【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「あ、あれって……」
「ええ……同じ……」
大丈夫か?
というか、これって……恐れている?
「だ、大丈夫? 二人とも」
「
今にも倒れそうな二人を、同じく転生者の女子である世良と原に任せる。
幸い、風間も気にすることはなく、むしろ二人を心配している様子だったが……何が起きているんだ?
「テラペイアに」
「い、いえ。大丈夫です。レイさん」
医者に診せようと思ったが、その前に奥居に静止されてしまった。
そうは言うが、まだ顔色が悪いぞ……。魔族である俺やフィオナ様のように、真っ白になっているじゃないか。
大丈夫とは思えないんだが。
「よくわからないが、ここは安全だ。なんなら、お守りに不死鳥の羽持っておくか?」
「あ、ありがとうございます。本当に大丈夫なので……」
本人も、大丈夫ではないとわかっているのだろう。
大きく深呼吸をして、落ち着こうとしているのがわかる。
そうしてみんなが心配する中、しばらくの時間を要して二人は本当に気持ちを持ち直したようだ。
「すみません。ご迷惑をおかけしまして」
「いや、問題ない。ただ、何があったか話すことはできるか?」
二人の様子がおかしくなったのは、オーガを見てからだ。
遠隔からプレッシャーでも感じた? だが、風間やロペスは問題なさそうだ。
となると、それ以外で何か因縁でもあるということか?
「プリズイコスに住んでいるときに、絡まれたとか?」
「いえ……それよりも前の話です」
それよりも前ということは、二人が国に保護される前か。
俺で言えばフィオナ様に保護される前ということだし、もしも危険な目に遭ったというのなら、二人の様子も理解できる。
「皆さんがご存知の通り、私たちは転生者です……」
まあそこは理解した上で勧誘したからな。
別に、隠していたわけでもないし、俺自身転生者だし、何も問題ない。
それなのに、そう切り出したということは……前世に関するということか?
「転生したということは、前世で死んでいたということで」
……ああ、やっぱりそうなのか。
俺は目が覚めたらあの女神の前にいたので、よくわかっていなかったが、やはり前世で死んでいたわけだ。
「その死因が、あのオーガたちです」
「……え、本当に?」
「は、はい! あの鬼みたいなのに、殺されました!」
時任も奥居と同じらしく、彼女の発言を肯定した。
たしか、二人は前世の知り合いですらないという話だったな。
だけど、同じ土地に住んでいたとは聞いている。
……女神のやつ、まさかこの世界と俺たちの世界をつなげたのか?
そこで他種族に侵略させて、死んだ人間を転生させて魔王退治の尖兵にしているとか?
俺にはオーガたちの記憶はないが、もしかして殺されたときの記憶を忘れようとしているか、あるいは寝てる間に死んだのだろうか。
後者であってほしいな……。前者だと、ちゃんと死因と向き合えている二人に情けなくなる。
「フィオナ様。女神って、現実世界……というか、俺たちの世界にも干渉するんですか?」
「一応できなくはありません……。現に、死した者たちをこちらへ転生させていますからね。しかし、明確に侵略行為のような真似までできるかは、残念ながら私にもわかりません」
神だもんな。俺たちでは理解できなくてもしかたがないな。
「あ、あれ? でもちょっと違うような……」
時任が、ピルカヤに共有された景色を観察すると、怪訝な表情を浮かべてつぶやいた。
違う? オーガではなかったということか?
「私を殺したのは、もっと理性が無さそうというか、話なんてできないようなオーガでした」
「あっ、私も! だから余計に怪物が出てきたって思ったんだよねぇ……」
理性が無く、本能のままに殺そうとしてきたオーガか……。
たしか、オーガってモンスターもいるから、二種類いるんだっけ?
