが過去の自分について話していたので、軽く叱っておくつもりだな。
「てめえら、膝の皿抜き取って料理盛ってやろうかコラァッ!」
「す、すみません!!」
「宰相様に内緒だったこと忘れてました!!」
「マ、マギレマ~。膝の皿ってそういうのじゃありませんよ~」
なんか怒られてるなあ。
相変わらず、マギレマさんの部下たちは彼女に頭が上がらないらしい。
ついでにフィオナ様もおろおろしているので、わりとガチめなお説教だったんだろうか?
犬たちのASMRのせいで、音だけは聞こえない。
「駄目だよ~? 過去は過去なんだから」
「そうですね。ですが、レイは私のですよ?」
「す、すみません……。とるつもりはありません」
う~ん。清々しいまでのヒエラルキー。
日頃からホワイトな魔王軍だと思っているが、たまにブラックになるよね。ここ。
「レイもレイです。足にかまってる暇があったら、私にかまいなさい!」
「仕事中ですので……」
「では、私がかまいます! レイはいつも一生懸命仕事ができて偉いですね~」
フィオナ様の気まぐれにより、俺は頭をなでられながらダンジョンについて話すことになってしまった。
ほら、こんなしまりがない姿だから、マギレマさんの部下たちが呆れているじゃないか。
なんかすみません。こんな魔王とこんな宰相で……。