【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「岩の間」
「レイくん、拷問部屋でも作るの?」
「いや、俺じゃなくて力が勝手に」
「レイくん、やっぱりリピアネムみたいだよなぁ……」
「私とおそろいか!」
リグマの発言にリピアネムが尻尾を振る。
喜んでくれているところ悪いが、俺はリピアネムとは違うと思う。
力を制御できないのではなく、本当にダンジョンマスターさんが勝手にやっているだけなんだ。
「私もレイとおそろいが良いので、ちょっと力を暴走させてきます」
「行かないでください。というか、どこに行く気だったんですか」
ダンジョン内なら良いけれど、適当に人類の生息圏に出向いて力を暴走させたら、それこそ魔王の所業です。
フィオナ様がついに魔王として動いたと思われて、勇者たちが総動員されそうなのでやめてください。
「まあ、とりあえず新メニューが解禁されたので、作るか」
「岩の間かあ……。名前からして、レイくんが好きそうだよなあ」
岩の間作成:消費魔力 30
作成したはいいものの、残念ながらどんな仕掛けになっているかはわからなかった。
ゴブリンたちが志願したため、テストをしても良かったけれど、どうせなら本番で確認してみるとしよう。
念のため、その先で本気の岩トラップを仕掛けておいたから、もしもこの部屋が不発でも何も問題無い。
ちなみに、俺の予想では、色々な岩の罠が仕掛けられた部屋だと思う。
それを魔力30で作成できるのなら、かなりお得なコストだな。
たとえ、転がる岩が複数だっただけでも、消費魔力からすれば十分得している。
「というわけで、昆虫人を待とう」
「被検体扱いだねえ」
次はどれほど耐えられるようになっているかな。
向こうが成長する分、俺も成長するからお互い切磋琢磨しようじゃないか。
◇
「全部出た!」
「ええ、楽しそうで良いですね」
しまった。またフィオナ様に、慈愛の表情で頭をなでられてしまった。
だが、予想外にも岩系の罠のオールスター部屋となると、俺が興奮するのも仕方がないことだろう。
「見た目からでは、どの罠か判断できないのが恐ろしいな」
「はい。ただの落石なのか、転がるのか、追尾するのか、破裂するのか、私たちでも判断できませんでしたね」
俺にもできない。
なので、ある意味で岩ガシャみたいなものだ。
見ていてとても楽しい。
「これって、レイが岩に固執しているから、こんな部屋が作れるようになったのかなぁ?」
固執って……。もう少しかわいげのある言葉にしてもらいたいものだ。
だが、ピルカヤの発言は、俺も正解なんじゃないかと踏んでいる。
最近は、昆虫人たちのおかげで岩の罠をいっぱい作れたからな。
その集大成みたいな感じで、それらを詰め込んだ部屋が作れるようになったのだとしたら、納得もできる。
「今後新しい岩の罠を作れるようになった場合、あの部屋に追加されるのだろうか?」
「たしかに、それは気になるな。ちょっと新しい岩の罠の開発でも……」
「岩のダンジョンでも作る気かよぉ……」
罠のみのダンジョンか……。
いや、ゴーレムも配置できるな。
「それ、良いかもしれない」
「別に止めるほどでは無いけど、ボスとしてリグマでも配置できそうだなぁ」
「え、おじさんこんな大虐殺ダンジョンの主にされちゃうの? 大丈夫? 四天王が残虐だと勘違いされない?」
「その理屈だと、宰相が残虐だと思われているってことになってしまうんだけど……」
「良いんじゃない? レイも魔王軍らしくなってきて、何よりじゃない」
そうか。それなら喜んでおこう。
最初期メンバーのピルカヤがそう言ってくれるのなら、俺は完全に魔王軍に馴染めているってことだもんな。
「まあ、リグマがボスはさすがに駄目だから、良さそうなゴーレムが作れた時に、本格的に考えるとしよう」
「全部岩の間とかにすんなよなぁ……?」
「普通の部屋と混ぜることで、疑心暗鬼にするってことか。やるなアナンタ」
