【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第38話 私の畑にミューテーションが起きました

「さっすがレイく~ん!!」

 

 おっさんスライムが抱きつく寸前の勢いで感謝してきた。思いとどまってくれて助かったけど、抱きつかれていたら案外ゼリーみたいな感触だったりするんだろうか。

 うん。なんか悪かったってば。それほど作業を押しつけてしまって。

 

「ええ、さすがはレイ様です。すばらしいモンスターたちを提供いただき、ありがとうございます」

 

「いやあ……プリミラの畑へのこだわり甘くみてたわ~。俺だってピルカヤと同じで、分身増やすほどに精密な動作はできなくなるってのに、容赦ないんだもんなあ」

 

 プリミラの意外な一面を見た気がする。

 いや、普段の姿から考えても、むしろ完璧にこなすのは当然かもしれないが。

 

「成長速度が従来に比べて非常に速いようです。それに、土への養分までしっかり管理されています。魔力の実を大量生産できそうですね」

 

 きっとテンションが上がっているんだろうな。

 ふだんよりもわずかに声は大きいし、感情もこもっている。

 

「その実から魔力回復薬が作れるんだよな。どのくらいの効果になるの?」

 

「残念ながら、魔王様はおろかピルカヤ様やリグマ様の魔力を全快させるのも難しいです」

 

「魔王ですから」

 

「四天王だからね~」

 

「おじさんですから」

 

 最後関係ないぞ。しかし、リグマでも無理となるとプリミラも同じだな。

 だけど、さすがにフィオナ様と違って何本も飲めば全快もできるだろう。

 回復量が一桁とかではない限りは。

 

「数値にしたらどんなもんなの?」

 

「数値って……君、難しいこと聞いてくるねえ。自分の魔力がいくらかなんて、そう簡単にはわかるもんじゃないよ」

 

「ああでも、前に魔力の実から作った回復薬は、三本ほど飲めば全快した気がするな」

 

「つまり、フィオナ様以外ならだいたい三分の一ほど回復できるわけか」

 

 ということは、40前後かな?

 一番魔力が高いピルカヤを基準に考えるとの話だけど。

 

「また仲間外れ……」

 

「大丈夫です。二百五十本ほど飲めば、フィオナ様も回復できそうなので」

 

「そ、そんなに飲めと!? ……いえ、でもそれで宝箱が一つ完成するのなら……いけますね」

 

「行かないでください。そんなに大量生産はできません」

 

 どこに行こうとしたのかわからないが、フィオナ様はプリミラに首根っこを掴まれた。

 これが魔王か……。いや、ちゃんとするべきときは、もうちょっとしっかりしてるからいいのか。

 

「それなら、四天王に何本か持ってもらうのがよさそうだな。特にピルカヤには」

 

「オッケー。これで魔力切れを気にせずに戦えるね」

 

「ピルカヤ……。ここに一つ宝箱があるのですが、ちょっと魔力を注入してみませんか?」

 

「魔王様。配下を悪の道に誘うのはやめてください」

 

 魔王なのに、悪事を咎められるとはどういうことなんだろう。

 ……おっと、まだ人間のときの感覚でものを考えてしまう。

 これじゃあ、魔族というだけで俺を殺そうとした連中と変わらないし、気をつけないとな。

 

「というか、ボクの魔力じゃ蘇生薬出ないんじゃないですかねえ……」

 

「むむむ……やはり、自分の道は自分で切り開くしかないようですね」

 

 言ってることはいいのだけど、その道がただのガシャ中毒者の考えなのがとてもフィオナ様だ。

 呆れながら畑に戻ったプリミラのせいで、この後しばらくフィオナ様を慰めることになったのだが、怒られないだけましだったと思いますよ?

 

    ◇

 

「……さすがはレイ様です」

 

「いや、俺は本当に何もしてないんたけど……」

 

 プリミラに呼ばれてついていくと、そこには作成した畑とそこで働くモンスターたちがいた。

 いや、今は働いていない。

 

 別に休憩中だとか、ましてやサボっているというわけではない。

 やることがなくなってしまっているのだ。

 なぜなら、すでに畑にはたくさんの実ができあがっているのだから。

 

「こんなに早くに実がなるのってやっぱり普通じゃないんだよな?」

 

「ええ、それに大きさもここまでのものは初めて見ます」

 

「普通はリンゴくらいの大きさだよねえ」

 

「スイカくらいの大きさになっているな。大味になっていないかが心配だが、まあどうせ薬にするしな」

 

 う~ん。なんだか異常な成長をしてしまったらしい。

 たぶんフェアリーやゴーレムががんばってくれたんだろうな。

 

「むしろ大きくなったためか、内包する魔力量は増えているようですね」

 

