【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「駄目だあ……」
「オーガ一点狙いとなると、さすがのレイも無理でしたか」
「ですねえ。フィオナ様の気持ちがわかった気がします」
いつもなら、何を引いてもアタリだからな。
だけど、今回はオーガという明確な狙いがあったため、それを引き当てない限りは勝ちとは言えないというわけだ。
ただ、良いモンスターたちは相変わらず作れているのが救いか。
「どれ、慰めてあげましょう。部屋で膝枕と抱き枕どっちが良いですか?」
「膝枕でお願いします」
「素直でよろしい」
抱き枕だと煩悩との戦いとなるため、慰められるどころじゃなくなるからな。
膝枕は、まあ……。ぶっちゃけ好きです。
そのどや顔もだから指摘できない。かわいいしな。
「じゃあ、新しいモンスターたちは、さっき言ったとおりの配置で。それと、ディキティスに指導してもらうから、明日からがんばってくれ」
俺の言葉にうなずくモンスターたち。
うん、こっちはこっちでかわいい。
迷路に海。広間にボス部屋。とりあえずの配置はできたので、あとは様子見だ。
どんな活躍をしてくれるのか、楽しみになってきた。
◇
「ヘルハウンドって、体が燃えてますけど、本人は炎や溶岩への耐性ってあるんですか?」
「多少はありますけど、完全に無効ってわけではありませんね」
「じゃあ、油の道で炎の海の中突進させるとか、マグマの中から不意打ちさせるとかは難しいですね」
「なるほど……。いっそのこと、炎無効みたいな装備でも狙ってみます?」
「狙ってしまうと当たらないってことは、今回のことでわかったので、やめておきますか……」
アイテムでカバーするというのは悪くない案だけど、今後量産したときに全員分用意するのも無理だろうしな。
となると、ふつうに犬系モンスターとしての活躍に期待しよう。
やわらかな膝の上で、そんなことを考える。
「……体が燃えているし、そこからピルカヤを出現させたりは」
「できますけど、使いどころをしっかりしないと、あの子の存在がばれちゃいますね」
「ですよねえ。まあ、緊急時の手札の一つとして、覚えておきます」
燃える体の調整をすることで、炎の量を増加させられるか?
いや、いっそのこと他の能力を犠牲にしてでも、炎耐性を上げるのもありか。
考え出すと、色々な案が出てきて楽しくなってくる。
すると、俺の額に手が添えられてやさしくなでられた。
「がんばるあなたのことは好きですが、たまには息抜きも大事ですよ?」
「今まさに息抜き中な気がします」
「では、お仕事のことを忘れるのが、健全なお休みだと思います」
む、それを言われると、何も言い返せない。
ついついダンジョンのことを考えてしまうのは、やはり楽しいからだろう。
フィオナ様のためというのもあるけれど、もはや俺の趣味でもあるからな。
「ほら、また考えています」
「ああ、そうでした。では、最後に一つだけ」
「なんですか?」
セルケトはボスとして配置するから良いとして、やはりヘルハウンドとルー・ガルーの配置に悩む。
いや、悩んでいた。しかし、ちょっとした案を思い付いたので、魔王であるフィオナ様にも確認してもらいたい。
「コボルトやヘルハウンド。ルー・ガルーにミストウルフといった、犬系ダンジョンってどうでしょうか」
「……ふむ、とりあえず続けてください」
「ゴブリンダンジョンのときみたいに、コンセプトを決めたダンジョンってやっていなかったので、良いかなと思いまして」
犬系のモンスターも増えてきたからな。
それらを放し飼いというか、配置したダンジョンなんて、見ていたら楽しそうだ。
それに、魔王軍にも犬系の魔族はいるし、いずれはボスとして配置することも……。
「マギレマさんとか、ボスにできたら面白いですよね」
「ほら! やっぱり、マギレマの話につながった! レイは本当にマギレマが好きですねえ!」
「い、いえ。ダスカロスでも良いですけど」
「犬なら見境なしですか!? ついに、性別を超えて犬を愛でると!?」
「痛いです。いえ、痛くないけど圧迫感はあります」
なんかフィオナ様が興奮してしまった。
額をなでていた手の動きは止まり、俺の額を地面に押し付けるように力を込めている。
だが、俺の後頭部にあるのは地面ではなく、フィオナ様の膝だ。
つまり、俺はやわらかい膝におしつけられるだけで、特に痛みもなく圧迫感のみを感じることとなった。
「足が好きそうなんで、堪能させてやっています!」
「それは……ありがとうございます」
「犬と私どっちが好きですか?」
「フィオナ様です」
「ですよね! なら、犬より私にかまうように」
「俺はいつも、フィオナ様最優先なんですけどねえ」
「う……。で、でも、もっとかまうように!」
「はい」
というか、マギレマさんとダスカロスまで、一緒くたにして犬扱いで良いのか?
