【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「射程距離、範囲、効果。まずはそのあたりを知る必要があるか」
「そうだな。さすがに、あれを放置するのは問題だ」
「まずは硬さでなんとかしてみるか。攻撃力ゼロ、硬度最大のアイアンシザーズたち。海エリアに移動してくれ」
一匹だけではなく複数のカニたちに指示を出す。
何匹かは、あえて距離を離したり、海の底に隠れてもらって様子を見てみよう。
「……平然と一撃で倒していく」
「硬さは無関係ということだな」
「なら、回復できるモンスターだな。食人花、フォレストフェアリーと一緒に移動してくれ」
ナツラたちですら、仕組みに気付かなかったら延々と戦う羽目になった回復コンビはどうだ?
今回は、フォレストフェアリーを遠距離に配置し、簡単には気付けないようにしてみる。
「私たちの時よりも凶悪な配置になっていますね……」
「そうしてみたんだが……それも超えてくるか」
駄目だ。どちらのモンスターも一撃で葬られた。
そもそも、誰の攻撃によって死んでいるのかがわからない。
これ、ピルカヤは大丈夫なのか?
こうも無差別に殺されていくと、様子をうかがっている分体すらも……。
俺の考えに答え合わせをするかのように、視界が一か所消えた。
それと同時に、ピルカヤの苛立った声がこちらに届く。
「あ~! なんだよ、もう! 分体が一人死んじゃったのに、何が起こったかもわからなかった!」
まずいな……。
分体とはいえ、四天王であるピルカヤですら一撃で死んだ?
それも、本人も何が起こったかわからないほどの力だ。
「殺されたピルカヤの分体と一番近かった転生者は……」
「候補はいくつかいるねぇ。なぁんか、まとまって行動していてめんどくさいよ」
「オーガたちは、昆虫人がこんなことできるって知っていたか?」
「いえ、私たちの村には兵隊以外やって来ませんでしたので」
つまり、うちの最初の頃と同じだったんだろうな。
そこから、本格的にうちに攻勢に出た理由は、うちのほうが楽に制圧できると思われたか?
いや、そもそもこのダンジョンは魔族とのつながりを隠している。
宝にも施設にも興味がないのに、本気で踏破しようとする理由か……。
オーガを狙っていたのが土地と人員の確保だと仮定すれば、ここも土地を狙われている?
オーガの村の次として選んだは良いが、モンスターが多かったので本格的に攻めにでたってことか?
それか……。
「転生者でも狙っているのかな」
「あり得るな。こうして、転生者たちを群れに配置している以上、昆虫人も転生者を確保する意味を見出しているはずだ」
「オーガたちのところには、転生者はいなかった。だから、兵隊より上の戦力は見せなかったのかもな」
だけど、うちには転生者がいる。
というか、ロペスや奥居が入り口にいる。
欲望のダンジョンは、ロペスたちの転生者連合で経営していると思われている。
そのため、全ての転生者を探し出して、仲間として取り込もうとしているのかもしれない。
「だとしたら、無差別に殺し回っているんじゃなくて、モンスターだけを狙ってるのかねえ」
リグマの言うとおり、無差別ではなさそうだ。
だけど、モンスターのみということもない。
ピルカヤがやられてしまったので、敵を殺しているってところか?
「敵対意思を見せなければ、とりあえず安全か? 実際、モンスターを皆殺しにしているわけじゃないからな」
ゴブリンたちに指示を出す。
まずは敵の能力の対象外になれるか、その調査からだ。
幸い、ゴブリンたちは転生者の近くにいたので、それぞれ敵意を消して、攻撃すらさせずに放置してみた。
結果は、全員無事だ。
「自動迎撃かもな。敵意に反応して、高火力か即死級の反撃をするとか」
「カニが一撃だったことを考えると、即死の可能性もありそうだよなあ」
範囲もきっとかなりのものだし、敵意なく仕留めなければいけないか。
罠だな。……それとも、罠を仕掛けた俺にカウンターが飛んでくるのか?
