【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第362話 本人も理由はわかりませんが、怒ってはいます。

「へえ、マギレマさんと知り合いだったんだ」

 

「一方的に攻撃され、なすすべなく敗北しました」

 

「ちょ~っと待とうか! ナツラ。あたしの言ったこと覚えてる?」

 

「覚えているとも。だから、ちゃんと言われたことは守っているぞ?」

 

「う~ん……。まあ、そこまでならいいか」

 

 マギレマさんが、慌てた様子でナツラの発言を止めようとする。

 それにしても、マギレマさんも強かったんだな。まあ、当然か。彼女だって十魔将(とうましょう)の一人なのだから。

 それに、ナツラに勝ったというのも、ステータスを見れば納得できる。

 ただ、一方的にっていうのは、さすがに今ではそうはいかないんだろうな。

 

 マギレマ 魔力:72 筋力:68 技術:87 頑強:69 敏捷:75

 ナツラ 魔力:62 筋力:76 技術:65 頑強:66 敏捷:71

 

 二人のステータスは、今はこんな感じだから、戦った場合は案外良い勝負をしそうな気がする。

 そう考えると、ナツラってマギレマさんと昔戦ってから、かなり努力してきたんだろうな。

 あるいは、オーガという種族だから、実戦経験を積みに積んで、自然と強くなってきたとか?

 

 ……二人って、何歳なんだろう。とも思ったけど、考えるのはやめておくか。

 魔族って、元人間の俺の感覚で考えると、年齢がだいぶおかしいし、考えるだけ無駄だろう。

 

 それにしても、十魔将は当然として、ナツラもこんなステータスなんだよなあ。

 それに対して、俺のステータスは……。

 

 和泉(いずみ)(れい) 魔力:88 筋力:28 技術:37 頑強:37 敏捷:27

 

 まあ、魔力だけは順当に上がっているだけ、よしとするべきか。

 というか、そろそろ99すら見えてきそうだけど、そうなった場合どうなるんだろう。

 いよいよ、俺の魔力の成長も止まってしまうんだろうか。

 前に考察したように、99って一つの壁っぽいからなあ。

 フィオナ様や四天王、それに勇者みたいに、一部の特別な存在以外は、99を超えている者を見ないし。

 

「ん? レイくん、あたしのこと見てた?」

 

「ああ、これは宰相様に見られているという感覚だったのか」

 

「ああ、ごめん。ちょっとステータスを見ていた。不快だったのなら謝る」

 

 前にダスカロスに言われたので、気にならない程度に見たつもりだったのだが、どうやら二人には筒抜けだったようだ。

 時任(ときとう)やロペスみたいな、転生者相手には何の違和感も無かったようだし、ドリュやファギトみたいな、一般魔族にもばれなかったんだけどなあ。

 さすがに、十魔将レベルの相手には、まだまだばれてしまうのか。

 

「レイくんなら別にいいよ~。いつでも、好きなときに見てね。この子たちも、喜んでるから」

 

「だから、すっごい舐めてくるのか」

 

 顔中がべとべとになっている。だけど、別に嫌じゃない。

 むしろ、なついてくれているのがわかるので、嬉しいくらいだ。

 

「あの獰猛な犬たちが……」

 

「ナツラ」

 

「ああ。すまない」

 

 獰猛な犬……? まあ、たしかにわりと荒々しく舐めてきたり、頬ずりしたりするけどな。

 どちらかというと、甘えん坊な犬って表現のほうが近いと思う。

 

「……はい。おしまい。あんたたちもうやめなさい」

 

「……な、なんだ!? このプレッシャーは!」

 

 まだまだ俺に甘えていた犬たちだったけど、本体であるマギレマさんが強制的に終了を宣言した。

 不満そうではあるが、犬たちもそれに渋々と従っている。

 たまにマギレマさんにすら逆らうことがある犬たちだけど、基本的には本体の命令には忠実なんだよな。

 ところで、ナツラが感じているプレッシャーってなんだ? ピルカヤが報告しないってことは、勇者の侵入とかではないんだろうけど。

 

「……消えた。なんだったんだ」

 

「後で説明するね~」

 

「え、マギレマさんにはわかるの? じゃあ、俺にも」

 

「レイくんは駄目~」

 

 なんでだ……。宰相なのに。

 ただ、俺だけ駄目ということは、男だからという理由なのかもしれない。

 女性だけの話題ということであれば、下手に首を突っ込むのは問題だろうな。

 

