【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第395話 観客は舞台の上に

「いやあ、思い切りが良いですねえ」

 

「蘇生感謝します」

 

「私のは蘇生とは少し違いますが、まあ概ね同じようなものなので良いでしょう」

 

 エピクレシが、すぐにロマーナを復活させる。

 アンデッド限定とはいえ、簡単に蘇生できるのはさすがだな。

 

「ありがとう、助かった。それにしても、自爆とは思い切ったな……」

 

「いえ。さすがに私と同等の相手だらけなので、引きつけて一網打尽にするのが良いと思いまして」

 

「それで自爆か……」

 

 復活が容易なら、わりと有効的な手段か?

 モンスターたちに覚えさせることができれば、今後有用な手段となるかもしれない。

 

「君の考えていそうなことはなんとなくわかるが、ロマーナの魔力とそれを制御する力あってのことだからな」

 

「ゴブリンたちが自爆するのは無理か」

 

「仮に習得できたとしても、昆虫人の兵隊一人と相打ちできるかどうか、と言ったところだろうな」

 

「ロマーナすごいな……」

 

 兵隊と将だけでなく、見事に転生者も倒してくれたもんな。

 あの規模の自爆は、魔力操作に長けているエルフだからこそ、ということか。

 

「もう一度自爆してきましょうか?」

 

「やめておきなさい。君は君で、わりと向こう見ずだな。魔力が安定していないので、先ほどの威力は見込めないだろう」

 

 連発は難しいらしい。

 復活できるとしても、一度きりの大技と見たほうが良さそうだな。

 

「おかげでまた転生者たちを排除できたし、大金星だよ」

 

「恐縮です」

 

 さて、この調子なら四天王や十魔将がいなくても、いけそうだな。

 あと四組、二組ずつが共に行動していることを考えると、相手をすべきは実質二組ってところか。

 

 相手の組み方もわかってきた。

 目立つ効果を発揮する者は一人。もう片方は、サポートに徹しているのか、戦力を見せないようにしているのか、何をしているかも分からない。

 情報を徹底して隠されると、不測の事態が恐ろしいので、こちらも戦力を制限される。

 やはりやりにくい相手ではあるな……。

 

「次は、あの一番目立っている暑苦しいのかねえ」

 

 リグマが言っているのは、見るからに熱血なあの転生者だろう。

 他の転生者たちは、操られているのか分からないが、反応が薄いというか意思がなかった。

 それに引き換え、こいつはとにかくうるさい。

 

『うおおっ!! これがっ! ヒーローの力だ!!』

 

「うるせえな。こいつ……」

 

 しかも強いのだからたちが悪い。

 他の転生者と違いすぎだろ。お前。

 

 鳴神(なるかみ)奏一(そういち) 魔力:60 筋力:69 技術:45 頑強:68 敏捷:69

 

 ステータスを見てもそれは明らかであり、なんとも異質な転生者だ。

 もしかしたら、こいつが今回の首謀者なのでは? とさえ思えてしまう。

 

 兵隊や将に守られるのではなく、率いて進軍している。

 というか、一人で突っ走っているのを、他の者たちがなんとか追いかけているようにも見える。

 一見すると、昆虫人たちのリーダーだ。

 

 そして、それを行うだけの実力もある。

 このヒーローは、上位モンスターを軽々と倒し、たった今目の前で、超位モンスターさえ倒してしまったのだ。

 

「リピアネムやウルラガが好きそうなやつだな」

 

「暑苦しいのは好きじゃねえんだけど」

 

「まだまだ粗いな。だが、それで押し通せているあたり、相当な実力でもある」

 

 リピアネムがそう評するくらいには、実力がある転生者というわけか。

 だけど、単純な思考のようだし、案外罠とかで簡単に対応できないかな?