 フィオナ様が補足するも俺にはわからない。

 さすがにステータスで確認できないし、こればかりは俺には感知しようがないな。

 

「では、試しに薬にしてみましょう」

 

「プリミラってそんなこともできるのか。なんでもできるんだな」

 

「いいえ。肝心の魔王様を守るという役目は果たせず、拠点の復興もレイ様任せです。なので、私にもできることをしているだけですよ」

 

 そのできることがずいぶんと多そうだが、プリミラはプリミラで思うところがあるようだ。

 ピルカヤも魔王様のためと言いながら自分の仕事を探しているようだし、リグマだって本質はサボりたがるタイプなのに宿や畑で一番働いていた。

 そう考えると、フィオナ様って部下に好かれているよなあ。

 

「……もしも、あの巨大な魔力の実でこれまで以上の魔力回復薬が作れたら、一日に三、いや五、もしかしたら十なんて数の宝箱が」

 

 ……こういうところを心配されて、みんながフィオナ様のために働こうとするのかもしれない。

 実力は桁違いだというのに、フィオナ様は今日も順調に残念であらせられた。

 

「水魔法で魔力の実を潰して、濃縮した魔力を水に取り込んだら出来上がりです」

 

「……なんか、破壊の限りを尽くしているような光景だな」

 

「この水は私の支配下なので、従来と違って漏れなく魔力を吸収できるのです」

 

 突然プリミラが暴れているように見えたが、他のみんなは平然としているのであれがプリミラなりの薬の作り方なんだろう。

 水を思いのままに操れるからこその方法か……。

 

「もしかして、リグマも同じことできるの? スライムだし」

 

「えぇ……俺の体に入った薬なんて飲みたいか? しかも俺水銀だぞ」

 

「死んじゃうね」

 

「死んじゃうだろうなあ」

 

 リグマの分体を瓶に少量詰めて、宝箱の中に入れておく罠とかどうだろう……。

 いや、そんな極悪な罠が周知されてしまったら、ダンジョンに挑む者が減ってしまいそうだな。

 

「できました。では、レイ様どうぞ」

 

「俺? ピルカヤに飲んでもらった方がわかりやすいんじゃない?」

 

「レイ様のおかげでできた薬ですから、最初はレイ様がどうぞ」

 

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

 今の魔力は5。最大魔力は38。

 ふつうの魔力回復薬なら、最大魔力まで一気に回復できるはずだ。

 

 数値を確認してから薬を飲む。

 味は案外おいしい。薬と言われて想像していた味と違って、普通に果実のジュースみたいだ。

 

「さて、魔力は……」

 

 和泉(いずみ)(れい) 魔力:105 筋力:16 技術:25 頑強:24 敏捷:17

 

 絶対おかしいよね。

 なに? バグった? 変なアイテム使ったせいでついにバグったのか?

 

「ど、どうしました? レイ。なんだか目に見えてうろたえていますが」

 

「もしかして体に異変が? 申し訳ありません。私の薬のせいで……」

 

「いや、なんか俺の本来の魔力以上に回復してるみたいなんですけど……」

 

 突如俺の力が目覚めて、魔力が100を超えたとかではないだろう。

 なら、俺の魔力は元の数値のままで、あの薬で一時的に増加したと考えるのが無難だ。

 これ、魔力を消費したらどうなるんだろう。

 

「宝箱作成」

 

「あ、宝箱」

 

「それフィオナ様にあげます」

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

 消費魔力は5だ。俺の予想どおりなら、数値は……。

 

 和泉(いずみ)(れい) 魔力:100 筋力:16 技術:25 頑強:24 敏捷:17

 

 なるほどな。やはり最大値を超えてしまっていたということのようだ。

 使えばその分は減っていく。おそらく本来の38以下になった場合は、表記はそのままになるだろう。

 ……これ、ダンジョンを思うがままにカスタマイズできるんじゃないか?

 

「ああ!? ……わ、私の宝箱が……」

 

 フィオナ様の悲鳴に振り向くと、先ほど渡した宝箱が光となって消えてしまっていた。

 なんだあれ。あんな状況初めてだぞ。

 もしかして、最大値以上の魔力を使ったせいで、一定時間が経過したら消滅するようになったのか?

 そうなると前言撤回だな。残念ながら、ダンジョンの構築にこの魔力を使用するわけにはいかなそうだ……。

 

 道や部屋を作っておけば侵入者を生き埋めにできたりするか?

 いや、トラップならわりと間に合ってるし、わざわざ毎回この薬を飲んでそんなものを作る必要もないか。

 

 うなだれるフィオナ様を見て、俺はとりあえず過剰魔力をすべて消費してから、再び宝箱を献上するのだった。

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