【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
話し合いは一旦終わり、次は現地へ赴いてのダンジョン作りだ。
各施設の担当たちを除いて、わりと大勢の魔王軍たちが俺の行動を観察している。
宰相としての初のダンジョン作りだからな。情けないものを見せるわけにはいかない。
「まずは入り口に畑を作ろう」
「すばらしいお考えです。やはりレイ様は宰相にふさわしい魔族です」
プリミラが興奮したように俺を褒めたたえてくれる。
普段の冷静な彼女はどこへやら。
畑さえ作れば、誰でもこのくらい褒めるんじゃないかと疑ってしまうほどだ。
「ちなみに、なぜ畑を? それも入り口に作ったとあれば、オーガたちに荒されるのではないか?」
「生活感を出したかった。ドリュたちが、このダンジョンに落ち延びたというのであれば、ここで生活していることに説得力を持たせたいからな」
「なるほど。であれば、実際に作物を育てるではなく、演出のためということか。オーガたちに荒されようが問題ない畑というわけだな」
「そ、そんなことが許されるとは……。レイ様は恐ろしいお方です……」
プリミラが戦慄している。
ほんと、表情こそ変わらないものの感情表現が豊かだよな。一部のことに関しては。
「あとで、プリミラの畑の拡張をするから許してくれ」
「わ、私はレイ様の方針に異を唱えるつもりはありませんので、そのようなご機嫌伺いは不要ですが……それはそれとして、そのお気持ちを受け取っておきます」
「うん。だから、この畑は最低限の作物だけにしてほしい」
「承知しました」
畑とは別に当然道も作っておく。
入り口なので複雑すぎないほうが良いだろうし、単なる一本道だ。
分岐もなければ、油まみれでもなく、罠もこの時点では自重する。
「よしよし、今までのダンジョン作りが活きているなぁ」
アナンタが満足そうにしているってことは、実はもう少し罠を増やしても良いんじゃないか?
いや、入り口は我慢だ。我慢かぁ……。辛いなぁ。
「つ、次は最初の部屋を……」
「おい、なんでもう我慢が利かなくなってそうなんだよぉ……。がんばれってぇ」
オーガだぞ? 絶対ドワーフたちより屈強じゃん。
全力の罠で迎え撃つくらいで、ちょうど良い相手じゃないのか?
本当に、加減なんてして良いのか?
「くそぉ、足りない分は、あとから指摘してもらえば良いか……」
「いや、絶対その逆になるから安心しろってぇ……。なにを無駄な心配してんだよ。お前はぁ」
「なら、安心して作っていくか」
「え、安心できる要素どこにあった……?」
まずは最初の部屋を作っていこう。
大勢が入れないように、まずは普通のサイズの部屋だな。
畑の近くということもあるし、作業者の休憩所みたいなコンセプトで作るか。
「部屋作成」
よし、適度に使用感がある部屋ができた。
新品ではなく、誰かが今もこの部屋を利用しているくらいの古さだ。
若干の植物が部屋の中にまで生えているのも良い。
どこか廃墟を彷彿させるので、より古臭さを演出できている。
「食人花たちを何匹かここに配置して」
「多い。減らせ」
「……部屋の半分は駄目か」
「その半分くらいにしておこうなぁ」
じゃあ、そのくらいにして迎え撃つとしよう。
まあ、しょせんは最初の部屋だ。そこそこの戦闘が発生するが、簡単に突破できても良いだろう。
「じゃあ、次は分かれ道と」
「いきなり四つか。分散が目的か?」
「そうだな。あまり同じ道ばかりだと、集団が固まってやってきそうだし」
それと、四つも道を作れば、その分その先の仕掛けも増やせる。
つまり俺が楽しめる。なので、これは俺の趣味も兼ねている。
「一つは海だな。カニとエビをたくさん」
「だから多いってぇ!」
「……カニとエビをややたくさん」
「足元みやがってぇ……。まあ、一旦それで様子見!」
アナンタとのギリギリのせめぎ合いをしながら、海エリアを構築していく。
だって、オルナスたちだったらこの程度余裕だぞ?
やっぱり、もう少しだけこっそりと増やすべきだな。
「おい、なんで今無言で増やしたぁ? 見てるからな。俺だけじゃなくて、いつも以上に大勢が見てるからなぁ!?」
「減らせば良いんだろ。まったくもう」
「お前が譲歩したみたいにするのは、なんなの?」
「オーガって、水中戦はどうなんだ?」
「そこまで得意ではありませんね。海人族のように、海でのパワーアップはありません」
じゃあ、仕方がないから減らすか……。
待てよ。カニとエビは増やすなと言われたが、他のモンスターのことは言われていない。
ならば、海にあったモンスターをここで作成してしまえば、その分は許されるんじゃないか?
上位モンスター作成:消費魔力 20
「おまえっ!」
こっそりとメニューを選択すると、目の前にはこれまた大きな海のモンスターが現れた。
よし、運よく一発でここで戦えるモンスターを引けたようだ。
見た目は、白黒模様のシャチか。ただ、一つ大きな特徴として、大きな触手が生えている。
テンタクルオルカ 魔力:40 筋力:68 技術:66 頑強:50 敏捷:40
これは、シャチとタコのキメラか?
