【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第347話 楽しいダンジョン作りの合間に見え隠れする手加減なし

 話し合いは一旦終わり、次は現地へ赴いてのダンジョン作りだ。

 各施設の担当たちを除いて、わりと大勢の魔王軍たちが俺の行動を観察している。

 宰相としての初のダンジョン作りだからな。情けないものを見せるわけにはいかない。

 

「まずは入り口に畑を作ろう」

 

「すばらしいお考えです。やはりレイ様は宰相にふさわしい魔族です」

 

 プリミラが興奮したように俺を褒めたたえてくれる。

 普段の冷静な彼女はどこへやら。

 畑さえ作れば、誰でもこのくらい褒めるんじゃないかと疑ってしまうほどだ。

 

「ちなみに、なぜ畑を? それも入り口に作ったとあれば、オーガたちに荒されるのではないか?」

 

「生活感を出したかった。ドリュたちが、このダンジョンに落ち延びたというのであれば、ここで生活していることに説得力を持たせたいからな」

 

「なるほど。であれば、実際に作物を育てるではなく、演出のためということか。オーガたちに荒されようが問題ない畑というわけだな」

 

「そ、そんなことが許されるとは……。レイ様は恐ろしいお方です……」

 

 プリミラが戦慄している。

 ほんと、表情こそ変わらないものの感情表現が豊かだよな。一部のことに関しては。

 

「あとで、プリミラの畑の拡張をするから許してくれ」

 

「わ、私はレイ様の方針に異を唱えるつもりはありませんので、そのようなご機嫌伺いは不要ですが……それはそれとして、そのお気持ちを受け取っておきます」

 

「うん。だから、この畑は最低限の作物だけにしてほしい」

 

「承知しました」

 

 畑とは別に当然道も作っておく。

 入り口なので複雑すぎないほうが良いだろうし、単なる一本道だ。

 分岐もなければ、油まみれでもなく、罠もこの時点では自重する。

 

「よしよし、今までのダンジョン作りが活きているなぁ」

 

 アナンタが満足そうにしているってことは、実はもう少し罠を増やしても良いんじゃないか?

 いや、入り口は我慢だ。我慢かぁ……。辛いなぁ。

 

「つ、次は最初の部屋を……」

 

「おい、なんでもう我慢が利かなくなってそうなんだよぉ……。がんばれってぇ」

 

 オーガだぞ? 絶対ドワーフたちより屈強じゃん。

 全力の罠で迎え撃つくらいで、ちょうど良い相手じゃないのか?

 本当に、加減なんてして良いのか?

 

「くそぉ、足りない分は、あとから指摘してもらえば良いか……」

 

「いや、絶対その逆になるから安心しろってぇ……。なにを無駄な心配してんだよ。お前はぁ」

 

「なら、安心して作っていくか」

 

「え、安心できる要素どこにあった……?」

 

 まずは最初の部屋を作っていこう。

 大勢が入れないように、まずは普通のサイズの部屋だな。

 畑の近くということもあるし、作業者の休憩所みたいなコンセプトで作るか。

 

「部屋作成」

 

 よし、適度に使用感がある部屋ができた。

 新品ではなく、誰かが今もこの部屋を利用しているくらいの古さだ。

 若干の植物が部屋の中にまで生えているのも良い。

 どこか廃墟を彷彿させるので、より古臭さを演出できている。

 

「食人花たちを何匹かここに配置して」

 

「多い。減らせ」

 

「……部屋の半分は駄目か」

 

「その半分くらいにしておこうなぁ」

 

 じゃあ、そのくらいにして迎え撃つとしよう。

 まあ、しょせんは最初の部屋だ。そこそこの戦闘が発生するが、簡単に突破できても良いだろう。

 

「じゃあ、次は分かれ道と」

 

「いきなり四つか。分散が目的か?」

 

「そうだな。あまり同じ道ばかりだと、集団が固まってやってきそうだし」

 

 それと、四つも道を作れば、その分その先の仕掛けも増やせる。

 つまり俺が楽しめる。なので、これは俺の趣味も兼ねている。

 

「一つは海だな。カニとエビをたくさん」

 

「だから多いってぇ!」

 

「……カニとエビをややたくさん」

 

「足元みやがってぇ……。まあ、一旦それで様子見!」

 

 アナンタとのギリギリのせめぎ合いをしながら、海エリアを構築していく。

 だって、オルナスたちだったらこの程度余裕だぞ?

 やっぱり、もう少しだけこっそりと増やすべきだな。

 

「おい、なんで今無言で増やしたぁ? 見てるからな。俺だけじゃなくて、いつも以上に大勢が見てるからなぁ!?」

 

「減らせば良いんだろ。まったくもう」

 

「お前が譲歩したみたいにするのは、なんなの?」

 

「オーガって、水中戦はどうなんだ?」

 

「そこまで得意ではありませんね。海人族のように、海でのパワーアップはありません」

 

 じゃあ、仕方がないから減らすか……。

 待てよ。カニとエビは増やすなと言われたが、他のモンスターのことは言われていない。

 ならば、海にあったモンスターをここで作成してしまえば、その分は許されるんじゃないか?

 

 上位モンスター作成:消費魔力 20

 

「おまえっ!」

 

 こっそりとメニューを選択すると、目の前にはこれまた大きな海のモンスターが現れた。

 よし、運よく一発でここで戦えるモンスターを引けたようだ。

 見た目は、白黒模様のシャチか。ただ、一つ大きな特徴として、大きな触手が生えている。

 

 テンタクルオルカ 魔力:40 筋力:68 技術:66 頑強:50 敏捷:40

 

 これは、シャチとタコのキメラか?

