【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

383 / 460
第383話 とかく趣味に走る祭りが多い

「強くなるためには、日々の訓練が必要だと思う」

 

「それはわかります」

 

「元々、みんなのレベルアップをするために、オーガや昆虫人たち相手のダンジョンを作っていた」

 

「それもわかります」

 

「だけど、オーガは身内になって、昆虫人は消息不明。となると、あとはもうみんながダンジョンに潜るしかないと思うんだ」

 

「それがわかりません!」

 

 なぜだ……。とてもわかりやすいじゃないか。

 だが、無理強いするのは良くないな。

 一応説明したうえで、もう一度参加者を募ってみよう。

 

「魔王軍での戦闘イベントによって、魔族もモンスターもそれ以外の種族も、何らかの成長はできたと思っている。だから、ダンジョン探索をすることで、さらなる成長をしてもらいたいんだ」

 

「う~ん……。言いたいことはわかるのですが、俺たち死んじゃいません?」

 

「死なないように加減するから大丈夫」

 

「なら良い……のでしょうか?」

 

 よし、ドリュは徐々にやる気になってくれている。

 アスピダやファギトも、やってみるかと言っているし、案外みんなが参加してくれそうだな。

 

「ただ、普通に侵入するだけでなく、みんなで競い合えるようにも考えている」

 

「互いに妨害し合うということですか?」

 

「いや、踏破までのスピードを競ってもらおうかなと思って」

 

 要するにタイムアタックだ。

 クリアできる者も多いだろうし、その中で一番早かった者に何か賞品でも出そう。

 そうすれば、みんなやる気が出るんじゃないか?

 

 ただ、ダンジョンのテストも兼ねるとすると、単独だけでなく複数人での挑戦結果も見てみたい。

 そこは、各自で判断してもらうか。

 腕に自信がある者は一人で、集団戦を得意とする者は複数人で挑んでもらおう。

 

「ダンジョンタイムアタックを開催しようと思う」

 

「地獄みたいなイベント開いてんじゃねえよぉ!」

 

「あ、アナンタ」

 

「全然、悪びれなくなってるなぁ! お前はぁ!」

 

 う~ん……。戦闘イベントでは口出ししなかったのに、やはりダンジョンとなると身内だけでも口出ししてしまうのか。

 まったく、アナンタのダンジョン好きにも困ったものだな。

 

「おい、なんか絶対変なこと考えてんだろぉ。お前ぇ」

 

「大丈夫。身内ってこともあるし、今回はゆるくやっていくから」

 

「全然信用できねえんだよなぁ……」

 

 宰相だぞ。信じてもらえなかったら、魔王軍が成り立たない。

 まあ、隣で見てくれたらいいさ。

 俺だって、ちゃんと死なないように手加減できるんだ。

 

「さて、そういうわけで参加者を集めて、ダンジョンタイムアタックを始めよう」

 

「ちなみに、どのダンジョンを使用されるのでしょうか?」

 

「専用の新しいダンジョンを作ったよ。今稼働しているダンジョンを、下手にいじるわけにはいかないからな」

 

「お前、俺に隠れてそんなことまで……」

 

 いや、これの監修はいらないだろ?

 侵入者を生かさず殺さずというバランス調整は不要だ。

 ある程度、訓練になる程度の塩梅というのなら、俺一人でも大丈夫だって。

 おい、なんでピルカヤに頼んで内見しようとしているんだよ。

 

「信用無いなあ……」

 

「これが俺の仕事だ」

 

 仕事熱心め。俺の作品に恐れおののくがいい。

 

「……う~ん。一見すると、たしかに自重はしてるみたいだなぁ」

 

「ほら見ろ! 俺だってできるんだ」

 

「なら、いつもやれよぉ」

 

 それはほら、倒す必要もある敵だからさ。

 そうなってくると、バランス調整も一気に難しくなるんだよ。

 大体、身内ならある程度の実力を理解できているからこそ、調整も簡単なんだ。

 

「じゃあ、ダンジョンに向かわせるとするかぁ」

 

 アナンタまでそう言ったことで、一部の一般魔族のみんなが覚悟を決めたような顔をしていた。

 大丈夫、みんな強くなれるから。後々これが役立つ日が来ると思うから。

 

