【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第376話 しのぎを削る虫と虫

「きた!」

 

「どうしたんですか? レイ」

 

「フィオナ様! 新しい岩のメニューが出ました!」

 

「なるほど。岩を作り続けた結果、新たな力を得たのですね。おめでとうございます」

 

「ありがとうございます!」

 

 思わずフィオナ様に握手をしてしまった。

 昆虫人たちの検証で、岩を作り続けたのが良かったんだろうな。

 情報はそんなに得られたわけじゃないけれど、こうなったのなら話は別だ。

 

「どんな罠が追加されたんだ?」

 

「リグマも同じ属性だから興味があるんだな。追尾岩っていうのが増えていた」

 

 追尾岩:消費魔力 15

 

「いや、おじさんというよりアナンタがかわいそうだから、聞いておこうかと思って……」

 

 かわいそうってなんだろう。

 新たな選択肢が増えたのなら、それは良いことじゃないか。

 

「名前からすると、転がる岩の派生のようだな」

 

「ああ、俺もそう思う。さっそく試してみたいし、早く昆虫人にきてもらいたいな」

 

「君、目的忘れてないか?」

 

「昆虫人を撃退しつつ、耐久力と耐性の調査をして、罠の検証もするんだろ?」

 

「増えたな。罠の検証という項目が」

 

 新しいメニューが増えたのだから仕方ない。

 ついでに、威力や追尾性能も測るのなら、直近まで似た罠を使った昆虫人が最適だろう。

 

    ◇

 

「女王様。ダンジョンに向かわせた兵隊は全滅しました」

 

「そう。耐性は?」

 

「毒で全滅したため、毒に強い兵隊が生産されています」

 

 ということは、毒のダンジョンということかしら。

 まあ、二度目は通用しないから問題ないわね。

 もしかしたら、耐性を上回る強力な毒が残っているかもしれないけれど、それも次の耐性で克服すれば良い。

 

 兵隊の強みは、恐怖すらない無感情の兵を大量に生み出せること。

 それともう一つ、死因が兵隊に共有されることで、次回の生産では耐性を得られること。

 おかげで、死を前提とした特攻は、とにかく効率的だと思っている。

 

「女王様」

 

「何?」

 

「各国の調査は理解できるのですが、ダンジョンに挑む理由は何でしょうか?」

 

「兵隊たちの強化にちょうど良いからよ」

 

 オーガ相手に無策に突っ込ませていたのは、やつらの疲弊を狙っていただけでなく、兵隊たちを強化するためだ。

 そんなオーガが突如消えてしまった。土地を得たのは良い。だけど、兵隊の強化は全然足りていない。

 

 そこで目を付けたのが、魔王が徐々に力をつけているのか、最近活発になってきているダンジョン。

 調査と並行してここを攻略させることで、兵隊たちの強化を継続させることにした。

 攻略できるのなら、多少の価値あるものを手に入れることになる。敗退したのなら、兵隊を徐々に強化できるようになる。

 良いこと尽くめで、こちらにはまるで損が無い。

 

「毒や麻痺等への耐性ならば、得るのは早いでしょうが、それ以外はゆるやかな成長となってしまいます。ダンジョンを攻略できるまでに成長できるのでしょうか」

 

「気長にやれば良いわ。ゆるやかと言えど、こちらは確実に成長を続ける。いずれは、他の種族にも負けない兵隊が、量産できるようになるはずよ」

 

 オーガ相手に善戦できるほどの兵隊は、残念ながら作れなかった。

 だけど、時間をかければ、必ず追いつける。

 一度追いついたのなら、あとは追い越すだけ。

 私は、昆虫人たちの兵隊を使って、あらゆる外敵に対抗する手段を得るのだ。

 

 ……そんなことを考えていたのが、数日前のこと。

 兵隊の生産は常に行っているので、随時ダンジョンへ向かわせては経験を積ませている。

 狙い通りに毒の耐性を得たことで、もはや毒の罠は通用しなくなっている。

 だけど……ちょっと想定外の出来事に見舞われている気がするわね。

 

「……また全滅?」

 

「はい。物理的な罠に襲われたようです」

 

 物理的な罠か……。

 ちょっと厄介かもしれないわね。

 毒なら相性が最高だったけど、その手の罠への耐性はなかなか得られない。

 得られるけど微々たるものになるので、オーガたちのときと同じく長期戦が予想される。

 

「どんな罠?」

 

「大小さまざまな岩が落ちてきて、潰されたそうです」

 

