【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第382話 金と銀は決定している

「今日は抱きついてきますね」

 

「そう言うレイも、すんなりと受け入れているじゃないですか」

 

「それはまあ……」

 

「ふっ……勝ちました」

 

 事実言い返せない俺の負けか……。

 ドヤ顔がアホっぽくてかわいいじゃないか。

 まあ、昨日はほとんど一緒に過ごせなかったし、今日はその分べたべたされても良いだろう。

 

「ところで、今日もお仕事はいつも通りですか?」

 

「そうですねえ。昆虫人たちは相変わらず動きを見せませんし、いつもの侵入者たちの相手といつものお客さんの相手ですね」

 

「ふむ。停滞したと考えるべきか、安定したと考えるべきか、微妙なところでしょうか」

 

「ですねえ」

 

 問題が解決したうえでいつもどおりなら、安定した日常と喜べるんですけどね。

 相手が水面下で何をしているかわからない以上は、手放しで喜べない。

 

「とはいえ、できることが無いのも事実です」

 

「と言うわりには、案外色々とやっているようですが?」

 

「いえ、これはいつものダンジョン作りの一環ですので」

 

「アナンタが苦労しそうですねえ」

 

 罠とモンスターの補充、ダンジョンの拡張や改築。

 それに加えて、最近は超位モンスターガシャを少々回しているだけだ。

 今までは、モンスターガシャよりも、新たな罠やダンジョン施設に重きを置いていたが、最近ではモンスターを優先している。

 単純に戦力を増強できるというのもあるが、解禁されてまだまだ試行回数が少ないからな。

 どんなモンスターを作成できるのか、気になっているのだ。

 

「ちなみに、どの子が一番強いですか?」

 

「う~ん……。なかなか難しい質問ですね。ステータスだけでは、わからない部分も多いですし」

 

「ソウルイーターとかもがんばっていますし、いっそのこと最強をわかりやすくしてもいいのかもしれませんね」

 

「なるほど……モンスターだけでなく、魔王軍も交えて考えてみますか」

 

 わりと戦闘好きなやつが多いし、ここらで一つ実力を測定するのも良いのかもしれないな。

 

    ◇

 

「ということで、魔王軍内なら人種問わずに誰でも参加できるようにしようと思う」

 

「さっすがレイ様! 僕、リピアネム様に殺されたいです!」

 

「殺すのは無しで」

 

「うむ。完膚なきまでに叩きのめしてやろう」

 

 と言っても、さすがに四天王や十魔将はある程度自重してもらうつもりだ。

 今回はそれらの実力者よりも、モンスターや一般魔族、従業員あたりの実力を測るのが目的だからな。

 

「希望者はこっちに来てくれ。賞品もあるぞ~」

 

「ゆる~く言ってるけど、わりと勇気がいる選択なんだよなあ」

 

「オーガたちは全員並んでるぞ?」

 

「あいつらは、もうなんか馬鹿だもん」

 

 馬鹿ではなく、戦いがとにかく好きなだけだと思うぞ。

 要するにイピレティスから、変態成分をだいぶ減らしたようなものだ。

 

「獣人の従業員とかわりと多いし、やってみるか? 怪我してもすぐ治るぞ」

 

「そういうことなら……ちょっと、自分の実力がどこまで通用するのかも気になりますし」

 

「悪魔の勧誘だな。おい」

 

 リグマがさっきから失礼だ。

 まるでアナンタのようだ。と思ったが、そういえば、そもそもアナンタの本体だもんな。

 当のアナンタは、両手で目を塞いでいる。

 ダンジョンに関することではないから、今回は特に口出ししてこないというわけか。

 

「ということで、まずはソウルイーターと風間の戦いだな」

 

「タケミ……。お前、なんで参加しちゃうんだよ」

 

「武巳くん、努力家だからね」

 

「戦闘経験を積む良い機会だって、言っていたわ」

 

 風間もだいぶ強くなっているからなあ。

 これは、ソウルイーターも油断していたら危ういかもしれない……。

 こともなかったな。

 

「武巳く~ん!」

 

「言わんこっちゃない……。新、治してあげて」

 

 まだ早かったか。

 だけど、ソウルイーターの突進を多少受け止めただけでも、風間の成長はたしかなものだと思う。

 あとで、なんか賞品を渡してやらないとな。

 

「次はドリュとセルケトな」

 

「あの……宰相様。超位モンスター相手は、荷が重いのですが……」

 

「大丈夫、ステータスだけ見れば互角だから。それに、百足とサソリだし」

 

「後半はまったく意味がわからないんですけど!?」

 

 なんかわからないか? カテゴリ的には、同じように分類されると思うんだけど。

 

「というわけで、二人ともがんばってくれ~」

 

 ツッコミ気質のドリュではあるが、試合が始まるとさすがに表情も真剣になる。

 俺としては、まだまだ経験不足なセルケトの分が悪いと思っている。

 なので、ここはドリュとの戦闘で何かを学び取ってもらいたいところだ。

 

 巨大な体で敵を威圧し、ハサミや尾で豪快に攻撃をするが、ドリュはそれをいなしている。

 敏捷はわずかに1だけといえ、セルケトが上回っているはずなんだけどなあ。

 技術に差がありすぎると、こうなってしまうのか。

 

「か、勝ちました……」

 

