【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「いやあ、思い切りが良いですねえ」
「蘇生感謝します」
「私のは蘇生とは少し違いますが、まあ概ね同じようなものなので良いでしょう」
エピクレシが、すぐにロマーナを復活させる。
アンデッド限定とはいえ、簡単に蘇生できるのはさすがだな。
「ありがとう、助かった。それにしても、自爆とは思い切ったな……」
「いえ。さすがに私と同等の相手だらけなので、引きつけて一網打尽にするのが良いと思いまして」
「それで自爆か……」
復活が容易なら、わりと有効的な手段か?
モンスターたちに覚えさせることができれば、今後有用な手段となるかもしれない。
「君の考えていそうなことはなんとなくわかるが、ロマーナの魔力とそれを制御する力あってのことだからな」
「ゴブリンたちが自爆するのは無理か」
「仮に習得できたとしても、昆虫人の兵隊一人と相打ちできるかどうか、と言ったところだろうな」
「ロマーナすごいな……」
兵隊と将だけでなく、見事に転生者も倒してくれたもんな。
あの規模の自爆は、魔力操作に長けているエルフだからこそ、ということか。
「もう一度自爆してきましょうか?」
「やめておきなさい。君は君で、わりと向こう見ずだな。魔力が安定していないので、先ほどの威力は見込めないだろう」
連発は難しいらしい。
復活できるとしても、一度きりの大技と見たほうが良さそうだな。
「おかげでまた転生者たちを排除できたし、大金星だよ」
「恐縮です」
さて、この調子なら四天王や十魔将がいなくても、いけそうだな。
あと四組、二組ずつが共に行動していることを考えると、相手をすべきは実質二組ってところか。
相手の組み方もわかってきた。
目立つ効果を発揮する者は一人。もう片方は、サポートに徹しているのか、戦力を見せないようにしているのか、何をしているかも分からない。
情報を徹底して隠されると、不測の事態が恐ろしいので、こちらも戦力を制限される。
やはりやりにくい相手ではあるな……。
「次は、あの一番目立っている暑苦しいのかねえ」
リグマが言っているのは、見るからに熱血なあの転生者だろう。
他の転生者たちは、操られているのか分からないが、反応が薄いというか意思がなかった。
それに引き換え、こいつはとにかくうるさい。
『うおおっ!! これがっ! ヒーローの力だ!!』
「うるせえな。こいつ……」
しかも強いのだからたちが悪い。
他の転生者と違いすぎだろ。お前。
ステータスを見てもそれは明らかであり、なんとも異質な転生者だ。
もしかしたら、こいつが今回の首謀者なのでは? とさえ思えてしまう。
兵隊や将に守られるのではなく、率いて進軍している。
というか、一人で突っ走っているのを、他の者たちがなんとか追いかけているようにも見える。
一見すると、昆虫人たちのリーダーだ。
そして、それを行うだけの実力もある。
このヒーローは、上位モンスターを軽々と倒し、たった今目の前で、超位モンスターさえ倒してしまったのだ。
「リピアネムやウルラガが好きそうなやつだな」
「暑苦しいのは好きじゃねえんだけど」
「まだまだ粗いな。だが、それで押し通せているあたり、相当な実力でもある」
リピアネムがそう評するくらいには、実力がある転生者というわけか。
だけど、単純な思考のようだし、案外罠とかで簡単に対応できないかな?
