【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第356話 思ったよりも馬が合う

「グリフィンが攻撃する際に、カウンターでやられていたからな。遠距離からの攻撃手段が欲しいか?」

 

「私たちにも遠距離攻撃手段はありますが、そのほうが厄介ではあります」

 

「すぐには思いつかないな……。とりあえず大量の火球の罠を設置して、スイッチを天井のほうに作るか」

 

「モンスターたちに、理解できるのでしょうか?」

 

「うちの子たちは賢いから平気」

 

「そうでしたか」

 

 ということで、まずは鳥エリアの強化が完了した。

 頼りになるじゃないかナツラ。

 オーガの族長だからこそ、彼女の意見は参考になる。

 

「お前、オーガの味方じゃねえのかよ……なんで、うちの宰相に進言してんだよぉ」

 

「私自身とここにいる者たちは、すでに魔王軍の配下だからな」

 

 ところで、ナツラって今アナンタと話している口調が、本来のものだよな。

 俺にだけ敬語なのが気になってしまう。

 

「俺にも敬語はいらないんだけど」

 

「宰相様が、魔王軍を動かしていると伺っています。であれば、さすがに普段のような話し方はできません」

 

 なんか、フィオナ様の気持ちがわかってきそうだ。

 あの魔族も魔王軍の四天王ですら、魔王様と呼ばれて敬語で会話されるもんな。

 そうか。だから、最初に出会ったとき、俺に名前で呼ぶように命じたのか。

 いっそ、呼び捨てにして敬語も使わないほうが喜びそうだな、あの魔王様……。

 

「海はどうだった? けっこう自信があったのに、あっさり突破された気がするが」

 

「お前はお前で、さっきまで敵だった相手に、何を聞いてんだよぉ……」

 

「オーガの嫌がることは、オーガに聞きたい」

 

「効率的なやつだなぁ。おい!」

 

 良いことじゃないか。

 ナツラも頷いているぞ。よし、こいつは俺やイピレティス側ってことだな。

 それなら、遠慮なくダンジョンの改築談義ができるじゃないか。

 

「今回は許すが、次からお前ら二人でダンジョンの相談するの禁止」

 

「え~……」

 

「禁止」

 

「しかたない。折れるとするか」

 

 向こうが折れないってことは、きっとこちらが思っているよりも問題が起きそうってことだろうからな。

 ブレーキ役の本気のアドバイスであれば、しっかりと聞き入れるしかあるまい。

 

「じゃあ、今回でオーガ対策は完璧にしよう」

 

「……なるほど、味方であっても反乱の可能性を見据え、手を抜かないということですね」

 

「違うぞぉ。そいつがアホなだけだ」

 

 宰相だぞ!

 アホな宰相って一番駄目じゃないか!

 

「くそ~……賢いところを見せてやろう。海に毒を追加することで、溺れさせるとかはどうだ?」

 

「殺す気じゃねえか! 馬鹿!」

 

 俺の賢さは、アナンタには通用しないようだった。

 だが、なぜかナツラの俺への評価だけは、どんどん上がっている気がする。

 俺が言うのもなんだが、オーガもわりとアホなんじゃないか?

 分類としては、俺やイピレティスと同じほうだぞ。きっと。

 

    ◇

 

「そうして出来上がりそうになったのを、アナンタが必死に止めたってわけだ」

 

「アナンタさん。ありがとうございます……」

 

「宰相様怖え……」

 

 ナツラと相談してパワーアップしたダンジョンは、残っていたオーガたちも一網打尽にした。

 やっぱり、侵入者のことをよく知っている者がいると、仕掛けも引っかかりやすくて良い。

 

「ナツラ様、なんで俺たちを撃退しようとするんですか……」

 

「甘えるな。それでもオーガか」

 

 オーガってスパルタなんだな。

 うちの魔王様、甘えてばかりのマスコットキャラだけど、本当に魔王軍に降って良かったんだろうか。

 戦いや危険を好むというのであれば、ホワイトな職場であるうちは合わないかもしれない。

 ……見限られないように、たまにダンジョンにでも挑んでもらうか?