「ごめんねレイくん。それより、ご飯も終わったことだし、読書でもしたら良いんじゃない?」

 

「ああ、たしかに、仕事も早めに終わったし、そうしようかな」

 

 マギレマさんが言っているのは、フィオナ様に会いにいったらどうか? ということだ。

 ナツラの前なので、魔王様と言わずにそう提案してくれているんだろうな。

 実際、今日はダンジョンの見回りとメンテナンスも、かなり早めに終了した。

 これといった問題もないので、フィオナ様に会いに行くなら今のうちかもしれない。

 

「じゃあ、行ってくる。ご馳走様」

 

「は~い。いってら~」

 

「なあ、マギレマ。書庫なんてあるのか? クララは案内してくれなかったが」

 

「オーガって、読書に興味ないっしょ?」

 

「まあ、無いが」

 

「それと、うちにはまだ書庫は無いよ。本は魔王軍の共有図書だからね。興味があるならレイくんに言えば、貸してもらえるよ?」

 

「まあ、興味はないが」

 

「だよね~」

 

    ◇

 

「フィオナ様。失礼します」

 

「……」

 

「あの、どうしました?」

 

 入ってくるなりいきなり抱きしめられると、さすがにこちらも恥ずかしいのですが。

 

「レイは知らないかもしれませんが、魔王軍は優秀です」

 

「知っています」

 

「四天王のピルカヤは、地底魔界内の視界を共有することができ、私にも地底魔界の映像は入ってきます」

 

「知っています」

 

 ……なぜ、いきなり魔王軍やピルカヤの説明を?

 

「ほう。つまり、知っていたうえで、マギレマの足にもみくちゃにされて、あんなにイチャついていたと!?」

 

「犬じゃないですか……」

 

「足です!」

 

「いや、まあ……。マギレマさんの体の構造上そうなんでしょうけど」

 

 でも、あの足というか犬たち、わりと頻繁にマギレマさんの意思を無視しますよ?

 本体であるマギレマさんの言うことすら聞かないのであれば、それはやはり単なる犬なのでは?

 

「足が好きですか! なら、いっそ私が膝枕でもしましょうか!」

 

「あ、それはお願いします」

 

「まったく! こっちに来なさい!」

 

 そう言いながら、フィオナ様は律義にも膝枕をしてくれた。

 だが、よくわからない怒りはそのままなので、膝枕をされながら叱られるという、なんとも不思議な体験をすることになっている。

 

「良いですか? マギレマの足をかわいがるのは悪くありませんが、あなたは私のものなんですよ?」

 

「ええ。俺はずっとフィオナ様のものですけど」

 

「ふふっ……。い、いえ! それがわかっているのなら、私の足とイチャつくべきでは!?」

 

「そんなことしたら、俺ただの変態じゃないですか……」

 

 犬ですらないただの足とイチャつくって、絵面が非常にやばいことになるじゃないですか……。

 なんですか? 魔王様は宰相の評判を地に落としたいんですか?

 ついに宰相クビですか? 俺。

 

「むむむ……。足を犬にする魔法。ありますかね?」

 

「スキュラになりたいんですか?」

 

「レイ次第です! 今の私とスキュラの私。どっちが良いんですか!」

 

「俺は今のフィオナ様が好きです!」

 

「うっ……! な、なら良いですけどね! では、もっと私にかまうように!」

 

「ええと……」

 

 今日のフィオナ様は、あまりチョロくないな……。

 簡単に言いくるめられるフィオナ様ではない。なんだかいつもと一味違うといった感じだ。

 なら、どうする? ええと、マギレマさんの犬たちみたいに、もっとスキンシップが必要ってことなのか?

 

「こんな感じですか?」

 

 とりあえず、名残惜しくも膝枕をやめて、立ち上がる。

 そしてそのまま、フィオナ様に軽く抱きついてみることにした。

 

「……」

 

 良いんだよな? だって、フィオナ様だっていつもやっているし、マギレマさんの足と同じようにって言ったから、良いんだよな!?

 なんか、完全に黙ってしまったので、だんだんと不安になってきたんだけど!?

 

「す、すみません」

 

 すぐに離れようとしたが、それは無理だった。

 フィオナ様のほうも、俺の背中に手を回しているため、完全に逃げ道を塞がれている。

 

「もっと強く抱きしめなさい」

 

「は、はい……」

 

 良かった。どうやら、怒っているとかではないようだ。

 しかし、この後俺は一時間以上この体勢を続けられることを強いられた。

 ……本当に、怒っていないんですよね?

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