【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

385 / 459
第385話 岩を次々と持たせる姿はトレーニングというよりも拷問に見えた

「きつかった……」

 

「そうか? 毎日でもやりたいくらいなんだが」

 

「お前らやっぱりおかしいって……」

 

 ふむ。ダンジョンタイムアタックは、なかなか評価がばらけているな。

 というか、一部のやばい連中以外には、あまり好評ではないか。

 これを良しとするのは、俺とリピアネムとウルラガとディキティスとイピレティスとオーガとモンスターくらいだろうな。

 獣人も、わりと参加してくれたので、やはり戦い好き種族だと思っていたのだが、残念ながらあまり良い評価ではないようだ。

 

「でも、ちゃんと強くなっただろ?」

 

「鍛錬にはなりましたね……。前回苦戦したモンスターに、わりと優位なまま立ち回れるのは実感しましたし」

 

「俺たち、捕まる原因となったモンスターとも戦えましたけど……」

 

 ステータスやレベルこそ上がっていないものの、一定以上の効果があるのはたしかだ。

 しかし、レベルを上げるならば、やはり味方ユニット同士の戦闘では効果が薄いか。

 

 なんとなくわかってきたぞ。

 経験値を上げるには、外敵との戦闘が必要になる。

 そのため、敵用のダンジョンは困難すぎず、レベルを上げたい者たちが迎え撃てるように調整が必要。

 だけど、経験値とは無関係の実戦経験を積ませるのであれば、今回みたいにわりと高めの難易度のほうが成長しやすい。

 要するに、敵には軽め、味方には重め、そんなダンジョンを作れば良いんだな。

 

「よし、これからは味方用のダンジョンのほうの罠やモンスターを凝るようにしよう」

 

「待ってください! 何の罰でしょうか!?」

 

「みんなの成長のために、それが一番効率が良さそうなんだ」

 

「結果を出している以上、反論の言葉が出てきません……」

 

 大丈夫。戦闘不能になったらちゃんと罠もモンスターも止めるから。

 だから、難易度自体は敵用のものよりは高いけど、安全性でいえば身内用のほうが上だぞ。

 

「まあ、あまり重く受け止めないでくれ。安全だから」

 

「その加減を誤ったことがないので、たぶん本当なんでしょうねえ……」

 

 ドリュは諦めたように呟いた。

 一応、信用はされているようで良かった。

 そもそも、挑戦者には不死鳥の羽を保険として渡すつもりだから、失敗しても安全だ。

 

「今までの娯楽施設と似たようなものだな。ウルラガとかイピレティスには、良い娯楽になるんじゃないか?」

 

「おう、さすがはレイだな。いつか、こういう頭のネジが飛んだ娯楽を用意してくれると信じていたぜ」

 

「あれを娯楽扱いするボスたちすげえなあ……」

 

 訓練や戦いが趣味の者たちにとっては、体を動かす娯楽みたいなもんだからな。

 元の世界で言えば、体を鍛えるのが趣味みたいなものだろうか?

 ジムみたいなものだな。……そういうものも作ったほうがいいのか?

 

「ちなみに、体を鍛えるだけの施設って需要あるのかな?」

 

「戦闘のが良い」

 

「私たちも、戦いのほうが好ましいです」

 

「あの……俺たちは、そちらの施設のほうが興味があります」

 

 なるほど。

 やはり、今回のダンジョン挑戦を良しとする者たちは、戦闘のほうが良いようだ。

 逆に、戦いだけが全てではない獣人みたいな者たちには、ジムみたいな施設も需要があると。

 

「ちょっと考えてみるかな……」

 

「ダイエット効果ですか~。お腹のお肉を落とすために、私もちょっと興味ありますね」

 

 時任がそんなことを言っているが、見た目は別に太っている気はしないんだけどなあ。

 やめておこう。女性のその手の問題に、不用意な発言をするのはきっとろくなことにならない。

 時任だけでなく、奥居に世良に原。転生者女子組が興味を持っているので、口出ししてはいけないのだろう。

 

    ◇

 

「場所なら一瞬で作れるから、問題は器具のほうだな」

 

「場所を一瞬で作れるのも、大概すげえことだと思うがなあ」

 

 まあそれは今更だ。

 魔力消費でどうにかできるのが、俺の最大の強みだからな。

 なので、器具のほうも魔力だけでなんとかできると助かる。

 

 ……テクニティスとカールに協力してもらって、魔道具みたいなものを作ってもらうか?

