【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第350話 記憶の奥のメメント・モリ

「あ、あれって……」

 

「ええ……同じ……」

 

 大丈夫か? 時任(ときとう)奥居(おくい)も、共有された映像を目にしてから様子がおかしい。

 というか、これって……恐れている?

 

「だ、大丈夫? 二人とも」

 

世良(せら)(はら)、二人を支えてやってくれ」

 

 今にも倒れそうな二人を、同じく転生者の女子である世良と原に任せる。

 風間(かざま)には悪いが、なんだか妙な様子だったので、許可をもらう前に頼んでしまった。

 幸い、風間も気にすることはなく、むしろ二人を心配している様子だったが……何が起きているんだ?

 

「テラペイアに」

 

「い、いえ。大丈夫です。レイさん」

 

 医者に診せようと思ったが、その前に奥居に静止されてしまった。

 そうは言うが、まだ顔色が悪いぞ……。魔族である俺やフィオナ様のように、真っ白になっているじゃないか。

 大丈夫とは思えないんだが。

 

「よくわからないが、ここは安全だ。なんなら、お守りに不死鳥の羽持っておくか?」

 

「あ、ありがとうございます。本当に大丈夫なので……」

 

 本人も、大丈夫ではないとわかっているのだろう。

 大きく深呼吸をして、落ち着こうとしているのがわかる。

 そうしてみんなが心配する中、しばらくの時間を要して二人は本当に気持ちを持ち直したようだ。

 

「すみません。ご迷惑をおかけしまして」

 

「いや、問題ない。ただ、何があったか話すことはできるか?」

 

 二人の様子がおかしくなったのは、オーガを見てからだ。

 遠隔からプレッシャーでも感じた? だが、風間やロペスは問題なさそうだ。

 となると、それ以外で何か因縁でもあるということか?

 

「プリズイコスに住んでいるときに、絡まれたとか?」

 

「いえ……それよりも前の話です」

 

 それよりも前ということは、二人が国に保護される前か。

 俺で言えばフィオナ様に保護される前ということだし、もしも危険な目に遭ったというのなら、二人の様子も理解できる。

 

「皆さんがご存知の通り、私たちは転生者です……」

 

 まあそこは理解した上で勧誘したからな。

 別に、隠していたわけでもないし、俺自身転生者だし、何も問題ない。

 それなのに、そう切り出したということは……前世に関するということか?

 

「転生したということは、前世で死んでいたということで」

 

 ……ああ、やっぱりそうなのか。

 俺は目が覚めたらあの女神の前にいたので、よくわかっていなかったが、やはり前世で死んでいたわけだ。

 

「その死因が、あのオーガたちです」

 

「……え、本当に?」

 

「は、はい! あの鬼みたいなのに、殺されました!」

 

 時任も奥居と同じらしく、彼女の発言を肯定した。

 たしか、二人は前世の知り合いですらないという話だったな。

 だけど、同じ土地に住んでいたとは聞いている。

 

 ……女神のやつ、まさかこの世界と俺たちの世界をつなげたのか?

 そこで他種族に侵略させて、死んだ人間を転生させて魔王退治の尖兵にしているとか?

 

 俺にはオーガたちの記憶はないが、もしかして殺されたときの記憶を忘れようとしているか、あるいは寝てる間に死んだのだろうか。

 後者であってほしいな……。前者だと、ちゃんと死因と向き合えている二人に情けなくなる。

 

「フィオナ様。女神って、現実世界……というか、俺たちの世界にも干渉するんですか?」

 

「一応できなくはありません……。現に、死した者たちをこちらへ転生させていますからね。しかし、明確に侵略行為のような真似までできるかは、残念ながら私にもわかりません」

 

 神だもんな。俺たちでは理解できなくてもしかたがないな。

 

「あ、あれ? でもちょっと違うような……」

 

 時任が、ピルカヤに共有された景色を観察すると、怪訝な表情を浮かべてつぶやいた。

 違う? オーガではなかったということか?

 

「私を殺したのは、もっと理性が無さそうというか、話なんてできないようなオーガでした」

 

「あっ、私も! だから余計に怪物が出てきたって思ったんだよねぇ……」

 

 理性が無く、本能のままに殺そうとしてきたオーガか……。

 たしか、オーガってモンスターもいるから、二種類いるんだっけ?

