【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第355話 力を示せなんて言われたら、本気で示すやつ

「ところでレイ」

 

「どうした? ダスカロス」

 

 時任たちに、ダンジョンの外のオーガを迎えに行ってもらうと、ダスカロスに話しかけられる。

 ダンジョンの講評か? それなら、今回は自信があるぞ。

 

「君もリピアネムも、その自信こそが強さにつながっているのかもな……」

 

「いや、俺は弱いけど」

 

「まあ、そのあたりの自覚は後でいい。私が言いたかったのは、トキトウを行かせて大丈夫だったのかということだ」

 

 時任が心配?

 あいつはわりと図太いところがあるし、それでいてそつなく仕事をこなしてくれるから、適切な采配だと思ったんだけど。

 

「彼女、オーガが苦手ではないのか?」

 

「……あ」

 

 なんかもう普通にオーガを観察していたから忘れていた。

 あいつと奥居のトラウマじゃん!

 やばい。そんな部下にオーガたちを連れてこいとか、俺の命令に断れなかっただけかもしれない。

 

「大丈夫だと思いますよ? 私もそうですけど、オーガより強い存在を見ることができたので、克服したと思います」

 

 リピアネムか。

 なるほど、彼女の圧倒的な強さを前にしたら、オーガへの恐怖心はもうなくなったってわけだ。

 わりと暴走気味の出陣ではあったが、それなら意外と最善の結果を残してくれたのかもしれない。

 

「リピアネム強いからなあ」

 

「あ、いえ。リピアネムさんもですけど、このダンジョンにいる限り安全だとわかったので」

 

 ……その言葉は、喜ぶべきなんだろうけど、なんで遠い目をしているんだ。

 なんだか釈然としない……。

 

「オーガたちが、あんな簡単に一網打尽に……私たちの前世にもレイさんがいてくれたら、みんな無事だったんでしょうね……」

 

 ごめん。それ無理。

 俺も君らの前世に住んでた人間だけど、なすすべなく死んだからここにいるんだろうし。

 

    ◇

 

「さあ、キリキリ歩いてください! 解毒した時任です! 解毒を命じたのは宰相様です!」

 

「なんでこんな元気なんだよ。このウサギ……」

 

「あの変なポーズ威嚇なのか?」

 

 両手を広げてオーガたちを威嚇しながら、時任がオーガたちを連れてきた。

 ……なんか、思っていた以上に元気だな。

 それとも、気持ちが飲まれないように、強気でいようとがんばっているんだろうか。

 

「オーガを克服したスーパー時任です! もはや、私を殺した相手などと怯えることもありません!」

 

「知らない話をされてる気がする……」

 

「誰だよ。あのウサギに喧嘩ふっかけたの」

 

「そもそも殺したとか言わなかったか? 誰かあのウサギ殺したってことか?」

 

「ということは、蘇生薬で復活したのか?」

 

 ……なんか、勘違いされた結果、蘇生薬に行き着いてしまった。

 まあ、量産できることがばれたわけじゃないし、オーガたちが仲間になるのならばれて困ることでもないか。

 

「時任、落ち着いてくれ」

 

「はい! 恐怖に勝った時任です!」

 

 興奮気味の時任は、とりあえず奥居になんとかしてもらおう。

 目線を送ると、奥居は察してくれたらしく、時任を隅の方に移動させてくれた。

 

「ここに来たということは、そちらも戦いは終わりと考えている。ってことで良いんだよな?」

 

「そうだな……。毒で弱っている俺たちを倒すでもなく、治された時点で俺たちは負けだ。だが、他のやつらのことまでは知らん。特にナツラ様たちは、そう簡単には」

 

「あ、そっちもそろそろ合流するはずだ」

 

「……倒したのか? ナツラ様を?」

 

「ああ、完膚なきまでに敗北した」

 

「ナツラ様!」

 

 オーガの女性の声に答えたのは、他ならぬナツラ本人だった。

 リピアネムに敗北して失っていたはずの意識が、もう回復したのか。

 さすがに、かなり頑丈なんだろうな。

 

「レイ殿。勝ってきた」

 

「うん。偉いぞ」

 

 自慢気に誇るので、こちらも褒めるしかなくなる。

 お説教は、まあ次に同じことをしそうになったときだな。

 これだけ尻尾を振って喜ばれると、なんか叱りにくい。

 

「さて、話は聞いた。私たちはことごとく敗北したというわけだ。そこの宰相様に」

 

 あんたは俺じゃなくてリピアネムにだけどな。

 だが、半分のオーガたちは、ダンジョンに負けたと考えると、俺に負けたというのも間違いでもないか。

 ……あれ? いつもなら、俺を魔王と勘違いするはずが、宰相とまで言い当てられたな。

 なんで、俺の役職までわかったんだ?

