【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第368話 臆病だけどポジティブなウサギ

「何? 時任(ときとう)戦うの?」

 

「戦えませんけど、気持ちでは負けないようにしようと思っています!」

 

 ある日、地底魔界内を歩いているとその光景に出くわした。

 なんか威嚇するようなポーズの時任と、それを見てどうすれば良いか困っているナツラ。

 いかに戦い好きのナツラといえど、これを相手に喜べるやつではないみたいだ。

 

「あの、宰相様。どうすれば良いのでしょうか……」

 

「とりあえず、通り過ぎてやってくれ」

 

「は、はあ……」

 

 そうして通路を進んで行くナツラ。

 時任は、威嚇のポーズを崩さずに、油断なくナツラの移動に合わせて体の向きを都度変えていく。

 そうしてナツラが完全に通り過ぎると、やり遂げたような何とも満足そうな表情を浮かべていた。

 

「やりました! トラウマに完全に打ち勝った時任芹香(せりか)です」

 

「良かったな。ところで、時任を殺したのって、ナツラなんだっけ?」

 

「いえ? 言葉も喋れないオーガなので、魔王軍の皆さんが言っていたように、モンスターのほうのオーガだったのかもしれません」

 

 なので、ナツラで慣れておいてから、モンスターのオーガにもそのうち慣れようってことだろうか。

 時任が完全にトラウマを克服するためには、モンスターが必要になりそうだ。

 だけど、うちにはそんなモンスターいないんだよなあ。

 かと言って、野生のオーガを探し出して邂逅させようものなら、二度目のトラウマになりそうだし……。

 

「やっぱり、そろそろ作るか。オーガ」

 

「ええ!? 作れるんですか!?」

 

「まだ無理だけど、がんばればそのうちいけると思う」

 

 モンスター作成は、わりとなんでも作ってくれる優秀なメニューだからな。

 それに、無茶ぶりされたときのダンジョン施設よりはマシだろう。

 おそらく、上位モンスター作成の上さえ解禁すれば、オーガもそこから作成できる気がする。

 

    ◇

 

「上位モンスター作成。上位モンスター作成」

 

 ミノタウロス。マーフォーク。

 なるほど、人に近いモンスターが出てくるようになってきた。

 これは、今ならオーガも引き当てることができるんじゃないか?

 

「精が出ますねえ。レイも、ついにガシャの楽しみに目覚めたのでしょうか?」

 

「いえ……。あれ、でも狙いを引こうとしているので、そうなのかもしれません」

 

「それはとても良いことです。いずれは、そのガシャへの思いを宝箱に向けましょう」

 

「善処します」

 

 俺がモンスターを作成し続けていると、フィオナ様だけでなく魔王軍の面々が集まってきた。

 ただの実験みたいなものなので、そんなに見ていて楽しいものではないと思うぞ。

 

「魔王様止めてくださいよぉ……。そんなにモンスター作らせて、スタンピードでも起こらせるつもりかよぉ。レイ」

 

 大丈夫。ちゃんとうちで管理するから。

 マーフォークは海で活躍できるだろうし、ミノタウロスはやはり迷路に置いておきたい。

 

「料理がさらに必要になりそうだね~」

 

「上位モンスター作成。いや、モンスターたちは食事が無くても大丈夫なので、食料が枯渇するくらいなら、無理に作る必要は」

 

 ルー・ガルー。ダスカロス変身後にちょっと似ている。まあ、喋れないけど。

 

「食べられない子がいたら、かわいそうっしょ?」

 

「上位モンスター作成。まあ最悪の場合は、俺が魚入りの海を大量に作って消してを繰り返すよ。全員魚のみの食事になるけど」

 

 ヘルハウンド。ちょっと燃えている犬。

 ……あれ、人間っぽいモンスターから遠ざかってしまった。

 

「食料問題まで解決するレイくんって、わりとやべえと思う」

 

「プリミラさんの畑もあわさったら、魚と野菜と果物は確保できそうだよねぇ」

 

 リグマが言うとおり、魚や貝だけならどうにかなる。

 そんな魔力を自由に使えるのは、プリミラの作った魔力回復薬のおかげだ。

 そもそも、海自体もプリミラの潮流の宝玉のおかげだ。

 ……プリミラすごくない?