 

 ヒーローと共に行動している転生者は、魔力こそ減っているものの動きがわからない。

 やはり、部隊をサポートする能力ということだろう。

 そして、もう二組はどちらも動きがない。

 目下、対応すべきはこのヒーローのほうだろうな。

 

「コボルトたち、三つ先の罠の部屋にそいつを誘ってくれ」

 

 指示を出すと、コボルトたちは転生者に敵わず逃げ出すような動きで、自然と罠の部屋へと向かってくれる。

 案の定と言うべきか、転生者はコボルトを追いかけ、部隊から再び突出するように行動した。

 ヒーローに続くように、もう一人の転生者や昆虫人たちは、次々と罠の部屋へと入っていく。

 

『さあ、観念しろ! 悪人どもめ!』

 

 人ではないけどな。

 コボルトたちに向かって、なんか燃えている拳を撃ち込もうとしたところ、ヒーローはきっと天地が逆転したかのように感じただろう。

 

『何!? 罠だと! おのれ、俺より賢いじゃないか! モンスターなのに!』

 

 逆さ吊りの罠。

 スイッチを踏んだら、魔法の鎖が足に巻き付いて、天井から宙吊りになるものだ。

 見事に引っかかってくれたが、罠はこれだけで終わりではない。

 ここから、火球や雷、矢や檻を組み合わせることで、無防備な敵を攻撃するように、仕掛けている。

 今回は、雷の罠が起動する鎖を踏んだようだな。

 

『電気か! だが、その程度でやられるわけにはいかん!』

 

 電流が自身をめがけて放たれたのを見ても、ヒーローを名乗る男はまるで怯むこともなかった。

 自身を鼓舞するように、再び拳に炎をまとわせる。

 ……それで、どうにかできるのか?

 電気と炎をぶつけて、なんかうまいこと相殺する気か?

 

 『俺より賢いのは認めるが、俺は馬鹿なぶん強いぞ!』

 

 ……おい、なんだ今の物理法則を無視した動きは。

 魔法や女神の加護があるのだから、物理法則など今更だけど、思わずそんな感想が浮かんでくる。

 

 ヒーローは、無理やり逆さ吊りの状態から、身体を起こした。

 そのまま、空中で跳躍し、鎖を力付くで引きちぎって、斜め下に向かって勢いよくキックを繰り出す。

 そうして転生者が見事に脱出をしたことで、雷の罠は対象を見失い、空中で虚しく霧散するだけだった。

 

「でたらめだな……。なんだこいつ」

 

 そもそも拳を燃やした意味はなんだ……。

 気合が入ると勝手に燃えるシステムなのか?

 

 騒がしい音を聞きつけたためか、昆虫人たちが急いでヒーローに合流する。

 昆虫人の将が、小声でヒーローに何かを言っているが、どうやら勝手に先行するなと注意しているらしい。

 

『俺が一番手を務めよう! それが、ヒーローの役目だからな!』

 

 だが、聞いていない。

 昆虫人たちも、困った様子だ。

 もしかして、こいつだけ制御できていないんじゃないか?

 だとしたら、分断してなんとか倒せるかもしれない。

 またさっきみたいにでたらめな動きをされるかもしれないが、完全に孤立させてしまえば、こちらも戦力を投入しやすいからな。

 

 どこか呆れたようや様子の昆虫人だが、ヒーローは気にせず前へ前へと進んで行く。

 こっちは、時間をかければ分断できそうだし、まずはモンスターたちにそれを優先して動くよう、指示を出しておこう。

 

 となると、問題はもう片方の転生者組か。

 あと三組。一つは、ヒーローに置いていかれそうな部隊に守られている。

 もう二つは、ともに行動しているが、どちらも将と兵隊が厳重に守っている。

 

 いまだ動きがないというか、能力が見えないのが不安だ。

 そろそろ、こちらにもモンスターや罠をあてて動きを見ておくか。

 そう思いながら、別のモンスターたちに指示を出そうとした瞬間、転生者たちに動きがあった。

 手の中に白い光が輝いている。

 今更明かりということもあるまい。攻撃魔法?

 何も敵がいないこの状況だし、そうではないだろう。

 

 答えを知る前に、光が一際強くなる。

 こちらの目さえも眩むような強烈な光。

 それに思わず目を閉じてしまった次の瞬間には、俺は先ほどとは違う場所にいた。

 

    ◇

 

「……どこだ。ここ?」

 

 なんとなく思い出すのは、女神によって転生させられたときのことだ。

 しかし、今回は転生というわけではない。

 肉体は、相変わらず魔族のままのようなので、転移と言うのが正しいだろうな。

 

「見た目は、洞窟のようだけど……」

 

 うちのダンジョンじゃないな。

 ましてや、地底魔界でもない。

 となると、色々と考えられるけれど、可能性が一番高いのは……。

 

「昆虫人の巣に招待でもされたか?」

 

 一番高くもあり、一番悪いのはそれだ。

 やられた。ということだろうな。

 まんまと、昆虫人たちと転生者に、俺は拉致されたというわけだ。 

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