「時任と奥居を襲ったのって、モンスターのほうのオーガじゃないか?」
「え~と、今見ているのとは違うんですか?」
俺もわからないが、会話ができそうな時点で違うと思う。
もっとモンスターみたいに……うちのモンスター、みんな賢いから参考にならないな。
あれだ。俺を襲ったトカゲみたいに、もっと問答無用に襲う感じなんだろう。きっと。
「ピルカヤ。野生のオーガいない? モンスターのほうの」
「いたとしても、ダンジョンの外だろうから視界を共有できないと思うよ?」
「だよなあ」
まあ、二人が違和感を覚えたのなら、きっとモンスターのほうのオーガが、二人の死因なんだろう。
「俺が作成できれば、一発でわかるんだろうけどな」
「どうだろうな? レイくんのモンスター賢いから、二人を襲ったモンスターと少し違うと思うぞ」
「オーガはモンスターの中でも上位だ。それこそガーゴイルたちよりも明確に一段階上と見ていい。オーガと同じくドラゴンもそうだが、君はまだ作れないだろうな」
モンスターガシャも、上位の先を目指すときがきたか。
……と、今はそれも後回しだな。
「オーガを仲間にと思ったけど、二人とは会わないようにしないといけないな」
「だ、大丈夫です! 急に殺されないなら、そのうち慣れますし!」
「私も……はい。すぐ慣れると思います」
なんで、フィオナ様と俺を交互に見てから言うの?
というか、随分とリラックスできてるな、おい。
俺、いつの間にかそんなに怖がられていたのか?
「まあ、魔王様とレイより怖くないから平気でしょ。ボクのが強いし」
「うむ。私のほうが強い」
「はい! 魔王軍のほうが強いですし、選択肢も平気と言っているので、オーガなんて全然平気です!」
時任はそう言いながら気合を入れると、本当にオーガへの恐怖心はなんとかなったようだ。
奥居もそんな時任を見て、同じく平静を取り戻している。
「駄目だったら言ってくれよ? 無理すると後々問題になりそうだし」
「はい! では私たちも、しばらくオーガたちを監視します!」
「あ、それ良いかも。どうせレイの罠とモンスターで、軽く撃退するだろうし、オーガなんて大したことないって印象になるんじゃない?」
ピルカヤの言葉に二人は頷くと、真剣な表情でオーガたちを監視し始めた。
……これで、俺の罠が効かなかったら、逆効果なんじゃないか?
今からでも、罠をこっそりと増やしたい。
だが、さすがに侵入者と鉢合わせるわけにもいかないし、こうなったらドリュたちに期待するしかないな。
オーガたちは、食人花たちを突破して別れ道へと進んでいる。
どう進むか考えているようだが、さすがに数が多いので手分けして進みそうだな。
……こうして、相談できている時点で、二人を襲ったオーガとは別物だとは思う。
なんだったら、獣人よりも賢い気がするし。
ということは、二人はモンスターに襲われたわけだ。
「……言いにくかったら言わなくていいんだけど、風間たちはどうやって死んだか覚えているか?」
「僕たちは、え~と……そういえば、モンスターみたいなのに襲われましたね」
「風間たちもか」
「はい。学校にいたところ、全員襲われました」
「ということは、転生させられた者の死因はモンスター? あの女神が、何かしたってことか?」
元の世界とこの世界に干渉できるのなんて、あいつくらいだもんなあ……。
こうなると、やはりあいつが転生のためにモンスターをけしかけた可能性が高い。
「ボス。俺の死因違うぜ?」
「あれ、ロペスは別なのか?」
「ああ。組織の抗争で銃で撃たれて死んだ」
「ロペスくん、そんな前世だったの!?」
「おう。たぶん、ヨハンもそうだろうな」
「悪人だ~……」
「いや、魔王軍に所属してるし、いまさら……」
そこはロペスの言うとおりだ。
ただ、ロペスは別か……。ということは、女神のしわざではない?
モンスターにやられた者だけが、転生させられたというわけでもなさそうだ。
「まあ、もう一回死なないように、この世界ではがんばっていこうぜ」
「私、店番がんばる!」
それ、たぶんロペスが言ったがんばるとは違うと思う……。
それでも、転生者たちは、改めてこの世界で生きる決意を、じゃっかんゆるい感じで固めたようだった。