 

「……宰相様? なにか、私たちを罰しようと考えませんでした?」

 

「いや? オーガたちと今後も仲良くしていこうと考えていた」

 

「……私の気のせいでしょうか? 敵を相手にするような意識を感じたのですが」

 

「味方だけど、手を抜かずに叩きのめそうとはした」

 

「ああ、それなら安心しました」

 

 やっぱり、オーガって俺と気が合う種族なのでは?

 この世界で、俺の居場所となるのは魔王軍だけと考えていたが、オーガの村に転生していたとしても、案外うまくやっていけたかもしれない。

 まあ、そこにはフィオナ様がいないから、意味がないけどな。

 

「さて、なんかもう味方みたいになっていたけれど、オーガのみんなは、仲間になったってことで良いんだよな?」

 

「ええ、私たちオーガは魔王軍に敗北しました。全員が全員戦った末の結果とあらば、反対する者もいないでしょう」

 

 簡単で良いなあ。獣人たちも、ダンジョンで撃退したら自動的に仲間にならないものか。

 負けを認めても、むしろ敵意を膨れ上がらせるから無理だろうけど。

 

「じゃあ、似たような種族のダークエルフたちがいるから、オーガのみんなは一旦クララたちに仕事を教えてもらってくれ」

 

「ほう……。すでにダークエルフも、女神に反逆するための勢力を集めているのですか?」

 

「女神は個人的に大嫌いだけど、今のところは反逆というか、関わる気はないな」

 

 あいつが下手に動いたら、今のフィオナ様ですら負けるって話だからな……。

 あいつ、絶対自分だけステータス一万超えとかにしてるだろ。もしかしたら十万か?

 ともかく、そんな馬鹿げた相手に無策で挑むつもりはない。

 

「しばらくは目立たず平穏に。仕事内容は、追って伝えるから」

 

「あの~。レイ様?」

 

 それで解散と思ったが、イピレティスがおずおずと手を上げた。

 ……ああ、そういうことか。似てるもんな、戦い好きなところが。

 

「ナツラと戦いたいってことで良いか?」

 

「だから、レイ様って素晴らしいですよね!」

 

 当たっていた。だが、どうかなあ……。

 十魔将(とうましょう)なので、イピレティスも相当強くはあるんだけど、ナツラに圧勝というのは難しいだろう。

 というか、下手したら負けるからなあ……。

 実力がかけ離れているわけではないけれど、そのせいで逆に訓練中に事故が発生しかねない。

 

「……不死鳥の羽をお互いに渡すから、一回死んだら終わりだぞ?」

 

「貴重なアイテムなので、使わないように終わらせま~す!」

 

「……不死鳥の羽。実戦訓練の事故防止に、支給して良い物ではないと思うのですが」

 

 うちではして良い物なんだよ。

 蘇生薬と違って、そこそこ引き当てることができるアイテムだからな。

 事故で死なれてまた蘇生するよりは、予防してくれたほうが遥かに助かる。

 

「もちろん、そう毎回渡すことはできないぞ? 今回は、ナツラとうちの十魔将がどの程度の実力差なのか、調べておきたいからこそだ」

 

「レイ様のご期待に応えられるよう、腕か足は壊してみせます!」

 

「新参者ではあるが、力を測るというのであれば加減はできないぞ。いや、そもそも訓練ではなく戦いだというのなら、加減をする気はない」

 

「うん、良い。すごく良い。加減なんかされたら、興ざめだからね~」

 

 うちの血の気の多いほうのウサギは、すでにナツラと戦う気満々のようだ。

 ナツラはナツラでやる気を見せているし、本人たちが言うように四肢の欠損くらいは起こりそうだな。

 

「テラペイア。待機よろしく」

 

「ああ、できることならば、不死鳥の羽を消費させないように、努力してみせよう」

 

 喜んで戦場に向かおうとするあたり、オーガって魔王軍と相性良いよなあ。

 どんな種族か知る前は心配だったが、なんとかうちでうまく働いてくれそうだ。

 

    ◇

 

「ナツラ様みたいな方々がごろごろと……」

 

「それは、力が? 思想が?」

 

「どっちも……」

 

「魔王軍、やばいわね……。オーガの私たちのほうが、引くことになるとは思わなかったわ」

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