【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「きつかった……」
「そうか? 毎日でもやりたいくらいなんだが」
「お前らやっぱりおかしいって……」
ふむ。ダンジョンタイムアタックは、なかなか評価がばらけているな。
というか、一部のやばい連中以外には、あまり好評ではないか。
これを良しとするのは、俺とリピアネムとウルラガとディキティスとイピレティスとオーガとモンスターくらいだろうな。
獣人も、わりと参加してくれたので、やはり戦い好き種族だと思っていたのだが、残念ながらあまり良い評価ではないようだ。
「でも、ちゃんと強くなっただろ?」
「鍛錬にはなりましたね……。前回苦戦したモンスターに、わりと優位なまま立ち回れるのは実感しましたし」
「俺たち、捕まる原因となったモンスターとも戦えましたけど……」
ステータスやレベルこそ上がっていないものの、一定以上の効果があるのはたしかだ。
しかし、レベルを上げるならば、やはり味方ユニット同士の戦闘では効果が薄いか。
なんとなくわかってきたぞ。
経験値を上げるには、外敵との戦闘が必要になる。
そのため、敵用のダンジョンは困難すぎず、レベルを上げたい者たちが迎え撃てるように調整が必要。
だけど、経験値とは無関係の実戦経験を積ませるのであれば、今回みたいにわりと高めの難易度のほうが成長しやすい。
要するに、敵には軽め、味方には重め、そんなダンジョンを作れば良いんだな。
「よし、これからは味方用のダンジョンのほうの罠やモンスターを凝るようにしよう」
「待ってください! 何の罰でしょうか!?」
「みんなの成長のために、それが一番効率が良さそうなんだ」
「結果を出している以上、反論の言葉が出てきません……」
大丈夫。戦闘不能になったらちゃんと罠もモンスターも止めるから。
だから、難易度自体は敵用のものよりは高いけど、安全性でいえば身内用のほうが上だぞ。
「まあ、あまり重く受け止めないでくれ。安全だから」
「その加減を誤ったことがないので、たぶん本当なんでしょうねえ……」
ドリュは諦めたように呟いた。
一応、信用はされているようで良かった。
そもそも、挑戦者には不死鳥の羽を保険として渡すつもりだから、失敗しても安全だ。
「今までの娯楽施設と似たようなものだな。ウルラガとかイピレティスには、良い娯楽になるんじゃないか?」
「おう、さすがはレイだな。いつか、こういう頭のネジが飛んだ娯楽を用意してくれると信じていたぜ」
「あれを娯楽扱いするボスたちすげえなあ……」
訓練や戦いが趣味の者たちにとっては、体を動かす娯楽みたいなもんだからな。
元の世界で言えば、体を鍛えるのが趣味みたいなものだろうか?
ジムみたいなものだな。……そういうものも作ったほうがいいのか?
「ちなみに、体を鍛えるだけの施設って需要あるのかな?」
「戦闘のが良い」
「私たちも、戦いのほうが好ましいです」
「あの……俺たちは、そちらの施設のほうが興味があります」
なるほど。
やはり、今回のダンジョン挑戦を良しとする者たちは、戦闘のほうが良いようだ。
逆に、戦いだけが全てではない獣人みたいな者たちには、ジムみたいな施設も需要があると。
「ちょっと考えてみるかな……」
「ダイエット効果ですか~。お腹のお肉を落とすために、私もちょっと興味ありますね」
時任がそんなことを言っているが、見た目は別に太っている気はしないんだけどなあ。
やめておこう。女性のその手の問題に、不用意な発言をするのはきっとろくなことにならない。
時任だけでなく、奥居に世良に原。転生者女子組が興味を持っているので、口出ししてはいけないのだろう。
◇
「場所なら一瞬で作れるから、問題は器具のほうだな」
「場所を一瞬で作れるのも、大概すげえことだと思うがなあ」
まあそれは今更だ。
魔力消費でどうにかできるのが、俺の最大の強みだからな。
なので、器具のほうも魔力だけでなんとかできると助かる。
……テクニティスとカールに協力してもらって、魔道具みたいなものを作ってもらうか?
