【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「へえ、マギレマさんと知り合いだったんだ」
「一方的に攻撃され、なすすべなく敗北しました」
「ちょ~っと待とうか! ナツラ。あたしの言ったこと覚えてる?」
「覚えているとも。だから、ちゃんと言われたことは守っているぞ?」
「う~ん……。まあ、そこまでならいいか」
マギレマさんが、慌てた様子でナツラの発言を止めようとする。
それにしても、マギレマさんも強かったんだな。まあ、当然か。彼女だって
それに、ナツラに勝ったというのも、ステータスを見れば納得できる。
ただ、一方的にっていうのは、さすがに今ではそうはいかないんだろうな。
マギレマ 魔力:72 筋力:68 技術:87 頑強:69 敏捷:75
ナツラ 魔力:62 筋力:76 技術:65 頑強:66 敏捷:71
二人のステータスは、今はこんな感じだから、戦った場合は案外良い勝負をしそうな気がする。
そう考えると、ナツラってマギレマさんと昔戦ってから、かなり努力してきたんだろうな。
あるいは、オーガという種族だから、実戦経験を積みに積んで、自然と強くなってきたとか?
……二人って、何歳なんだろう。とも思ったけど、考えるのはやめておくか。
魔族って、元人間の俺の感覚で考えると、年齢がだいぶおかしいし、考えるだけ無駄だろう。
それにしても、十魔将は当然として、ナツラもこんなステータスなんだよなあ。
それに対して、俺のステータスは……。
まあ、魔力だけは順当に上がっているだけ、よしとするべきか。
というか、そろそろ99すら見えてきそうだけど、そうなった場合どうなるんだろう。
いよいよ、俺の魔力の成長も止まってしまうんだろうか。
前に考察したように、99って一つの壁っぽいからなあ。
フィオナ様や四天王、それに勇者みたいに、一部の特別な存在以外は、99を超えている者を見ないし。
「ん? レイくん、あたしのこと見てた?」
「ああ、これは宰相様に見られているという感覚だったのか」
「ああ、ごめん。ちょっとステータスを見ていた。不快だったのなら謝る」
前にダスカロスに言われたので、気にならない程度に見たつもりだったのだが、どうやら二人には筒抜けだったようだ。
さすがに、十魔将レベルの相手には、まだまだばれてしまうのか。
「レイくんなら別にいいよ~。いつでも、好きなときに見てね。この子たちも、喜んでるから」
「だから、すっごい舐めてくるのか」
顔中がべとべとになっている。だけど、別に嫌じゃない。
むしろ、なついてくれているのがわかるので、嬉しいくらいだ。
「あの獰猛な犬たちが……」
「ナツラ」
「ああ。すまない」
獰猛な犬……? まあ、たしかにわりと荒々しく舐めてきたり、頬ずりしたりするけどな。
どちらかというと、甘えん坊な犬って表現のほうが近いと思う。
「……はい。おしまい。あんたたちもうやめなさい」
「……な、なんだ!? このプレッシャーは!」
まだまだ俺に甘えていた犬たちだったけど、本体であるマギレマさんが強制的に終了を宣言した。
不満そうではあるが、犬たちもそれに渋々と従っている。
たまにマギレマさんにすら逆らうことがある犬たちだけど、基本的には本体の命令には忠実なんだよな。
ところで、ナツラが感じているプレッシャーってなんだ? ピルカヤが報告しないってことは、勇者の侵入とかではないんだろうけど。
「……消えた。なんだったんだ」
「後で説明するね~」
「え、マギレマさんにはわかるの? じゃあ、俺にも」
「レイくんは駄目~」
なんでだ……。宰相なのに。
ただ、俺だけ駄目ということは、男だからという理由なのかもしれない。
女性だけの話題ということであれば、下手に首を突っ込むのは問題だろうな。
「ごめんねレイくん。それより、ご飯も終わったことだし、読書でもしたら良いんじゃない?」
「ああ、たしかに、仕事も早めに終わったし、そうしようかな」
