【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第367話 子供は相手をしてくれる大人をよく見ている

「え? あの子が完治したの?」

 

「はい、テンユウ様。治療法を探していた私たちへの感謝と、もう治療法は不要だという内容の手紙が届きました」

 

「……念のため聞いておくけど、手遅れになったから不要なんて言ってるわけじゃないでしょうね?」

 

「ええ。なんでも、アルマセグシア内を楽しんでいると噂になるほどです」

 

「それは良かったけど……おてんばだったのね。あの子」

 

 だけど、本当に治ったのなら良かったわ。

 私たち異国の者すら頼ってきたのだから、本当に切羽詰まっていたみたいだし。

 力になれなかった悔しさもあるけれど、あの子が元気になったほうがずっと良いことだわ。

 

「それで、どこの高名なお医者様が治したのかしら? それとも、治療師?」

 

「温泉です」

 

「……へ?」

 

「温泉で治ったそうです」

 

「湯治って言葉はあるけれど……温泉で?」

 

 いやいやいや。さすがにそれは無いでしょう。

 きっと、何かの比喩でしょうね。

 

「病が治る温泉が、アルマセグシアにできたそうです」

 

「んなわけないでしょう!?」

 

 温泉に入って治るのなら、私、毎日健康ってことじゃない!

 健康だけどね! 勇者ですもの! 勇者舐めんじゃないわよ!

 ……私、アルマセグシアに毎日通おうかしら?

 

「さすがに、私もそんなはずないと思ったのですが、どうやら聖女の加護によって病が治療されているらしいんです」

 

「そ、そう? それなら、まあわからなくはないけど……」

 

 聖女ねえ。ってことは、女神関連ってことになるわね。

 さすがに、スティアじゃないわよね?

 あの子、リックと一緒に魔王退治を目指しているし、そんな温泉作って経営している余裕ないはずよね?

 

 人々のために作るだけ作って、あとは誰かに任せている可能性もあるけれど、あの子がそんな無責任なことするはずないし……。

 まあ、大転生によって出現した聖女の力ってところかしら?

 だとしたら、女神のおかげで人々が救われているってことになるし、また女神への信仰が強まりそうよねえ……。

 

「レンシャは、また欲望のダンジョンかしら?」

 

「はい。どうやら、リズワン王と親交を深めているようです」

 

 何やってんのよ、あの子……。

 まさか、サンセライオに引き抜かれたりしてないでしょうね?

 

「まあ、あの子のことは気にしないようにしましょう。あれでも優秀だから、さすがにサンセライオに鞍替えなんかしないでしょうし」

 

 それに、たまになかなか有益なアイテムを持ってくるからね。

 ……あの子、絶対宝箱にはまっているだけだと思うわ。

 それにうつつを抜かして、他がおそろかになるならさすがに叱るけど、むしろよく働くようになっているのよねえ……。

 うちにも作るべきかしら? 賭博所。

 

「問題というか、興味はその温泉のほうね。アルマセグシアだったかしら?」

 

「はい。出向いてみますか?」

 

「そうねえ。アルマセグシアなら、オルナスもいるし。私たちが出入りしても波風は立たないでしょうし」

 

 国によっては何かとうるさいのよねえ。

 他国、勇者、それにテイランという得体のしれない文化の者。

 不気味に思われるのはしょうがないし、むしろ良いことだとすら思っているわ。

 そう思われれば思われるほど、他国へのけん制となるからね。

 

「レンシャはどうしましょうか?」

 

「置いていくわ。というか、いつ帰ってくるかわからないし」

 

 優秀なんだけどねぇ……。

 

    ◇

 

「いらっしゃいませ~」

 

「どうも~。あなたが聖女ちゃん?」

 

「あはは。聖女なんて言われますけど、ふつうの人間なんですけどね~」

 

 まったく毒気がないわね。

 なんというか、普通の女の子って感じ。

 

「あら、この温泉で病が治るなんて聞いたわよ? それを作ったのなら、十分聖女じゃない?」

 

「う~ん……。何と言いますか、気付いたらできていたので、私の力って感じという気はしないんですよね~」

 

 ……いやいやいや。そんなわけないでしょう。

 なに? まさか力を制御できていないってこと?

 気づいたら、温泉に自分の力が溶け込んで、病を治す温泉でもできたってわけ?

 

 嘘は……言っていないような気がするわね。

 ほんと、まったく邪念が無いというか、たしかに聖女と言われてもうなずけるわ。

 なんだったら、戦闘すらできないような性格は、スティアよりも聖女っぽく感じてしまう。

 

「まあいいわ。その温泉、利用させてもらうわね」

 

「はい。お病気ですか?」

 

 お病気……。ニコニコしながら言ってくるけれど、別に病気を笑っているとかじゃないわね。

 この子にとってはどんな病気も治せるから、同情するような顔ではなく、笑顔で接客できるってところかしら。

 

「そうねえ。私は特に無いから、この子だけよろしく」

 

