【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「四番の力は、順調に発揮できているようですね」
兵隊たちから伝達された情報によると、すでに多数のモンスターが死んでいるらしい。
転生者四番。即死の能力者とは、本当に良い拾い物だった。
それも、オーガたちの村を襲おうとする寸前に発見できたので、一方的に無防備な状態の能力者を手に入れられた。
「三番と組み合わせるとは、さすがは女王様だ」
四番の能力だけでも強力なものだが、それをさらに強化しているのが三番。
オートカウンターの能力によって、敵対者と判断された相手は自動で反撃される。
反撃は本人の魔力に応じた威力だったが、一つだけ面白い副次効果が存在していた。
仲間の力を反撃に上乗せすることができる。
それにより、特定の属性魔法による反撃や、複数人で強力な反撃を可能としていたが、まさか女神の加護も効果に含められるとはな……。
広範囲の即死カウンターとは、考えただけでも恐ろしい能力になったものだ。
女王様のお考えと、女神の加護の強力さに改めて敬服する。
「罠にはさすがに効かないが、ダンジョンに巣食っているモンスターなら全滅させられそうだな」
そう思いながらダンジョンの中を進んで行く。
そのうちに、先ほどの考えは撤回することにした。全滅……は、難しいかもしれないな。
何も想定外の悪い出来事があったわけではない。
いくらかのモンスターは、戦意を失ってしまったようなのだ。
そりゃあそうだろう。敵と戦うどころか問答無用に死んでいくなど、たまったものではないからな。
屈服する気持ちもわかる。だが、そんな相手を必要以上に痛めつけるつもりもない。
まずはダンジョンの制圧。そして、そこに潜んでいるであろう転生者の確保だ。
願わくば、その転生者たちもモンスターのように屈服してもらいたいものだがな……。
下手に即死の対象になると、便利な転生者が減ってしまう。
「それにしても、戦意を失ったモンスターたちは賢いですね」
「ああ、敵うわけがないと判断できているわけだからな」
「それも、戦って明確な力の差を見せつけられてわけではないのにこれだ。ダンジョンのモンスターたちは、野生のものよりはるかに知能が高いらしい」
これが野生のモンスターだったら、無意味にこちらに敵対を続けて死んでいただろう。
女神の加護という得体のしれない力を、正しく理解できているここのモンスターたちは、思っている以上に賢いようだ。
「だから、さっさと抵抗はやめてほしいな」
その中でも、抵抗するモンスターはまだまだいる。
いや、この場合はアンデッドか。
……アンデッド? 即死というからには、相手を殺しているということだ。
すでに死んでいるアンデッドたちは、効果の範疇なのか?
思わず、四番のほうを見たくなるのをぐっとこらえる。
どうせ見たところで、四番も答えられないだろうからな。
アンデッドたちがそこまで考えられるかはわからないが、どの人間が即死の能力者かばれるわけにはいかない。
最悪の場合は、俺たちでアンデッドを倒していくことになりそうだ。
まあ、この程度なら十分に対処可能だろうし、つつがなく進行できそうか。
「念のため、戦闘準備だ。人間たちに被害が及ばないように」
兵隊に指示を出す。
アンデッドの集団はすでに目の前。ぶつかり合うことになった場合、こちらの被害も多少は出そうだな。
◇
「まさか、アンデッドにも有効とは……」
結果から言えば、こちらの被害は無かった。
死者がいないとかではなく、軽傷を負った者すら皆無の完全勝利と言える。
あの巨大なドラゴンのゾンビさえも、接近すら許さずに即死させるとは……。
改めて、即死という力の理不尽さを思い知った。
「これさえあれば、昆虫人たちが人類を支配することも……魔王だろうと勇者だろうと、もはや相手にならないのでは?」
性懲りもなく、再びアンデッドたちがやってくる。
このダンジョンを支配しているのがアンデッドなのか?
それとも、アンデッドを使役する能力を持った転生者でも潜んでいるのか?
