【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第364話 レイくん依存症

「レイ。そろそろ、オーガたちに私の姿を見せても良いのでは?」

 

「早くないですか? ナツラたちが来てから、まだそんなに経っていないはずですけど」

 

 クララたちのときと比べても、かなりの早さだ。

 そんなにも信用できる相手だったということか?

 それとも、ダークエルフと違ってわりと単純だから、疑うだけ無駄と考えた?

 

「……まあ、大丈夫じゃないでしょうか?」

 

「投げやりですね……。なにか理由があって、そう判断したと思っていたんですが」

 

「理由ならあります」

 

「じゃあ、その理由を教えてくれます?」

 

「……言えません」

 

 なんだと!? フィオナ様が、俺にも言えないことなんてあるというのか。

 もうすっかりと信頼を勝ち取れたと思っていたが、どうやらそれは驕りだったようだ。

 いかん。このままでは、フィオナ様の宰相に相応しくない。

 

「……俺、宰相としてもっとがんばります」

 

「それが駄目なんです~!」

 

 それが駄目……?

 もしかして、前にアナンタが言っていたように、やる気が空回りしているか?

 だけど、最近ではアナンタが俺を止める回数も、一日に十回以内に収めているし……。

 宰相だからとやる気が空回っている。ということもないはずだ。

 

「レイが、宰相として忙しくしているうえ、オーガたちから隠れているせいで、レイと会う時間が減っています!」

 

「それは……まあ、そうですね」

 

 なんなら、俺も同じことを感じていたからな。

 だから、自分から率先して、毎日フィオナ様の部屋に通うようになってしまっているし……。

 別に会えなくて寂しいとかじゃない。単に、顔を見られてないし、話ができていないというのが嫌なだけだ。

 少なくとも、一日に一回。数時間は一緒にいないと、俺のやる気と調子に影響が出る。

 

「こうして気軽に抱きしめられるのも、レイが来てくれた時だけじゃないですか!」

 

「そうなんですよねえ……」

 

 背中から抱き着かれるこの感触も、最近ではこの部屋以外ではご無沙汰だ。

 以前までであれば、俺の仕事中に勝手に抱き着いてきたり、近くで待っていたりと、仕事の邪魔はしない範囲内でスキンシップを取っていたからな。

 ……犬? いや、怒られるしやめておこう。……むしろ喜びそうだな。とも思えるのは、なぜだろう。

 

「私の人生の最優先はレイなんですから、オーガたちのために我慢するのは違くありませんか!?」

 

「うっ……。俺だって、人生の最優先はフィオナ様ですけど……」

 

 さすがにそんなことを言われたら、こっちだって恥ずかしいのですが……。

 というか、思わず同じことを言い返してしまった。

 ……なんで、そこで真っ赤になって照れているんですかねぇ。なんか、俺が恥ずかしいことを言ったみたいじゃないですか。

 

「ど、どうします!? やはり、二人でこの部屋に一万年ほど引きこもります!?」

 

「それはないです」

 

「私の何が嫌だって言うんですか!」

 

「嫌なところは何もありません。全てが好きです」

 

「ならば良いんですけどね!」

 

 だけど、それとこれとは話が別でしょうが。

 俺は、フィオナ様が一番好きだけど、地底魔界も魔王軍も好きだからな。

 

「要するにフィオナ様は、部屋にこもっているのが嫌なので、自由に歩き回りたいと」

 

「まあ、そういうことになりますかね?」

 

 たしかになあ。魔王様を部屋に押し込めて、代わりに魔王軍の指揮を執ってしまうと、なんか俺が魔王軍を乗っ取っていると思われそうだ。

 様子見のためには今後も仕方ないが、あまりそれが長引くと良くないか。

 今後復活するであろう魔族たちにも、俺の印象が悪くなってしまう。

 

「ダスカロスたちに相談して、オーガたちにもフィオナ様を紹介しましょうか?」

 

「ええ、任せましたよ。私のレイ」

 

 なんで、耳元で囁くんですか。

 たまに美人にならないでください。

 

    ◇

 

「……リピアネムですら、足元にも及ばない存在だと」

 

「というわけだから、この魔王軍のトップは当然魔王様だ。それで、フィオナ様が魔王なので、みんな逆らわないように」

 

「逆らえるはずがありません……。まったく、世界は広い……」

 

 ナツラって、けっこう敵の実力とかわかるタイプで助かる。

 リピアネムが自分より強いことは、戦ったことからもわかっているだろうが、フィオナ様がそのリピアネムよりも、はるかに強いとまでわかっているようだ。

 これなら、オーガたちが反旗を翻すってことは、あまり考えなくても良いのかもしれないな。

 

「全員に言っておきます」

 

 フィオナ様が、魔王モードの凛とした姿で、オーガたちに告げる。

 オーガたちは、皆緊張した面持ちで、フィオナ様の口から言葉が発されるのを静かに待っていた。

 

「レイは私のものなので、わきまえるように」

 

 ……なんで、ここでその宣言?