 

「レイ。なぜ、犬系のモンスターばかりなのですか? マギレマと話していて、犬で頭がいっぱいになっているんじゃないですか?」

 

「い、いえ。別に俺が選んで作成しているわけじゃないので……」

 

「なら、私と話しているときは、魔王っぽいモンスターを作成すべきじゃないのですか? マギレマばかり贔屓ですか?」

 

「違いますって……」

 

 相変わらず、なぜかフィオナ様は、マギレマさんへの対抗意識があるらしい。

 マギレマさんというか、彼女の犬というか……。

 

「魔王みたいなモンスターなんか作れたら、やばい力じゃないですか」

 

「え、まだやばい力って認識じゃなかったの?」

 

 うるさいぞリグマ。

 やばい力じゃなくて、役立つ力と言うんだ。これは。

 

「モンスター作成……あれ?」

 

 出てきたのは、巨大な黒いサソリのモンスター。

 ソウルイーターよりもでかく、まるで甲冑のような見るからに固い体を持っていて、それだけで非常に強力そうなことがうかがえる。

 

「おや? なんか、強そうですね。つまり、レイは魔王としての私は、強くてかっこよくて頼りになると考えていると」

 

「だから、フィオナ様への印象と、俺が作るモンスターは連動しませんって……。あと、強くてかっこいいだけじゃなくて、かわいくて綺麗だとも思っています」

 

「ふふん! ですよね~! マギレマ、今回も許してあげます!」

 

「あ、ありがとうございま~す。レイくん、助かったよ。ありがと~」

 

 別に俺が助けたわけではなく、口だけだったと思うけどね。

 さて、そんないつも仲良しな二人はともかく、作成されたモンスターのほうが問題だ。

 

 セルケト 魔力:69 筋力:59 技術:50 頑強:70 敏捷:52

 

 まずステータス。強い。

 明らかに、他の上位モンスターたちよりも一段上のステータスだ。

 なんなら、ヨハンより強いし、ナツラにすら匹敵するくらいになっている。

 十魔将すら、手こずるのではないかと思えるほどの値だ。

 まあ、ステータスが全てではないことは、ヨハンの件でよくわかっているし、実際戦うとなると十魔将が圧勝するんだろうけど。

 

 そんなセルケトの消費魔力は50。

 上位モンスターたちが20だったことから、この子が上位モンスターガシャで初のレア枠だということがわかる。

 

 超位モンスター作成:消費魔力 50

 

 こんなメニューが解禁されたため、セルケトは超位モンスターという分類らしい。

 ようやく、一つ上の段階を解放できたということだ。

 

「これはまた……随分と強そうなモンスターだな。鍛えがいがありそうだ」

 

「これまでのボスモンスターとは、明確に強さが違いますね~」

 

 十魔将も、しっかりとこの子の強さを感じ取っているらしく、それだけでもその力は保証されているようなものだろう。

 それにしても……別に、時任は怯える様子もないな。

 やっぱり、苦手意識は自分の死因のオーガに対してだけか。

 

 いずれ、うちでもオーガを作成できる可能性はぐっと近づいたわけだが、いざ作ったときはどうなるんだろう?

 時任が完全にトラウマを克服できれば良いけれど、逆効果になりそうなら今後はモンスターガシャを人前で引かないほうが良いか?

 

「レイさん! こんな強そうなモンスターも作れるのなら、もしかして、オーガ作れるってことですか!?」

 

「え。まだわからないけど、可能性はあるな」

 

「モンスターって、江梨子(えりこ)ちゃんみたいに、ボディガードにもなるんですよね!」

 

「まあ、必要なら」

 

「つまり、オーガを従える私……。ふっふっふ、ついに完全なるトラウマ克服の時が!」

 

 あ、なんか大丈夫そう。

 むしろ、俺が思っていたように、モンスターのほうのオーガを部下にすることで、完全にトラウマを克服してくれるみたいだ。

 となると、今後も定期的にモンスター作成を進めていった方が良さそうだな。

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