【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第372話 虫の女王

「オーガたちは一人としていなくなっていると」

 

 部下の言葉に、さすがに異変を察知した。

 命令した部下たちはしょせんは末端なので、そこまで判断できていない。

 オーガたちが消えて、やつらの土地を手に入れた。それだけで目的を果たしたと思っている。

 

「命令に忠実なのは利点だけど、考えることをしないのは、それはそれで問題ね」

 

 命令に決して逆らわない。何も考えないから余計な感情に行動を左右されない。

 それは強みでも弱みでもある。もう少し、上位の兵隊を一緒に連れて行くべきだった。

 だから、これに関しては運用方法を誤った私の落ち度だ。

 

「オーガを探しなさい」

 

「ですが女王様。土地さえ手に入ったのであれば、オーガに固執する必要は無いのでは?」

 

「オーガを狙っていた理由は土地だけじゃないわ。他の種族に対抗するための戦力にしたかったからよ」

 

 人類という便利な言葉がある。

 人間、獣人、エルフ、海人族等々。要するに善の種族たちを指す言葉だ。

 ここに魔族は入らない。魔族が人類でないということは、人類の敵と判断して良いと公に認められているということ。

 

 さて、問題は魔族以外だ。

 昆虫人やオーガやダークエルフが人類に入っているか、と言われると非常に線引きが曖昧になっている。

 魔族たちのように、完全に敵対視されているわけでもなく、かといって人類の仲間と認められているわけでもない。

 そんなグレーな存在。それは、下手したら魔族よりも危うい立場なのかもしれない。

 

 ダークエルフは、転生者と組んだらしい。

 その結果うまくやっているところを見ると、人類たちの次の矛先が心配になる。

 これまでは、もっとも抵抗の薄いダークエルフたちが、矢面に立つことになっていた。

 じゃあ、その次は? 昆虫人? オーガ? それとも他の迫害種?

 

「人類が簡単に手出しをできないような、強力な力を手に入れないといけない」

 

「ですが、我々昆虫人は数こそ多いものの、個人の戦力はオーガに劣ります」

 

「だから、まずは数を武器に土地を奪ったんだけど……まさか、土地そのものにすら執着しないなんてね」

 

 無理やりにでも土地を奪うことで、安住の地を失い戦力が低下する。

 食料の確保も、安定した睡眠すらできなくなるのであれば、さすがのオーガも弱体化する。

 そう考えていたけれど、連中は私の想像以上に強い種族だったらしい。

 

「末端の兵隊をいくら送っても、ことごとく返り討ちにされる」

 

「ですが、それでも確実にダメージは与えていたはずです。土地を手放したのがその証拠ではないでしょうか?」

 

 実際に、わりと追い詰めていたはず。

 そこは間違っていない。むしろ、追い詰めすぎたせいで逃げられた。

 そもそもオーガが、簡単に逃げるとは思っていなかった。

 

「逃げ場を塞ぐ段階ではないと思っていたんだけどね……。次は、確実に逃がさずに追い詰めるわよ」

 

 そう、逃がしたら何の意味もない。

 オーガたちを、自分たちの兵隊にするのだから。

 

「オーガという戦力を手に入れたら、人類は私たちに簡単に手出しできなくなるのだから」

 

    ◇

 

「オーガ欲しいなあ」

 

「聞き捨てならない言葉ですねぇ! 角ですか!? 力の強さですか!? 犬と違って、どちらも私は満たしているはずですけど!」

 

 ぽつりと呟くと、フィオナ様が今日も元気に突っかかってきた。

 そりゃあ、あなた以上に力の強い存在、この世界にいないんじゃないでしょうか?

 あと、頭の角を絶妙な力加減で押しつけてこないでください。

 加減に失敗したら、俺の手のひらが貫かれそうです。

 

「そもそも、私たちはすでに魔王軍のものという認識で正しいのです……が……」

 

 こら、にらまない!

 ナツラが怖がっているじゃないか!

