【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第352話 A HOUSE DOG

「随分と広い場所だな。あの魔族たち、ここで決着をつけようって魂胆か?」

 

「それならわかりやすいな。あいつらみたいに、何を考えているのかさえわからないよりは、ずっと良い」

 

 それが直接の戦闘ならなおさらだ。

 そういうことならば、こちらも気兼ね無く応じてやろうじゃないか。

 そう思いながら、俺たち全員が入れるほどの広間に足を踏み入れる。

 

 ……本当に何もないな。敵すらいない。

 ここで待っていれば、魔族が来るというわけでもないのか?

 若干の拍子抜けを感じつつも、先へ進もうとして気が付いた。

 ……この部屋。入り口以外に扉がないぞ。

 

「まさか、行き止まりか? だとしたら、この無駄に広い部屋はなんだったんだ」

 

「作りかけなのかもしれないな。魔王も、まだそこまでの力を取り戻していないってことだろ」

 

 あるいは、隠し扉でもあるのか?

 正方形の床に見えるが、よく観察するとところどころ小さなでっぱりというか、不自然に広がった空間があるからな。

 だが、部屋の端まで行き調べてみるも、やはり何もなさそうだ。

 本当に作りかけの部屋というわけか。

 魔王に場所だけ用意してもらったので、あの魔族たちがモンスターでも配置しようとしているのかもしれないな。

 

「戻るか」

 

 そう口にしたと同時に、部屋中に響く大きな音が聞こえた。

 なんだ、ここからだったか。

 期待をしながら迎え撃つ準備をし、魔族かモンスターが現れるのを待つ。

 ……しかし、何者かが現れる気配はない。

 音だけが鳴り続けて……なんか、天井が揺れていないか?

 

「逃げろ! 罠だ!」

 

 入口まで……いや、間に合わない。

 あの天井が予想通りに落下してくるというのであれば、さすがに俺たちも少なくないダメージを受けるだろう。

 

 そういうことか! あの不自然にでっぱっていた空間の正体がわかった!

 走りながら天井を見上げると、ちょうど落下する瞬間だった。

 時間はもう幾ばくもないが、天井の形を確認できたのは大きい。

 正方形だった……。この部屋と違って、落ちてくる天井は完全な正方形だ。

 

 ならば、歪にところどころ飛び出ていたあの場所に逃げ込めれば、天井に潰されずにすむ!

 要するに、あの不自然な空間は、この天井の罠の安全地帯ということだ!

 もしかしたら、魔族たちとここで戦うことになったときに、魔族だけが退避するための場所なのかもしれない。

 

「あの突き出た空間まで逃げろ!」

 

 それだけで、仲間も俺の意図を察したようで、入口まで逃げることは諦めて、すぐに安全地帯まで逃げ込む。

 なんとかたどり着くと、次の瞬間には大きな音が背後に響く。

 振り向くと、予想通りそこには天井が落下していた。

 間一髪だったな……。

 仲間の悲鳴は聞こえなかったので、全員なんとか退避が間に合ったようだ。

 

「しかし、ここからどうしたものか……」

 

 天井は、それなりの厚みがあるようで、ここから登るのは一苦労だろうな。

 もう少し待てば、再び上まで移動してくれないだろうか?

 ……もしかして、それが正しい道なのか?

 落ちてきた天井に登り、その先に扉や道があるのか?

 

 それに気づいたとしても、少しタイミングが悪かったようだ。

 俺たちの目の前にあった天井は、再びその役目を果たすべく上に移動していく。

 今からよじ登ろうものなら、挟まれそうだな。

 

「もう一度落下させて、次はすぐに登ってみるか……」

 

 移動する天井を見届けながらそう考えると、その思考を中断するかのように、足元から煙が出てきた。

 なんだこれ……。煙、違う! 毒ガスか!

 

「くそっ! 逃げ場が……」

 

 俺たちの目の前には、まるで壁のように天井が広がっている。

 狭い安全地帯は、落下した天井に挟まれてしまい、窮屈な小部屋のようだ。

 そんな状態で毒ガスなんて噴出されたら……。

 

「解毒薬は……無いよな」

 

 天井が上がりきったときには、俺もおそらく仲間たちも、全員毒に蝕まれてしまっていた。

 これが……この部屋の本当の狙いだったか……。

 駄目だ。どうやらここまでのようだな。

 

 俺たちは、落下する天井に気をつけながら、撤退せざるを得なかった。

 魔族め……。まさかここまでの罠を用意しているとは、どうやら思っていた以上にやるようだ。

 

    ◇

 

「なんなんだ! このしつこい落石は!」

 

「絶対、自然のものじゃないだろ! これ!」

 

 薄暗い道を歩いていたら、ふいに頭上に落下物の気配を感じた。

 そこまでは良い。全員問題なく回避できたからな。

 

 問題は、それが執拗に繰り返されることだ。

 避けたと思ったら、避けた先でも落石が。

 ならば受け止める、あるいは破壊すると、追加の落石が。

 次から次へと降ってくるため、ドワーフたちの採掘場にでも迷い込んだとすら錯覚する。

 

「まだ作成中のダンジョンだったのかもね!」

 

「そんなところに招くなよ! 魔族!」

 

 崩落しやすい場所だから、この道を整備するのを諦めたのか?

