【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第369話 ヒトリノ千夜一夜

「駄目だあ……」

 

「オーガ一点狙いとなると、さすがのレイも無理でしたか」

 

「ですねえ。フィオナ様の気持ちがわかった気がします」

 

 いつもなら、何を引いてもアタリだからな。

 だけど、今回はオーガという明確な狙いがあったため、それを引き当てない限りは勝ちとは言えないというわけだ。

 ただ、良いモンスターたちは相変わらず作れているのが救いか。

 

「どれ、慰めてあげましょう。部屋で膝枕と抱き枕どっちが良いですか?」

 

「膝枕でお願いします」

 

「素直でよろしい」

 

 抱き枕だと煩悩との戦いとなるため、慰められるどころじゃなくなるからな。

 膝枕は、まあ……。ぶっちゃけ好きです。

 そのどや顔もだから指摘できない。かわいいしな。

 

「じゃあ、新しいモンスターたちは、さっき言ったとおりの配置で。それと、ディキティスに指導してもらうから、明日からがんばってくれ」

 

 俺の言葉にうなずくモンスターたち。

 うん、こっちはこっちでかわいい。

 迷路に海。広間にボス部屋。とりあえずの配置はできたので、あとは様子見だ。

 どんな活躍をしてくれるのか、楽しみになってきた。

 

    ◇

 

「ヘルハウンドって、体が燃えてますけど、本人は炎や溶岩への耐性ってあるんですか?」

 

「多少はありますけど、完全に無効ってわけではありませんね」

 

「じゃあ、油の道で炎の海の中突進させるとか、マグマの中から不意打ちさせるとかは難しいですね」

 

「なるほど……。いっそのこと、炎無効みたいな装備でも狙ってみます?」

 

「狙ってしまうと当たらないってことは、今回のことでわかったので、やめておきますか……」

 

 アイテムでカバーするというのは悪くない案だけど、今後量産したときに全員分用意するのも無理だろうしな。

 となると、ふつうに犬系モンスターとしての活躍に期待しよう。

 やわらかな膝の上で、そんなことを考える。

 

「……体が燃えているし、そこからピルカヤを出現させたりは」

 

「できますけど、使いどころをしっかりしないと、あの子の存在がばれちゃいますね」

 

「ですよねえ。まあ、緊急時の手札の一つとして、覚えておきます」

 

 燃える体の調整をすることで、炎の量を増加させられるか?

 いや、いっそのこと他の能力を犠牲にしてでも、炎耐性を上げるのもありか。

 考え出すと、色々な案が出てきて楽しくなってくる。

 すると、俺の額に手が添えられてやさしくなでられた。

 

「がんばるあなたのことは好きですが、たまには息抜きも大事ですよ?」

 

「今まさに息抜き中な気がします」

 

「では、お仕事のことを忘れるのが、健全なお休みだと思います」

 

 む、それを言われると、何も言い返せない。

 ついついダンジョンのことを考えてしまうのは、やはり楽しいからだろう。

 フィオナ様のためというのもあるけれど、もはや俺の趣味でもあるからな。

 

「ほら、また考えています」

 

「ああ、そうでした。では、最後に一つだけ」

 

「なんですか?」

 

 セルケトはボスとして配置するから良いとして、やはりヘルハウンドとルー・ガルーの配置に悩む。

 いや、悩んでいた。しかし、ちょっとした案を思い付いたので、魔王であるフィオナ様にも確認してもらいたい。

 

「コボルトやヘルハウンド。ルー・ガルーにミストウルフといった、犬系ダンジョンってどうでしょうか」

 

「……ふむ、とりあえず続けてください」

 

「ゴブリンダンジョンのときみたいに、コンセプトを決めたダンジョンってやっていなかったので、良いかなと思いまして」

 

 犬系のモンスターも増えてきたからな。

 それらを放し飼いというか、配置したダンジョンなんて、見ていたら楽しそうだ。

 それに、魔王軍にも犬系の魔族はいるし、いずれはボスとして配置することも……。

 

「マギレマさんとか、ボスにできたら面白いですよね」

 

「ほら! やっぱり、マギレマの話につながった! レイは本当にマギレマが好きですねえ!」

 

「い、いえ。ダスカロスでも良いですけど」

 

「犬なら見境なしですか!? ついに、性別を超えて犬を愛でると!?」

 

「痛いです。いえ、痛くないけど圧迫感はあります」

 

 なんかフィオナ様が興奮してしまった。

 額をなでていた手の動きは止まり、俺の額を地面に押し付けるように力を込めている。

 だが、俺の後頭部にあるのは地面ではなく、フィオナ様の膝だ。

 つまり、俺はやわらかい膝におしつけられるだけで、特に痛みもなく圧迫感のみを感じることとなった。

 

「足が好きそうなんで、堪能させてやっています!」

 

「それは……ありがとうございます」

 

「犬と私どっちが好きですか?」

 

「フィオナ様です」

 

「ですよね! なら、犬より私にかまうように」

 

「俺はいつも、フィオナ様最優先なんですけどねえ」

 

「う……。で、でも、もっとかまうように!」

 

「はい」

 

 というか、マギレマさんとダスカロスまで、一緒くたにして犬扱いで良いのか?