大きな体だけど、触手があるので小回りも利きそうで良いじゃないか。
じゃあ、このモンスターもここに配置しておこう。
「おい、そいつ配置するなら他減らせぇ」
「……エビとカニではないぞ?」
「そんな屁理屈が通じると思うなよぉ!」
手ごわいじゃないか。アナンタ。
仕方が無いので、カニを少し減らして、シャチもここに置くことにした。
オーガ相手にどんな戦いを見せてくれるか、楽しみだ。
「その先に宝箱と休憩用の部屋。罠は……まあ、海の場合やめておくか」
俺だって自重できるんだ。
無言で嬉しそうに頷くアナンタや、成長したことに感心するようなプリミラとダスカロスを見ると、たまには自力で調整するのもありな気がしてしまう。
だが、今回だけだぞ。普段はみんなに任せるからな。
「二つ目の道は、迷路とゴーレムだな」
「また随分と多くないか? アナンタではないが、さすがにこの数は指摘したくなるのだが」
今度はダスカロスからの指摘が入る。
わかる。わかるよ。この数はいくら俺でも多いと思っているよ。
だけど、ちゃんと考え合ってのことだと説明させてほしい。
「大丈夫。戦わせないから」
「考えがあるようだな。話を聞こう」
「ゴーレムには、壁というか障害物のふりをしてもらう」
「たしかに、彼らがじっとしていれば、岩の塊には見えるな」
「それで、誰も見ていないときに、適当に動いてもらう」
ダスカロスは、そこまで説明すると俺の意図を察してくれたようだ。
よし、許しも得たことだし、大量のゴーレムを迷宮に配置しておこう。
「侵入者たちが見ていないときに、ゴーレムが移動することで迷路が変化するわけか」
「それは良いけど、ゴーレムたち全員で襲おうとすんなよぉ?」
「そうだな。そんなことしたら、攪乱できなくなってしまう」
「そういう理由で言ったんじゃねえけど、まあいいか」
ここでの戦闘は、一般魔族たちに任せるとしよう。
今回の目的の一つなので、やはり序盤から戦闘できるようにしておきたい。
それに、万が一ピンチになったら、ゴーレムたちと連携して迷路から撤退できるからな。
それなら、オーガたちの追っ手をかわして逃げることも可能だろう。
先の道や部屋を作り、やはり宝箱も少々配置しておき、これで二本目もよし。
さあ、さっさと三本目、四本目も作ってしまおう。
「捕獲罠も大量に置いておきたいな」
「オーガ相手にどこまで通用するかはわかりませんが、試す価値はあるかもしれませんね」
「じゃあ、岩の罠と檻の罠を大量に……」
「落とし穴もどうでしょうか?」
「あ、良いなそれ。時任を捕まえたときみたいにしよう」
ちょっと多めに罠を仕掛けつつ、それだけではさみしいのでコボルトたちを配置と。
彼らなら、ゴブリンと同じく罠を上手く利用して戦えるだろうからな。
「コボルトより強いモンスターのほうが良いかな?」
「いえ! 罠が大量にあるため、このくらいでいいかと」
「コボルトロードをもっと増やせば、全体の強化もできそうだけど?」
「このくらいでいいかと」
そうか。プリミラがそう言うなら、きっとそうなんだろうな。
あとは、先に続く部屋や道を作っておいて、一旦中断と。
先を作る前に、今度は四本目の道の先をどうするかだ。
「吊り天井と毒だな」
「さっき言ってたからって、全部採用する必要はないんだけどなぁ」
「というか、その二つの組み合わせって、そんなに効果的でもないんじゃない?」
リグマとピルカヤが意見するが、大丈夫。
ちゃんと組み合わせることにしているから。
「まず、吊り天井だけでなく安地も作る」
「ありゃ、全滅させる気かと思っていたよ。良かったなアナンタ。レイくんも、今回ばかりは殺意まみれじゃないぞ」
「それで、安地に毒の罠や毒系のモンスターを配置することで、逃げ場なく毒に襲われるようにする」
「リグマァ。なんか言えよぉ……」
「……がんばれ!」
これで完成だ。
ちゃんと吊り天井も毒も組み合わせられたぞ。
ピルカヤも、これには感心してくれているようだし、なかなか良いものができたじゃないか。
「……すごいねぇ。ボクは、口出ししないでおくよ」
「ピルカヤァ! 四天王ども、もっとしっかりしろよぉ。プリミラを見習えってぇ」
アナンタのこの叫びの度合いからすると、まあギリギリ問題ないってことだな。
よしよし、この調子で各フロアの奥のほうも作っておくとしよう。
……ソウルイーターもこっちに配置してやるか? 最近さらにやる気を出しているみたいだし、強敵との実戦経験はあの子にも積ませてあげるべきか。
「しばらく見ない間に、より強力なダンジョンが作れるようになっていますねえ。さすがは私の宰相です」
「ありがとうございます」
フィオナ様が頭をなでながら褒めてくれる。
相変わらず、俺のことを止めずに褒めてくれるんだな。
部下の良い成果だけを見て褒めてくれる、実に優しい魔王様だ。
なら、この魔王様の期待に応えるべく、もっと張り切ってダンジョンを作っていこうじゃないか。