【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第380話 知らず知らずのマーキング

「今度は、ダンジョン内の施設の方を嗅ぎ回っている。と」

 

「ただ、それにしては、何の駆け引きもなくてつまんなかったぜ」

 

 ロペスは、口をとがらせて不満そうに言った。

 駆け引きもないというのなら、楽そうでいいじゃないか。

 

「簡単に向こうの情報を引き出せたってことか?」

 

「というか、勝手に全部喋った。女王の命令で、有力な転生者や戦力を探しているんだとさ」

 

「転生者か……。戦力ってことは、オーガも引き続き探しているんだろうな」

 

「そっちも馬鹿正直に聞いてきたぜ? まあ、簡単にごまかせたんだけどな」

 

 ロペスは、やはり不満そうに言うのだった。

 やれやれと大げさなリアクションをするあたり、本気で拍子抜けだったんだろうな。

 

「楽に聞き出せたのなら、良いことじゃないか?」

 

「ボスだって、侵入者は手強いほうが好みだろ? 入り口で全滅されたら、拍子抜けじゃないかい?」

 

「なるほど、わかりやすい」

 

 ある程度の達成感のためには、敵も歯ごたえがないと駄目だからな。

 そうしなければ腕も鈍るし、成長も見込めない。

 

「まあ、あの病の転生者みたいなのよりは、マシじゃないか?」

 

「ありゃあ、想定する限りで最悪だからな……。さすがに、あれとの比較は昆虫人が不憫だぜ?」

 

 手強いという意味では、話を聞かずに自分のペースを貫くのは、相当に手強いだろう。

 だが、あれは真正面から相手にしてはいけない類の人間だったもんな。

 

「オクイのほうにも聞きに行っていたが、簡単に引き下がるあたり、本当に命令で動いているって印象だったぜ」

 

「となると、兵隊はあくまでも材料を集めているだけで、それらを吟味するのはもっと上の者たちってことだろうな」

 

「ああ、女王とやらがその役割なのかもな」

 

 女王といえば……。

 うちの女王様たちの話だ。まずは、ダークエルフのほうから、尋ねてみるか。

 

「こっちの女王様は、なんでロペスを睨んでいるんだ?」

 

「っ! 失礼いたしました。魔王様と宰相様の御前で」

 

「いや、俺たちは睨まれてないから良いんだけど、ロペスと喧嘩でもしたの?」

 

「ボス……。俺にもよくわからねえんだ」

 

 クララもロペスもいつもどおりの態度だが、なんか一方的にクララがロペスをねめつけているように見える。

 これは、何か失言でもしたか? 種族特有の文化の違いとかで。

 

「いや、女王とやらにずいぶん期待しているし、ご執心と思ってね。私も一応は女王だし、それなりに知恵はあると思うんだが?」

 

「……いや、俺は別に昆虫人が好みとか、そういうんじゃねえんだけど」

 

「どうだかねえ。なんせ、開口一番にナンパなんて言うほどだからねえ」

 

 なるほど。

 つまりクララは、ロペスの軽率な態度が気に食わないわけだ。

 だけど、それはロペスの個性だし、俺は嫌いではないんだけどなあ。

 女性からしたら、軽薄な男に見えるのだろうか?

 

「とりあえず、二人が仲違いするのはまずいな……」

 

「いや、俺たちは別に……」

 

「部屋作成」

 

「ボス!?」

 

 とりあえず、部屋を作った。

 思うに、クララもロペスも、本心から互いをうとましく思っているわけではない。

 ちょっとしたすれ違いということだろう。

 ならば、腹を割って話せば解決すると見た。

 

「とりあえず、仲直りするまで二人でそこで話し合いしておいてくれ」

 

「ボス? 本気……みたいだな」

 

「かしこまりました。ほら、行くよ。この唐変木!」

 

 クララは乗り気みたいだし、きっとうまいこと話し合ってくれるだろう。

 ああ、あとこれも忘れていた。

 

「壁作成」

 

「ボス!? 扉が開かなくなったんだけど!?」

 

「仲直りしたら、ピルカヤに知らせてくれ。それまでは出られないようにしておくから」

 

「ま、まじかぁ……」

 