どちらでもかまわない。私たちの力は、もはや誰であれ攻略不可能の力なのだから。
「こちらも兵隊を消耗する策は多いのでわからないでもありませんが、いくらきても無意味なんですけどね」
「ああ、アンデッドにも通じるとわかったのであれば、神以外には通じる力だろうからな」
アンデッドたちが死んでいく。
近づいてくる者から順々に倒れ、二度と動くことがなくなる。
種類を変えても無駄だ。どんな種族だろうと、即死への耐性なんて付けようがない。
相手も諦めたのか、ついには代わり映えしないゾンビやスケルトンばかりが押し寄せてくる。
その奥には……ドラゴンゾンビ?
区別はつかないが、先ほど死んだものとはさすがに別だろうな。
これほど強力なアンデッドだらけとなると、本当に転生者の力なのかもしれない。
私たちにも転生者の力が無かったら、危ないところだったか。
「ブレスか。遠距離からなら死ぬ前に攻撃できる、なんて考えているのなら浅はかだな」
「攻撃する意思があるのなら、即死の対象。残念ですが、攻撃前に死ぬことになるでしょうね」
大きく口を開けたドラゴンゾンビに、四番の即死が発動される。
これで終わり。実に簡単に強敵が死んでいくものだ。
……なんだ? 死んだというのに、倒れるのを抗っている?
完全に息絶える前に、せめてブレスだけは吐こうというわけか。無駄なことを。
「っ!? 兵隊たち! 盾になれ!」
まさか本当に?
即死はたしかに命中したはずだ。それなのに、ドラゴンゾンビはまだ立っている。
口内には魔力が込められていくのがわかり、ブレスの準備は整ってしまった。
馬鹿な。なぜ死なない。いや、死んだはずなのになぜ動く。
「退れ四番!」
もはや、四番がどの人間かばれるなどと言っている場合ではない。
調子に乗って前に出すぎた。
三番と四番がいれば、広範囲の攻撃なんてされる前に、相手は死ぬと思い込んでいた。
相手の射程圏内に易々と足を踏み入れすぎた。
ドラゴンの口から、魔力の奔流が解き放たれる。
死者とはいえ、腐っているとはいえ、それでも相手はドラゴンだ。
人間になる力が無いとはいえ、我々にとっては十分すぎるほどに強力な相手だ。
そのブレスは、瞬く間にこちらに押し寄せる。
逃げ場などない。広範囲に全てを蹂躙するように、狭いダンジョンの中では十分すぎるほどに凶悪な攻撃となって、私たちへと襲いかかる。
まずい……。私たちは耐えられる。兵隊でさえも、いくらかは耐えられるだろう。
だが、能力以外が脆弱な人間は……? 三番、四番。この二人は能力が優秀なだけで、肉体はてんで駄目なやつらだ。
耐えられるはずがない……。
「っ!! 無事か!?」
そんなはずはない。
わかっていても、つい口からはそんな言葉が出てしまった。
なりふり構わず、三番と四番のほうを確認したが、やはり無駄だった……。
「回復魔法だ! 急げ!」
治療が得意な兵隊に命じるが、これも無意味だろうとわかってしまう。
どう見ても死んでいる……。
もはや、回復魔法でどうにかなる次元ではない。
あのドラゴンゾンビ。今わの際でなんてことをしてくれる。
放っておけばあとは勝手に死ぬだけの存在が、貴重な転生者と相討ちだなんて……。
忌々しいドラゴンのほうをつい振り向くと、私は信じられないものを見た。
「なんで……」
死んでいない。
四番が死んだことで、能力が無効化された?
いや、即死はすでに発動していたはずだ。能力者が死のうと、このドラゴンゾンビは死ななくてはおかしいだろう。
なのに、どうして平然と俺たちに襲いかかって……。
その答えにたどり着くことは永遠に無いだろう。
ドラゴンゾンビの攻撃は、無防備な私たちの命を奪うには十分すぎるものなのだから――。