いや、それは彼らの負担になりそうだし、まずは俺だけでなんとかできないものか。
「待てよ。罠でいいか」
「ボス。罠はトキトウたちには酷だと思うんだ」
まあ待てロペス。俺だって、何も転生者たちを罠にかけようとは思っていない。
風間たちは鍛えられているから平気だろうが、さすがに時任や奥居は……奥居は物質透過でなんとかなるか。
「まあ、みんな案外平気だろうけど」
「平気じゃねえと思うんだが!?」
「今回は、仕留める罠じゃなくて、罠を利用してフィットネスに活用しよう」
そう言いながら俺はメニューを選択した。
動く床:消費魔力 10
「範囲を縮めて速度を上昇。あるいは速度を低下。まあ、適当にいくつか並べておこう」
「あ~、そういう感じか。それならたしかに安全そうではあるな」
ほっとするな。まったく、俺を何だと思っているんだ。
さて、これで走るための設備はできた。
この調子で他の器具を罠で代用していけばいい。あとは、俺の発想力の問題だけか。
まあ、俺自身の応用力を鍛えるという効果も期待できるし、ちょっと頭をひねってがんばってみるとするか。
「ジムってインストラクターが必要だな。そういう知識がありそうなのは……」
「まあ、私自身に課された仕事は、魔王軍の者たちへ知識を与えることなので、その一環として引き受けることもやぶさかではない」
「ありがとう。それじゃあ、よろしくダスカロス」
設備もできた。指導者も用意できた。
これで一応、内部用のジムもどきの完成だ。
あとは、実際に使ってもらって、そこからの声を拾い上げて改善していくとしよう。
◇
「なるほど、体を鍛えるための設備ですか。……実戦訓練では駄目なのでしょうか?」
「戦えない者たちもいますからね。それと、時任みたいに形から入るタイプには、こういうものがあったほうが良いみたいです」
「そういうものなのですか。私は、さくっと戦って鍛錬を積む派ですけどね」
「フィオナ様とさくっと戦えそうな人材が思い当たりませんが、フィオナ様もそっち側の魔族なんですね」
まあ、どちらかというとこの世界は、鍛えるときに戦闘訓練という者のほうが多いだろうからな。
なので、今回の施設はあくまでも内部用だ。というか、転生者か戦闘と無縁の従業員用だろうな。
従業員のほとんどが、冒険者だったことを考えると、残念ながら不人気な施設になると思う。
「では、せっかくだし見てみましょうか」
「え、フィオナ様もダイエットするんですか?」
「……私のお腹のどこがぷにぷにしているというんですか」
「さ、触らせようとしないでください!」
油断も隙も無い。そして、向こうには羞恥心も無い。
まったく……急にとんでもないことをする魔王様だ。
そんなふうに二人でジムもどきへと向かう。
当然ながら、そこは閑古鳥が鳴いている……と思ったのだが、なんかかなり利用者が多いな。
「トゲ!? こ、怖い……レイさんが、先を丸く調整してくれたし、材質もなんか柔らかくしてくれたから当たっても痛くないけど……」
「見た目が怖いわよね……。まあ、反射神経を鍛えられるのはたしかだけど」
「この岩……見た目より重いけど、もしかして魔力で重さが変わっているのかな?」
「だから……こんなに、私だけ……重いのかしら……」
「私にも無理っぽい……。武巳くん、軽々だねえ」
転生者組が利用しているのは、まあ予想通りだ。
だが、それ以外に獣人や人間、ドワーフたちもけっこう利用している。
中には冒険者だった者たちの姿も多く見える。
「侵入していたころは、これが罠として襲いかかっていたんだから、恐ろしい話だよなあ」
「というか、罠ってこういうふうに、肉体を鍛えることにも利用できたのか」
「ダンジョンや戦闘訓練は、さすがに荷が重いが、こういうのなら利用しやすいな」
なるほど……戦闘まではできないが、こういうのならという者たちに、案外人気なのか。
つまり、ここで体を鍛えてもらえば、行く行くはダンジョンを利用することも可能になると。
「魔王様、宰相様。お二人も体を鍛えに?」
「いや、作ったばかりの部屋だから、様子を見に来たんだ」
ドリュまでいる。
いや、一般魔族もオーガたちもいるな。
戦闘訓練とはまた別に、こういうふうに肉体を鍛えるのも有効と判断したのか?
「好評ですよ。ダスカロス様とディキティス様の指導のおかげで、順調に肉体が強くなりますので」
「まあ、ここで体を鍛えてもらえば、ダンジョンのテストをする人も増えそうだし、何よりだ」
「……それは、まあいつかはということで、長い目で見てあげてください」
諭すようなドリュの言葉だったが、そう遠くないうちに鍛えられそうな気がするんだけどなあ……。