 いや、それは彼らの負担になりそうだし、まずは俺だけでなんとかできないものか。

 

「待てよ。罠でいいか」

 

「ボス。罠はトキトウたちには酷だと思うんだ」

 

 まあ待てロペス。俺だって、何も転生者たちを罠にかけようとは思っていない。

 風間たちは鍛えられているから平気だろうが、さすがに時任や奥居は……奥居は物質透過でなんとかなるか。

 

「まあ、みんな案外平気だろうけど」

 

「平気じゃねえと思うんだが!?」

 

「今回は、仕留める罠じゃなくて、罠を利用してフィットネスに活用しよう」

 

 そう言いながら俺はメニューを選択した。

 

 動く床:消費魔力 10

 

「範囲を縮めて速度を上昇。あるいは速度を低下。まあ、適当にいくつか並べておこう」

 

「あ~、そういう感じか。それならたしかに安全そうではあるな」

 

 ほっとするな。まったく、俺を何だと思っているんだ。

 さて、これで走るための設備はできた。

 この調子で他の器具を罠で代用していけばいい。あとは、俺の発想力の問題だけか。

 

 まあ、俺自身の応用力を鍛えるという効果も期待できるし、ちょっと頭をひねってがんばってみるとするか。

 

「ジムってインストラクターが必要だな。そういう知識がありそうなのは……」

 

「まあ、私自身に課された仕事は、魔王軍の者たちへ知識を与えることなので、その一環として引き受けることもやぶさかではない」

 

「ありがとう。それじゃあ、よろしくダスカロス」

 

 設備もできた。指導者も用意できた。

 これで一応、内部用のジムもどきの完成だ。

 あとは、実際に使ってもらって、そこからの声を拾い上げて改善していくとしよう。

 

    ◇

 

「なるほど、体を鍛えるための設備ですか。……実戦訓練では駄目なのでしょうか?」

 

「戦えない者たちもいますからね。それと、時任みたいに形から入るタイプには、こういうものがあったほうが良いみたいです」

 

「そういうものなのですか。私は、さくっと戦って鍛錬を積む派ですけどね」

 

「フィオナ様とさくっと戦えそうな人材が思い当たりませんが、フィオナ様もそっち側の魔族なんですね」

 

 まあ、どちらかというとこの世界は、鍛えるときに戦闘訓練という者のほうが多いだろうからな。

 なので、今回の施設はあくまでも内部用だ。というか、転生者か戦闘と無縁の従業員用だろうな。

 従業員のほとんどが、冒険者だったことを考えると、残念ながら不人気な施設になると思う。

 

「では、せっかくだし見てみましょうか」

 

「え、フィオナ様もダイエットするんですか?」

 

「……私のお腹のどこがぷにぷにしているというんですか」

 

「さ、触らせようとしないでください!」

 

 油断も隙も無い。そして、向こうには羞恥心も無い。

 まったく……急にとんでもないことをする魔王様だ。

 

 そんなふうに二人でジムもどきへと向かう。

 当然ながら、そこは閑古鳥が鳴いている……と思ったのだが、なんかかなり利用者が多いな。

 

「トゲ!? こ、怖い……レイさんが、先を丸く調整してくれたし、材質もなんか柔らかくしてくれたから当たっても痛くないけど……」

 

「見た目が怖いわよね……。まあ、反射神経を鍛えられるのはたしかだけど」

 

「この岩……見た目より重いけど、もしかして魔力で重さが変わっているのかな?」

 

「だから……こんなに、私だけ……重いのかしら……」

 

「私にも無理っぽい……。武巳くん、軽々だねえ」

 

 転生者組が利用しているのは、まあ予想通りだ。

 だが、それ以外に獣人や人間、ドワーフたちもけっこう利用している。

 中には冒険者だった者たちの姿も多く見える。

 

「侵入していたころは、これが罠として襲いかかっていたんだから、恐ろしい話だよなあ」

 

「というか、罠ってこういうふうに、肉体を鍛えることにも利用できたのか」

 

「ダンジョンや戦闘訓練は、さすがに荷が重いが、こういうのなら利用しやすいな」

 

 なるほど……戦闘まではできないが、こういうのならという者たちに、案外人気なのか。

 つまり、ここで体を鍛えてもらえば、行く行くはダンジョンを利用することも可能になると。

 

「魔王様、宰相様。お二人も体を鍛えに?」

 

「いや、作ったばかりの部屋だから、様子を見に来たんだ」

 

 ドリュまでいる。

 いや、一般魔族もオーガたちもいるな。

 戦闘訓練とはまた別に、こういうふうに肉体を鍛えるのも有効と判断したのか?

 

「好評ですよ。ダスカロス様とディキティス様の指導のおかげで、順調に肉体が強くなりますので」

 

「まあ、ここで体を鍛えてもらえば、ダンジョンのテストをする人も増えそうだし、何よりだ」

 

「……それは、まあいつかはということで、長い目で見てあげてください」

 

 諭すようなドリュの言葉だったが、そう遠くないうちに鍛えられそうな気がするんだけどなあ……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。