 悪いな。お前らが争ったままだと、今後のダンジョンの運営に支障をきたしそうなんだ。

 食事やトイレ等で困ることになる前に、なんとか仲直りしてほしいものだ。

 さすがに、それが必要になったら壁を撤去するしかないが……。

 

    ◇

 

「さて、二人は放っておくとして、これで一通り今日の仕事は終わりか」

 

 女王のうち片方が片付いたので、もう一人の女王もとい魔王の相手をしなければ。

 仕事中は邪魔をしないように、そわそわとひっついていたからな。

 

「終わりましたね。では、魔王にかまう時間です」

 

 犬かな? 犬っぽいな。

 たまにフィオナ様に、犬が好きかと聞かれる気がするけれど、それってむしろフィオナ様が好きだから、犬も好きになっている可能性があるのでは?

 

「フィオナ様って、昆虫人の狙いがわかりますか?」

 

「兵隊の強化と、この世界で生きていくための戦力増強ですね」

 

 すんなりと答えが出た。

 さすがは魔王だ。長年この世界で人類と渡り合っているだけのことがある。

 

「こちらを嗅ぎ回っていて、きな臭い気がしましたが、わりと想定内の狙いなんですかね?」

 

「う~ん。もしかしたら、転生者を欲しがっている可能性はありますね」

 

 ……まあ、ロペスたちは優秀だし、リズワンのように引き抜こうとしている可能性はあるか。

 それにしても……。

 

「臭いですか?」

 

「いえ、レイの匂いですね。私は好きです」

 

 俺の頭に顔を埋めて匂いを嗅がれると、体臭を気にしてしまう。

 

「なんでまた、急に匂いを嗅いでいるんですか……」

 

「嗅ぎ回るとか、きな臭いとか、匂いに関する発言が聞こえたので、せっかくですし吸ってみました」

 

 何がせっかくなのかはわからないが、悪臭でないのなら良いと思うべきか。

 それにしても、俺の匂いなんて良いものではないだろう。

 いくら嗅いでも、それは変わらないと思うのですが……。

 

「その行為は、どうかと思いますけどねえ」

 

「嫌でしたか? では、やめますが」

 

「嫌ではありませんが、そんなに良いものでもないでしょう。俺の匂いを吸ったところで、何になるんですか?」

 

「ふむ……。説明が難しいので、レイも吸ってみればいいんじゃないですか?」

 

 俺もって……頭は無理だから、腕の匂いでも嗅いでみるか?

 一応、毎日温泉に入っているから、臭くはないが、特段良い匂いでもない。

 

「さあ、どうぞ」

 

 何が!?

 フィオナ様は、気づけば俺の頭から顔を離していた。

 少し屈んで、頭を俺の顔の近くに持ってきている。

 いつもなら、なでろってことなんだろうけど……話の流れからすると、違うよな。

 

「吸って良いですよ?」

 

「え~……」

 

「嫌なんですか?」

 

「吸います」

 

 嫌じゃない。俺にも恥じらいというものがあるだけだ。

 だけど、ちょっとした圧力を感じたため、意固地になることすら許されなかった。

 

「絵面が変態的で困りますけど……失礼します」

 

「どんと来なさい」

 

 ……まあ、良い匂いだよな。

 知っている。大体、いつも一緒に寝ているときは、この匂いすら誘惑の要因の一つなのだから、誰よりも知っていると言えよう。

 だけど、こうして集中して嗅ぐこと自体は初めてかもしれない。

 ……ここで慣れておけば、寝るときの誘惑が一つ減るのでは?

 

「レイ? あの、レイ? なんか思ってたより、これ恥ずかしいですね。レイ? レイ~?」

 

 何だいまさら。俺だってわりと恥ずかしいんですが?

 始めた以上、もうどうにでもなればいいと吹っ切れた。

 ならば、せめてこの匂いに慣れておくとしようじゃないか。

 

「……なんか、さっきと匂いが変わってきた気がします」

 

「へ、変態! 汗ですけど!? レイが、夢中になるから魔王が汗をかいてるだけですけど!?」

 

「……なんかすみません」

 

「いえ! 私が許可したことですし、私も言い過ぎました!」

 

 顔真っ赤ですね。さすがのフィオナ様も恥ずかしかったのか、火照った顔はわずかに汗をかいていた。

 これは、危険だな。さすがに今後はやめておこう。

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