 いや、誰かが言っていたが、この落石自体が魔族のしわざだろ。

 自然のものにしては、こちらの動きに合わせすぎている。

 

「嘘だろ! あんなでかいのまで!?」

 

 ひときわ大きな岩は、もはや天井が落下したと錯覚する。

 だが、あれも岩か……。なんなんだ魔族ども。

 この岩へのこだわりだけは、まったく理解できないぞ……。

 

 さすがに無視することもできず、仲間と数人がかりで全力で巨岩を攻撃して破壊する。

 だが、その後はまた同じことの繰り返しだ。

 岩、岩岩岩、岩ばっかりかよ!

 

「急いでここを通り過ぎるぞ!」

 

 もはや、一つ一つ対処するだけ無駄だ。

 こちらの動きに合わせて落下しようと、危険なものだけ壊して進めば良い。

 これ……俺たち以外の種族なら、簡単に全滅しそうだな。

 

「よし、そろそろ次の部屋だ!」

 

 先に扉が見えた。

 その中は、さすがに落石は無さそうで助かる。

 ついでに言うと、扉が開いているのもありがたい。

 このダンジョンを作ったやつときたら、扉を開いている隙に絶対落石をしかけてくるだろうからな……。

 

「走り抜けろ!」

 

 頭を狙う岩を避け、破壊し、なんとか扉の前へとたどり着く。

 あとはそのまま、部屋の中に走り抜け……。

 は? なんだ。急に浮遊しているかのような……いや、事実浮遊しているのか。

 

「落とし穴!?」

 

 ご丁寧に、俺たちが全員収まるほどの落とし穴だ。

 だが、深さはそこまででもない。

 これなら、すぐによじ登って……。

 

 ああ、はいはい。そうだよなあ……。

 ほんと、この岩へのこだわりだけは、まったく理解できねえからな! 魔族!

 

 再び降ってきた巨岩は、俺たちを潰すより先に穴を塞ぐ形で止まった。

 壊せば良いと思ったのもつかの間、天井代わりとなった巨岩に、何かがぶつかるような、重なるような音が何度か聞こえる。

 

「……これ、絶対同じくらいの大きさの岩が、降り続けているだろ」

 

「だろうな……。俺たちを捕らえるにしたって、もっとやり方あっただろ。なんなんだよ。この原始的というか力ずくなやり方……」

 

 あの百足の魔族のしわざか?

 こうして敗北した以上、俺たちのことはお前らの好きにすればいいけどな。

 このやり方を考えた魔族の顔だけは見ておきたい。

 脳筋だなんて言われる俺たち以上の存在なんて、どんなやつなんだよ……。

 

「案外、ゴーレムみたいなのが、ここを仕切っていたりしてな……」

 

「あり得そうで嫌だ……」

 

 岩が重なる音が止み、俺たちは向こうの出方を見るために、その場で待機し続けるのだった。

 

    ◇

 

「ほら! オーガに全然効いてない! やっぱり、やり過ぎじゃなかった!」

 

「どこで興奮してんだお前はぁ! 良いんだよあれで!」

 

「だが、怪我人すらいないとは、オーガもなかなかやるものだな」

 

 ダスカロスの言うとおりだ。

 やっぱりオーガすごいじゃん。ドワーフよりもはるかにすごかった。

 これは、いよいよ本腰を入れて、落石の改良に臨む必要がありそうだ。

 

「ですが、あの量はさすがにオーガにも堪えたようです。矢継ぎ早に落下させて余裕を奪い、落とし穴で一気に捕獲する。お見事でした。レイ様」

 

 こちらも手動で落下させ続けたからな。

 自動での起動となると、落とし穴はともかく落石はそうもいかなかっただろう。

 

「今後も、あのエリアは俺が見張らないと」

 

「もうやめとけ……。魔王様と休憩でもしろよ。お前は……」

 

「アナンタが良いことを言いました。ですが、さすがに侵入中のオーガを無視はできません」

 

「ですよね」

 

 さすがのフィオナ様も、オーガたちのことが片付くまでは、部屋で休もうなんて言わないようだ。

 

「なので、こうして邪魔しないように、勝手に抱きついておきますね」

 

「仕事が終わるのを待つ犬とか猫みたいですね」

 

「良いじゃないですか。犬好きなんだから」

 

「いえ、別に……まあ、好きですけど」

 

 好きではないと言おうとしたら、マギレマさんの犬たちが反応した。

 なので訂正すると、今度はフィオナ様が抱きしめる力が強くなった。

 俺にどうしろと言うんだ。どっちが正解だったんだ。今の質問……。

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