【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「何?
「戦えませんけど、気持ちでは負けないようにしようと思っています!」
ある日、地底魔界内を歩いているとその光景に出くわした。
なんか威嚇するようなポーズの時任と、それを見てどうすれば良いか困っているナツラ。
いかに戦い好きのナツラといえど、これを相手に喜べるやつではないみたいだ。
「あの、宰相様。どうすれば良いのでしょうか……」
「とりあえず、通り過ぎてやってくれ」
「は、はあ……」
そうして通路を進んで行くナツラ。
時任は、威嚇のポーズを崩さずに、油断なくナツラの移動に合わせて体の向きを都度変えていく。
そうしてナツラが完全に通り過ぎると、やり遂げたような何とも満足そうな表情を浮かべていた。
「やりました! トラウマに完全に打ち勝った時任
「良かったな。ところで、時任を殺したのって、ナツラなんだっけ?」
「いえ? 言葉も喋れないオーガなので、魔王軍の皆さんが言っていたように、モンスターのほうのオーガだったのかもしれません」
なので、ナツラで慣れておいてから、モンスターのオーガにもそのうち慣れようってことだろうか。
時任が完全にトラウマを克服するためには、モンスターが必要になりそうだ。
だけど、うちにはそんなモンスターいないんだよなあ。
かと言って、野生のオーガを探し出して邂逅させようものなら、二度目のトラウマになりそうだし……。
「やっぱり、そろそろ作るか。オーガ」
「ええ!? 作れるんですか!?」
「まだ無理だけど、がんばればそのうちいけると思う」
モンスター作成は、わりとなんでも作ってくれる優秀なメニューだからな。
それに、無茶ぶりされたときのダンジョン施設よりはマシだろう。
おそらく、上位モンスター作成の上さえ解禁すれば、オーガもそこから作成できる気がする。
◇
「上位モンスター作成。上位モンスター作成」
ミノタウロス。マーフォーク。
なるほど、人に近いモンスターが出てくるようになってきた。
これは、今ならオーガも引き当てることができるんじゃないか?
「精が出ますねえ。レイも、ついにガシャの楽しみに目覚めたのでしょうか?」
「いえ……。あれ、でも狙いを引こうとしているので、そうなのかもしれません」
「それはとても良いことです。いずれは、そのガシャへの思いを宝箱に向けましょう」
「善処します」
俺がモンスターを作成し続けていると、フィオナ様だけでなく魔王軍の面々が集まってきた。
ただの実験みたいなものなので、そんなに見ていて楽しいものではないと思うぞ。
「魔王様止めてくださいよぉ……。そんなにモンスター作らせて、スタンピードでも起こらせるつもりかよぉ。レイ」
大丈夫。ちゃんとうちで管理するから。
マーフォークは海で活躍できるだろうし、ミノタウロスはやはり迷路に置いておきたい。
「料理がさらに必要になりそうだね~」
「上位モンスター作成。いや、モンスターたちは食事が無くても大丈夫なので、食料が枯渇するくらいなら、無理に作る必要は」
ルー・ガルー。ダスカロス変身後にちょっと似ている。まあ、喋れないけど。
「食べられない子がいたら、かわいそうっしょ?」
「上位モンスター作成。まあ最悪の場合は、俺が魚入りの海を大量に作って消してを繰り返すよ。全員魚のみの食事になるけど」
ヘルハウンド。ちょっと燃えている犬。
……あれ、人間っぽいモンスターから遠ざかってしまった。
「食料問題まで解決するレイくんって、わりとやべえと思う」
「プリミラさんの畑もあわさったら、魚と野菜と果物は確保できそうだよねぇ」
リグマが言うとおり、魚や貝だけならどうにかなる。
そんな魔力を自由に使えるのは、プリミラの作った魔力回復薬のおかげだ。
そもそも、海自体もプリミラの潮流の宝玉のおかげだ。
……プリミラすごくない?
「レイ。なぜ、犬系のモンスターばかりなのですか? マギレマと話していて、犬で頭がいっぱいになっているんじゃないですか?」
「い、いえ。別に俺が選んで作成しているわけじゃないので……」
「なら、私と話しているときは、魔王っぽいモンスターを作成すべきじゃないのですか? マギレマばかり贔屓ですか?」
「違いますって……」
相変わらず、なぜかフィオナ様は、マギレマさんへの対抗意識があるらしい。
マギレマさんというか、彼女の犬というか……。
「魔王みたいなモンスターなんか作れたら、やばい力じゃないですか」
「え、まだやばい力って認識じゃなかったの?」
うるさいぞリグマ。
やばい力じゃなくて、役立つ力と言うんだ。これは。
「モンスター作成……あれ?」
出てきたのは、巨大な黒いサソリのモンスター。
ソウルイーターよりもでかく、まるで甲冑のような見るからに固い体を持っていて、それだけで非常に強力そうなことがうかがえる。
「おや? なんか、強そうですね。つまり、レイは魔王としての私は、強くてかっこよくて頼りになると考えていると」
「だから、フィオナ様への印象と、俺が作るモンスターは連動しませんって……。あと、強くてかっこいいだけじゃなくて、かわいくて綺麗だとも思っています」
「ふふん! ですよね~! マギレマ、今回も許してあげます!」
「あ、ありがとうございま~す。レイくん、助かったよ。ありがと~」
別に俺が助けたわけではなく、口だけだったと思うけどね。
さて、そんないつも仲良しな二人はともかく、作成されたモンスターのほうが問題だ。
セルケト 魔力:69 筋力:59 技術:50 頑強:70 敏捷:52
まずステータス。強い。
明らかに、他の上位モンスターたちよりも一段上のステータスだ。
なんなら、ヨハンより強いし、ナツラにすら匹敵するくらいになっている。
十魔将すら、手こずるのではないかと思えるほどの値だ。
まあ、ステータスが全てではないことは、ヨハンの件でよくわかっているし、実際戦うとなると十魔将が圧勝するんだろうけど。
そんなセルケトの消費魔力は50。
上位モンスターたちが20だったことから、この子が上位モンスターガシャで初のレア枠だということがわかる。
超位モンスター作成:消費魔力 50
こんなメニューが解禁されたため、セルケトは超位モンスターという分類らしい。
ようやく、一つ上の段階を解放できたということだ。
「これはまた……随分と強そうなモンスターだな。鍛えがいがありそうだ」
「これまでのボスモンスターとは、明確に強さが違いますね~」
十魔将も、しっかりとこの子の強さを感じ取っているらしく、それだけでもその力は保証されているようなものだろう。
それにしても……別に、時任は怯える様子もないな。
やっぱり、苦手意識は自分の死因のオーガに対してだけか。
いずれ、うちでもオーガを作成できる可能性はぐっと近づいたわけだが、いざ作ったときはどうなるんだろう?
時任が完全にトラウマを克服できれば良いけれど、逆効果になりそうなら今後はモンスターガシャを人前で引かないほうが良いか?
「レイさん! こんな強そうなモンスターも作れるのなら、もしかして、オーガ作れるってことですか!?」
「え。まだわからないけど、可能性はあるな」
「モンスターって、
「まあ、必要なら」
「つまり、オーガを従える私……。ふっふっふ、ついに完全なるトラウマ克服の時が!」
あ、なんか大丈夫そう。
むしろ、俺が思っていたように、モンスターのほうのオーガを部下にすることで、完全にトラウマを克服してくれるみたいだ。
となると、今後も定期的にモンスター作成を進めていった方が良さそうだな。