 そう言って、スイリョウの病の治療をお願いすることにした。

 この子、わりと頻繁に頭痛に悩んでいるみたいだからね。

 私たちでも軽減はできるけれど、根本の治療には至っていない。

 これが治るのであれば私としても助かるし、ついでにこの温泉の力が本物だとわかる。

 

「では、お姉さんはあちらへどうぞ。そちらのお姉さんたちは、あっちですね」

 

「そういうことだから、また後で会いましょう。ゆっくりと治療しておきなさい」

 

「はい、ありがとうございます。テンユウ様」

 

 そうして別れて案内された温泉は、思いのほか良い場所だった。

 単純に温泉としても気持ちよくて良いわね。それに貸し切りなのも助かるわ。

 これ、うちにも作れないかしら。転生者って人数も多いし、温泉作成なんて加護を誰かが持っていても不思議じゃないわね。

 ……案外さっきの聖女ちゃんとは別に、温泉作成の能力者でもいるのかしら?

 

 まあ、そんなことは忘れて、今はせいぜい温泉を堪能させてもらいましょ。

 私は、勇者だから病とも無縁だからね。

 

 そうして散々楽しませてもらって、あの子たちを待っていると、何やら珍しく興奮気味のスイリョウの声が……。ここまで聞こえるわね。

 ただでさえ大人しい子であるレイライが余計に無口になる程度には、夢中になって話しているみたい。

 

「その様子だと、噂は本当だったのかしら?」

 

「はい! テンユウ様! 頭痛が欠片もなくなりました!」

 

 あら、まさか本当だったの?

 だとしたら、良い店ができたものね。

 もしかしたら、うちの国でも……いえ、ぬか喜びはもうたくさん。慎重に調査していかないと。

 

「それは良かったわね。それじゃあ、今後はあなたも」

 

「はい! 今後も、快復の湯の調査のため、定期的に通うことにします!」

 

「あ、あら?」

 

 働きやすくなるでしょうね。という言葉を遮るように、なんか固い決意で宣言された。

 待って。なんか、この感じ覚えがあるわ。

 

「この場所の調査は、私にお任せください!」

 

 ……これ、欲望のダンジョンに通うようになったときのレンシャと同じやつじゃない。

 何? 私の従者たち、各地の施設にはまるようになるものなの?

 この分だと、レイライもいずれ何かの施設にはまるようになるのかしら。

 恐ろしいわね、転生者……。

 まあ、この温泉であれば、その気持ちもわかるんだけどね……。

 

    ◇

 

「というわけで、テンユウさんとやらがやってきました」

 

「あ~。ちょうどボクが見ていないときだった~。くそ~、監視役なのに~」

 

 ピルカヤが悔しがっているが、むしろ監視していないときで良かったんじゃないか?

 勇者であるテンユウなら、ピルカヤの監視に気が付きそうだし、快復の湯が魔王軍と関わっていると悟られるのはまずいからな。

 

世良(せら)が魔王軍だって、感づかれた様子は?」

 

「それは大丈夫です! 聖女扱いはされましたけど、なんかもうアルマセグシアではわりと当たり前のことですから」

 

 聖女だもんな。そのおかげで、快復の湯という特別な温泉が作れても、不思議ではないという状況にできている。

 スカウトされそうではあるけれど、そのあたりは上手く断ってくれているみたいだし、世良も案外機転が利くんだよなあ。

 

「どんなやつだった? やっぱり、強そうだったか?」

 

「う~ん……。まったく強さとかわかりませんでした。まあ、私の場合元々そういうの測るの苦手ですからねえ」

 

 非戦闘時だから、力は抑えていたのか、あるいは単に世良がそういうのが苦手なのか。

 だが、勇者は勇者だからな。油断なんてしてはいけないことは、俺も十分理解している。

 

「あ、背が高い人でしたよ?」

 

「へえ、そのぶん攻撃範囲も広いと」

 

「レイくんの殺意がマシマシで、おじさんも何よりです」

 

 いや、だって勇者じゃん。

 警戒心は最大限に持っておかないと、次は腕が欠損するぞ?

 それか、下手したら一回死んで、不死鳥の羽を消耗しそうだ。

 

「まあ、身長が強さに直結するわけじゃないし、実際の強さは見てみないことにはわからないか」

 

 そう言って、俺は小さいながらも強くて頼りになる面々をなんとなく見てしまう。

 彼ら彼女らも、その視線に気付いたようだが、幸いなことに怒るでもなくむしろ機嫌をよくしていたので助かった。

 

「よくわかってるじゃない。身長なんて、なくてもボク優秀だからね!」

 

「はい。私たちは、十分戦えますので」

 

「近づいて刺しちゃえば良いだけですもんね~」

 

「レイくん、ちっちゃい子の扱い上手だよなあ」

 

「怒られるぞ。リグマ……」

 

 小さくたって四天王と十魔将なんだ。

 その気になれば、とんでもない強さだってことは、もう散々目にしている。

 それで、それらを束ねる魔王様は、さっきから何しているんですか?

 

「フィオナ様? どうかしました?」

 

「いえ、小さいほうが良いと言うのであれば、私も魔法で幼い姿にでもなれないかと」

 

「俺が変な意味で子供好きみたいに言わないでください……」

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