【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第389話 欲望のはちみつ漬け

「モンスターは良いな」

 

「万事順調です。ダンジョンに招き入れたモンスターは、十魔将の部下たちが倒していますので」

 

「わかっているよ……。今回は、罠とか追加しないから、趣旨をぶち壊したりしないって」

 

「レイ様の成長は喜ばしいことです」

 

 言い返せない。

 大丈夫、今後もちゃんと自重するから。

 あれ? あのあたり、ちょっと苦戦していそうだし、加勢がいるんじゃないか?

 ……駄目だ。撃退してしまった。

 俺の手助けなど不要なようだし、完全に手を離れたダンジョンになってしまったなあ。

 

「さて、少し淋しくもあるけれど、本来の予定通りだ」

 

「あとは、どれだけ彼らが成長するかだな」

 

 今のところは、ステータスに変化は見られない。

 ナツラたちが侵入したときは、敗北したとはいえ一度の戦闘で強化されたのにな。

 ということは、やはり強者との戦闘のほうが取得経験値は多いようだ。

 かといって、身内相手だと経験値は激減するようだし、なかなか難しい。

 

 加減なしの強敵となると、こちらにも被害が出るからなあ……。

 罠やモンスターでサポートしたら、結局経験値を得られなくなるし、ちょうどいい相手の見極めは大変そうだ。

 

「とりあえず、今のモンスターたちと戦い続けてもらって、変化がないようなら、別の場所のモンスターを狙おう」

 

「それが良い。焦って動くと、彼らのためにはならないからな」

 

 しかし、そうなるとまたいつもの日常に戻りそうだな。

 ダスカロスが言うように、焦っても仕方がないか……。

 レベル上げはみんなに任せて、昆虫人は動きがわかるまで待つしかない。

 

「そわそわしてんなぁ。少しは休めよ、お前」

 

「ピルカヤやマギレマのようになってはいけないぞ」

 

「畑に来ますか?」

 

 俺が暇を持て余していると、余計なことをすると思われているのかもしれない……。

 なんか各々が心配そうに話しかけてきた。

 いかんな。このままでは、また手出しをしそうだ。

 フィオナ様のところにでも行くとしよう。

 

「レイ~。お客さんだよ~」

 

 ピルカヤの声に足を止める。

 客……。この場合、言葉のままではないな。

 ピルカヤの顔がどこかギラついた笑みになっている。

 つまり、侵入者だ。それも、俺にわざわざ報告するほどの。

 

「勇者か? 転生者か? それとも昆虫人?」

 

 今思い当たるのは、その三通り。

 その考えは当たっていたらしく、ピルカヤはあっさりと答えを教えてくれた。

 

「昆虫人。それも、いつもの兵隊だけじゃないねぇ」

 

 その言葉のすぐ後に、俺たちの視界にダンジョンの入り口が広がる。

 ここは……欲望のダンジョンだな。

 相も変わらず、入り口の各施設には見向きもしていない。

 ダンジョンをただただ真っ直ぐ進んで行く。

 

「罠は、避けるようになっているな」

 

 それも、避けると言っても、起動した罠を回避しているのではない。

 そもそも、罠を起動させない。そもそも、罠に近づかない。部屋にすら入らない。

 これまでの兵隊たちを指揮する昆虫人が、そうして罠の被害を最小限に抑えている。

 

「頭を使うようになって、いよいよ本番ってわけか」

 

 ならばこちらも、本格的に迎え撃たせてもらうか。

 それとも、考える力がある侵入者が追加されたので、下手に応戦せずに適当にクリアさせるか。

 どちらにするか悩ましいな。

 

「とりあえず、様子見で。過剰に反応しないようにしよう」

 

「おぉ……やればできるんだな、お前」

 

 前回と違う昆虫人がいるからな。

 これまでと違って、知恵ある指揮官が増えたのであれば、まずは相手の出方や目的を見定めてから、ダンジョンを改築していくべきだろう。

 下手に魔族やオーガを出したら、その情報を持ち帰られそうだしな。

 

「モンスターは、最低限相手をしているみたいだな」

 

「ということは、経験値稼ぎで潜っているわけではなく、別に目的がありそうだ」

 

