【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ま、魔王を負かすとは……。さすがは私の宰相です」
「ようやく一勝できただけですけどね。フィオナ様、実は運が良い魔族だったりします?」
「運が良い魔族は、宝箱であんなに負けたりしないんですけど~」
「それにしては、俺だけでなく、ロペスや時任にもポーカーで連勝じゃないですか」
娯楽室でのフィオナ様は、魔王らしく向かうところ敵無しだった。
この方、宝箱以外では実は相当運が良い可能性がでてきたな。
それとも、こういうところで運を消費しているから、本番で負けているとか?
「魔王様相手だと、選択肢が何選んでも負けになってました……」
「イカサマできねえ……。ビッグボス、そういう知識無いのに、目の良さだけで全部看破される……」
「あなたたち、正々堂々と勝負しなさいよ」
奥居の言うとおりだ。
俺なんて、そういう盤外戦術を使えないから、完全に運だけで立ち向かうことになっていたぞ。
ダンジョンを活かして、あるいは宰相として、なんか使える手はあっただろうか?
……ピルカヤにカードをのぞき見してもらうとか?
いや、魔王様を裏切る行為は、さすがのピルカヤも断るか。
「満足しました。さて、私に負け続けた罰として、レイは一日中私に膝枕ですね」
「そんな賭けしていましたっけ……」
というか、それならロペスと時任だって負けたから、三人で交代しながらってことに……。
「してましたね!」
「ああ、していた」
裏切りやがったこいつら!
しれっと話を合わせる二人と、その横で申し訳なさそうに頭を下げる奥居を見て、フィオナ様は満足そうにしていた。
そうして俺は、魔王の部屋に連行されるのだった。
◇
「一日中は、足が痺れそうなんですけどねえ……」
「そのときは、交代して私がレイに膝枕をしてあげましょう」
「それなら、まあ良いですけど」
罰じゃなかったっけ?
俺への褒美も兼ねていた?
「まあ、次は勝ちますけど」
「ふふ……。その意気です。それでこそ、私の宰相です」
「次は、ピルカヤに協力してもらって、イカサマしますので」
「私の四天王なんですけど!?」
そうですね。ついでに言うと、俺もあなたの宰相です。
そうして俺が勝ったときは、褒美としてフィオナ様に膝枕をしてもらおう。
……あれ? 勝っても負けても、結果は同じになるか?
「むむむ……。ピルカヤの場合、こういうときはレイに付きそうな気がしてきました」
「いやいや、四天王なんだから、いつだってフィオナ様の味方のはずでしょう」
「どうですかね~。あの子、普段は楽しいほうに付く子ですから」
まあ、たまに魔王であるフィオナ様をもからかう発言するからなあ。
精霊だから仕方がないのか?
「プリミラだって、私に容赦なくお説教しますからねえ」
「それは、フィオナ様が悪いときなので、諦めてください」
「ですよねえ……」
大体、それが目的でプリミラを最初に蘇生したんじゃないんですか?
今ならよくわかる。要するに、俺で言うところのアナンタみたいなものだ。
止めてくれる魔族がいるのであれば、遠慮なく突き進めるもんな。
「おのれ四天王……。あのときの忠誠はなんだったんですか」
「あのとき?」
「ああ。私が魔王になったときの忠誠です」
「へえ。そういえば、四天王ってフィオナ様が魔王になったときに、一緒に選出したんですか?」
「いえいえ。あの子たちは元から四天王でしたよ」
ということは、フィオナ様は少なくとも初代魔王ではなく、四天王のほうが魔王軍としての活動期間が長いのか。
先代魔王に仕えていたけれど、今はフィオナ様に仕えていると……。
「もしかして、フィオナ様って先代魔王の娘さんだったりします?」
「いえ? 先代魔王には息子はいましたが、娘はいませんね」
つまり、赤の他人であると。
というか、先代の魔王って息子なんていたんだな。
「魔王は世襲制じゃないから、フィオナ様が実力で奪ったってことですね」
「ま、まあ。結果的にはそうなりますね」
「先代魔王のころって、もしかしてフィオナ様が四天王や十魔将だったんですか?」
「いえいえ。私は魔王軍ですらありませんでしたよ。なんか、結果として魔王との戦いに勝って、魔王になったというだけです」
……え、戦いの末に奪ったの?