ヒーローと共に行動している転生者は、魔力こそ減っているものの動きがわからない。
やはり、部隊をサポートする能力ということだろう。
そして、もう二組はどちらも動きがない。
目下、対応すべきはこのヒーローのほうだろうな。
「コボルトたち、三つ先の罠の部屋にそいつを誘ってくれ」
指示を出すと、コボルトたちは転生者に敵わず逃げ出すような動きで、自然と罠の部屋へと向かってくれる。
案の定と言うべきか、転生者はコボルトを追いかけ、部隊から再び突出するように行動した。
ヒーローに続くように、もう一人の転生者や昆虫人たちは、次々と罠の部屋へと入っていく。
『さあ、観念しろ! 悪人どもめ!』
人ではないけどな。
コボルトたちに向かって、なんか燃えている拳を撃ち込もうとしたところ、ヒーローはきっと天地が逆転したかのように感じただろう。
『何!? 罠だと! おのれ、俺より賢いじゃないか! モンスターなのに!』
逆さ吊りの罠。
スイッチを踏んだら、魔法の鎖が足に巻き付いて、天井から宙吊りになるものだ。
見事に引っかかってくれたが、罠はこれだけで終わりではない。
ここから、火球や雷、矢や檻を組み合わせることで、無防備な敵を攻撃するように、仕掛けている。
今回は、雷の罠が起動する鎖を踏んだようだな。
『電気か! だが、その程度でやられるわけにはいかん!』
電流が自身をめがけて放たれたのを見ても、ヒーローを名乗る男はまるで怯むこともなかった。
自身を鼓舞するように、再び拳に炎をまとわせる。
……それで、どうにかできるのか?
電気と炎をぶつけて、なんかうまいこと相殺する気か?
『俺より賢いのは認めるが、俺は馬鹿なぶん強いぞ!』
……おい、なんだ今の物理法則を無視した動きは。
魔法や女神の加護があるのだから、物理法則など今更だけど、思わずそんな感想が浮かんでくる。
ヒーローは、無理やり逆さ吊りの状態から、身体を起こした。
そのまま、空中で跳躍し、鎖を力付くで引きちぎって、斜め下に向かって勢いよくキックを繰り出す。
そうして転生者が見事に脱出をしたことで、雷の罠は対象を見失い、空中で虚しく霧散するだけだった。
「でたらめだな……。なんだこいつ」
そもそも拳を燃やした意味はなんだ……。
気合が入ると勝手に燃えるシステムなのか?
騒がしい音を聞きつけたためか、昆虫人たちが急いでヒーローに合流する。
昆虫人の将が、小声でヒーローに何かを言っているが、どうやら勝手に先行するなと注意しているらしい。
『俺が一番手を務めよう! それが、ヒーローの役目だからな!』
だが、聞いていない。
昆虫人たちも、困った様子だ。
もしかして、こいつだけ制御できていないんじゃないか?
だとしたら、分断してなんとか倒せるかもしれない。
またさっきみたいにでたらめな動きをされるかもしれないが、完全に孤立させてしまえば、こちらも戦力を投入しやすいからな。
どこか呆れたようや様子の昆虫人だが、ヒーローは気にせず前へ前へと進んで行く。
こっちは、時間をかければ分断できそうだし、まずはモンスターたちにそれを優先して動くよう、指示を出しておこう。
となると、問題はもう片方の転生者組か。
あと三組。一つは、ヒーローに置いていかれそうな部隊に守られている。
もう二つは、ともに行動しているが、どちらも将と兵隊が厳重に守っている。
いまだ動きがないというか、能力が見えないのが不安だ。
そろそろ、こちらにもモンスターや罠をあてて動きを見ておくか。
そう思いながら、別のモンスターたちに指示を出そうとした瞬間、転生者たちに動きがあった。
手の中に白い光が輝いている。
今更明かりということもあるまい。攻撃魔法?
何も敵がいないこの状況だし、そうではないだろう。
答えを知る前に、光が一際強くなる。
こちらの目さえも眩むような強烈な光。
それに思わず目を閉じてしまった次の瞬間には、俺は先ほどとは違う場所にいた。
◇
「……どこだ。ここ?」
なんとなく思い出すのは、女神によって転生させられたときのことだ。
しかし、今回は転生というわけではない。
肉体は、相変わらず魔族のままのようなので、転移と言うのが正しいだろうな。
「見た目は、洞窟のようだけど……」
うちのダンジョンじゃないな。
ましてや、地底魔界でもない。
となると、色々と考えられるけれど、可能性が一番高いのは……。
「昆虫人の巣に招待でもされたか?」
一番高くもあり、一番悪いのはそれだ。
やられた。ということだろうな。
まんまと、昆虫人たちと転生者に、俺は拉致されたというわけだ。