 

「……リピアネム。オーガたちに何か話した?」

 

「うむ。私たちは、宰相様の下で魔王軍を立て直そうと動いていると言った」

 

 う~ん……。ちゃんとカバーストーリーを話したことを褒めるべきか。

 建前とはいえ、軽々とこちらの行動を話したことを叱るべきか。

 

「リピアネムをお説教するかは後にして」

 

「な、なぜだ? 私は、活躍したと思うのだが……そうか。殺してないからか。だが、今から無抵抗の相手を殺すのも……」

 

「負けを認めた相手を殺すなって」

 

 ナツラですら、わりと驚いているぞ。

 どうなっているんだ。お前の思考回路。

 

「首が欲しければ差し出そう。だが、許されるのであれば私のだけにしてもらえたら助かる……助かります」

 

 ほら、なんか敬語になってるじゃないか。

 仲間が増えると思ったけど、このままじゃ部下が増えそうだ。

 

「首はいらないから、労働力になってほしい」

 

「温情に感謝します」

 

 駄目だ。クララたちみたいに、すでに対等な関係は消滅している。

 リピアネム……。お説教では?

 

「ええと……。オーガたちって、これで全員か?」

 

「いえ。さすがに村を守る者は残しているので、半数ほどです」

 

「となると、そっちの説得はナツラたちに任せないとな」

 

「それは、どうでしょう……」

 

 ナツラは気が進まない様子のようだ。

 なるほど、まだ半分も残っているもんな。

 オーガとしては、負けたと判断していないということか。

 

「私たちは敗北しました。魔王軍の支配も受け入れます。ですが、戦ってもいない部下たちは、同じように受け入れるとは思えません」

 

 まず勝負して、負かさないといけないってわけだ。

 まてリピアネム。お前じゃないから座ってろ。

 ……よし、ダスカロスが止めてくれている。

 

「説得は難しいか」

 

「ええ。なので、残りのやつらも、ダンジョンに招いてやってください」

 

「話し合いは難しいんじゃなかったのか?」

 

「話し合いではなく、私たちのように倒してやってください」

 

「……いいのか? 仲間たちを倒せと言っているように聞こえるが」

 

 俺の言葉に、ナツラはむしろ頷いて肯定してしまった。

 そっか、良いのか……。仲間なのに。

 

「戦力の半数を失った以上、今後あの者たちは侵略者相手に疲弊することになるでしょう。であれば、私たち全員を魔王軍の配下に加えていただきたいのです」

 

 そういうことか。ナツラの意図は理解した。

 だが、それならなおさら戦う必要はないんじゃないか?

 

「倒す必要あるの?」

 

「オーガですので」

 

 オーガならしかたないってことらしい。

 まあ、族長である彼女がそう言っているんだ。

 それなら、残りのオーガたちで試させて……勝負させてもらうとしよう。

 

 ソウルイーターやグリフィンは、ナツラたちに敗北してしまったからな。

 今度は、あの子たちが活躍できるように、仕掛けや配置を急いで変えないと。

 

「ちょっと、ダンジョン作り替えてくる」

 

「おい、話の途中で! ああ、もう! 俺もついていかないとまずいだろうがぁ!」

 

「ダスカロス。ナツラたちのこと頼んだ」

 

「……まあ、そちらのほうが優先されるか。良いだろう。ただ、アナンタだけでなく、もう一人連れて行くように」

 

 もう一人っていうのは、プリミラのことだな。

 まだナツラたちには、リピアネム以外の四天王を見せていないから、名前は伏せたということだろう。

 よし、それならプリミラと合流して、急いでダンジョンをメンテナンスしないと。

 

    ◇

 

「……行ってしまわれたが、正直なところ驚いている。私たちはすでに敗北した。そのくせ残りの者とも戦えなどと、虫が良すぎると思っていたのだが……」

 

「虫が良いどころか、都合が良いと思われていたぞ。私たちの宰相には」

 

「……面白い、そんな方が宰相か。存外話が合うかもしれないな。私たちを苦しめたダンジョンもあの方が?」

 

「宰相の趣味だ」

 

「そうか趣味……趣味? それは良い。魔王軍、ずいぶんと面白そうな場所じゃないか」

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