    ◇

 

「宰相様。思いついたことを実践する傾向にあるんだよな……」

 

「いや、さすがの宰相様も、一朝一夕でダンジョンを作れまい。ということであれば、前々から準備していたということだろう」

 

「たしかに……いや、そのほうが恐ろしいぞ」

 

「そうか? 私は、こうも理想的な上司ができるとは思っていなかったが」

 

 お前らオーガは、宰相様と相性良いからなあ。

 それにしても、族長であるはずのナツラが、魔族側の集団の一員となっているのもおかしな話だ。

 こいつの部下、みんなディキティス様のもとで行動しているから、だいぶ身軽になったと笑っているし、やっぱりオーガってよくわからない。

 

「さて、雪辱戦のようだな。であれば、私は手出ししないようにしよう」

 

「え?」

 

 そう言ってナツラは後ろに下がってしまった。

 雪辱戦? 何が見えているんだ?

 そう思ったのもつかの間、ダンジョンの奥からは巨大なモンスターが近づく音が俺にも聞こえた。

 

「先日はお前の勝ちだったな、ドリュ。だが、相手もそれだけで終わるわけではないようだ」

 

 わかっている。

 その言葉を聞かずとも、すでに俺の目の前には巨大なサソリのモンスターが見えているのだから……。

 

「セルケトがいるんですが!?」

 

『ああ、やる気だな。セルケトのやつ』

 

 思わず宰相様に叫ぶと、感心した雰囲気の声が返ってきた。

 あれ、この様子だと、宰相様も知らなかったのか?

 

「え……。もしかして、勝手にダンジョンにやってきたんですか?」

 

『いや、俺が配置した』

 

「なんで、そんな他人事みたいな態度をとれるんでしょうか!?」

 

 この魔族、思考と感情と行動が、たまにバラバラになっているんじゃないかと思う。

 ロペスあたりは、そこが恐ろしくも頼もしいところだと言っていたっけ……。

 

「ああ、もう! わかった、わかった! 急かすな!」

 

 セルケトのやつは、俺に不意打ちを仕掛けてくることはない。

 ハサミを開いては閉じて、金属が打ち合うような音が聞こえてくる。

 正々堂々と戦って勝ちたいってことか……。

 まったく、ストイックなやつだよな。主人に似たのか。

 

「悪いが、俺もまだまだ負けてやるわけにはいかないんだ」

 

 そうして俺は、思っていた以上に早いセルケトとの再戦に身を投じることにした。

 こいつ……前回の戦いから学んで成長している。

 なるほど。またいつものとんでもない提案かと思ったが、なかなかどうしてためになる。

 宰相様、やってることは意外と正しいんだよなあ……。

 

「良い戦いだった。あれでまだ戦闘経験が不足しているというのだから、モンスターたちも面白いものだな」

 

「そのうち、あっさりと追い越されそうで恐ろしいけどな」

 

「ならば、貴様も強くなれば良い。戦闘訓練ならばいつでも付き合うぞ?」

 

「考えておく……」

 

 こいつはこいつで、あのマギレマ様と同等の強さらしいからなあ。

 しかも、一度完膚なきまでに叩きのめされたにも関わらず、あの方に追いつくために努力して得た力らしい。

 ……俺もまだまだ精進が必要か。勇者にあっさりと殺されて終わりでは、あまりにも情けない。

 強くなることで魔王軍に貢献しなければ……。

 

 だが、なぜだろう。

 強くなったらなったで、なんか今以上に苦労が増えそうな予感がしてしまうのは。

 

「ケルベロスいるじゃないですか!」

 

『みんなやる気なんだよなあ』

 

「だからなんで他人事なんですか!」

 

 俺たちがいくら強くなったとしても、きっとこの宰相様に振り回されるのは変わらないのだろう。

 

「セルケトがドリュへの雪辱を果たそうとしたということは、貴様はやはり私か」

 

「……加減してやれよ」

 

「無理だな。それは挑んでくる者への侮辱だ」

 

 その宣言通り、ケルベロスはまたもナツラにぼこぼこにされていた。

 だが、最後まで闘志は失われていない。

 先のことを考えるよりも、こいつらのことを見習うべきなのかもしれないな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。