マギレマさんが言っているのは、フィオナ様に会いにいったらどうか? ということだ。
ナツラの前なので、魔王様と言わずにそう提案してくれているんだろうな。
実際、今日はダンジョンの見回りとメンテナンスも、かなり早めに終了した。
これといった問題もないので、フィオナ様に会いに行くなら今のうちかもしれない。
「じゃあ、行ってくる。ご馳走様」
「は~い。いってら~」
「なあ、マギレマ。書庫なんてあるのか? クララは案内してくれなかったが」
「オーガって、読書に興味ないっしょ?」
「まあ、無いが」
「それと、うちにはまだ書庫は無いよ。本は魔王軍の共有図書だからね。興味があるならレイくんに言えば、貸してもらえるよ?」
「まあ、興味はないが」
「だよね~」
◇
「フィオナ様。失礼します」
「……」
「あの、どうしました?」
入ってくるなりいきなり抱きしめられると、さすがにこちらも恥ずかしいのですが。
「レイは知らないかもしれませんが、魔王軍は優秀です」
「知っています」
「四天王のピルカヤは、地底魔界内の視界を共有することができ、私にも地底魔界の映像は入ってきます」
「知っています」
……なぜ、いきなり魔王軍やピルカヤの説明を?
「ほう。つまり、知っていたうえで、マギレマの足にもみくちゃにされて、あんなにイチャついていたと!?」
「犬じゃないですか……」
「足です!」
「いや、まあ……。マギレマさんの体の構造上そうなんでしょうけど」
でも、あの足というか犬たち、わりと頻繁にマギレマさんの意思を無視しますよ?
本体であるマギレマさんの言うことすら聞かないのであれば、それはやはり単なる犬なのでは?
「足が好きですか! なら、いっそ私が膝枕でもしましょうか!」
「あ、それはお願いします」
「まったく! こっちに来なさい!」
そう言いながら、フィオナ様は律義にも膝枕をしてくれた。
だが、よくわからない怒りはそのままなので、膝枕をされながら叱られるという、なんとも不思議な体験をすることになっている。
「良いですか? マギレマの足をかわいがるのは悪くありませんが、あなたは私のものなんですよ?」
「ええ。俺はずっとフィオナ様のものですけど」
「ふふっ……。い、いえ! それがわかっているのなら、私の足とイチャつくべきでは!?」
「そんなことしたら、俺ただの変態じゃないですか……」
犬ですらないただの足とイチャつくって、絵面が非常にやばいことになるじゃないですか……。
なんですか? 魔王様は宰相の評判を地に落としたいんですか?
ついに宰相クビですか? 俺。
「むむむ……。足を犬にする魔法。ありますかね?」
「スキュラになりたいんですか?」
「レイ次第です! 今の私とスキュラの私。どっちが良いんですか!」
「俺は今のフィオナ様が好きです!」
「うっ……! な、なら良いですけどね! では、もっと私にかまうように!」
「ええと……」
今日のフィオナ様は、あまりチョロくないな……。
簡単に言いくるめられるフィオナ様ではない。なんだかいつもと一味違うといった感じだ。
なら、どうする? ええと、マギレマさんの犬たちみたいに、もっとスキンシップが必要ってことなのか?
「こんな感じですか?」
とりあえず、名残惜しくも膝枕をやめて、立ち上がる。
そしてそのまま、フィオナ様に軽く抱きついてみることにした。
「……」
良いんだよな? だって、フィオナ様だっていつもやっているし、マギレマさんの足と同じようにって言ったから、良いんだよな!?
なんか、完全に黙ってしまったので、だんだんと不安になってきたんだけど!?
「す、すみません」
すぐに離れようとしたが、それは無理だった。
フィオナ様のほうも、俺の背中に手を回しているため、完全に逃げ道を塞がれている。
「もっと強く抱きしめなさい」
「は、はい……」
良かった。どうやら、怒っているとかではないようだ。
しかし、この後俺は一時間以上この体勢を続けられることを強いられた。
……本当に、怒っていないんですよね?