「保険をいくつかかけてから、本格的に対処してみるか」
「むむ……レイが危ないことをするくらいなら、私がちゃちゃっと倒してきましょうか?」
「今回は、その手は使いたくありません。フィオナ様もですが、四天王や十魔将も」
もしも即死だというのなら、フィオナ様にまで通用した場合最悪だ。
四天王や十魔将も、転生者たちも一般魔族も、従業員たちもだな。
当然、俺だって死ぬわけにはいかない。
俺が死んだ場合、ダンジョンが色々と機能停止するだろうからな。
ということで、今回は最悪死ぬことを想定した作戦になる。
悪いが、モンスターかアンデッドたちにお願いすべきだろう。
特に、アンデッドであれば、すでに死んでいるので即死が無効化できるかもしれない。
「エピクレシ、ディキティス。作戦を伝える」
「お任せください」
エピクレシの言葉の後に、ディキティスも頷いて同意してくれる。
それじゃあ、それぞれアンデッドとモンスターで試してもらうとするか。
これで駄目だったら、罠だな。
……まあ、きっと大丈夫だろう。
罠だけでなく、モンスターだって俺が作成しているんだし。
作成者に敵意ありと判定されるのであれば、俺はとっくに死んでいるか大ダメージを受けているだろうからな。
……でも、怖いから一応不死鳥の羽を大量に身に付けておこう。
「……その備えは?」
「念のためです」
「あなたが危ないことをするくらいなら、私が大暴れしますけど?」
「そっちは、本当に危険かもしれないのでやめてください」
「……では、レイも危険なことをしないように」
魔王と宰相だからなあ。
どちらもここで倒れるわけにはいかない。
とりあえず、罠は全て起動を停止させておき、間違って攻撃しないようにだけしておくか。
「アンデッドとモンスターが通じない場合、罠で対処しますよ?」
「むむむ……敵意を判定しているのであれば、攻撃以外の罠にしておきましょう」
……ありかもしれないな。
となると、次善策として設置しておくべきはあれか。
さすがに、今のダンジョンには設置していないから、急いで設置しに行かないと。
「ちょっと、転移温泉を設置しに行ってきます」
「またそうやって、侵攻中のダンジョンに向かおうと……良いでしょう。その代わり、私がワープさせます」
それが一番早い。侵入者たちに会う前に設置を済ませるつもりだから問題ないな。
間に合わなかったら逃げるくらいの考えで行動すべきだろうし、ちょっと行ってくるか。
「それじゃあ、お願いします」
フィオナ様と手を繋ぎ、俺は昆虫人たちに先回りするようにダンジョン内を転移した。
◇
「順調ね」
入ってくる情報に、少し安堵した。
恐ろしいダンジョンという報告だったけれど、今のところ罠の被害は最小限に抑えられている。
モンスターは、
オートカウンターと即死。良い能力が手に入ったのは、今後の成功を確信させてくれる。
手に入る能力は、組み合わせるごとに強くなっていく。
まるで、私の行動を後押ししてくれるかのようだ。
「ここまで手の内を見せてしまったのだから、もう後戻りはできないわ。必ず新しい転生者を確保してみせる……」
転生者が増えれば増えるほどに、私の戦力は増強されていく。
どの国にも属していない転生者。誰かに取られる前に、ここで確実に手に入れておきたい。
「問題は、好戦的な転生者がカウンターで即死した場合だけど……。まあ、それは割り切るしかないわね」
自分の力にならないのなら、他の勢力につく前に排除できたことを良しとしましょう。
幸い、ダンジョンの入り口に拠点を構えた者たちは好戦的ではないようだし、彼らの仲間なら死ぬこともないでしょう。
「ダンジョンを踏破。モンスターを排除。そうして土地を手に入れて、隠れている転生者もあぶり出す」
最後は土地と戦力と経験値が手に入るでしょうし、うまくいけば良いこと尽くめね。
……うまくいってね。本当に。