 

「時任と奥居を襲ったのって、モンスターのほうのオーガじゃないか?」

 

「え~と、今見ているのとは違うんですか?」

 

 俺もわからないが、会話ができそうな時点で違うと思う。

 もっとモンスターみたいに……うちのモンスター、みんな賢いから参考にならないな。

 あれだ。俺を襲ったトカゲみたいに、もっと問答無用に襲う感じなんだろう。きっと。

 

「ピルカヤ。野生のオーガいない? モンスターのほうの」

 

「いたとしても、ダンジョンの外だろうから視界を共有できないと思うよ?」

 

「だよなあ」

 

 まあ、二人が違和感を覚えたのなら、きっとモンスターのほうのオーガが、二人の死因なんだろう。

 

「俺が作成できれば、一発でわかるんだろうけどな」

 

「どうだろうな? レイくんのモンスター賢いから、二人を襲ったモンスターと少し違うと思うぞ」

 

「オーガはモンスターの中でも上位だ。それこそガーゴイルたちよりも明確に一段階上と見ていい。オーガと同じくドラゴンもそうだが、君はまだ作れないだろうな」

 

 モンスターガシャも、上位の先を目指すときがきたか。

 ……と、今はそれも後回しだな。

 

「オーガを仲間にと思ったけど、二人とは会わないようにしないといけないな」

 

「だ、大丈夫です! 急に殺されないなら、そのうち慣れますし!」

 

「私も……はい。すぐ慣れると思います」

 

 なんで、フィオナ様と俺を交互に見てから言うの?

 というか、随分とリラックスできてるな、おい。

 俺、いつの間にかそんなに怖がられていたのか?

 

「まあ、魔王様とレイより怖くないから平気でしょ。ボクのが強いし」

 

「うむ。私のほうが強い」

 

「はい! 魔王軍のほうが強いですし、選択肢も平気と言っているので、オーガなんて全然平気です!」

 

 時任はそう言いながら気合を入れると、本当にオーガへの恐怖心はなんとかなったようだ。

 奥居もそんな時任を見て、同じく平静を取り戻している。

 

「駄目だったら言ってくれよ? 無理すると後々問題になりそうだし」

 

「はい! では私たちも、しばらくオーガたちを監視します!」

 

「あ、それ良いかも。どうせレイの罠とモンスターで、軽く撃退するだろうし、オーガなんて大したことないって印象になるんじゃない?」

 

 ピルカヤの言葉に二人は頷くと、真剣な表情でオーガたちを監視し始めた。

 ……これで、俺の罠が効かなかったら、逆効果なんじゃないか?

 今からでも、罠をこっそりと増やしたい。

 

 だが、さすがに侵入者と鉢合わせるわけにもいかないし、こうなったらドリュたちに期待するしかないな。

 オーガたちは、食人花たちを突破して別れ道へと進んでいる。

 どう進むか考えているようだが、さすがに数が多いので手分けして進みそうだな。

 

 ……こうして、相談できている時点で、二人を襲ったオーガとは別物だとは思う。

 なんだったら、獣人よりも賢い気がするし。

 ということは、二人はモンスターに襲われたわけだ。

 

「……言いにくかったら言わなくていいんだけど、風間たちはどうやって死んだか覚えているか?」

 

「僕たちは、え~と……そういえば、モンスターみたいなのに襲われましたね」

 

「風間たちもか」

 

「はい。学校にいたところ、全員襲われました」

 

「ということは、転生させられた者の死因はモンスター? あの女神が、何かしたってことか?」

 

 元の世界とこの世界に干渉できるのなんて、あいつくらいだもんなあ……。

 こうなると、やはりあいつが転生のためにモンスターをけしかけた可能性が高い。

 

「ボス。俺の死因違うぜ?」

 

「あれ、ロペスは別なのか?」

 

「ああ。組織の抗争で銃で撃たれて死んだ」

 

「ロペスくん、そんな前世だったの!?」

 

「おう。たぶん、ヨハンもそうだろうな」

 

「悪人だ~……」

 

「いや、魔王軍に所属してるし、いまさら……」

 

 そこはロペスの言うとおりだ。

 ただ、ロペスは別か……。ということは、女神のしわざではない?

 モンスターにやられた者だけが、転生させられたというわけでもなさそうだ。

 

「まあ、もう一回死なないように、この世界ではがんばっていこうぜ」

 

「私、店番がんばる!」

 

 それ、たぶんロペスが言ったがんばるとは違うと思う……。

 それでも、転生者たちは、改めてこの世界で生きる決意を、じゃっかんゆるい感じで固めたようだった。

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