おっと、そんなことを考えていたら、また魔王様がすねてしまう。
では、フィオナ様のことだけを考え続けよう。
「フィオナ様がダンジョンを作っていたときって、どういうものを作っていたんですか?」
「私の場合は、そうですねえ……。迎撃用は今思うとわりと雑でしたね」
「雑……」
「レイほど凝った仕掛けや組み合わせは作っていませんでした。魔王軍のみんなを防衛にあたらせてはいましたけどね」
「なるほど、全盛期の魔王軍なら人手も多そうですもんね」
今のダンジョンは、まだまだモンスターに頼っているもんな。
だけど、ドリュたちみたいな魔族を配置するのが、従来のダンジョンだったってことだ。
「う~……」
「どうしました? そんな困った顔をして」
「いえ、全盛期って言葉が少し引っかかりまして」
「軍団としては、今よりずっと多かったんですよね?」
であれば、やはり全盛期といえるだろう。
だって、今の面々ですらかなり充実した頼れる魔王軍だ。
そこから、さらに多くの魔族が存在していたのであれば、それはやはり今以上の魔王軍だったに違いない。
「私は、今の魔王軍こそが最高だと思っています」
「それは……さすがに、まだまだ追いつけていないような」
「人数はたしかにそうですね。施設の数だけなら以前のほうが上です」
だよな。まだまだ頑張る必要がある。
「ですが、あなたが来るまで私は一人でした。施設も私では作れなかったようなものばかりです」
「そうなんですか?」
魔王の力より、ダンジョンマスターの力のほうが上回っていると?
つまり、女神の力は魔王よりも上ってことになるよな……。
今後も女神には要注意ってところか。
それと、一人というのはきっと前に考えたことが当たっていそうだ。
フィオナ様は、上に立つ者として対等な者がいなかった。
俺に気安い態度を求めているのも、それが原因なんだろう。
魔王と宰相。立場は全然対等ではないけれど、この魔族がそれを望むのであれば、できる限りで応えよう。
「ええ、あんなに活気のある楽しそうな場所。私には作れませんでした」
「時任とか、リアクションが大げさですからねえ」
「ふふ……。いつも元気で良いですねえ」
トラウマ相手に逆ギレ気味に接するやつだからな。
あいつ、最初の印象と違って、実はかなり心が強いんじゃないだろうか。
そうか。以前との違いは、そういった魔族以外の従業員たちってことだな。
それなら、そこにかつてのメンバーが加わったら……。
「じゃあ、魔王軍が復活したそのときが、今度こそ全盛期ってわけですね」
「その意気です! 今後も、蘇生薬ガシャをがんばりましょう!」
ついに、宝箱ガシャじゃなくて蘇生薬ガシャって言っちゃったよ。
これは、完全に物欲センサーに狙われるんだろうなあ……。
◆
「魔王様。先日作成いただいた演習場ですが、大変好評です」
「そうですか。それで、他の施設は?」
「休息が必要な者は、まだおりません」
「……そうですか、わかりました。下がりなさい、ディキティス」
まあ、期待していませんでしたけどね。
どれだけ娯楽を用意しようと、彼らが利用するのは人類と戦うための設備のみ。
与えられた仕事を全うする。それはとても良いことでしょう。
ですが、それしかできないことのなんと不健全なことでしょうか。
「ふふ……。馬鹿みたいですね」
こんな部屋を期待しながら作るなんて。
こんなに広く作るなんて。
どうせ、私しか使わない部屋なのに。
あ~あ。本当に馬鹿みたいです。
無駄に広い部屋は、孤独を余計に増大させますが……。
くだらない期待をした私自身への罰なのでしょう。