「やはり、オーガを探しているのでしょうか?」

 

「だとしたら、ダンジョンにこだわるよりも、他の場所を探しそうなもんだけどなあ」

 

 相変わらず、昆虫人の目的はわからない。

 命令に従うだけの兵隊以外も増えたけど、結局のところ何を考えているかが導き出せそうにない。

 

「宝にも興味はなく、モンスターを倒すのも最低限。分岐点は必ず部隊をわけて、全てを探っているし、やっぱり何かを探しているのかな」

 

「……新たな部隊が来たようだ」

 

 ダスカロスの言葉に、入口のほうへと視界を移す。

 すると、たしかに昆虫人の増援がやってきていた。

 それも、これまでは無数の兵隊にわずかな指揮官という組み合わせだったのに、今回はやけに指揮官が多い。

 

 ……それだけではない。人間が混ざっている。

 指揮官たちに守られるように、厳重な警備をされながら昆虫人以外の存在が、ダンジョンに足を踏み入れようとしていた。

 しかも、転生者だ。

 ステータスを確認すると、見知った国特有の名前がある。

 

「……転生者がいるな」

 

「あの人間か?」

 

「……それもだけど、追加された次の部隊のドワーフもそうだ」

 

「つまり、昆虫人は転生者と手を組んでいたということでしょうか?」

 

「そういうことだろうな。少なくとも、あの様子は敵対関係に見えない」

 

 各転生者は、周囲に多数の指揮官を従えている。

 その周囲を大量の兵隊が守っている。

 転生者が昆虫人たちを指揮しているのか?

 ……いや、それにしてはなんというか、ぼんやりとしている。

 無感情なのは兵隊と同じ。

 知恵がない……? ジェルミが連れてきた、あの転生者みたいになんだか様子がおかしい。

 

「まずいな。どんどん増えている」

 

 転生者を囲む部隊は、次々とダンジョンに入ってくる。

 何人いるんだ? 人間、ドワーフ、獣人?

 種族もバラバラ、性別も年齢も違う。

 うちみたいに、転生者同士で共闘しているということだろうか。

 だが、全員が心ここにあらずなのはおかしい。

 ……もしかして、昆虫人というか、寄生虫みたいなのに、意識を奪われている……?

 

「下手に手出しすると、何をされるかわかったもんじゃないな」

 

「ヨハンのときみてえだな。だけど、あのときより不気味だ」

 

 なるほど……。オーガたちが不気味だというのもわかる。

 何考えているかわからない集団って、こんなにも不気味なのか。

 

 ひとまず、モンスターや罠は追加せずに様子を見る。

 幸い、ピルカヤの存在は考慮していないらしく、連中の行動はこちらに筒抜けだ。

 相手を見極めようとじっくりと観察を……。

 

「今、モンスターが一撃でやられたな」

 

「そのように見えた」

 

 転生者としての能力か?

 レベルもそれなりに高いらしいが、さすがに上位モンスターを一撃というのは火力が高すぎる。

 それに……誰の攻撃でやられたのか見えなかった。

 速すぎる攻撃? 不可視の攻撃? 一撃必殺? 超高火力?

 

 考えている間にも、モンスターたちがやられていく。

 敵はどれだ? どの転生者の能力だ。

 あそこまであからさまに転生者を増やしたからには、誰かの能力だと思う。

 それともそれすら囮で、知能ある昆虫人たちのしわざなのか?

 

 見極めなければならない。

 放置してもいいのか。それとも、ここで是が非でもしとめなければいけないのか。

 不可視の一撃必殺だとしたら、最悪だぞ。

 それが四天王やフィオナ様にまで届くものだとしたら、下手したら勇者すら上回る脅威となるのだから……。

 

    ◇

 

「さあ、手札は切った。あとは出たとこ勝負ね」

 

 このために集めたのだから。

 私の転生者たちは、どんな強敵をも打ち倒せる。

 その証明に、難攻不落のダンジョンを見事落としてあげようじゃないの。

 ――そして、そこに住んでいる転生者たちも私のものにする。

 

 エーニルキアの調査の手をかいくぐり、他の種族たちにも気づかれないように密かに集めてきたのだから。

 役立ってもらうわよ。オーガを襲おうとした転生者。

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