 大きな体だけど、触手があるので小回りも利きそうで良いじゃないか。

 じゃあ、このモンスターもここに配置しておこう。

 

「おい、そいつ配置するなら他減らせぇ」

 

「……エビとカニではないぞ?」

 

「そんな屁理屈が通じると思うなよぉ!」

 

 手ごわいじゃないか。アナンタ。

 仕方が無いので、カニを少し減らして、シャチもここに置くことにした。

 オーガ相手にどんな戦いを見せてくれるか、楽しみだ。

 

「その先に宝箱と休憩用の部屋。罠は……まあ、海の場合やめておくか」

 

 俺だって自重できるんだ。

 無言で嬉しそうに頷くアナンタや、成長したことに感心するようなプリミラとダスカロスを見ると、たまには自力で調整するのもありな気がしてしまう。

 だが、今回だけだぞ。普段はみんなに任せるからな。

 

「二つ目の道は、迷路とゴーレムだな」

 

「また随分と多くないか? アナンタではないが、さすがにこの数は指摘したくなるのだが」

 

 今度はダスカロスからの指摘が入る。

 わかる。わかるよ。この数はいくら俺でも多いと思っているよ。

 だけど、ちゃんと考え合ってのことだと説明させてほしい。

 

「大丈夫。戦わせないから」

 

「考えがあるようだな。話を聞こう」

 

「ゴーレムには、壁というか障害物のふりをしてもらう」

 

「たしかに、彼らがじっとしていれば、岩の塊には見えるな」

 

「それで、誰も見ていないときに、適当に動いてもらう」

 

 ダスカロスは、そこまで説明すると俺の意図を察してくれたようだ。

 よし、許しも得たことだし、大量のゴーレムを迷宮に配置しておこう。

 

「侵入者たちが見ていないときに、ゴーレムが移動することで迷路が変化するわけか」

 

「それは良いけど、ゴーレムたち全員で襲おうとすんなよぉ?」

 

「そうだな。そんなことしたら、攪乱できなくなってしまう」

 

「そういう理由で言ったんじゃねえけど、まあいいか」

 

 ここでの戦闘は、一般魔族たちに任せるとしよう。

 今回の目的の一つなので、やはり序盤から戦闘できるようにしておきたい。

 それに、万が一ピンチになったら、ゴーレムたちと連携して迷路から撤退できるからな。

 それなら、オーガたちの追っ手をかわして逃げることも可能だろう。

 

 先の道や部屋を作り、やはり宝箱も少々配置しておき、これで二本目もよし。

 さあ、さっさと三本目、四本目も作ってしまおう。

 

「捕獲罠も大量に置いておきたいな」

 

「オーガ相手にどこまで通用するかはわかりませんが、試す価値はあるかもしれませんね」

 

「じゃあ、岩の罠と檻の罠を大量に……」

 

「落とし穴もどうでしょうか?」

 

「あ、良いなそれ。時任を捕まえたときみたいにしよう」

 

 ちょっと多めに罠を仕掛けつつ、それだけではさみしいのでコボルトたちを配置と。

 彼らなら、ゴブリンと同じく罠を上手く利用して戦えるだろうからな。

 

「コボルトより強いモンスターのほうが良いかな?」

 

「いえ! 罠が大量にあるため、このくらいでいいかと」

 

「コボルトロードをもっと増やせば、全体の強化もできそうだけど?」

 

「このくらいでいいかと」

 

 そうか。プリミラがそう言うなら、きっとそうなんだろうな。

 あとは、先に続く部屋や道を作っておいて、一旦中断と。

 先を作る前に、今度は四本目の道の先をどうするかだ。

 

「吊り天井と毒だな」

 

「さっき言ってたからって、全部採用する必要はないんだけどなぁ」

 

「というか、その二つの組み合わせって、そんなに効果的でもないんじゃない?」

 

 リグマとピルカヤが意見するが、大丈夫。

 ちゃんと組み合わせることにしているから。

 

「まず、吊り天井だけでなく安地も作る」

 

「ありゃ、全滅させる気かと思っていたよ。良かったなアナンタ。レイくんも、今回ばかりは殺意まみれじゃないぞ」

 

「それで、安地に毒の罠や毒系のモンスターを配置することで、逃げ場なく毒に襲われるようにする」

 

「リグマァ。なんか言えよぉ……」

 

「……がんばれ!」

 

 これで完成だ。

 ちゃんと吊り天井も毒も組み合わせられたぞ。

 ピルカヤも、これには感心してくれているようだし、なかなか良いものができたじゃないか。

 

「……すごいねぇ。ボクは、口出ししないでおくよ」

 

「ピルカヤァ! 四天王ども、もっとしっかりしろよぉ。プリミラを見習えってぇ」

 

 アナンタのこの叫びの度合いからすると、まあギリギリ問題ないってことだな。

 よしよし、この調子で各フロアの奥のほうも作っておくとしよう。

 ……ソウルイーターもこっちに配置してやるか? 最近さらにやる気を出しているみたいだし、強敵との実戦経験はあの子にも積ませてあげるべきか。

 

「しばらく見ない間に、より強力なダンジョンが作れるようになっていますねえ。さすがは私の宰相です」

 

「ありがとうございます」

 

 フィオナ様が頭をなでながら褒めてくれる。

 相変わらず、俺のことを止めずに褒めてくれるんだな。

 部下の良い成果だけを見て褒めてくれる、実に優しい魔王様だ。

 なら、この魔王様の期待に応えるべく、もっと張り切ってダンジョンを作っていこうじゃないか。

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