 

「ナっちゃん。余計なこと言わないほうがいいよ? 魔王様、たまに怖いからね?」

 

「あ、ああ……。むしろ、怖いのはたまにだけなのか。魔王様なのに……」

 

 実際のところ、これも別に怖くないんだけどな。

 まだまだ新参者のナツラには、そのことを理解しろと言うほうがかわいそうだ。

 つまり、フィオナ様が悪い。

 

「まあ、なでておくので機嫌を直してください」

 

「なんか、雑ですねえ!」

 

「そう言いながらも、大人しくなるフィオナ様が好きです」

 

「レイは私のことが大好きですから、そうでしょうね」

 

 だから、なんでナツラのほうを見るんですか。

 あなた、そんなパワハラ上司とは対極の存在だったじゃないですか。

 

「ところで、レイが言うオーガが欲しいとは、モンスターのほうのことか?」

 

「そう。そうなんだよ、ダスカロス」

 

 そもそもは、それが問題だ。

 超位モンスター作成が解禁されたので、絶対にオーガが引けると思っていた。

 だけど、残念ながらガチャのプールはそれなりに広いのか、あるいは俺もついに物欲センサーに補足されたのか、いまだにオーガは引き当てていない。

 

「前回は、クラーケンとケルベロスだっけ? 毎回ボスっぽいモンスターが出てくるね」

 

「ボスばかり引くと、配置先に困ってしまうんだよな。通路に雑に配置したらアナンタが怒るし」

 

「それがわかるようになっただけ、少しは成長しているんだなぁ。お前も」

 

 魔力もそろそろ90になるからな。

 俺だって、いつまでも雑魚魔族なままではない。

 ……戦闘力でいえば雑魚魔族のままだけど、成長自体はしている。

 

「燃費の問題よりも、無駄に増やして暇になるのがかわいそうだし、超位モンスターガシャは、様子を見ながらって感じだなあ」

 

「宰相ボックスに、入れるわけにもいきませんからねえ」

 

「生物ですからね。魔王ボックスみたいなものは作れません」

 

 作るも何もただの宝箱ではあるけれど。

 いっそのこと、超位モンスターをそれぞれボスに据えたダンジョンを作成すれば……。

 管理が大変そうだし、増やしすぎると人類が本気で魔王軍に対処しそうだし、あまり良くないか。

 

    ◇

 

「あはは! 今のは惜しかったよ!」

 

 まあ、楽しそうなことだ。

 リピアネム用の広い戦場で、イピレティスがケルベロスと遊んでいる。

 遊んでいるというか戦っている。

 

 しっかりと三つの首の攻撃を回避して、その小さな体で果敢に挑んでいるように見えるが、実際はイピレティスのほうがだいぶ上みたいだ。

 ケルベロスたちも、そんなイピレティスになんとか一矢報いようとするが、なかなか相手が悪いらしい。

 

「いや~。面白かった~」

 

「満足そうだな」

 

「これはこれで良いですね~。次は、クラーケンと戦います」

 

「いったん休憩してからな。連戦させすぎるなってダスカロスにも言われたから」

 

 イピレティスって、ほうっておいたらずっとこの子たちと遊びかねないからな。

 疲れを知らないとかじゃなく、疲れすらも楽しむのだから筋金入りだ。

 

「それに、ナツラたちも挑むみたいだし」

 

「人気ですね~」

 

 超位モンスターは、オーガや一部の十魔将。それに一般的な魔族たちに人気だ。

 味方同士なので経験値は入りにくいが、戦闘経験という意味ではとても得られるものが大きいのだろう。

 さすがにリピアネムの参戦は止めたが、たまには戦わせてあげるのも良さそうだな。

 そうして、超位モンスターのみんなも様々な経験を積むことで、きっと強力なボスとして働いてくれることだろう。

 

「蘇生したばかりなんだから、無茶するなよ」

 

 再作成したソウルイーターが、ケルベロスに向かっていく。

 この子も格上相手にずいぶんとがんばるものだ。

 実際に、戦うたびに結果を残しているようだし、向上心が高いようで何よりだな。

 

 しばらくは、超位モンスターたちには、各自の戦闘訓練要員としてがんばってもらうのが、一番良いのかもしれない。

 活気に満ちた戦場を見ながら、俺はのんびりとそんなことを考えるのだった。

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