 ほらぁ……。オーガたちも、ぽかんとした表情で、言葉の意味を必死に理解しようとしているじゃん。

 

「まあ、みんなすでに従ってくれているけれど、俺はフィオナ様の宰相だから、俺の指示に逆らうなって意味だ」

 

 俺が補足をすることで、オーガたちは納得した様子で頷いてくれた。

 前にダスカロスやリグマが教えてくれたことだ。宰相を命じたのはフィオナ様。

 つまり、俺の言葉はフィオナ様の言葉だと思わせろ。ってやつだな。

 意外だ……。フィオナ様、魔王モードとはいえ真面目にオーガたちにそんなことを言ってくれるとは。

 

「……当然ながら、逆らうつもりはありません。なので、これは好奇心からの質問なのですが」

 

 ナツラがそう前置きをして、緊張をそのままになんとか言葉をひねり出した。

 

「魔王様や宰相様に逆らった場合、どんな罰がまっていますか? 死、でしょうか?」

 

「逆らう範囲次第ですが、あからさまにレイに反乱するのであれば、四天王の誰かに動いてもらうことになるでしょうね」

 

「フィオナ様に逆らうなら、本気のダンジョンで迎え撃つ」

 

「……よくわかりました。ええ、当然ですが私たちオーガにその意志はないことは、覚えておいていただきたく……」

 

 聞かれたから答えただけなのに、そんな萎縮されても困る……。

 

「当然、ナツラたちがそんなことになるとは思っていないし、嫌な命令とかされていたら、ちゃんと意見してくれよ? さっきのは、完全な敵対した場合の前提だから」

 

「はい、理解しています。……ちなみに、マギレマと戦うのは、敵対にあたりますか?」

 

「実戦訓練とか、勝負ってことなら該当しないけど……。マギレマさん自身が嫌がっていたら、無理に戦わせないようにな」

 

 過去にマギレマさんに敗北したって話だからな。因縁の相手ではあるのだろう。

 今のナツラのステータスは、マギレマさんにやや劣る程度だ。

 再戦の機会があったらしたいのだろうけど……マギレマさんのほうが、料理好きのお姉さんだからなあ。

 戦いに応じてくれるかは、かなり微妙なところだと思う。

 

「では、解散してください。ふぅ、これで堂々とレイと一緒にいられます」

 

 魔王モードが終わった。

 フィオナ様は、いつもどおりのかわいらしい笑顔で、俺に思い切り抱き着いてきた。

 ほら、温度差がすごすぎて、オーガたちがぽかんとしている。

 

「解散していいぞ」

 

「あ、は、はい……」

 

 ここまで見せたのだから、オーガたちもフィオナ様には慣れてもらうしかない。

 威厳ある美しい魔王なのは疑うべくもないが、きっとこっちのかわいらしいフィオナ様が基本形だからな。

 

「宰相様が自身のものだという発言。そう言う意味でしたか……」

 

 去り際に、ナツラがそんなことを言っていたが、そうだよ。そう言う意味だよ。

 俺は宰相であり、魔王様のお気に入りのぬいぐるみみたいなものなんだ。

 なんか、変な魔王軍でごめんな。

 

「うぎゃー! ……ま、魔王様と……レイ様が……ひ、久しぶりに……」

 

「な、なんだ!?」

 

 ナツラたちと入れ替わりでやってきたプネヴマが、口から魂を出して倒れた。

 そうか。ナツラたちは、これにも慣れていなかったな。

 ほんと、変な魔王軍でごめんな……。だが、慣れてくれ。

 

 それにしても、プネヴマのこの感じも久しぶりに思えるが、最近ではこんなことになっていなかったよな?

 てっきり体質が改善したのかと思ったけれど、どうやらそういうわけでもなかったらしい。

 

「エピクレシ、プネヴマは大丈夫か?」

 

「ええ、いつものことです。ロマーナ頼みました」

 

「はい」

 

 そう言われたロマーナも、慣れた手つきで鎖をプネヴマに巻き付かせて運んでいく。

 

「最近では、お二人がご一緒の姿を見ていなかったですからね。久しぶりに拝見したことで、より強い刺激となって襲ってきたようです」

 

 何が……?

 俺だけでなくフィオナ様も、俺に抱きつきながらきょとんとした顔をしていた。

 これもある意味日常が戻ったってことなんだろうか。

 ……良い日常なのかどうか、判断が若干難しいなあ。

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