「え、あ……。俺、もうどうすればいいかわかんない……」
安心してくれ、そのあたりは俺やダスカロス、プリミラで詰めていくから。
岩のダンジョンか……。なかなか夢が広がるダンジョンじゃないか。
まあ、とりあえず今は後回しにした方が良いだろうな。
さすがに俺の趣味で、岩ばかりにかまけているわけにもいかない。
せっかく良いテストプレイヤーが来てくれているのだから、今まで考えていたものをできるかぎり試していこう。
「次は、エビとカニをステータス調整して作ってみるか」
「ああ、前に言っていたな。攻撃力を減少させる代わりに、耐久力を増加させたアイアンシザーズか」
「そう。それと、逆に耐久力を減らす代わりに、水鉄砲の火力を上げたエビ」
「レイさん。カニは攻撃力を無くしても、泡魔法で足止めができるようにすると良いと思います」
「江梨子ちゃん、海系のことになるとガンガン行くよねえ」
「なるほど……奥居の案も採用して作ってみるか」
硬い盾役のカニ、硬い妨害役のカニ、脆いアタッカーのエビ。
それらのチームによる戦闘は、相当に厄介なものになるはずだ。
◇
「ま、また全滅!?」
「はい……いえ、連絡役だけは帰ってきておりますが」
「それまでやられるようなら、いよいよ危険な状況じゃないの……」
何がいるの?
岩の罠はたしかに怖い。物理的なダメージは一番耐性がつきにくい。
状態異常、魔法、それらのほうがまだ楽といえる。
そんな岩の罠だって、これだけ何度も何度も挑めば、さすがに耐性はついたはず。
現に、すでにいくつかの手段で攻略できていたって話じゃない。
「岩の罠、そんなに厳しいの?」
「それもあります。ですが、本当に恐ろしいのは、こちらだけでなくあちらも徐々に強くなっているというところです」
あっちも強くなっている……?
まさか、成長しているってこと? ダンジョンが、こんな短期間で加速度的に?
話が違うじゃない……。
いえ、それよりは今まで本気じゃなかったというほうが、まだ納得できる気がする。
「底が見えないわね……。ちなみに、今度はどんな岩が出てきたっていうのかしら」
「部屋一つが、岩の罠だらけで、これまでの罠がランダムで発生するようです。何度か試したところ、配置も種類も部屋に入るごとに変わるようでして」
何その恐ろしい罠……。
というか、なんなのその岩へのこだわり……。
虫相手だから、絶対に潰してやろうという意思表示かしら。
「その部屋の攻略、まだまだ時間がかかりそうね……」
そもそも、耐性を得るのだって限度がある。
もしかしたら、その部屋への耐性を得られるまでの変異はできないかもしれない。
いよいよ、焦りすら生まれてきそう。
「もう一つお話が」
「……何かしら?」
ここで別の話ということは、絶対に悪い知らせなんでしょうね……。
話を聞いてみると、私の予感はやっぱり当たってしまっていた。
「岩の罠の部屋は、最近では無くなっているようです」
「……良い話?」
「岩の罠の部屋が無くなったこと自体はそうですが、問題はその後のことでして」
ほら、悪い話じゃない。
「今度は、ダンジョン内に水辺のフロアを発見したそうです」
「水辺ね……。でも、兵隊だって泳げはするでしょ?」
「問題は、その水辺のエリアに、巨大なカニやエビのモンスターが複数現れたことです」
「カニとエビ……」
「カニはとにかく堅牢で、簡単には突破できません。エビは、後方から強力な水圧レーザーを発射するそうです」
「何よそれ……」
岩だけじゃなくて、モンスターまでそんななの?
ダンジョン探索、もう完全に諦めたほうが良いわね。
ただ、それでも私はダンジョンに兵隊を送り続ける。
ダンジョン探索というか攻略は、あくまでも努力目標だ。
本来の目標は、度重なる変異による兵隊の成長。
たとえここで何度失っても、最終的に強力な兵隊ができればそれでいい。
ただ……もしも、それで兵隊が完成しても、ダンジョンに下手に手出しできない気がしてきたわ……。