 おっと、そんなことを考えていたら、また魔王様がすねてしまう。

 では、フィオナ様のことだけを考え続けよう。

 

「フィオナ様がダンジョンを作っていたときって、どういうものを作っていたんですか?」

 

「私の場合は、そうですねえ……。迎撃用は今思うとわりと雑でしたね」

 

「雑……」

 

「レイほど凝った仕掛けや組み合わせは作っていませんでした。魔王軍のみんなを防衛にあたらせてはいましたけどね」

 

「なるほど、全盛期の魔王軍なら人手も多そうですもんね」

 

 今のダンジョンは、まだまだモンスターに頼っているもんな。

 だけど、ドリュたちみたいな魔族を配置するのが、従来のダンジョンだったってことだ。

 

「う~……」

 

「どうしました? そんな困った顔をして」

 

「いえ、全盛期って言葉が少し引っかかりまして」

 

「軍団としては、今よりずっと多かったんですよね?」

 

 であれば、やはり全盛期といえるだろう。

 だって、今の面々ですらかなり充実した頼れる魔王軍だ。

 そこから、さらに多くの魔族が存在していたのであれば、それはやはり今以上の魔王軍だったに違いない。

 

「私は、今の魔王軍こそが最高だと思っています」

 

「それは……さすがに、まだまだ追いつけていないような」

 

「人数はたしかにそうですね。施設の数だけなら以前のほうが上です」

 

 だよな。まだまだ頑張る必要がある。

 

「ですが、あなたが来るまで私は一人でした。施設も私では作れなかったようなものばかりです」

 

「そうなんですか?」

 

 魔王の力より、ダンジョンマスターの力のほうが上回っていると?

 つまり、女神の力は魔王よりも上ってことになるよな……。

 今後も女神には要注意ってところか。

 

 それと、一人というのはきっと前に考えたことが当たっていそうだ。

 フィオナ様は、上に立つ者として対等な者がいなかった。

 俺に気安い態度を求めているのも、それが原因なんだろう。

 

 魔王と宰相。立場は全然対等ではないけれど、この魔族がそれを望むのであれば、できる限りで応えよう。

 

「ええ、あんなに活気のある楽しそうな場所。私には作れませんでした」

 

「時任とか、リアクションが大げさですからねえ」

 

「ふふ……。いつも元気で良いですねえ」

 

 トラウマ相手に逆ギレ気味に接するやつだからな。

 あいつ、最初の印象と違って、実はかなり心が強いんじゃないだろうか。

 そうか。以前との違いは、そういった魔族以外の従業員たちってことだな。

 それなら、そこにかつてのメンバーが加わったら……。

 

「じゃあ、魔王軍が復活したそのときが、今度こそ全盛期ってわけですね」

 

「その意気です! 今後も、蘇生薬ガシャをがんばりましょう!」

 

 ついに、宝箱ガシャじゃなくて蘇生薬ガシャって言っちゃったよ。

 これは、完全に物欲センサーに狙われるんだろうなあ……。

 

    ◆

 

「魔王様。先日作成いただいた演習場ですが、大変好評です」

 

「そうですか。それで、他の施設は?」

 

「休息が必要な者は、まだおりません」

 

「……そうですか、わかりました。下がりなさい、ディキティス」

 

 まあ、期待していませんでしたけどね。

 どれだけ娯楽を用意しようと、彼らが利用するのは人類と戦うための設備のみ。

 与えられた仕事を全うする。それはとても良いことでしょう。

 ですが、それしかできないことのなんと不健全なことでしょうか。

 

「ふふ……。馬鹿みたいですね」

 

 こんな部屋を期待しながら作るなんて。

 こんなに広く作るなんて。

 どうせ、私しか使わない部屋なのに。

 

 あ~あ。本当に馬鹿みたいです。

 無駄に広い部屋は、孤独を余計に増大させますが……。

 くだらない期待をした私自身への罰なのでしょう。

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