もしかして、俺が思っている以上に、昔のフィオナ様ってやんちゃだったりする?
この強さの魔族だもんなあ……。戦い好きで放浪の旅に出て、魔王軍に喧嘩を売って勝利したとか、なんか想像できてしまった。
「えっと……落ち着かれましたね?」
「? ええ。別に興奮もしていませんけど」
伝わらなかったけど、そのほうが良かったのかもしれない。
もしも昔のフィオナ様が喧嘩っ早い方だとしたら、獣人やオーガみたいだったのだろうか?
俺と出会ったときのフィオナ様が、落ち着いた後のフィオナ様で良かった……。
もしも、そうでなかったとしたら、仕えさせてくれと頼んだ後に力を見せろとか言われて、そのまま燃えカスにされていたかもしれない。
「とにかく、そんな先代魔王から私に仕えるとなったときに、あの子たちはあっさりと忠誠を誓ったのです」
「戦いに勝ったというわりには、穏便に代替わりしたんですねえ」
「そうは思わなかったんですけどねえ。まさか、直前まで戦っていた相手を、あんな風に認めるとは思いませんでしたし」
「……え、もしかしてフィオナ様、魔王軍に殴り込みしてます?」
「……な、殴り込みという表現は物騒なので、訂正を求めます!」
「してるってことじゃないですか……」
やばい。この魔王様、思っていたよりも昔は血の気が多かったみたいだ。
魔王相手に一対一の勝負を挑んだのかと思っていたが、どうやら魔王軍全体に殴り込みをかけている。
ただ、魔族たちが実力主義なのかわからないが、結果としてはそれで自分の力を認めさせることに成功したみたいだ。
「たしか、前にリピアネムの武器が破壊されたって言っていましたけど、もしかして破壊したのって……」
「あ、私ですね。剣を破壊してドラゴンになったので、叩きのめしました」
「何してんですか。あんた」
「い、いえ! 正々堂々の勝負でしたので!」
なら良いか。当人たちが納得しているのであれば、俺が口出しするわけにもいくまい。
たぶん、全員そうなんだろうなあ……。
プリミラ、ピルカヤ、リグマ、リピアネム。
この魔族、きっとそれらを全員打倒して、その後先代魔王と戦って勝っているぞ。
「そうやって、全員叩きのめしたから、実力を認めてもらえたんじゃないですか?」
「なるほど……。だからすんなりと魔王交代ができたということですね」
そりゃあ、あれだけの実力を見せつけられたらなあ……。
むしろ、それでも果敢に挑んでくるイドがすごいと思えてきたぞ。
いや、そもそも二回目以降は、挑んだダンジョンにフィオナ様がいるなんて、想像もしていないだけかもしれないけど。
そんな魔王様が、今は俺の膝の上で寝ている。
なんとも不思議な光景というか、落ち着いて変わったというか。
「……つまり、レイが生意気なことを言ったら、力ずくで押さえつければ良い子になると?」
「それをされたら、俺じゃ抵抗すらできませんねえ」
「ではやめておきます。あなたの軽口は、嫌いじゃありませんので」
「せいぜい、力ずくで黙らせられない程度の軽口にしておきます」
いや、本当に。
まかり間違って、この魔族を本気で怒らせた場合、俺じゃ太刀打ちできない。
というか、魔王軍の誰一人として太刀打ちできないからな……。
なんかどんどんパワーアップしているリピアネムですら、魔王様のステータスの前では誤差みたいな成長なのだから。
◇
「という話をしていた」
「うむ、魔王様は本当に強かった。完膚なきまでに叩きのめされ、むしろ清々しいほどの敗北だった」
「リピアネムでそれなら、魔王軍の中でフィオナ様に勝てる魔族っていないだろうなあ……」
「可能性があるとすれば、レイくんくらいじゃないかねえ」
「いや、俺が一番弱いから、可能性なんてないだろ」
「いえ、魔王様を止められる可能性が一番高いのはレイ様です」
なんだか、四天王たちに過大評価されてない?
たしかに、宰相としてがんばることは決心したけれど、弱さへの認識は変わっていないからな?