「単純な罠ね……。でも、それだけに厄介だわ」

 

 岩に潰されても問題ない外殻を得るか、落下した岩を支える腕力を得るか。

 それか、落石を回避するだけの機動力を得るか。

 耐性と違って、身体能力の強化は微々たる量での成長となる。

 気長にやっていこう。その岩を対処できるようになったときは、戦闘もこなせるようになっているでしょうからね。

 

    ◇

 

「お、今日も来た」

 

「最近毎日来ますね」

 

 ダンジョンがそれだけ盛況というのもありがたいが、今日は新たな罠の検証もできるので、なおのことありがたい話だ。

 岩を対処できる昆虫人たち相手に、うちのダンジョンマスターさんも負けじと成長している。

 どちらの成長が上回っているかの勝負だな。

 

「転がる岩は……」

 

「まだそれなりの数を減らせてはいますが、対処できる昆虫人たちが増えてきているようです」

 

「そこは仕方がないと割り切ろう。本命は、こっちのほうだ」

 

 回避され、受け止められ、単純に耐えられ、俺の岩を各々の方法で対応する昆虫人たちもなかなかやる。

 だが、それだけでは今回は突破できないぞ。

 

「なんだあのえげつない曲がり方。回避した方向に、猛スピードで転がっていったぞぉ……」

 

「やるな。追尾岩」

 

 回避で対応していた昆虫人は、これで対応可能か。

 それに追尾の速度が思っていたよりも速かったため、結果的に威力が増しているのも嬉しいところだ。

 

「受け止められるかは、半々くらいって感じだな」

 

「はい。加速したことで、受け止めきれずにはねられている者たちも増えております」

 

 追尾岩の思わぬ成果だ。

 こっちは、逃げる相手を追い詰めるためだけに設置していたが、力で対処できる者にも有効だったとは。

 威力も増しているから、頑丈になった昆虫人にもダメージを与えられているのは嬉しい。

 

 このぶんだと、今日も岩だけで昆虫人を対処できそうだな。

 

    ◇

 

「情報伝達用の者以外は、全滅しました」

 

「また……? 毒と岩以外の脅威にやられたのかしら?」

 

「いえ、岩にやられました」

 

「耐性がうまくついて、岩の罠を対処できる兵隊が生まれていなかったかしら?」

 

 報告が誤っていた?

 それとも、まだまだ耐性が足りていない?

 

「新たな岩の罠は、高速でこちらを追撃するもので、回避も防御もできないものだったようです」

 

「ここにきて新しい罠……? はぁ……。また、その罠に適応できるまで根競べね」

 

    ◇

 

「良いな。昆虫人良いな。なんか、どんどん成長できている」

 

「……」

 

 フィオナ様が優しい表情を浮かべながら、無言で頭をなでてくれた。

 ……ちょっと、はしゃぎすぎたのかもしれない。

 ダンジョンに夢中になっていると、とかく子ども扱いされるからなあ……。

 

「その様子だと、もしかしてまた新しいメニューが追加されたのか?」

 

「ああ、今度は起爆岩っていうのが」

 

「もう不安な予感しかしねえよぉ……」

 

 俺は素敵な予感しかしないんだが。

 とにかくすぐに設置だ。どうせ今日も昆虫人は来るんだろ?

 なら、彼らが来る前にすぐに準備してしまわないと。

 

 そうして急いだ甲斐はあったらしい。

 昆虫人たちは、無事に岩の罠エリアまで到達してくれた。

 転がる岩は完全に対応できるように変異しているらしく、ここで脱落する者はいない。

 

 追尾岩のほうは……。なるほど、回避特化の昆虫人は後ろに下がったようだな。

 代わりに前に出たのは、特に頑丈そうな体をしている昆虫人。

 きっと、彼が盾になって岩の罠を受け止めようってことだ。

 

「……なるほど、地雷みたいだな」

 

「昆虫人が吹っ飛ばされたな」

 

「もう岩じゃねえだろ。あれぇ……」

 

 岩だよ。ちゃんと岩だった。

 ただ、近づいたら自動で爆発するだけの岩だ。

 良いなこれ。追尾岩と組み合わせたら、きっと昆虫人たちにもまだまだ通用するだろう。

 俺はそんな予感と共に、今回の検証結果にも満足するのだった。

 

 ……その間、フィオナ様がずっと優しい笑顔で頭をなでていてくれたので、きっと恥ずかしながら子供っぽい姿を見せてしまっていたようだ。

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