「ああ、おめでとう。それじゃあ、賞品は奮発しないとな」

 

「恐縮です……」

 

「セルケトもがんばったな。ちょっとごり押し気味になっていたから、ドリュみたいに上手く立ち回れるよう心がけてみようか」

 

 心なしか、セルケトは大きな体を縮めて落ち込んでいる。

 ドリュもそれを見て、慰めるようにしているし、両者に絆が芽生えたのかもしれない。

 

「こんなふうに実戦経験を積んで強くなれるから、獣人や他の従業員も次回は参加してくれても良いぞ」

 

「隙あらば巻き込もうとするんだもんなあ」

 

「人材の育成は、いつだって必要だから」

 

「レイくんが宰相としてがんばってくれて何よりだよ」

 

 さて、続いてはナツラとケルベロスか。

 これは、だいぶケルベロスが不利だなあ。

 ステータスが単純に大きく開いてしまっている。

 ナツラは十魔将クラス。対する超位モンスターはそれより一歩劣る。

 ディキティスの直属の部下である、エリート一般魔族くらいだ。

 

「……瞬殺だった」

 

「死んではいないけれど、わりと完封気味だったな」

 

 ケルベロスは、先ほどのセルケト以上に落ち込んでしまっている。

 とりあえず三つの頭をなでておいてあげよう。

 ……なんか、マギレマさんの犬たちが騒がしくなってきた。

 駄目だぞ。今回はマギレマさんの意向で、お前たちはこの催しものには参加していない。

 飛び入りの乱入なんて、マギレマさんに迷惑をかけるからやめておきなさい。

 

「私は、犬系の種族相手の対策は特に練っているからな。相性が良かった」

 

「へえ。虫系ならともかく、犬系なんだ」

 

「ええ。不甲斐ない戦いを見せたくない相手がいまして」

 

 マギレマさんかな? いずれ、彼女が今回みたいなイベントに参加したときは、優先的に戦わせてあげるべきなのかもしれない。

 

「対策して努力すれば、ナツラみたいに強くなれる。というわけで、今回参加しなかったドワーフたちも、気兼ねなく参加していいぞ」

 

「レイくんは、地底魔界バトルロイヤルでも開催したいの?」

 

「それだと、リピアネムが全てをなぎ倒すから駄目だ」

 

 次は、クラーケンとウルラガか……。

 う~ん。ますますもって実力差が開いている。

 ウルラガだけでなく、カーマルやアナンタにガナも、リグマの分体だもんなあ。

 ステータスだけを見ると、十魔将より上なのが恐ろしいところだ。

 それ以外の分体はそうでもないことを考えると、別人格と呼べる彼らだけが特別な成長をしているのだろう。

 

「まあ、不利な場とはいえ、そう簡単に負けてはやれねえな」

 

「クラーケンどうだった?」

 

「良いね。戦いがいがあって、ここ最近では一番満足できたぜ」

 

「だってさ。良かったなクラーケン」

 

 だが、クラーケンは円状の口に並んだ鋭い牙で、ウルラガを威嚇していた。

 まだまだ闘志は燃えているみたいだな。

 ウルラガも、そんな姿を見て不快に思うどころか笑っている。

 

「クラーケンみたいに戦う気があれば、きっともっと強くなれるぞ。だから、人間の従業員たちも気が向いたら参加してくれ」

 

「合間合間に宣伝を忘れないんだよなあ」

 

 さて、さっきからずっと尻尾を振って、やる気を満ちている彼女の出番だ。

 

「リピアネム」

 

「うむ!」

 

「ハイドラを鍛えてやってくれ」

 

「心得た」

 

 リピアネムから、お馬鹿な犬みたいな気配が消滅する。

 戦闘に臨む以上は、訓練だろうとイベントだろうと真剣に行うのが、彼女なりの矜持なのかもしれないな。

 ふだんからこれなら、頼れるお姉さんって感じなのだが……まあ、アホなリピアネムも俺は嫌いではない。

 

「再生能力はさすがのものだが、限度がある点はアナンタに劣るか」

 

「ハイドラの首って、有限だったんだな」

 

 終わってみれば、どの試合よりも早かった。

 再生能力とその巨体による生命力で、時間だけならかなりかかると思ったのだが、それ以上にリピアネムが速すぎた。

 ハイドラは、一本だけ残った首をうなだらせて、それでもリピアネムから何かを学ぼうとしているようだった。

 

    ◇

 

「まあ、リピアネムが最強なのは想定内か」

 

「どうだ! 私は強かったろう?」

 

「うん、よくがんばった。リピアネムだけでなく全員だけどな」

 

 なかなか悪くないイベントだったかもしれない。

 各自の戦闘訓練になる。俺自身もみんなの強さを見ることができる。戦い好きな者たちは、単純に楽しんでいる。

 今後は、定期的にお祭り騒ぎのイベントとするのも悪くないかもしれない。

 

「あとは、この結果を踏まえて今後のダンジョン作りに活かしてみるか」

 

「活かせよ? 難易度上げるだけは駄目だからなぁ?」

 

「……」

 

「返事ぃ!」

 

「しょうがないなあ……」

 

 せっかくみんなの強みがわかったのに、ポテンシャルをフルで発揮させられないとは、なんとも歯がゆいものだ。

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